LY Corporation執行役員兼CIO、服部典弘氏の写真
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1億700万人にトップクラスのサービスを提供する、LINEヤフーのエージェンティック エンタープライズ戦略

執行役員CIOの服部典弘氏に、LINEヤフー株式会社(以下LINEヤフー)がどのようにAIエージェントを活用してパーソナライズされた体験を拡張し、Slackを活用してAIや従業員同士の連携を進めているかをうかがいました。

拡張可能なアーキテクチャにもとづくエージェンティック エンタープライズ構想

間違いなくAIです。現在、私が最優先で進めているどの取り組みも、LINEヤフーが「人間とAIエージェントが協働するエージェンティック・エンタープライズ」になるためのものです。当社のサービスが日常的に使われている日本において、人とAIが協働してサービスをさらに進化させていくことは、お客様からの大きな期待でもあります。

LINEヤフーは日本の社会インフラの一つであり、世界の顧客数は1億700万人に上ります。つまり、私たちが下す決断の一つひとつが社会に広範な影響を及ぼすということであり、その責任の重さに私も身が引き締まる思いです。

私の担当するチームが担うテクノロジーやシステムは、メッセンジャーやメディア、コマースといった不可欠なサービスをお客様へお届けする上で土台となっています。

お客様に価値あるエクスペリエンスを提供するには、まず従業員の生産性とスピードを向上させる必要があります。

現在、私の重点分野は主に以下の3つです。

  • IT投資からAI投資へのリソースの移行。当社では、IT総支出の中で既存システムの維持コストを削減し、その分の投資をエージェント型AIへ振り向けようとしています。予算を無制限に追加し続けることはできません。そのため、AIを活用しながら投資をシフトすることが非常に重要です。
  • ビジネスプロセスをAI対応に再設計。私もLINEヤフーに在籍して長いので、ボットから生成AI、そして現在はAgentforceを活用したエージェント型AIへという発展段階を見てきましたが、今最も重要な仕事は「土壌を耕す」こと、つまりAIを効果的に使用できるように基盤を整備することです。
  • エージェント型モデルで生産性を拡大。人間はリソースに限界があるため、限られた数のお客様にしかパーソナライズされた体験をご提供できません。コードを書くにしろ、請求書を処理するにしろ、その量には限界があります。AIエージェントの導入によって、あらゆるビジネス部門の対応能力を拡張できます。

AgentforceのようなAIエージェント機能が登場する以前は、当社にとって非常に実現が難しい課題でした。

当社は大規模で多様なお客様ベースにサービスを提供していますが、先ほど申し上げたように、従業員数は限られています。つまり、高度にパーソナライズされたサービスは限られたお客様にしか提供できなかったのです。それ以外の数百万人のお客様も当社にとって大切なお客様ですが、提供できるのは画一的なサービスや一括配信型のコミュニケーションに限られていました。

それが今では、Agentforceのおかげで一部のお客様に限られていた顧客体験をすべてのお客様に拡大できます。当社の目標は、一部のお客様向けに提供してきたサービスをAgentforceに学習させ、その顧客体験をこれまで提供できていなかったお客様にも広げることです。

その一例が、ショッピングモールプラットフォームのYahoo!ショッピングです。このプラットフォームには出店者を支援する営業担当者がいますが、営業リソースには限りがあり、すべての店舗オーナーに手厚いサポートを提供することはできませんでした。将来的には、店舗の規模や所在地を問わず、必要とするすべての出店者にそのサポートを広げられるようになると、Agentforceに期待しています。

当社のような規模でも、エンジニアリングリソースが無限にあるわけではありません。社内システム開発チームのリソースは、一般的なAIツールをカスタマイズすることに使うのではなく、LINEヤフー独自のビジネスロジックの開発に集中させたいと考えています。社内のナレッジこそが真の競争優位性をもたらすからです。

そのため、信頼のおけるテクノロジーパートナーがすでに提供しているソリューションを活用するほうが、コスト効率の観点からも最善の選択と考えています。

長年利用してきたSalesforceは、自然な流れで最初に検討したプラットフォームでした。社内で使い慣れている基盤にAgentforceを組み込むことで、短期間での導入と、信頼ある既存基盤の上でのスムーズな構築が実現しました。

AIの重要性は、すでに会社全体で共通認識となっていました。また、多くのチームがSalesforce Platformを実際に活用してきた経験もありました。当社のCustomer 360全体がAgentforce Service上で稼働しており、MuleSoftを使用して自社開発のテクノロジーとSalesforce CRMを連携させているため、このテクノロジーに対する信用がすでにありました。

もう1つの重要な要素は、CRM内のAIエージェント機能に関するSalesforceのビジョンと方向性が、当社の企業戦略と一致している点でした。テクノロジーパートナーのロードマップが自社の達成したい目標と一致していれば、より迅速に行動できます。経営陣は、AIを迅速に導入するには、データ、アプリケーション、顧客業務を連携させるプラットフォームが必要だと理解していました。

AIエージェントをどの業務から導入していくかを決める際は、必要な時間やコストを基準にしながら、AIが人の業務をどれだけ代替できるかを見極めていきます。簡単な例が、カスタマーサポートの応答時間です。当社が運営するサービスは100を超えており、カスタマーサポートに関連するナレッジとポリシーのドキュメントは500以上あります。ピーク時にはお問い合わせ件数が急増し、担当者にも重い負担がかかります。すべてのシステムやドキュメントを検索するのに時間がかかり、膨大な件数をさばききれません。

Agentforceを導入すると、応答時間が大幅に短縮される可能性がありました。スピードは、カスタマーエクスペリエンスの質を左右する重要な要素です。迅速で正確な対応を受けたお客様は、1回のやり取りで満足していただけることが多いのです。

ただし、これは人をAIに置き換えるということではありません。社内に向けて明確に伝えたのは、「AIは私たちの仕事を奪うものではない」ということです。むしろAIは、私たちが時間的制約のゆえに手が回っていなかった業務を引き受け、強力にサポートしてくれる存在なのだ、というメッセージを繰り返し伝えたことで、現場で働くメンバーの不安を払拭することができました。

カスタマーサポート向けのデータ基盤はすでにSalesforce上に構築され、社内システムとも統合されていたため、AI主導のサービスに必要なコンテキストをすぐに活用できました。カスタマーサポートは、当社の業務の中で最も標準化が進んでいるプロセスの一つであり、AI導入をスタートするのに最適な領域です。

プロセスが標準化されていない業務からAI導入を始めてしまうと、AIが作業を代行してくれて生み出された時間で何をすべきか、が明確になりません。

たとえば、AIでエンジニアの業務を支援した場合、その効果は人によってバラバラになります。ある人はコードの品質向上に時間を使い、ある人はリリースのスピードアップに、また別の人はドキュメントの改善に時間を使うといった具合に、効果が分散してしまう可能性があります。

カスタマーサポートは違います。手順と品質基準が明確に定義されているため、Agentforceの影響を測定しやすくなります。人間の作業負荷が減少し、応答時間が向上します。

率直に驚いたのは、よくあるお問い合わせ対応の多くが、導入当初から、人間が直接対応しなくてもAIで十分に解決できるものだったということです。

FAQエージェントを構築するために、すでにSalesforceにある当社の豊富なデータナレッジベースを連携させました。これにより、Agentforceはチャットでお客様に対応する際に、製品情報、ポリシーに関するFAQ、ブランドボイスを参照できるようになりました。今では、ユーザーから問い合わせが届くと、Agentforceが内容を推論し、信頼できる情報にもとづいて回答を生成します。Agentforceの出力は非常に信頼性が高く、一次対応の段階で問い合わせの80%を自律的に解決できると予測しています。

特に印象に残っているやり取りがあります。亡くなったご家族のアカウントを削除したいというお客様からのお問い合わせでした。Agentforceは、アカウント管理に関するお決まりの指示を返すのではなく、最初にお悔やみの言葉を提示しました。私たちがAIに「このような場合はお悔やみを言うように」とプロンプトで指示していたわけではありません。AIが自律的に共感を示す反応をしたのです。今でも、そのやり取りを思い出すと胸が熱くなります。この一件はサポートチームに、このテクノロジーが単なる自動化ではなく、実際に一緒に働ける存在であることを示してくれました。

SlackのAIエージェント機能はすぐに浸透しました。Slackは、まさにLINEヤフーの業務の中心にあります。全従業員が主要なコミュニケーションツールとして使用しているため、世界中のチーム間で簡単にコラボレーションできます。私自身、1日中Slackを使用しています。オンライン会議に参加していない時でも、Slackにはつながっています。

当社はすでに多くのSlack AI機能を使用しており、導入率は非常に高くなっています。たとえば、スレッドサマリーやチャンネルサマリーはほぼ全員が活用しており、会話の流れを把握する時間を大幅に短縮できています。

同時に、その影響も慎重に測定しています。Slack AIによって軽減された作業量をアクションごとに計算し、その結果を集計して、AIと人間の作業の違いを可視化します。

Slackは長年インフラの一部として機能してきたため、社内でROIについて議論することもなくなりました。もうSlackなしでは業務が成り立たないのです。

Agentforceはリクエストを通じて推論し、信頼できるコンテキストを使用して応答を生成します。Agentforceの出力は非常に信頼性が高く、一次対応の段階で問い合わせの80%を自律的に解決できると予測しています。

服部典弘氏
執行役員CIO, LINEヤフー

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