第1章:データ変革とCDP導入のためのビジネスケース構築法
Salesforce Marketing Cloud戦略担当SVP
Salesforce Marketing Cloudデータ&ID担当VP
新たなデータ変革に着手する際は、明確な目標が必要です。そんなことは当然のことだと思われるかもしれませんが、世界有数の大手企業ですら、明確な目標を設定しないままデータ変革に乗り出し、困難に直面しています。それだけでなく、CDPを導入するだけで具体的な成果が得られるだろうという誤った考えを抱いている企業が後を絶ちませんが、実際はそれほど簡単ではありません。
時代の一歩先を行くためには、明確な目標とKPIフレームワークの設定、そしてデータの連携が必要です。これらが、デジタル変革の導入をスムーズに開始するための土台となります。
明確な目標の設定
テクノロジーは、ビジネスに新しい優れたツールをもたらしますが、どんなに素晴らしいツールでも、導入にあたっては測定可能な目標を設定し、ビジネス戦略に直接結びつけることが必要です。
CDPを導入する企業はこぞって「オンラインで顧客を絞り込むために有効なツールが必要だ」と言いますが、それは具体的で測定可能な目標とは言えません。
導入の成功に役立つ明確な目標の例を挙げましょう。
- 顧客のサイト滞在時間を20%増加させる
- 顧客セグメントを細分化し、ビデオ広告のコンバージョン率を30%増加させる
- 特定のオーディエンスセグメントに属する訪問者全員にパーソナライズされたコンテンツを提供し、コンバージョン率を50%増加させる
適切なステークホルダーに相談
目標を設定したら、適切なステークホルダーに業務を割り当てます。主にメディアチームが使用するためのソフトウェアの購買を、ITチームが担当してしまうと、うまくいきません。メディアチームにJavaScriptプログラミングのことがわからないように、ITチームにも広告戦略のことはわからないのです。適切なチームに業務を依頼し、ビジネス成果に直結する明確なKPIを設定して、データ変革に取り組みましょう。まずは、ソフトウェアのROIを確認し、その機能をビジネス戦略全体に統合してください。
戦略の立案に際しては、次の点を押さえましょう。
- データ変革の目標をすべてリストアップする。こうすることで、より具体的で統一された目標を設定できます
- 他社で実績のあるユースケースや事例に沿った目標を設定する
- 各目標は統計的または量的に測定可能なものにする
- 全員が目標の優先順位を共有する
パフォーマンスを追跡して目標を達成
測定可能な数値にもとづいた明確な目標を設定した後は、目標達成に向けて、パフォーマンスを着実に追跡します。データ変革の効果を追跡するには、その方向性に合わせた明確なパフォーマンスフレームワークとKPIが必要です。
KPIの具体例には、以下のようなものがあります。
- 潜在的な顧客セグメントを、3か月で10個から100個に増加する
- デジタル広告のノンヒューマントラフィックを6か月で35%から5%に低下させ、150万ドル節減する
- パーソナライズされたコンテンツを提供して、Webサイトの直帰率を25%低下させる
- 特定のSKUをすでに購入したことが判明している人をそれらの商品のクロスチャネルメッセージの対象から除外することで、潜在的なメディア費用を削減する
チームには、成功の目安を知るための明確なベンチマークが必要です。KPIを明確にすることで、具体的な指標に沿って進められるようになります。データ変革の効果が現れていることを確認できれば、投資継続の判断も下せます。
データ変革の成果を全社的なビジネス成果に結びつけることも非常に重要です。「セグメント化の改善」といったあいまいな目標では、経営陣の成功指標に関連付けることができません。データ変革の目標を上位のビジネス目標に関連付けることで、データ変革プロジェクトの効果を高めることができ、経営陣の理解に加えて予算的な支援を獲得できるでしょう。
ビジネス成果に関連付けた明確なデータ変革目標の具体例としては次のようなものが考えられます。
- 高コストの既存チャネル(テレビなど)の替わりに、コスト効率のよいデジタルチャネル(Instagramなど)を通じた顧客獲得を推進し、マーケティングの効果を15%高める
どういったユースケースにもとづいて目標を設定しているかを経営陣に伝え、データ変革目標のビジネス価値を理解してもらいます。データ変革の目標を、会社全体の目標と整合性を持たせることが非常に重要です。
第2章 では、データ変革プロセスにおけるスタッフの配置についてご説明します。CDP向けの強力なビジネスケースの作成を終えたら、次は連携すべき主要なステークホルダーを特定します。これが、優れたデータセンターの構築へ向かう第一歩です。