株式会社セールスフォース・ジャパンは、 お客様のテクニカルサポートご利用体験を飛躍的に向上させるため、Salesforce ヘルプサイトに自律型AIエージェント「Agentforce」を導入しました。これにより、お客様は24時間365日、パーソナライズされたサポートを即座に受けられるようになり、顧客体験(CX)の向上と業務効率化を同時に実現しています。Agentforceは、SalesforceのデータプラットフォームであるData Cloudと連携し、膨大な情報を基に迅速かつ的確な自己解決を支援します。
Salesforce ヘルプサイトは、多岐にわたるSalesfoce製品・サービスに関する膨大な情報を提供していましたが、その情報量の多さゆえに、お客様が必要な情報を迅速に見つけ出すことが困難という課題を抱えていました。従来のキーワード検索では、単に略語で検索しただけではなかなか求める情報にたどり着けないケースがありました。また、サポートリソースが限られる夜間などには、ヘルプサイトの情報を探すだけでは解決できない高度な問題への対応が昼間よりも困難になる可能性もありました。これらの問題は、お客様の自己解決を妨げる障壁となり、結果として不要な問い合わせの増加や、顧客満足度の低下につながってしまう懸念もありました。
Salesforceがどのようにサポートしたか
「自分で探す」から「対話で解決」へ 24時間365日、寄り添うAIが顧客体験を再定義
Agentforceの導入は、Salesforceヘルプサイトの顧客体験を根本から再構築しました。お客様は自然言語で質問するだけで、メニューをたどったり、ページを探し回ったりすることなく、会話形式で即座に的確なサポートを受けられるようになりました。
この変革の核となるのが、パーソナライズされた即時応答です。Agentforceは、Salesforceのデータプラットフォーム「Data Cloud」と連携し、ドキュメントやマニュアルなどの非構造化データおよび、顧客情報といった構造化データを統合・活用します。これにより、お客様のログイン状況に応じた担当CSM(カスタマーサクセスマネージャー)への情報連携や、お客様のご契約内容に合わせた対応など、一人ひとりに最適化された回答を生成します。
時間帯によるリソースの制約も解消され、Agentforceが24時間365日体制で顧客対応を行うことで、顧客体験は大幅に改善されました。さらに、単に質問に答えるだけでなく、状況を推論し、必要に応じてサポートエンジニアへ対話履歴を引き継いだり、お客様の要望に応じて問い合わせケースを作成したりといった柔軟なアクションも実行します。ユーザーの問題解決を効果的に支援するため、AIエージェントの対応範囲をまず主要なトピックとアクションに絞って設計することで、高い応答品質と運用効率を両立させています。これらの機能はすべて、「Einstein Trust Layer」の堅牢な機能とガードレールによってデータのプライバシーとセキュリティが保護されており、高い安全性と信頼性の上で提供されています。
AIにサービスマインドを教え「人間らしい対話」を実現するための裏側
導入にあたり、セールスフォース・ジャパンは、年間6,000万件以上のアクセスがあるグローバル版Salesforce ヘルプサイトでの先行導入で得た知見を積極的に活用しました。
そのアプローチの根幹にあるのが、常に最新で完全なコンテンツの維持です。Agentforceのパフォーマンスは質の高いコンテンツによって支えられており、ヘルプサイトのナレッジ記事だけでなく、社内のコンテンツ管理システムや製品カタログといった信頼性の高い情報源をData Cloudに取り込み、常に最新の情報に基づいた回答を可能にしました。ナレッジの原文は英語ですが、バックエンドのLLMがリアルタイムで翻訳することで、質の高い日本語サポートを実現しています。
次に重要だったのが、データとデザインによって、AIに「人間らしい会話」、すなわち「サービスマインド」や「感情に寄り添う対応」といったより優れた顧客体験を提供させることでした。例えば、お客様の状況に共感し、お詫びの言葉を示す対応を組み込むとともに、質問の種類に応じてアプローチを使い分けることで信頼性の高い回答を生成、自由回答形式の質問には会話の文脈も活用して関連性の高い情報を提供しています。さらに、緊急度が高いと判断した際には即座にサポートエンジニアへ転送します。なお、ライセンス、価格、他社情報など、サポートに関する技術情報以外の質問は、意図的に回答を制限しています。
このように、Agentforceは常に専門性と信頼性を維持しながら、お客様に適切な情報を提供しています。さらに、ローンチ後も継続的な最適化と品質管理を徹底しています。専門チームがツールを用いてリアルタイムで会話をモニタリング・分析し、従業員からのフィードバックもSlack経由で収集してコンテンツ改善に活用しています。その結果、70%以上の回答が「高品質」と評価されるなど、その応答品質は継続的に向上しており、このプロセスはAIを「トレーニングし、育てていく」ことの重要性を示しています。
セールスフォース自身がグローバルでAgentforceを導入・活用し、2025年7月時点で100万件超のサポートリクエストに対応して得た知見を製品開発に反映させ、お客様企業におけるAIエージェントの早期活用と成功を支援してまいります。
稲垣 巖カスタマーサクセス統括本部 テクニカルサポート本部長 常務執行役員, 株式会社セールスフォース・ジャパン
他社にはないSalesforce の価値
Agentforceのヘルプサイト導入は、セールスフォ-ス・ジャパンの顧客サポート体験と社内業務にも大きな効果をもたらしました。具体的な成果として、まず自己解決率が大幅に向上しました。グローバル版Salesforce ヘルプサイトでは、2024年10月導入以来100万件超のサポートリクエストに対応し、86%以上という高い自己解決率を達成しています。これは顧客満足度の向上にも直結しており、お客様に問い合わせ内容が解決したことをご確認いただいた割合(Customer Confirmed Resolution Rate)は約60%に達し、CSAT(顧客満足度スコア)は5段階評価で4.2を記録。パーソナライズされた対応が顧客ロイヤルティ向上に寄与していることを示しています。
社内の業務効率化とリソースの最適化にも大きな効果がありました。Agentforceが定型的な問い合わせを自動処理することで、サポートエンジニアはより複雑で高度な調査を要する高付加価値業務に集中できるようになりました。これにより、担当者はナレッジの増強や新製品に関するコンテンツ作成といった戦略的な業務に注力できるようになり、キャリア開発の促進にもつながっていると社内で評価されています。こうした自己解決率の向上と業務効率化は、サポートコスト全体の削減にも貢献しています。