2. 問題解決のためManufacturing Cloudを導入
非常に変化の大きい電気自動車市場。今、将来性のある分野として世界中の注目を集めています。そのため、リチウムイオンバッテリーの資源材料(リチウムやニッケルなど)は、特にここ数年、相場が急激に変動しています。
いうまでもなく製造業では、材料の相場変動を常に把握しながら、実態に即して資源調達・製造・値決め・販売の見通しを更新していくことが重要です。リチウムイオンバッテリーのように、材料相場が乱高下し、かつ材料費が全製造コストの3分の2という原価(資源)比率を占める車載電池事業においてはなおさらで、原価材料の相場を顧客売価に連動させることが行われています。消費期限がある材料や商品の特性上、需要を先読みした材料の買い置きや商品の作り貯めができず、リアルタイムで正確な販売計画を管理することが同社のビジネス成長を左右する重要な要素でした。
ところが、GX本部 DX推進部 DX企画G グループ長の大野卓人氏によると、同社の実情としては、1年に1回販売計画を立てるのが精一杯だったといいます。
「手順としてはまず、マーケティング部において自動車メーカー各社の担当者が、それぞれ販売する商品の見通し台数と前提となる材料相場/為替レートをもとに計算した単価をエクセルに入力します。次にとりまとめ役が、各担当者から上がってきたデータをエクセルマクロで集計します。その際にエラーが発生すると各担当者に確認し修正しながら、ようやく販売計画を作り上げ、経営管理部と生産管理部に提出します。ここまででも大変な作業ですが、提出先から『計画の相場条件が変わった』『生産キャパシティを超えている』などと指摘されると振り出しに戻ってしまう。実際、そういう手戻りが繰り返し発生するため、1年に1回の計画立案が限界で、ある意味”お祭り騒ぎ”になってしまい、1年に何回も見通しを更新するということ自体、不可能に感じていました」(大野氏)
そうした状況は、主に3つの問題によって引き起こされていました。まずは単価計算の属人化の問題。前述の通り同社のビジネスでは、材料相場の変動が激しく影響します。販売計画を作成するには、その時々の材料相場や為替レートをもとに単価を計算していきますが、相場条件が変われば再計算、という作業が発生します。しかし、その計算ロジックは、各担当者のエクセルだけで管理されていました。つまり、特定の人にしか入力・確認できないという難点があったのです。
2つ目は数量把握の問題です。自動車メーカー各社の担当者は全員マーケティング部に所属しているものの、通常業務で担当者同士が連携することはあまりなく、自分の担当車両の台数や商品構成のみを把握しています。そのため、各担当者から上がってきた台数の見通しが、実際のセル生産ラインに対してどれだけの負荷を与えるかは、全体の数量をとりまとめた後にしかわかりませんでした。たとえ生産キャパシティを超過していても、まとめた後にはじめて判明する状態だったのです。
そしてもう1つは、そのとりまとめ工数の問題です。とりまとめ役が、エクセルマクロで見通しを集計する際、各担当者の作成したデータに入力項目の抜け漏れなどのミスがあると、当然エラーとなり、担当者まで戻され再計算となります。そうした二度手間が多発、大きな負荷となっていました。
今までのエクセルによる年1回の予実管理では、同社のビジネスの拡大と、資源価格の乱高下に追従できなくなっていた、販売管理に関する課題。これらを解決するため、同社は2022年、製造業向けCRMであるManufacturing Cloudの導入に踏み切ります。もともと親会社のパナソニック ホールディングスでSalesforceを利用し、新しいppes社でも販売管理のできる仕組みが必要と考えての決断でした。