ヒロセ電機株式会社

グローバルビジネス基盤の整備で目指す
製造業における販売計画の可視化とコラボレーション

ニーズとシーズをマッチさせる柔軟な生産/販売の連動へ

コネクタ専業メーカーとして、グローバル市場をターゲットにビジネスを展開するヒロセ電機。同社では、海外拠点を含むグループ全体のビジネス状況を共通基盤上で把握できる仕組みを整備すべくSales Cloudを導入。しかし、カスタマイズの多用などに起因して、利用が定着化しない課題に直面していました。そうした折、製造業におけるリピートオーダービジネスの可視化やコラボレーションの支援に特化したManufacturing Cloudが登場。早速、ヒロセ電機はその導入を決定しました。今回の導入では、前回の反省を踏まえ、日本の商習慣をベースにするのではなく、海外のビジネス慣習を逆輸入。各拠点間で適用すべき業務についての綿密な議論を行って合意形成を図り、利用に向けた意識付けにも取り組みながら、構築を進めるというアプローチをとりました。そうした後、同社では2022年4月にManufacturing Cloudを国内外の拠点に同時ローンチ。目下、その本格活用に基づく、様々な施策展開に関する検討が進められているところです。
 
 

1. グループ各社のビジネス状況を把握できる共通基盤を目指すも定着化に課題

 コネクタ専業メーカーとして知られるヒロセ電機。同社では、1937年の創業以来、長きにわたり、高耐圧、高耐振性、耐環境性などを要する厳しい利用環境下で利用できる産業用コネクタの供給を中心にビジネスを展開してきました。さらに近年では、そうした取り組みの中で培った技術をベースに、自動運転分野の技術革新やEV化の進展 進むモビリティ分野や、様々なデバイスと接続性が高まるスマートフォンやタブレットなどの新情報端末に代表されるコンシューマ分野、あるいはIoTやロボットの活用を核にスマート化が進む産業機器分野など、コネクタにまつわる新たなニーズを抱える多彩な領域をターゲットに事業を展開。同社のラインナップする製品は実に5万数千点を数え、国内はもちろんグローバル市場においても高い評価を受けています。事実、同社の売上の75%が海外の顧客との取引によるものです。
 そうしたグローバル規模のビジネスを支える体制として同社では、米国や欧州、アジア地域にグループの販社を置いているほか、生産拠点についても国内3カ所、および海外5カ所に自社工場を展開し、協力会社と一体となったモノづくりネットワークを形成しています。
 ヒロセ電機では、Salesforceを2016年に導入。「海外拠点を含むグループ全体のビジネス状況を共通基盤上で把握できる仕組みを整備すべくSales Cloudを日本発で導入し、海外拠点へと展開しました」とヒロセ電機の鎌形伸氏は語ります。
 当時、Salesforceの活用にあたり同社では、自社の要件を満たすために積極的にカスタマイズを施していくというスタンスで臨みました。例えば、Salesforceによって同社が管理したいと考えていた業務の1つに、製品が顧客に採用された後、顧客の生産計画に応じて繰り返し発生する注文にかかわる販売予測、いわゆるリピートオーダーの管理がありました。
 「しかし、カスタマイズのデザインが良くなかったこともあり、我々が実装した繰り返し注文に関する販売予測管理においては、ERP側の実績データとの連携ができず、結果、予実にかかわる評価がなされないという問題がありました。また、そもそもリード管理や顧客接点活動の管理など、Salesforceにおけるごく一般的な機能についても十分に使いこなせていないという状況があり、結果、定着化に課題を抱えていました」とヒロセ電機の田島賢一氏は振り返ります。もちろん、こうしたカスタマイズの多用は、Salesforceのアップグレードにも思うように追随できないという問題も引き起こしていました。
 
 
 
 

2. 海外拠点との間で議論を綿密に行い活用に向けた合意形成を図る

 そうした折、新たにリリースされたのが、製造業の繰り返し受注に対応した販売計画・販売予測機能を有し、ビジネスの可視化や営業および業務部門のコラボレーションを支援するManufacturing Cloudでした。これを受けてヒロセ電機では、早速、Sales CloudからManufacturing Cloudへの移行を決定。導入作業を進める運びとなりました。同社の懸念であったリピートオーダー管理についてもManufacturing Cloudの標準機能で対応が可能で、ERPの実績データとの連携なども容易に行えるようになっていました。
 「Manufacturing Cloudの導入にあたり我々が目指そうと考えたのは前活動を通じて浮き上がった課題を克服するため、サービスに実装されているプロセスを標準採用しながら、全拠点での活用を確実に浸透させていくことでした」と鎌形氏は強調します。それに向けたアプローチとして同社が採用したのは、前回のように日本発ではなく、海外の各拠点との間で適用業務についての議論を綿密に行って合意形成を図り、利用に向けた意識付けにも取り組みながら、環境構築を進めていくという方法でした。
 「具体的には、コロナ禍もあって議論の場はリモート会議ということになりましたが、約80名にものぼる国内外の各販社のメンバーとの間で、十分な時間をかけて打ち合わせを重ねました。そこでは、リピートオーダービジネスにかかわる部分はもちろん、例えばリード管理や活動管理、結果分析など、Salesforceの標準機能の活用にかかわるところについてもメンバー相互に意見を出し合い、検討を進めました」と田島氏は説明します。
 そうした取り組みを経て、ヒロセ電機では2022年4月に、Manufacturing Cloudを国内外拠点に同時ローンチ。国内拠点で610ユーザー、海外拠点で125ユーザーがすでに利用を開始しています。
 
 
 
 

3. 代理店の先にいる小ロットの顧客のニーズもしっかり把握したい

 ローンチ後、まだ間もないこともあって、現在のところ各拠点のメンバーが、Manufacturing Cloudの利用に“慣れる”ためのフェーズにあり、本格的な活用が各現場に浸透するまでには相応の時間を要するものとヒロセ電機では見込んでいます。そしてまずは、現場メンバーが自らの活動や案件にかかわる情報を、日々確実にSalesforce上に登録を行って、マネジメントがそれをチェックし、入力された内容をベースにアドバイスを行うなど、メンバーとの会話が活性化していくような“場”が整うことを目指しています。
 さらにその先には、Manufacturing Cloudの活用によって実現を目指すべき具体的な施策も描かれています。その1つが、代理店の先にいる顧客の把握。「現在、海外販社に加えて各国の代理店にもManufacturing Cloudを使ってもらっていますが、代理店から当社に対しては、複数の顧客の発注分が合算した形で寄せられており、当社からエンドユーザーの注文の詳細は見えません。そこで代理店からPOSデータを提供してもらい、それを当社側の受注案件と紐づけて分析し、個々の顧客をより深く広く理解できればと思っています」と鎌形氏は言います。大口の取引先だけではなく、代理店経由で購入いただいている小ロットの顧客ニーズにもしっかりと目配りしていくというのが、ヒロセ電機のカルチャーでもあります。
 
 「さらに少し先のビジョンになりますが、各製造拠点の生産能力を100%引き出すべく、各販社の販売計画と各製品の生産割り当てを最適に組み合わせつつ顧客に供給していくという、いわばニーズとシーズをマッチさせていくような取り組みも、Manufacturing CloudとSCMの仕組みの連携により実現していければと考えています」と鎌形氏は明かします。Manufacturing Cloudの活用によって拓かれる新たな世界に向けた同社の期待は、今まさに大きく膨らんでいるところです。
 
 
 
ヒロセ電機 イメージ
※ 本事例は2022年6月時点の情報です
 

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