Agentforce Operationsプロセスエボリューションハンドブック:AIによるプロセス自動化を拡大する8つのステップ
一部のプロセスから測定可能な価値を生み出し、それぞれの成果を次の資金源とするリーダーのための実践的な運用ガイドをご紹介します。
一部のプロセスから測定可能な価値を生み出し、それぞれの成果を次の資金源とするリーダーのための実践的な運用ガイドをご紹介します。
Diane Roberts、シニアディレクター、エージェンティックソリューションリーダー
Husein Tambawala、エージェンティックプロセスオートメーションおよびインテリジェンス担当VP兼CCO
多くの企業が直面するおなじみの選択肢として、数年かけて評価と再設計を実施した後にAIを導入するやり方と、全社でAIモデルを急いで展開し成果を祈るやり方の2つがあります。そのどちらも、成果が生まれる前に行き詰まります。もっとも近道であり、Agentforce Operationsを活用しているチームが本番環境で実証しているのは、プロセスごとに一歩ずつ検証していくアプローチです。インパクトの大きいビジネスプロセスを1つ特定し、それをデジタル化してAIエージェントでオーケストレーションを行い、その成果を次のプロセスの資金源とします。
私たちの提唱するAIプロセスとは、まさにこのようなものです。つまり、最初から最後までAIエージェントと人間が協働するために再設計された、1つのビジネスワークフローのことです。大量の反復的なステップをAIエージェントが処理し、判断、関係構築、最終的な説明責任を人間が担います。価値を生む最小単位はプロセスであり、モデルやプラットフォームではありません。各プロセスは独自の過程に沿って進み、その間に価値が3つの段階で蓄積されていきます。第1段階としてワークフローのデジタル化による効率化、第2段階としてAIエージェントのオーケストレーションによる意思決定の向上、そして第3段階としてAI活用を前提としたAIファーストの設計が定着することによるバリューチェーン変革です。
次のようなことは、これまでは不可能でした。
AIプロセスは、AIエージェントが測定可能なビジネス価値を実証する場となります。
Agentforce Operationsを活用してこの8ステップの取り組みを実践しているSalesforceのお客様は、Agentforce Operationsの成熟度ジャーニーの各ステージで具体的な成果を実感しています。まず、ワークフローをデジタル化する最初の60〜90日で15〜20%の効率化を達成し、AIエージェントがオーケストレーションを担う60〜180日で40〜60%の効率化、AIを前提とした設計が定着する1〜2年で70〜95%の効率化を実現しています。
あるエネルギー企業は1つのインボイス検証プロセスに対してAIエージェントが実行する約40のステップを追加し、何千万もの年間コスト削減を果たしました。また、あるエレクトロニクスメーカーは、在庫保留期間を1日短縮しました。どちらの事例も、適切なプロセスを選定し、実際に導入することで成果を得ています。数年がかりの変革プログラムを実施した成果ではありません。
本ハンドブックでは、そうした考え方を実践に移すための方法を説明します。Agentforceで最初のAIプロセスを立ち上げる方法、それらのAIプロセスにガバナンスを適用する方法、本番環境への最初の導入から企業全体に利用を拡大する方法を紹介する際の実践的な手順書として活用してください。
いずれのステップも、すでに戦略的な方向性が合意されていることが前提です。ここでの主眼は、あくまで「実行」にあります。つまり、何を、どのような順序で、誰を責任者として、どのような成功の測定基準の下で実行するかです。
プロセス単位でAI活用を進めることが急務になっていることの背景には、マーケットからの3つの圧力があります。
コスト削減への圧力。グローバルな競争力と各種規制の遵守が求められる組織の運営負担は増大し続けています。法規制や業務の複雑さには、雇用を増やすだけでは対応しきれません。AIによる効果はすでに現れ始めています。McKinsey社の2025年版『The state of AI』レポート では、回答者の大多数が、多くのビジネス機能において生成AIでコスト削減を達成したと報告しています。コスト削減に成功したビジネス機能の内訳は、サプライチェーンが61%、サービスオペレーションが58%、戦略と財務が56%です¹。その一方で、80%以上の組織がそうした成果を企業全体のEBIT(利益)の向上にまだ反映できていないと報告しています。機能レベルのケースはすでに実証されています。次のステップは、AIをプロセス全体に拡張することです。エージェント型システムは、まさにそのために生まれました。
効率化の限界。従来の自動化で実現できたのは、それぞれのステップを個別に最適化して、業務効率を段階的に高めることまででした。一方、エージェント型システムは、プロセス全体にまたがる複雑なマルチステップの推論を扱うことができます。McKinseyのレポート によると、ワークフローの一部でも抜本的に再設計した組織は、生成AIを使用している組織の21%に過ぎません。そのうち、自社のロールアウトを「成熟している」と評価した経営幹部はわずか1%です²。限界を生んでいるのは、テクノロジーではありません。ほとんどの企業がまだ業務の再設計を済ませていないという現実です。
市場投入までの期間短縮への圧力。スピードは今や構造的なアドバンテージとなっています。ガートナー社の予測 では、2028年までに、顧客の少なくとも70%が対話型AIインターフェース³を通してサービスジャーニーを開始します。その結果、かつては数日かかっていた引き継ぎが数秒に短縮され、その時間短縮効果が上流のあらゆる隣接プロセスに波及するとされています。
もっとも重要なパラダイムシフト。もっとも重要なのは、個々の作業の効率を測定することから、損益計算書(P&L)への影響を測定することへのパラダイムシフトです。ステップ1から3で戦略の枠組みを設定し、ステップ4から8でそれを実行に移します。そのために、イノベーションを推進する人材を早期に見つけることが重要です。そうした人材が、組織が準備を進める原動力となります。
³ https://www.gartner.com/en/articles/customer-service-ai(英語)
| ステップ | 名前 | 主な成果 |
|---|---|---|
| 1 | 戦略面でのすりあわせ | 対象範囲、成功基準、ロードマップが定義されたブループリントポートフォリオ |
| 2 | 組織的な受け入れ態勢とコミュニケーション | 社内向けブランド、コミュニケーションプラン、イノベーションの推進役となる人材の関与 |
| 3 | 拡張のためのプロセス選定と価値の測定基準の設定 | 3〜5件の承認済みプロセスとスコアカード、フロー、定義された不実行(No-go)リスト |
| 4 | 最初の成果の実証(Agentic Day 1) | 本番導入済みで、ROIダッシュボード、精度目標、公開済みの成功事例が整備され、センターオブエクセレンス(CoE)が設立されている |
| 5 | ロードマップの見直しとオペレーティングモデルの再構成 | 将来のオペレーティングモデルを含む経営幹部の承認済みのロードマップと本番運用で得た学びによって進化したCoE |
| 6 | ロードマップの実装、拡大、効果測定 | CoEの発展、拡大されたブループリント、稼働中の経営幹部向けROIダッシュボード |
| 7 | 価値の認識と拡大 | CFO向けの価値のスコアボード、成功事例、次のフェーズに向けて見直したロードマップ |
| 8 | エージェント型プロセスの拡大とオペレーティングモデルの進化 | AIファーストの企業文化、自律的に持続するCoE、全社的なエージェント型パターン |
Agentforce Operations(AFO、旧称Regrello) — ミドルオフィスとバックオフィスの複雑なプロセスの自動化とオーケストレーションを目的としたSalesforceのAIファーストプラットフォーム。
Agentic Day 1 — 1または2件のユースケースにAIエージェントを初めて本番導入した日。
ブループリント — Agentforce Operationsの用語。開始と終了が設定された構造化された、再利用可能なプロセステンプレート。一度公開されると、ワークフローのインスタンスが稼働するためのマスターパターンとなる。
センターオブエクセレンス(CoE) — AIプロセスの構築と拡張の基準、ガバナンス、ベストプラクティスを設定する社内チーム。
目標:AIプロセスポートフォリオを組織の最上位のビジネス目標に結び付ける。
ブループリントの選択や、何かの構築を始める前に、次の問いへの明確な答えを得る必要があります。すなわち、次の12か月間でどのビジネス成果がAIプロセスによって変化するかです。ここで下す判断によって、対象範囲、成功基準、業務を前に進めるストーリーが決定します。
以下が、Agentforce Operationsを活用する最初の90日間のイメージです。ステップ1は、テクノロジーに関する決定を下す前にスタートします。まず、どのビジネス成果を改善したいのかについて認識を一致させます。
実行アプローチ:
目標:組織が変革に向けて動く準備を整え、実行を開始する前に、社内向けのストーリーを作成し、推進役となる人材を見つけ、経営陣の認識を一致させ、評価や報酬の仕組みを見直す。
組織が動き出す準備ができていないと変革は行き詰まります。ステップ2では、人的インフラを構築します。それは、ストーリー、推進役となる人材、経営陣の認識の一致です。ステップ3とステップ4で実行を開始するまでには、組織がすでに適切な方向に向かっていなければなりません。
実行アプローチ:
目標:AIエージェントを活用することで実際に測定可能な価値が生まれるプロセスを特定し、その後に続くすべての基盤を構築する。
考えられるすべてのプロセスを選定しようとしているのではありません。ここで見つけるべきは、取り組む価値があるほど難易度が高く、確実に成功を収められるほど現実的であり、全社展開できるほど強力な支援体制が得られるプロセスです。目標は測定可能なビジネス価値を生み出す実際の本番導入であり、POC(概念実証)ではありません。このステップに進んだプロセスの候補の中には最終的に選ばれないものがあります。むしろ、それが本来の姿です。
実行アプローチ:
目標:最初の本番環境への導入で即時かつ測定可能な効果を生み出すことで、組織の信頼を獲得する。
Agentic Day 1はロードマップの基盤です。ここで導入したプロセス、記録した成果、そして獲得した信頼が、その後に続くすべてに対する投資と推進力につながります。30〜60日という期間は、特定の条件が満たされていることを前提としています。具体的には、対象プロセスに適合する事前構築済みのAFOまたはパートナーのブループリントが存在すること、システム連携の範囲が限定的であること、そしてソースシステムとのネイティブコネクターが利用可能であることです。ほとんどの企業で、すべての候補がこの3つの条件を満たすわけではありません。それは想定内です。ステップ3のポートフォリオアプローチを使用して、これらの条件が揃う候補を見つけてください。条件が揃わない場合は、最初の導入期間を長めに設定し、ギャップをステップ5で検証します。
実行アプローチ:
目標:プラットフォームで実際に何ができるのかを明確に把握し、あらゆるレイヤーにわたる責任の所在を定義し、現実に即したロードマップを作成する。
ステップ4では、概念の有効性を実証しました。ステップ5では、全体像に向き合います。すなわち、プラットフォームの実際の機能と限界、サポートモデル、そして拡張に向けたオペレーティングモデルの転換です。このステップでよくある失敗は、責任の所在、システム連携、サポート体制に関する未解決の課題を残したままロードマップを策定してしまうことです。そうした課題は事前に解決しておく必要があります。
実行アプローチ:
目標:実証済みのワークフローを規律あるアプローチで拡張し、「そのコストを上回る価値を生み出しているか」という基準で意思決定を行う。
ステップ6は、プログラムが複利的に成長するか、それとも行き詰まるかの分岐点です。拡張に成功するチームは、常に価値創出を判断基準にし、実際の支援を得ながらビルダーコミュニティを構築します。そして、ガバナンスとコンプライアンスについては、後付けの検討事項ではなく、設計段階から組み込むべき構造上の要素として扱います。
実行アプローチ:
目標:実証された成果をもとに、継続的な投資を引き出す。
ステップ7は、これまでの取り組みが次の段階を推進する根拠となる段階です。これまでのステップで得られた成果も、それを明確に伝え、ビジネスケースと結び付け、ロードマップの次のフェーズを推進する根拠として使用できて初めて、その価値を発揮します。
実行アプローチ:
目標:ガバナンスとセキュリティ上のギャップを解消し、拡張に移行する準備を整えたうえで、中央集約型の実行から分散型のイノベーションに移行する。
どのフェーズであっても、開始前に基盤がエンタープライズレベルの使用に耐えうる状態にある必要があります。拡張後に問題が見つかると、拡張前よりもその対応がはるかに難しくなります。ステップ8は、3つのフェーズに分けて進められます。
Agentforce Operationsの利用拡大は、一度に実現するものではありません。規律ある、的を絞った戦略を通じて築き上げていくものです。個々のプロセスに体系的に焦点を当て、価値を着実に積み上げながら実証し、それぞれのプロセスが持つ価値を最大限に引き出すことで、組織は持続可能な前進の道筋を描くことができます。
最終的に、AIファーストのオペレーティングモデルは、この8つのステップを繰り返し実行し、中核となるビジネスモデルが根本的に進化するまで継続することで築き上げられます。
最初のAIプロセスを選定する準備はできていますか。ワークショップにぜひご参加ください。1日で体験できるSalesforceの無料Agentforce Operations概念実証ワークショップ では、お客様のチームが対象範囲の設定と構築を行い、実際に使えるプロトタイプを手に入れることができます。
Agentforce Operationsの詳細は、salesforce.com/agentforce/operations/ をご覧ください。