
顧客によるセルフサービスとは
ヘルプセンター、ポータル、コミュニティを使って、セルフサービスによってケースを解決し、顧客体験を向上させる方法を紹介します。
ヘルプセンター、ポータル、コミュニティを使って、セルフサービスによってケースを解決し、顧客体験を向上させる方法を紹介します。
セルフサービスチャネルには、カスタマーサポートの最前線として重要な役割があります。オンラインアカウントの回復や注文状況の確認などのサポートが必要なとき、多くの顧客はサポートに直接問い合わせる前に、ヘルプセンター、カスタマーポータル、コミュニティを利用します。
この記事では、セルフサービスチャネルの設定と維持について、サービスリーダーが知っておくべきことと、セルフサービスソフトウェアでできることを紹介します。
セルフサービス(英語)とは、製品やサービス、ポリシーに関する簡単な質問の答えを、顧客自身ですばやく、簡単に見つけられるようにする方法です。主なセルフサービスチャネルには、ヘルプセンター、カスタマーポータル、カスタマーコミュニティなどがあります。
セルフサービスチャネルは、顧客と企業の双方にメリットがあります。顧客は、いつでも使えて便利なサポートチャネルとして、セルフサービスを好みます。実際に、簡単な問題ならセルフサービスチャネルを使うという顧客は61%に上ります。
出典:Salesforce、『コネクテッドカスタマーの最新事情』、2023年8月
また、セルフサービスが使えれば、顧客はコールセンターなどの、人を介したコストのかかるチャネルに問い合わせる必要がなくなります。セルフサービスチャネルを導入している企業では、平均で顧客の問題の約54%がセルフサービスチャネルで解決されています。これにより、サービス担当者は浮いた時間をより重要な仕事に費やすことができます。
出典:Salesforce、『カスタマーサービス最新事情』、2024年4月
パフォーマンスの高いサービスチームは、データとAIを活用して、優れた顧客体験を提供しながら、収益拡大とコスト削減を実現しています。詳しくはSalesforceの『第6版カスタマーサービス最新事情』をご覧ください。
それぞれのセルフサービスチャネルには、異なる重要な役割があります。
ナレッジ記事(英語)、ハウツー、よくある質問(FAQ)は、一般的なセルフサービスのコンテンツです。プロセスが多数のステップで構成されている場合は、流れがよくわかるように図や動画を作成してもよいかもしれません。
セルフサービスチャネルには、認証が不要なチャネル、認証が必要なチャネル、またはその組み合わせがあります。認証不要のセルフサービスチャネルでは、一般向けのコンテンツを共有します。このコンテンツは、製品やサービスのユーザー全員をサポートするもので、ユーザーがアカウントを作成する必要はありません。認証が必要なポータルでは、ユーザーがログインし、よりパーソナライズされた情報を受け取ります。たとえば、小売企業のアカウントでは、顧客がポータルにログインし、配送先の住所を更新したり、ロイヤルティのステータスを確認したりできます。
簡単に使えて、効率よく問題を解決できるセルフサービス体験を提供していますか?オンラインでセルフサービスのレベルを評価し、改善点を発見しましょう。
ヘルプセンター、カスタマーポータル、カスタマーコミュニティに必要な戦略は、それぞれ異なります。以下にベストプラクティスを紹介します。
まずは、サービス担当者向けの既存のナレッジ記事を、よくある問い合わせに再利用しましょう。たとえば、支払い情報の更新方法やデバイスの認証の設定方法といったトピックです。説明の文言をサービス担当者向けから顧客向けに変更します。
ナレッジベースを作成するときには、現時点で、または将来的に、人工知能がナレッジベースを利用する可能性も考慮します。ナレッジベースは、企業と製品に関する情報の最良のリソースです。そのため、ナレッジベースの記事は、AIが顧客の質問に回答する際に最適な情報源になります。
AIテクノロジーの分野では、AIの回答の根拠として特定のドキュメントやデータを使うことを「グラウンディング」と呼びます。ナレッジベースをグラウンディングに使用することで、AIは企業独自のビジネスが反映された、顧客の役に立つコンテンツを生成します。Salesforceは、これからAIを導入する企業向けに、AIのグラウンディング用にナレッジベースを準備(英語)するためのヒントを紹介しています。
ヘルプセンターのコンテンツが十分なアクセスを得られるように、検索用に最適化する必要もあります。検索エンジン最適化(SEO)チームと協力して、最適なキーワードを特定します。たとえば、地域の食品配達サービスなら「配達サービスの利用方法」といった語句が検索に多く使われているかもしれません。キーワードを決めたら、関連するナレッジ記事にその語句を取り入れて、アクセス数を増やします。
SEOに加え、ヘルプセンターのコンテンツにタグを付けて見つけやすくします。検索ボックスにキーワードを入力しても、検索結果がゼロでは顧客の不満が高まります。
ヘルプセンターではコンテンツを公開するのが一般的ですが、認証の導入にも利点があります。顧客がログインすることで、よりパーソナライズされたサポートの提供や、データにもとづいた関連性の高いリソースの共有が可能になります。また、閲覧したコンテンツをもとに、顧客に関する情報をさらに収集することも可能です。これにより、ターゲットを的確に絞り、顧客体験を個別化できます。
顧客の要望に対応できるように、先を見越して準備しておくことも重要です。最新の検索トレンド(たとえば「オンラインアカウントでの二要素認証の設定」など)に注目しましょう。Google トレンドやAnswerthePublic
のなどを参考にしてください。コンタクトセンターの分析をレビューし、サポートチャネル全体の新しいパターンやよくある問い合わせを発見します。
ヘルプセンターには、定期的な見直しが必要です。古くなったナレッジベース記事を削除し、関連性の高い、最新のリソースにリダイレクトされるようにします。
ヘルプセンターにチャットボットを導入して、サポートを強化します。ルールベースのボットであれAIボットであれ、サービスを効率化できます。チャットボットは最適なコンテンツを顧客に提示して、セルフサービスによる解決を支援し、サービス担当者の燃え尽き症候群を予防します。
カスタマーポータルで、セルフサービスはさらに快適になります。認証が必要なカスタマーポータルは、顧客データを使用して関連性の高い、個別化された体験を提供します。顧客はどこからでもポータルにログインして、パーソナライズされたコンテンツを参考に問題を解決し、思いどおりにアクションを実行できます。
個人情報は、安全なアカウントページに保管します。この個人情報は、ユーザーがログインした後にのみアクセス可能にする必要があります。セキュリティを強化するために、多要素認証を有効にしましょう。AIを活用して検索行動を分析し、顧客体験を継続的に調整します。顧客が簡単に製品やサービスの購入履歴にアクセスしたり、関連する記事やトピックを表示したりできるようにします。
すべてのコンテンツにわかりやすいラベルとタグを設定します。他のサポートチャネルへのリンクを追加し、ポータルの下部に「お問い合わせ」フォームを含めましょう。
カスタマーコミュニティは、仲間意識や協力関係を育みます。顧客はここに集い、製品の機能について意見を交換し、サポートし合います。SalesforceのServiceblazerコミュニティ(英語)では、サービスのプロが協力してベストプラクティスを確立しています。
成功しているカスタマーコミュニティを別の言葉で示すなら、「エンゲージメント」です。カスタマーコミュニティのエンゲージメントを高めるには、ゲーム要素を取り入れてみましょう。ランキングを表示して、顧客にディスカッションへの参加を促します。質問に答えた顧客はポイントを獲得し、累計ポイントに応じて、ランキングが上がります。また、コミュニティへの貢献度が高い顧客にはバッジを提供して、プロフィールに表示できるようにするのもよいでしょう。
カスタマーサービスチームは、ただ見守るだけではなく、積極的に会話に参加するようにします。サービス担当者に、専門知識の共有や質問、ディスカッションへの参加を促しましょう。顧客の発言を把握し、問題があればすぐに介入します。そうすることで、企業はコミュニティを通じてトレンドや潜在的な問題を発見できます。
重要なトピックについては、ディスカッションを公開するという選択肢もあります。その場合は、SEO対策のキーワードとタグを追加して、コミュニティが検索エンジンに登録されるようにします。
自動化とAIを取り入れることで、セルフサービスチャネルはさらに使いやすくなります。自動化されたワークフローで、ステップごとにガイダンスを提供し、顧客がアクションを実行できるようにします。サービス管理者は、このようにシンプルなカスタマーサービスの自動ワークフロー(英語)を作成することで、時間のかかるプロセスを効率化できます。バックエンドでは、AIが重要なインサイトと提案を発見し、情報を自動入力して、プロセスを動的に実施します。
たとえば、顧客がクレジットカードの盗難について報告したい場合は、顧客の画面に報告の提出方法や口座停止の手順が表示されます。
簡単に構築できるように、サービス担当者が顧客サポートに使うものと同じ自動化ワークフローを再利用します。その際、文言を顧客向けに変更しましょう。
AIチャットボットをセルフサービスチャネルに組み込むと、顧客にパーソナライズされたサポートを提供できます。AIチャットボットを利用する企業は増えています。サービス部門の73%が、AIまたはルールベースのチャットボットを提供しています。また、サービスの意思決定者の83%が、来年、AIへの投資を増やす計画を立てています。
チャットボットは、顧客からの問い合わせを最初に受ける窓口となります。チャットボットが質問に回答できない場合は、必要なデータを収集して、問い合わせをサービス担当者に引き継ぎます。サービス担当者は同じチャットセッションに入り、チャットボットの会話を引き継いで、1対1で顧客に対応して問題を解決します。
多くの場合、顧客はまずセルフサービスを使いますが、さらなるサポートが必要になる可能性は常にあります。顧客が電話サポートなどの他のチャネルに移る場合、つながるエクスペリエンスが重要になります。1つの画面でデータをすべて把握できれば、サービス担当者は中断したところからサポートを開始できます。サービス担当者が過去の記事とチャットの履歴を確認し、シームレスな体験を提供すれば、顧客が同じ情報を繰り返し尋ねられずにすみます。
データを全体的に可視化するには、セルフサービスチャネルと顧客関係管理(CRM)プラットフォームの連携が必要です。この連携により、チームは各種チャネルで顧客が行ったやり取りをすべて把握できます。チームはこのデータにアクセスして、顧客がどのチャネルから問い合わせても、一貫性のある体験を提供できます。そのため、オンボーディングからサポートまで、全段階で顧客ロイヤルティを高められます。
また、サービス担当者のナレッジ記事とワークフローを、顧客がセルフサービスチャネルで利用するコンテンツに組み込めるようになります。既存のプロセスを再利用するので、新しいコンテンツを作成する手間が省け、設定時間や管理コストを節約できます。
セルフサービスチャネルは、企業全体の事業戦略にとっても重要です。セルフサービスチャネルから収集したデータからは、よくある問い合わせのパターンを発見できます。セルフサービスチャネルを効果的に活用すれば、製品やサービスに対する顧客の考えを直接入手し、改善に活かすことができます。
セルフサービスのコンテンツとチャネルがどの程度顧客の役に立っているかを判断するには、プロンプトやアンケートを使って顧客からフィードバックを収集します。フィードバックを収集したら、Service Cloudのサービスインテリジェンスなどのアナリティクスを活用して、改善点を発見します。
次のような観点からセルフサービスチャネルの改善点を見つけます。
こうしたパフォーマンスは、顧客体験を改善する方法を示唆します。たとえば、ヘルプセンターサイトで顧客が答えを見つけるまでの手順が多すぎる(英語)場合は、タグ付けの戦略を見直します。タグが最適であれば、検索結果の先頭に適切なコンテンツが表示されます。必要な情報をすぐに見つけられれば、顧客満足度が向上します。
セルフサービスチャネルがあれば、顧客は質問の回答をすぐに見つけることができます。企業は、問い合わせの数を減らし、顧客満足度を向上できます。サービス担当者は、よくある問い合わせへの対応ではなく、重要な仕事に専念できます。これが、時間や場所を問わず、優れたカスタマーサービスを大規模に提供する秘訣なのです。