パート3

研究開発投資が利益を圧迫する中で期待される新たな収益モデル

 
 
 
 

電気自動車の投資と世界規模の競争が収益を圧迫

電気自動車のエントリーモデルは自動車メーカーにとっては不採算の場合が多いと言えます。一方で、利益を確保できる価格設定のモデルは、多くの消費者にとっては手の届かない存在です。そのような中で、環境規制により自動車メーカーは電気自動車に多額の投資(英語)をしています。北米・欧州の企業がサステナブルな交通手段に消費者を誘導(英語)していますが、採算を取れるかが焦点となっています。85%の企業は、電気自動車への移行に伴う研究開発費がこれから5年間の利益確保における最大のリスクとなると考えています。

電気自動車の最大のチャレンジは、従来の内燃エンジン車のように廉価かつ便利な車両を開発できるかです。”

匿名の回答者(マーケティングVP)
 

競争のトップに立つ中国のEV企業

中国の自動車メーカーが、市場への浸透、大衆市場向けの価格設定、製造コスト、技術イノベーションといった観点で、数年は他企業を先行しています。これが新たな競争上の脅威(英語)となっており、企業への圧力となっています。Forbes(英語)によると、「中国のEVメーカーが最も過小評価されているのは、欧州の約2倍の規模がある中国市場のスケールメリットを享受できることです。結果として、彼らは製造コストの大幅な削減が可能となり、イノベーションの速度を加速し、採算分岐点にいち早く到達できています。中国の電気自動車は、ベーシックモデルでも高度な通信や運転支援機能が搭載されています。」
 

電気自動車の生産、充電技術、コネクティビティについて、中国の自動車業界は他社の数年先をいっています。これが競走優位になるとともに、価格の差別化にもつながります。”

MATTHEW SIMPKINS(SALESFORCE UK・EMEA担当自動車インダストリーリージョンVP)

サブスクリプションとパートナーシップによる新たな収益機会

信頼できる安全で廉価な電気自動車の開発競争で各社がしのぎを削る中で、新たな収益源としてサブスクリプションとパートナーシップが注目されています。68%の自動車メーカー、62%のディーラーが、AppleCarPlayやスマートホームデバイスのようなIoTアプリケーションに投資しています。カーファイナンス会社も新しいアイデアにチャレンジしています。例えば、従量課金方式の保険商品の提供、カーリースのオンラインでの追加マイル購入、法人向けのファイナンスと保証のまとめ払いなどがあげられます。

カーファイナンス:コネクテッドカーや電気自動車が普及する中で、自社が投資を強化している新しいビジネスモデルやパートナーシップ

自動車メーカーとディーラー:コネクテッドカーや電気自動車が普及する中で、自社が投資を強化している新しいビジネスモデルやパートナーシップ

コネクテッドカーのエコシステムでどのような企業とのパートナーシップが最も優れた顧客体験につながるか

 

将来の展望:新しい電気自動車の収益機会は業界の枠を超えたビジネスにあり

世界的に電気自動車が普及するにつれて、手頃な価格の提供、充電ステーションの整備と互換性の確保、バッテリーに使用される鉱物資源採掘による環境被害などの課題解決への圧力が高まっています。インフレ抑止法による新たな優遇措置(英語)に各社が対応する中で、新たな成長機会を求めて自動車業界以外からの参入もみられます。

ある小売会社は、全米の店舗に電気自動車の充電ステーションを設置しています。その狙いは、電気自動車やサステナビリティに関心の高いZ世代・ミレミアム世代の取り込みです。食料やコーヒーを購入する間に自動車を充電する機会を提供すれば、顧客ロイヤルティが向上するとともに将来的な収入が期待できると企業は判断しているのです。

 

電気料金が安い夜間に充電して、余剰な電気を電力会社に販売することで、電気自動車のユーザーが利益を得られることは興味深い事実です。”

VICKI POPONI(Salesforce VP・自動車インダストリーアドバイザー)
 
 

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