セールス・カスタマーサクセスの連携強化で、売上に貢献する新たなカスタマーサポートへ
Service Cloudの活用で商談情報などを活用した問合せ対応を実現、
カスタマーサポート起点の商談化や各種KPIの把握・改善も容易に
統合コマースプラットフォーム「ecforce」の開発・提供で、モノづくりのビジネス全体を最適化する株式会社SUPER STUDIO。そのカスタマーサポートユニットでは、2020年から利用していた問合せ管理ツールを、2023年にService Cloudへと移行しました。その最大の狙いは、セールス部門やカスタマーサクセス部門ですでに利用されていたSalesforce製品へ統一することで、両部門との連携を強化することにありました。
その結果、セールス部門が入力・管理している商談情報などをカスタマーサポートでも利用することができ、問合せ対応をより円滑にさせることに成功。また、カスタマーサポートで得た情報を、新たな商談につなげることも容易になりました。さらに各種KPIをダッシュボードで可視化することで、問題が発生した際の改善も迅速化。売上に貢献できる「新しいカスタマーサポートのあり方」を追求する上で、重要な役割を担っています。
1. リモートワークの対応で情報管理ツールを急遽導入、しかし他部門との連携が課題に
2014年にITシステム事業からビジネスをスタートし、2017年に統合コマースプラットフォーム「ecforce」を正式リリースした株式会社SUPER STUDIO(以下、SUPER STUDIO)。事業は急成長を続けており、2023年12月には約1300ショップがecforceを導入しています。その基本コンセプトは「テクノロジーとデータを活用して“ビジネス全体”を最適化する」こと。情報格差の解消とマーケティングの民主化を図り、生産者がコト、モノの価値を情熱を持って磨き上げることに集中できる環境を作り出すことで、本質的な価値で戦える健全な競争環境を創出しています。
ecforceはSaaSで提供されているため、常に最新のトレンドを踏まえた機能がアップデートされており、事業者側の継続的な利用が売上拡大の鍵になります。そこで重要な役割を担っているのが、カスタマーサポートユニットです。
「ecforceの成長と共に、カスタマーサポートの情報基盤も変化してきました」と語るのは、SUPER STUDIOのカスタマーサポートユニット Dチームでリーダーを務める宮坂 史門氏。ecforceを提供しはじめた当初は、各オペレーターが受けたお問合せを各自でメモに残し、個別に情報を管理していたと振り返ります。
その後、2020年頃にはカスタマーサポート専用のツールを導入し、お問合せ管理や情報共有を強化。その背景には、コロナ禍でリモートワークが始まり、オンラインでの情報共有が急遽必要になったという事情がありました。「急な対応だったため、複数のツールをじっくり比較検討することなく、慌てて導入することになりました」と宮坂氏は振り返ります。
ツールの導入により、お問合せ対応の管理や情報共有が可能になった一方で、新たな課題も顕在化しました。当時導入したツールはカスタマーサポートユニットのみで利用していたため、セールス部門やカスタマーサクセス部門との情報連携が困難だったということです。
「ecforceを提供しはじめた当初は、導入ショップ数は堅調に伸びてはいたものの、今ほど機能やオプションの数が多くなかったため、カスタマーサポートに閉じたツールでも対応できました。しかし、導入ショップ数が急増し、提供する機能やオプションも増えていったことで、他部門との連携の必要性を痛感するようになりました。例えば、一つの企業様で複数のecforceアカウントをお持ちの場合、お問合せをいただいた際に会社名を伺っても、その方が同一企業内のどのショップ様のご担当なのか、その方が担当されるショップ様がどのオプションを導入されているのかなどを瞬時に把握できない、といったような事象が増え始めていました」。
このような問題を解決するには、セールス部門が管理している商談情報の共有が不可欠だと判断。これに加えて、カスタマーサポート側で得た情報をセールス部門やカスタマーサクセス部門にも伝達することで、アップセルやクロスセルにつなげたいという想いもあったそうです。
「すでにセールス部門では顧客情報や商談情報の管理をService Cloudで行っており、カスタマーサクセス部門も売上推移の確認や請求業務などでの活用を検討していました。そのため、カスタマーサポートユニットでも既存のツールからService Cloudへと移行すべきだと考えました」。
2. カスタマーサポートで月間約60件の商談化を実現、各種KPIの集計・活用も容易に
カスタマーサポートユニットでService Cloudの活用が始まったのは2023年2月。営業部門が管理している顧客情報や商談情報を、カスタマーサポートユニットでもそのまま利用できるようになった結果、問合せ対応が大幅に円滑になりました。
「ecforceで実現したいことはショップ様によって様々ですが、セールス担当者がService Cloudに記録した商談情報を見ることで、導入背景や経緯をその場で知ることができます」と語るのは、カスタマーサポートユニットで顧客対応を担当している望月 良平氏。ショップ様についてより詳細な情報を知りたい場合でも、誰がセールスの担当なのかが明確なので、直接本人に確認することも容易になったといいます。「その際、Service Cloudである程度の情報を把握した上で問合せできるので、素早く本題に入ることができます」。
一方で、お問合せ内容をセールス部門やカスタマーサクセス部門に伝達し、新たな商談につなげることも容易になりました。2023年10~12月には、カスタマーサポートが起点となった商談化数が、月間60件に達しているといいます。
このようにService Cloudへの移行は、従来のツールが抱えていた課題の解決に大きく貢献しています。しかし、導入メリットはこれだけにとどまりません。情報をService Cloudで一元管理することで、各種KPIの把握も迅速に行えるようになったと話すのは、カスタマーサポートユニットで顧客対応を担当している岡村 美紀氏です。
「以前は、メールで受けたお問合せの初回返信までの時間や受電率といった各種KPIを、スプレッドシートを使って手作業で集計していました。その作業を毎週月曜日に30分程度かけて行っていたため、ユニット内のミーティングは火曜日に実施していました。現在はService Cloudのダッシュボードを活用することでほとんどリアルタイムでの把握が可能なため、集計作業が不要になり月曜日の朝に前週分のデータを使ったミーティングを実施しています。メールへの初回返信時間が長かったり、受電率が低いといった問題が発生した場合でも、次の週にはすぐに改善策が打てるようになりました」。
これに加え、お問合せ内容に関する属性情報を紐付けることで、ショップ様の状況をより網羅的に把握できるようになったことも、大きなメリットだと岡村氏は指摘。このような属性情報を集計することで、ecforceの導入・活用においてショップ様がどこにつまずきやすいのかを把握しやすくなったといいます。
「例えば、情報不足で先に進めない場合には、FAQの情報を追加することで問題を解決できます。また機能面に課題がありそうな場合には、エンジニアに相談することもあります。このような対応も、精度の高いデータを活用しやすくなったからこそ実現したといえます」。
3. アンケート結果の共有でメンバーの意欲も向上
お問合せ対応が完了した際には、お問合せ先のショップ様へアンケートを実施しています。その結果はService Cloudに蓄積され、レポートが自動的に作成されるようになっています。
「このレポートを見れば、どのアンケートがどのお問合せ対応に紐づいているのかがわかるため、他のオペレーターへの高評価を見て『自分も頑張ろう』というモチベーションアップにつながっています」と語るのは、カスタマーサポートユニット Aチームでリーダーを務める西田 夏帆氏。これによってお問合せ対応の品質が向上し、ショップ様から高評価のフィードバックを頂く機会がさらに増えていくという、好循環が生まれているといいます。「このようなことも以前のツールでは気付くことができませんでした。今では高評価のフィードバックが94.6%に上っています」。
なお、Service Cloud活用と同時にAmazon Connectも導入されていますが、2つを組み合わせることでカスタマーサポートの最適化に大きく貢献していると西田氏は指摘します。
「電話システムをAmazon Connectに移行したことで、受電状況やオペレーター数の余裕などが、システマティックに把握できるようになりました。受電数に対してオペレーターが不足しそうな場合には、自動的にアラートが上がるようになっており、そのアラートはマネージャーや現場のオペレーターにも通知されます。そのため、マネージャーが指示を出さなくても、すぐにオペレーター同士で助け合えるようになりました。また、IVRやフロー分岐機能も活用することで、これまでカスタマーサポートが対応していた他部門への電話の取り次ぎも減らすことができ、受電率は以前よりも高くなっています」。
これら一連の取り組みによって、ecforceの導入件数が1,300ショップを越えるなかでも、カスタマーサポートの人員を大幅に増やすことなく、業務を円滑に進めることができています。
「Service Cloudならカスタマービューを強化できると導入前から考えていましたが、実際に活用してみた結果、期待以上の効果を上げることができました」と宮坂氏。Service Cloudは、Amazon Connectなど他のツールとの連携も容易なので、活用していくほど「痒いところに手が届く」サービスだと実感します。
「カスタマーサポートはコストセンターだと考えられがちですが、ここに集まるショップ様のお声は私たちにとって宝の山です。これを他の部門と連携しながらうまく活用すれば、新たな商談創出やプロダクトの開発・改善にも役立てられるはずです。今後もショップ様に関する幅広い情報の一元管理を進め、カスタマーサポートの可能性を広げていきたいと考えています。売上に貢献できるカスタマーサポートを実現する上で、Service Cloudは必要不可欠なサービスだと言えるでしょう」。