製造業が「こと(体験)づくり」へと変化し、次世代も売上を拡大していくためには、バリューチェーン全体を「顧客視点」でつないでいく必要があります。これまでの「製品視点」から「顧客視点」へゲームチェンジをする、その第一歩は「顧客を徹底的に理解する」ことです。そしてその基礎となるのが顧客と接している「営業」の改革です。

製造業では、多品種化を伴う事業の拡大を効率的に進めるため、縦割りの事業部制が採られ、事業部ごとに営業部門が設置されています。商圏が拡大すれば、各拠点にも営業部が作られていきます。これは一般的な体制ですが、顧客視点でビジネスを見ると、この組織構造がマイナス作用をもたらす場合があります。顧客が課題解決のために、製品や地域ごとに話をする相手が異なり、自分たちの状況を最初から毎回説明しなければならないとしたら、顧客体験が著しく低下してしまうからです。

しかし、海外も含めて複数事業部/地域の営業部門がつながっていて、顧客情報やこれまでの対応状況、商談フェーズなどの情報を共有できる仕組みがあれば、顧客との接点が複数あっても顧客の状況や課題をきちんと理解した上で、迅速に対応ができるようになります。これをもう少し現実に近いケースで、詳しく見ていきましょう。

営業組織属人化のサイン

  • 「売れる営業が採用できない」と悩んでいる
  • 少数のスーパー営業に売上を頼っている
  • 顧客との取引やコミュニケーション履歴が残っていない
  • 新人営業が定着せず、ベテランが中心のまま
  • OJTという名の「かばん持ち」が唯一の教育方法である

そもそも、このような営業の「属人化」のサインが、貴社にはないでしょうか。冒頭の営業改革は、この「属人化」問題を解決するところから始まります。

製造業の営業は、顧客の要件を的確に理解し、最適な提案を迅速に行う必要があります。しかし、顧客の要求レベルは高いため、技術に対する高い見識が求められます。経験豊富なベテラン営業部員は社内の技術部門や関係会社との協力体制を構築し商談を進めていきますが、経験の浅い営業はそうはいきません。ベテラン営業だけに売上を頼る現状を打破すべく、新たなスーパー営業の採用を試みますが、人材不足の現代、そうそう良い人材が見つかるものでもありません。今いる人員で売上を拡大するには営業スキルの底上げを図るしかなさそうですが、果たしてどのような教育を行っているかというと、ベテラン営業の「背中を見て覚える」という前時代的な「OJT」しか行われていない。ベテラン営業のやり方は本人にしかわからず、全国でバラバラ、ブラックボックス化しています。結果、大手製造業は変革が進まず、中小製造業はノルマに追われる新入社員が疲弊し退職、定着しないという負のスパイラルに陥っている…。

この「営業組織属人化問題」を解決するのが、営業支援/顧客管理システム(SFA/CRM)を活用してブラックボックスを可視化し、顧客視点で「セールスをつなぐ」仕組みです。

製造業の営業活動では、新規顧客より既存顧客との取引が圧倒的に多いため、SFA/CRMなどは不要という考え方をする企業もあるかもしれません。しかし、SFA/CRMは、顧客プロファイルや購入した製品の情報だけでなく、引き合い情報、案件の進捗、案件を進めていく段取りのノウハウ、案件が成約となる確度、など、営業にまつわるすべての活動を「顧客」を軸に可視化できる仕組みなのです。これは、属人化して見えなくなっている営業活動をつまびらかにし、売れている営業が行なっている高いレベルで営業活動を標準化し、それをお手本とすることでスキルのバラつきをなくして営業力を底上げすることに活用できます。
さらにSFA/CRMは、社内外の関係者(例:マーケティング、販売代理店、調達、工場、メンテナンスサービス会社etc.)とのやり取りなど、「顧客」につながるすべての情報を管理することができるシステムです。すべての関係者がそれらの情報にアクセスできるよう設定可能なため、代理店販売が多い製造業でも顧客を徹底的に理解できる環境が作れます。つまりSFA/CRMの活用を進めていけば、ことづくりの製造業となるために必須な、貴重な顧客の声をあますところなく入手することができるようになるのです。
最近では、AIを活用して蓄積された情報を分析し最適な営業活動を提示するSFA/CRMも出てきました。ものづくりからことづくりの製造業へと変革を進めるために、まずは営業組織の属人化問題をSFA/CRMで解決する取り組みからスタートすべきでしょう。