明和工業株式会社

経営者&Salesforce担当者が
二人三脚で成し遂げたV字回復
導入3年で売上20%アップを実現!

顧客・案件・行動履歴の共有によって各種業務が大幅に効率化され、
売上予測の精度が格段に向上、新たなビジネス展開も視野に

法面工事を専門とし、福井県を中心に多くの公共工事・民間工事を手がける明和工業株式会社。その技術力は長年、業界で高く評価されてきました。にもかかわらず同社は、バブル後の公共工事の落ち込みなどにより、一時経営危機に直面。ビジネス不振の根本的な原因は顧客・案件情報を一元管理できていないことにあると考え、2016年、Salesforceの導入を決断しました。

 

経営者自らが定着化を推進し、社員も効果を実感し始めたことで、Salesforceの利用は徐々に拡大。ほぼIT未経験だった専任担当者は、導入・運用を裏で支える大黒柱へと急成長しました。そして、Sales Cloudを利用して顧客・案件情報を一元管理し、営業・工事・総務各部門の業務改革を続け、見事にV字回復を成し遂げたのです。経営者と専任担当者が二人三脚で取り組んだ、同社のSalesforce活用事例を紹介します。

1. 顧客・案件情報の管理はバラバラ、ビジネス状況が見えず、経営危機に直面

明和工業株式会社(福井県福井市)は、法面(のりめん)の工事を主な事業領域とする建設会社です。法面とは、道路建設等の切り土や盛り土によって形成される斜面部分のことで、豪雨による土砂崩れなどが多発する昨今、その工事は災害防除・復旧に欠かせないものとして需要が高まっています。その中で同社は、高い技術力をもって多くの公共工事・民間工事に携わり、福井県を中心とする北陸三県、京都府、滋賀県などで精力的にビジネスを展開してきました。そうした同社の企業活動は、業界で高く評価され、2020年度には福井県福井土木事務所長表彰を受賞しています。

 

ただ、1979年の創業から現在へ至る同社の道のりは、決して平坦なものではなかったようです。2012年に同社の経営を父から引き継いだ、代表取締役社長の土本謙吾氏はいいます。

 

「バブル崩壊後、弊社のビジネスの90%を占める公共工事にネガティブなイメージがつきまとうようになり、業界全体が右肩下がりになりました。そのため先代の社長は、複数の府県に拠点を構え、薄利多売の拡大路線を進めたのですが、決算では赤字続き。実は、私が社長に就任する少し前には、このままでは倒産、という状況にまで追い込まれていました」(土本氏)

 

そのような状況下で社長となった土本氏は、経営者の視点から改めて社内や現場を見渡し、さまざまな課題があることに気づきました。中でも看過できなかったのが、情報管理の問題です。顧客や案件の情報は、営業・工事・総務の各部門の担当者によって個別に管理され、部門間・社員間で共有されていませんでした。そのため、土本氏がビジネスの状況を把握するには、月1回の会議を待つしかありませんでした。しかも、各部門でそれぞれ作成されるExcelの会議資料は、売上などの数字が微妙に異なっていました。

 

「ある会議で営業担当者が『これは重要なので追いかけます』といっていたはずの案件が、次の会議の資料ではひっそり消えていたりするような状態でした。経営者としては、営業・工事のうまくいっている案件より、うまくいっていない案件こそ把握して対処したいのに、それをすばやく正確に知るすべがなかったわけです。会議資料を作成する時間や手間もかかり、どうにかしなければと痛切に思いました」(土本氏)

 
 
 
 

2. ほぼIT未経験の専任担当者が導入を推進、社員が効果を実感して利用が定着

ひとつの場所ですべての情報をリアルタイムに把握できるプラットフォームはないのか。そう考えるようになった土本氏は2015年、Salesforceと出会いました。目にした瞬間、これこそが自分たちの必要としているものだ、と確信したといいます。

 

「それで先代の社長と経営陣に『Salesforceを導入して顧客・案件管理をしなければ』と訴えたのですが、『年賀状ソフトの住所録でしてるやろ』といわれて……。反対の理由として、以前に工程・原価管理ソフトを導入したのに利用が定着しなかった、というのもありました。それでも、会社を変えるにはこれしかないという思いで説得し、2016年1月に導入に踏み切りました」(土本氏)

 

ITに詳しい人材が社内にいなかったため、土本氏は導入に先駆けて、Salesforce専任の担当者として中村妙子氏を新規採用しました。ただ、入社時の中村氏のIT経験は、面接の際、ExcelやWordでさえ自信を持って「使えます」とは答えられないレベルだったといいます。

 

「もちろん、Salesforceというものを聞いたこともなかったので、最初3か月間、Salesforceパートナー・株式会社タスク(石川県金沢市)の方からレクチャーを受け、その後は実際に作りながら、わからないところを自分でWeb検索して学んでいきました。1日かけてなにひとつ進まないことも多々ありましたが、社長が辛抱強く待ってくれて非常にありがたかったです。といっても、Salesforceの使い方を解説しているブログなどの情報はたくさんありますし、ある程度使えるようになるまで、それほど長い時間はかかりませんでした」(中村氏)

 

利用の定着化を図るため、中村氏は、たとえばSales Cloudの日報の項目に入力漏れがあるとデータを保存できないようにする、IT用語を社員にわかりやすい言葉に置き換えるなど、さまざまな工夫を凝らしました。なにもわからない状態で専任担当者に任じられた中村氏が、ほんのわずかな間にSalesforceをそこまで理解し、導入・運用を裏で支える大黒柱へと成長したのです。

 

一方、土本氏は、従来Excelで作成していた日報をSales Cloudに完全に移行するなどして、Sales Cloudを使わなければ仕事を進められない環境を整えました。中村氏はいいます。

 

「社長が率先して利用を促す発信をしてくれたので、私から社員にお願いすることは一切なく、Sales Cloudへの移行はとてもスムーズでした」(中村氏)

 

土本氏は、定着をなにより促進したのは、社員自身がSales Cloudの効果を実感し始めたことだ、と話します。データが蓄積されていくことで、それまで見えていなかった顧客のニーズや業務上の課題が見えてくる。そして、それが次のアクションと成果につながり、それを見て利用者が増える。そういう好循環が生まれたのです。

 

「情報を皆で共有することでいい結果が生まれるんだ、Sales Cloudは自分たちにとって便利なだけでなくお客様のためにもなるんだ、と現場が実感できたからこそ、定着したのだと思います」(土本氏)

 
 

3. V字回復を成し遂げ導入3年後に売上20%アップ! 「導入は当然。必要なのは経営者の覚悟」

同社の営業部では、顧客情報と、入札前のものを含めたすべての案件の情報をSales Cloudに入力。営業担当者は、入札前から各案件に対して活動を開始し、社内SNSのChatterも併用して行動履歴やノウハウを共有します。また工事部では、営業担当者の行動を確認して案件を円滑に引き継ぎ、工事の進捗や資材の納入状況を記録します。出張や有給休暇、遅刻早退などはすべてSales Cloud内で申請できるため、総務部はそれを確認するだけで業務を進めることができます。

 

しかも同社では、全社員がそうした業務を、会社から支給されたノートPCまたはスマートフォンで行っているため、外出の多い社員でも、以前のように帰社する必要はありません。その結果、導入3年後には残業時間が約20%も削減されました。

 

「それまで総務部は、申請書を1枚1枚確認しなくてはならなかったので、『仕事がすごく早く、楽になった』と喜んでいます。新型コロナウイルスの感染が拡大したときにも、Sales Cloud上に社員の体温を入力する『健康観察』という仕組みをすぐに作ったのですが、すでに皆が入力に慣れていたので、初日から問題なく運用できました。もともと全社員がモバイル端末を使っているので、コロナ禍によるリモートワークへの移行にもまったく抵抗はありませんでした」(中村氏)

 

経営面でもSales Cloudの導入効果は大きい、と土本氏はいいます。

 

「日々どの現場にどういう業者が来ているか、どんな資材が入ってきているかがわかり、売上予測の精度が格段に上がりました。売上はV字回復して導入3年後に約20%アップし、今も伸び続けています。

さらに、Sales Cloudには入札や業者の情報も蓄積されているので、どのエリアにどのぐらいの仕事があるかをひと目で把握できます。新規エリアを開拓していこうというとき、“ブルーオーシャン”がわかるというのは強力な武器になります」(土本氏)

 

新たに導入したCRM Analyticsを活用して競合各社の入札・経費率の傾向を割り出すなど、今後の展開にも大きな期待を寄せる土本氏。耳慣れない新たなツールを導入して、全社員にモバイル端末を配り、社内で長年当然とされてきた業務を根本から見直す。どれも簡単には実践できないことですが、土本氏と中村氏は「いや、それは当たり前では」と口を揃えます。その上で、土本氏はこう締めくくりました。

 

「倒産寸前の状態を経験したとき、現場の社員が“ひとりぼっち”で活動することが会社にとってどれだけマイナスか、情報共有がいかに大切かが身に染みて、Salesforceを使いこなさなければならない、と腹をくくった。やはり経営者のそういう覚悟が、導入を成功させるには必要なのではないでしょうか」(土本氏)

 
※ 本事例は2021年10月時点の情報です
 

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