消費者向け(BtoC)マーケティングと企業向け(BtoB)マーケティングの違いは大きく2つあります。1つ目は、ターゲットが個人ではなく企業であるため、キーマンが複数名になること。選考プロセスも複雑で、キーマンごとに個別のマーケティング活動を行う必要があります。2つ目は、BtoBマーケティングによる案件発掘には時間がかかることです。長期的な視点をもったマーケティング計画を立案することが重要であり、さらにマーケティング施策を実施した後のフォローアップ活動までも計画しておく必要があります。

マーケティングの目的が新規開拓であっても、既存顧客内シェア拡大であっても、キーマンごとの個別アプローチと長期的な視点をもった計画が、企業向けマーケティングには欠かせません。

BtoBマーケティングでは顧客の関係者が複数存在しますが、それぞれへのコミュニケーションを脈絡なく個別にやっていては効率的ではありません。コミュニケーションを「点」として計画するのではなく、集合体へのコミュニケーションであることを意識した「面」として計画することが重要です。

点と面の違いについて具体例を用いて説明しましょう。
マーケティング対象となるA社には購買、設計、技術、製造、開発部門があり、それぞれに担当者がいます。マーケティング施策を実施する際にはそれぞれの担当者(ターゲット)ごとに訴求内容を変える必要があります。施策もターゲットや検討段階によって、広告、メール配信、Web誘導、DM送付、技術セミナー招待、など変化します。このようなターゲット別の訴求、マーケティング施策、時期という要素(点)を組み合わせた連続性のあるマーケティング計画が「面」のマーケティングです。BtoBマーケティングでは複数のターゲットへ複数の施策を、時期を変えながら実施することで、案件が発掘されます。

現在、BtoBマーケティングではアカウント・ベースド・マーケティング(ABM)という手法が注目を集めています。一般的なマーケティングでは不特定多数の対象に対してマーケティング施策を実施し、多くの候補から見込み客を絞り込んでいくアプローチでした。そのため営業部門では本当に獲得したい新規顧客ではないこともあり、マーケティングからの獲得見込みはフォローされないケースも多くありました。

ABMでは事前に営業部門とマーケティングを担当する部門でターゲットとする顧客企業を決めた上で、その顧客企業だけにマーケティング施策を実施するため、営業とマーケティング間での食い違いは発生せず、見込み客のフォローアップも迅速に行われます。適切なターゲットへ絞り込んだマーケティングのため投資に対する効果(案件発掘)が高く、BtoBマーケティング分野で採用が進み始めました。ABMを成功させるポイントは、部門を超えたデータ連携の実施と、対象顧客に対して「適切な情報」を「適切なターゲット」に「適切なタイミング」でコミュニケーションを行うことです。つまり売りたい顧客に対して「面」のマーケティングを実行するのです。ポイントとなるのはターゲット企業に関する情報量です。過去の商談履歴や現在の取引、担当部署のコンタクト先情報などターゲット企業についての情報が紐付いていれば、より精緻なABMが実施できるようになります。

かつて、顧客の詳細な情報をマーケティングが知るのはそう簡単ではありませんでした。顧客のことを知っているのは営業だったのです。ところが、顧客側が情報収集にデジタルを利用することが当たり前になってきました。誰もが、何かを知りたい・調べたい場合には検索エンジンを利用し、Webサイトから情報を得ています。デジタルマーケティングではアクセス履歴などの分析から得た情報をもとに、きめ細やかなマーケティング施策ができるようになりました。デジタルマーケティングツールの機能向上により、対象顧客に対して「適切な情報」を「適切なターゲット」に「適切なタイミング」でコミュニケーションすることができるようになったのです。デジタルマーケティングに力を入れ、見込み客獲得や既存顧客の取引拡大を実現して、成長する企業が次々と出始めました。

BtoBマーケティングでは、複数のキーマンに対してきめ細やかなコミュニケーションが効果的であることは理解しながらも、この施策を人がマニュアル作業で行うことは非常に手間と時間がかかるため、実施になかなか踏み切れないのが現実でした。その問題を解決するために登場したのが、マーケティングオートメーション(MA)と呼ばれるマーケティングツールです。マーケティングオートメーションは、その名前のとおりマーケティング業務における各種作業を自動化することができます。

これまで手間と時間がかかるとされていた「適切な情報」を「適切なターゲット」に「適切なタイミング」でコミュニケーションすることが、簡単に実現できるようになるのです。

マーケティングオートメーションでは、事前に設定するカスタマージャーニーマップと呼ばれるターゲット別のコミュニケーションフローをもとに、顧客が欲しがる情報をメールで提供します。メールやそこにあるリンクから訪問した自社ホームページの閲覧履歴をもとにスコアをつけ(スコアリング)、次に必要となる情報を自動で配信して、製品やサービスの理解を深めてもらい購買につなげていきます。この手法によって、部門や役職ごとに配信するメールを変えてより適切な情報提供ができるとともに、理解度や検討度合いに応じて適切なタイミングで適切な情報を提供できるようになります。情報の受け手である見込み客にとっては、必要な情報が必要なタイミングで提供されるため、問合せ先の候補として頭の中に残ります。
ここで重要なポイントが名刺情報の共有による対象顧客の情報量の充実です。営業部門は実際に名刺交換による対象顧客の役職や部門についての鮮度の高い情報を持っていますので、その名刺情報を共有できればより精度の高いマーケティングを実施することが可能になります。営業部の使用している顧客管理システム(SFA/CRM)と連携できるツールを選定することが、企業向けマーケティング成功のポイントになります。

このマーケティングオートメーションで効果をあげるためのポイントが3つあります。

  • ターゲット別のコミュニケーションフロー設計(カスタマージャーニーマップ)
  • コンテンツ
  • フォローアップのプロセス

ターゲット別のコミュニケーションフローを設計せずにマーケティングオートメーションを運用すると、常に全ターゲットに同じメールを配信するようなことになります。ターゲットへ適切ではない情報が届くことになり、メールの受信拒否につながるリスクも発生します。

提供する情報(コンテンツ)はとても重要です。コンテンツによって理解促進をするため、コンテンツの質と内容は十分に精査する必要があります。コンテンツ制作は販売促進やマーケティングだけでは作成できないため設計開発部門など社内の複数の部署によって作成されます。バーチャルなチームとして協力して効率的に業務を行うためコラボレーションツールの活用が有効です。
また、受け手にとって役立つコンテンツを提供することを常に意識することが欠かせません。そのため顧客の役職や部門が最新のものになっていることが重要です。営業部は異動や昇進などの情報が一番入手しやすいためSFA/CRMとマーケティングオートメーションが連携していれば顧客の情報が常にアップデートされ、最適なコンテンツの提供が実現できます。

フォローアッププロセスの準備は部門間をまたいだ調整ごとです。マーケティングがどのタイミングで見込み顧客を営業に渡すのか、営業はどのようにフォローアップするのかをあらかじめ決めておくことで、案件化できる率が高まります。この新しい取り組みを定着させるには、はじめは対象顧客を絞るなど、小規模からはじめることが、マーケティングオートメーション運用の近道です。

マーケティングオートメーション製品は数多くありますが、SFA/CRMと連携できる、コラボレーションツールが利用できるという点でセールスフォースドットコムのPardotが評価され多くの企業で活用が進んでいます。