株式会社発研セイコー

一品一様の看板メーカーが情報共有で業務改革
導入1年後に売上131%を達成したSalesforce活用術

知識ゼロからSalesforceの利用を開始し社内定着化と業務改革を推進
伝票情報一元化で部署間コミュニケーションの円滑化、ミス低減を実現

金属・樹脂製サインなどを製造・販売する株式会社発研セイコー。順調に成長を続けてきた同社でしたが、注文数と業務量の急増により、従来の紙ベースでの情報共有が限界に達してミスが頻発、結果として業務量がさらに増えるという、負のスパイラルに陥りました。そこから脱却するため、Salesforceの導入に踏み切った同社。推進役はシステムの知識ゼロ、しかも社内から強い抵抗を受ける苦しいスタートを切りながらも、Salesforceの利用定着化と活用を着実に進めていきました。導入1年後に売上131%を達成し、さらに新たなビジネス展開まで見えてきた、同社の取り組みを紹介します。
 
 
 
 

1. 情報共有不足で無駄な作業が増加、システム導入による業務改善が喫緊の課題

株式会社発研セイコーは、LED内照サイン(看板)をはじめ、商業施設・展示会等で利用される金属・樹脂製サインなどを製造・販売する企業です。同社の強みの1つは、業界内で関東最大の規模を誇る自社工場において、提案から設計、製作までを完結でき、顧客の要望に応える製品を迅速に提供できること。そしてもう1つは、メーカーでありながら、製品の開発・製造だけにとどまらず、一般には専門業者によって行われる取りつけ施工までワンストップで提供できることです。そうした高品質な製品と総合的なサービスによって、同社は多くの顧客の信頼を獲得し、業績を伸ばし続けてきました。

そんな同社のビジネスにおいては、営業・製造・施工などの部署間・社員間での円滑な情報共有と連携が欠かせません。特に、同社が扱っているのは、顧客からの注文を受けて個別に製作する“一品一様”の製品。バリエーションは無数にあり、かつ製作中の変更・修正が頻繁に必要になる、という特性を有しています。そのため同社では、顧客と直接やり取りする営業部署が、基本的にすべての情報を発信する主体となり、各部署に対して紙の伝票で指示を出す、という方法を長年採用してきました。

しかし、企画開発室室長の久永智義氏によると、顧客からの注文が増加し、社員数と業務量が増えるにつれて、部署間・社員間の情報共有不足による問題が多発するようになったそうです。

「たとえば営業部署が、お客様からのご要望を製造部署に伝えていなかったり、逆に製造部署からの確認事項をお客様に確認し忘れていたりすると、クレームや作り直しにつながります。『いった』『いわない』で部署同士の関係が険悪になる中、現場では納期に間に合わせるために残業が慢性化し、毎月のように離職者が出ていました」(久永氏)

営業部長の坂之上和也氏も、そうした状況に強い危機感を覚えていた、と話します。

「情報は個人のPCの中や、Faxの紙といった形で社内に散在していました。そのように、情報が一箇所にまとめられていないがゆえに、お客様のご注文とは違うものを作ってしまって手直しが必要になったり、情報を探すのに時間がかかったりといったロスが多く発生する。なんとかしたい、という思いがずっとありました」(坂之上氏)

そうした状況から脱却するには、「ここさえ見ればすべての情報がわかる」という全社共通のシステムを構築しなければならない。そう考えた久永氏は、さまざまなツールを比較検討したそうです。しかし、量産品の業務フローに対応している製品はあるものの、頻繁に修正が必要になるオーダーメイド製品の製造工程をしっかり管理できるようなツールはなかなか見つからなかったといいます。

そんな中、前進のきっかけとなったのが、設計部署で図面製作の進捗管理を目的として、セールスフォース・ジャパンの提供するドキュメント共同編集・コミュニケーションツールのQuipを使い始めたことでした。

「セールスフォース・ジャパンの営業の方からの電話でSalesforceについて説明を受け、機能追加やカスタマイズを自由に行えるこの製品なら、弊社のビジネスにフィットして業務を大幅に改善できそうだ、というイメージがすごく湧いてきたのです」(久永氏)

 
 
 
 

2. 知識ゼロからSalesforce利用開始、情報一元化で各種業務が効率化

Salesforce導入時点で、システムに関する知識は皆無だったという久永氏。加えて当初は、使い慣れた社内ツールを変えることへの抵抗感や費用面の懸念が社内に根強く、なかなか理解を得られなかったそうです。それでも久永氏は、「これを全社で使いこなせるようになれば、今より業務が格段によくなる」という確信のもと、まずは推進役である自分が使えるようにならねばと、Salesforceの勉強に可能な限り多くの時間を費やしました。

「セールスフォース・ジャパンの営業の方が熱心に誘ってくださった勉強会や自習室での学習を通じて、徐々に扱いに慣れていくことができました。それと並行して、顧客対応に関する考え方や、チームで1つの目的に向かって仕事に取り組む姿勢など、ビジネス全体に非常に役立つことをたくさん教えていただきました。そうした徹底的な支援には本当に感謝していますし、それこそが他社と一線を画すセールスフォース・ジャパンのすごさだと実感しました」(久永氏)

Salesforceへの社内の理解を得るため、久永氏は、ツール変更にともなうデメリットをはるかに上回るメリットがあることを、全社に向けて根気よく説明し、議論を深めていきました。同時に、SalesforceやQuipに関する社員の悩みや相談に、最優先で個別に対応するよう心がけました。そうすることで、Salesforceに共感を示し、積極的に使い始める社員を1人、また1人と増やしていったのです。

そしてもう1つ、Salesforceの利用定着化を促進したのが、情報管理部の山本政晴氏によって進められた、入力および業務フロー作成の自動化です。

「たとえ情報を一元化すれば便利になると理解している社員でも、入力作業が複雑で面倒だと、なかなか積極的に使ってくれません。そこで、セールスフォース・ジャパンの担当者の方にサポートしていただきながら、日々繰り返し発生するような入力内容や文書の作成を自動化する仕組みを実装しました。また、業務フローを包括的に作成・管理できるSalesforce Flowの機能を利用して、1クリック入力なしでさまざまな情報を共有可能にしたところ​​、営業部署の利用が一気に拡大しました」(山本氏)

そうした努力と工夫の結果、Salesforceの利用が社内に浸透。従来は紙だった伝票の情報が電子化され、Sales Cloudで一元管理されるようになったことで、同社の業務は大きく変わりました。各案件に各種伝票の情報をひもづけ、さらにQuipの情報と連携させたことによって、営業・設計・製造・施工といった各部署の社員が、1人1台支給されたタブレット端末から、それぞれの業務において知りたい情報をひと目で把握できるようになったのです。当然、情報伝達の抜け漏れは激減し、仮に部署・社員間のやり取りで問題が発生しても、Salesforce上のエビデンスを示しながら建設的な議論で解決できるようになりました。

さらに、頻繁にやり取りする一部の既存顧客との間で試験的にQuipの利用を開始し、見積書や製作図面などを顧客が自らいつでも確認できる環境を整えました。これによって、顧客にとっての利便性が向上して高い評価を得ただけでなく、営業部署の対応時間も大きく削減されました。

「情報の更新があるたびに紙の伝票に印刷して関連部署に配る、という非効率的な業務が不要になったのをはじめ、SalesforceとQuipによってさまざまな業務の時間と手間が大幅に削減されました。それによって浮いた時間を、より生産的なお客様対応などに費やせるようになっています」(坂之上氏)

 
Salesforce導入1年後、売上増を実現
 
 
 
 

3. 導入1年後に売上131%、ノウハウを他社に提供する新たなビジネス展開も

経営数値の集計や把握においても、Salesforceは有効に利用されています。同社ではSalesforce導入以前、営業担当者が個々にExcelでまとめている売上などのデータを毎月集め、2~3時間かけて計算し、経営陣への報告資料を作成していました。それが今では、知りたい数字をダッシュボードでいつでもリアルタイムに確認することができます。

「単に集計・資料作成の手間が削減されただけでなく、数字の信頼性が格段に高まりました。以前の数字は個々人でまとめたものがベースだったので、正直なところ、本当に正しい数字なのか、判断できない部分がありましたから」(坂之上氏)

Salesforceによる業務改善の成果は、導入前後の各種経営数値の変化にも端的に現れています。導入前年の2018年を基準として、売上は2019年に131%、3年後の2021年に138%にまで向上。1人1時間当たりの売上も、2018年との比較で2019年に112%、2021年に106%となっています。また、課題の1つだった残業時間についても、2018年と比べ、2020年に45%削減、2021年に14%削減と大幅に短縮されました。もちろんこれは、コロナ禍の影響もあると考えられますが、業務効率化による残業の減少は皆が実感している、と久永氏はいいます。

さらに同社は、自社で多大な成果を上げたSalesforce活用のノウハウを他社に提供する、新たなビジネス展開を検討中です。山本氏は次のように説明します。

「情報の可視化と共有という、弊社と同じようなことで悩んでいる製造業の企業は、全国にたくさんあると思います。まだ具体化までには至っていませんが、弊社がSalesforceで培ったノウハウをAppExchangeとして提供することで、そうした企業の皆様のお役に立ちたい、と考えています」(山本氏)

Salesforce導入・活用の推進役として、知識ゼロからスタートし、積年の課題の解決を成し遂げた久永氏。Salesforceと会社への思いについて、最後にこう語りました。

「弊社はほんの6~7年前まで、社員20~30人という規模でした。そこから急成長して社員数と業務量が増えていった結果、部署間・社員間のコミュニケーション不全が目立つようになりました。そうした状況が、Salesforceで大きく変わりました。業務効率化で時間的な余裕が生まれたことによって、率先して周囲の社員の悩みを受け止めてサポートするリーダー的な人材が出てきました。当初は苦労しましたが、Salesforceを導入してよかったと心から思っています」(久永氏)

 
 
 
※ 本事例は2022年5月時点の情報です
 

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