OODA(ウーダ)ループとは?PDCAとの違いと活用方法を解説

 
2023.5.24
OODAとは「ウーダ」と読み、Observe(観察)、Orient(状況判断)、Decide(意思決定)、Act(実行)の頭文字を取った、意思決定と実行の流れを表すフレームワークです。この4つのプロセスを用いることで、迅速で正確な戦略設計、意思決定を行うことが可能です。

OODA(ウーダ)とは

OODA(ウーダ)は、意思決定のためのサイクル理論です。早期の意思決定と行動によって、迅速かつ正確に戦略を立て、成果を得ることを目的としています。

OODAは、Observe(観察)、Orient(状況判断)、Decide(意思決定)、Act(行動)の4つのフェーズから構成されています。PDCAサイクルと比較して語られることも多く、その際はこちらを「OODA(ウーダ)ループ」とも呼ぶこともあります。

 
 

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OODAの歴史

OODAを提唱したのは、アメリカ空軍の戦闘機パイロットだったジョン・ボイドです。彼は空中戦戦術家として有名で、圧倒的に不利な状況でも40秒以内に逆転する卓越した操縦技術から「40 Second Boyd」の異名を持っていました。

OODAが考案された背景には、瞬時の正確な現状把握や判断を通じて「生存し、敵を撃破する」というシンプルな目的がありました。OODAは、その有用性から広く知られるようになり、やがてビジネスやスポーツなどに応用され、注目を集めていきました。現代では、急激な環境変化に耐えうる、有用なツールとして多くの企業で用いられています。

OODAループの4つのプロセス

OODAループは4つのフェーズに分かれていて、円を描くようにフェーズを繰り返して運用します。

1) Observe:観察

2) Orient:判断

3) Decide:決定

4) Act:実行

観察・判断・決定・実行のフェーズを繰り返して運用することで、迅速な意思決定や行動をうながせます。ここでは、4つのフェーズについて、具体例を混ぜて解説します。

1)Observe:観察

まずは現状を観察し、情報を収集します。このフェーズで重要なのは、外部環境や内部環境、競合他社の動向などを正確に把握することです。情報の収集方法には、市場調査や顧客のフィードバック、社内のデータ分析など、さまざまな手段があります。

たとえば、新商品開発においては、顧客の声を集め、競合他社の商品を分析することで、自社商品の強みを生かした戦略策定ができます。また、自社商品の課題点を分析すれば、改善点の発見につながり、市場競争力を高められます。

2)Orient:判断

「Observe」で収集した情報をもとに、状況判断をするフェーズです。観察した情報を整理し、これまでの傾向や過去の経験則から、状況を判断します。なお、このフェーズでは、まだ行動は決定しません。

たとえば、マーケティング戦略を考えるときは、自社の強みや弱み、市場環境の分析結果などから、他社との差別化を図る方向性を仮説として立てるフェーズが該当します。

3)Decide:決定

「Orient」で判断した方向性をもとに、具体的な行動を決定するフェーズです。目標や戦略を設定し、アクションプランを策定します。このとき、リスクや不確実性の考慮も忘れてはいけません。より現実的で、適切な対策を講じることが大切です。

具体的には、判断フェーズで仮説立てしたマーケティング戦略を、実情に照らして有用か検討。必要に応じてブラッシュアップしながら、プランを決定するようなイメージです。

4)Act:実行

「Decide」で策定したプランを、実行するフェーズです。アクションプランに従って実際に行動し、成果へと導きます。ただし、実行にあたっては、適宜調整を加え、臨機応変に対応することも必要です。実行を終えたら再び「Observe」に戻ります。

具体的には、「Decide」で決定したマーケティングプランを実行し、結果が出る時点まで遂行するイメージです。なお、このフェーズでは、実行した結果の観察は含まれません。2周目の「Observe」に戻ってから、観察に取り組みます。

OODAループとPDCAサイクルの違い

OODAはPDCAと似た「1つのサイクルを繰り返し、行動し続けるモデル」ですが、サイクルのあり方や目的などは異なります。ここでは、OODAとPDCAの役割と目的の違いについて解説します。

PDCAサイクルとは?なぜ古いと言われるの?

PDCAサイクルは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の4つのフェーズを繰り返して実行する、品質管理やプロジェクト管理によく用いられる手法です。継続的な改善を実現するために有効であり、組織や個人の業務にも活用できます。

PDCAサイクルが古いと言われる理由は、考案された背景と現代のビジネス環境との差にあります。PDCAサイクルは、もともと日本の戦後に提唱された手法であり、ある程度、時間をかけて改善策を考えることが前提となっています。しかし、時代とともにビジネス環境の変化はスピードを増し、PDCAのスピード感では対応が難しくなっているのです。

PDCAサイクルについては、以下の記事で詳しく解説しています。OODAを実施する前に、ぜひ一度目を通してみてください。

OODAループとは役割・目的が違う

OODAループとPDCAサイクルの違いは、それぞれの役割と目的にあります。OODAループは、競争環境下での意思決定に重点を置き、素早く正確な判断や迅速な行動をとるためのフレームワークです。それに対してPDCAサイクルは、品質改善に重点を置き、プロセスを繰り返すなかで、問題点の特定や改善策の考案を図ることを目的としています。

この違いは、それぞれのループプロセスからも見て取れます。PDCAでは、実行フェーズのあとに評価・改善フェーズがありますが、OODAは実行が最終プロセスとなっていて、その後に生じた結果を観察するところからプロセスが再開します。つまり、PDCAサイクルは腰を据えた改善のための手法であり、OODAループはリアルタイムに対応して行動するための手法と言えるでしょう。

OODAループとPDCAサイクルの使い分け

OODAループとPDCAサイクルは、役割と目的に基づいて使い分けましょう。OODAループは、変化や競争の激しい業界において、スピーディな意思決定や実行が必要な場面に有効です。一方、PDCAサイクルは、品質改善やプロセス最適化、中長期的な改善を目的とした場合に適しています。

両者は併用も可能です。より戦略的な経営やプロジェクト管理を行いたいときは、併用も検討してみましょう。

OODAが活用できる2つの場面は?

OODAは、変化の激しい環境や先の見通しが立てにくい状況において、とくに強みを発揮します。想定されるシチュエーションとして、以下のような例があります。

1)変化と競争が激しい業界や局面

2)起業や新規事業の立ち上げ時

具体的にどのような活用方法があるのか、それぞれ見ていきましょう。

1)変化と競争が激しい業界や局面

ITやハードウェアなどの変化や競争が激しい業界では、日々の状況を素早く把握することが求められます。PDCAサイクルでは、対応している間に状況が変化している場合もあり、OODAループの迅速な意思決定と実行が適しています。

この考え方は、自社が置かれている局面の変化スピードにも応用できます。OODAループで観察するのは周囲の状況であり、その原因は言及されません。業界であれ局面であれ、自社がどのような状況におかれ、何をすべきかを迅速に打ち出すことが求められます。

2)起業や新規事業の立ち上げ時

起業や新規事業の立ち上げなど、先の想定を立てにくい状況にもOODAループは有効です。新しいビジネスモデルを構築する過程で発生する課題や問題点を解決するには、迅速な状況把握と対応の決定が求められます。OODAを活用することで、早期解決が期待でき、プロセスを繰り返すことで、ビジネスモデルの改善、成功につながる戦略策定にも役立ちます。

OODAのメリット・デメリット

OODAのメリット・デメリットは、OODAのスピード感やシンプルなプロセスに起因しているものがほとんどです。OODAの特徴は、迅速・正確に最善策を実施することであり、それだけにメリット・デメリットが明確に分かれています。

メリット

OODAの大きなメリットは、以下が挙げられます。

  • 状況に対して即応できる
  • 個人の裁量を大きくできる
  • 実戦の中で試行錯誤ができる

OODAは、スピード感が重視されるため、状況変化への対応力が高く、実戦の中で試行錯誤できる柔軟性も備えています。また、各個人が自身の意見を発言し、意思決定に関われる点もメリットです。これらのメリットにより、組織内での意思決定において、コミュニケーションや意見交換が促進され、より効果的な戦略策定が期待できます。

デメリット

OODAのデメリットとしては、以下の2点が挙げられます。

  • 中長期的改善や定型作業の改善には向かない
  • 失敗するリスクも大きい

OODAは、即応性に重点を置いたフレームワークなので、中長期的な改善や定型作業の改善には向きません。中長期的な改善を目指す場合には、PDCAサイクルなど別の手法が適しています。

また、OODAは迅速な意思決定と行動を促すため、失敗するリスクも大きいというデメリットもあります。ただし、OODAループの中で試行錯誤を繰り返し、リスクを下げることは可能です。

OODAを武器に、激動の状況を乗り切ろう

OODAは、状況判断や意思決定を迅速に行うためのフレームワークで、激動の状況が続く現代のビジネスシーンを「走りながら考える」ための武器です。従来のPDCAでは環境変化のスピードに追いつかない場面でも、OODAによるリアルタイムの状況把握と柔軟な対応なら、最善の方法を導き出せるかもしれません。

OODAループを繰り返すことは、実戦的な経験と知識の蓄積にもつながります。限られたリソースのなかで最適な判断をしつつ、組織を強化するためにも、現代ビジネスにおいてOODAを使いこなすことは必至と言えるでしょう。

 
 

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