ヤフー株式会社

8部門で3,000ライセンスが稼働Salesforce フローの採用によりプロセスの自動化範囲が拡大。

Salesforce フローによる業務自動化へと改革するだけではなく、社員学習もSales EnablementによるDX化を推進。紙資料からの脱却で極めて高いROIを実現し、リスキリング活用にも。

ヤフー株式会社(以下、ヤフー)は、全社的にSalesforceを利用しています。ここ数年、だれもが簡単にビジネスプロセスを描けるSalesforce フローの活用を積極化し、さまざまな業務の自動化に取り組んできました。また、コマース部門ではSales Enablementの利用が進んでいます。こちら2部門の取組みについて紹介します。
 
 

1. だれもがわかりやすい自動化環境をSalesforce フローで実現

ヤフーは、インターネット黎明期から日本市場でビジネスを開始した企業です。インターネットの発展とともに、総合ポータルサイト「Yahoo! JAPAN」を柱に大きく成長。現在では、ヤフーのブランドで多様な事業をオンラインで展開しています。

同社では、さまざまな領域の100ほどのサービスを運営しており、社内には数多くの部門があります。各部門ごとにITのニーズが異なるため、部門が独自の判断で最適なシステムを採用することが許容されており、Salesforceはかなり以前より複数の部門で導入、利用いただいているシステムでした。そんな中、ケース管理の成功例が横展開されたことをきっかけとして、問い合わせ管理のニーズにSalesforceを活用できることが広まり、さらに多くの部門で活用されるようになりました。同社では、このようにITの意思決定は各部門にありますが、社内で共通させたい部分や、各部門がそれぞれ導入した共通部分について、部門の壁をまたいで全社横断的に管理する方が効率的なケースも散見されるようになりました。そうした課題の解決に向け、同社は2020年に社内ITの導入・利活用をミッションにしたCIO(最高情報責任者、Chief Information Officer)を設置し、その直属の組織(CIO情報システム部)で、多くの部門が利用しているSalesforceをよりうまく使えるようにするというチャレンジをはじめました。取り組みの中心は、Salesforce フローを活用することで、業務の自動化範囲を広げることでした。

CIO情報システム部SRE3 リーダー高橋 諒氏は、「これまでは、APEXでコーディングしたりプロセスビルダーを使ったりしていたのですが、Salesforce フローがなかなか良さそうだなと。Flow Builderのユーザーインタフェースがわかりやすいので、初心者でも少し使い方を覚えるとプロセスを書けますし、画面を見ればだれもが直感的に処理の内容を理解できるのです」と話します。

各部門にプログラムを読み書きできるレベルの人材が必ず居るとは限りません。たとえ居たとしても、バージョンアップの際に自動化部分の挙動がおかしくなるようなケースが発生したときに、作成者がすでに異動や退職してしまっている状況なども考えられます。一方、Salesforce フローに置き換えることによりだれもがわかりやすい自動化環境を作り上げることができれば、現場でだれもが速やかに対処できるようになります。こうしたメリットが大きいという判断に至りました。

 
 
 
 

2. 8部門が合計約3,000ライセンスのSalesforce フローを活用

Salesforce フローの浸透を進めるにあたって、CIO情報システム部は各部門のSalesforce担当者/管理者向けの教育という役割を担うと同時に、全社におけるSalesforceノウハウの底上げを図ります。

Salesforceの使い方やその利用レベルは部門によって差異がありました。そこで「自部門でしか使っていないけれど、使えば便利な機能」の情報をシェアするなど、組織横断でナレッジのレベルアップが自然と行われるような仕掛けづくりも実施。Salesforceのさらなる活用に向けた情報交換のさまざまな場面で、「自動化のためのFlow」という立ち位置を明確にします。最終的には、標準機能でやるべきことと、カスタマイズが必要な部分を切り分け、「Salesforce フローでできる範囲はすべてSalesforce フローでやる」という共通認識を育てていきます。

この取り組みを受け、すでにショッピング、広告、ニュース、不動産など8部門がSalesforce フローの利用を開始しました。CIO情報システム部として全体で約3,000ライセンスを管理し、各部門は振り分けられたライセンスを利用し、日々活用しています。

高橋氏は、「分岐を作ることはもちろん、規定しておいた条件をクリアすると新たなデータを作るといった定義もできますし、Chatterのフィードに情報を流して関係者にアラートすることなども簡単です」と話します。

たとえばショッピングでは、出店審査プロセスにSalesforceを利用しています。ここにSalesforce フローを適用したことで、顧客のステータスに最適なメールを自動送付したり、これまでは人の手で行っていた各種の状況に応じた処理プロセスを自動で走らせることで、業務の効率化を実現したりする成果を得られています。部門をまたいだプロセスの定義も容易になりました。新たに開発したものに加え、これまでAPEXトリガーを利用してデータをひも付けていたケースなども、Salesforce フローに移行することでメンテナンス性を高めています。

CIO情報システム部SRE2 リーダー佐田 佳奈美氏は、「だれもがすぐに開発できるというポイントは、私たちにとって大きな価値です。APEXは専門家が1時間かけてようやく完成するイメージでしたが、少し学んだレベルの初心者でもSalesforce フローを使えば設定に10分+テストに30分で対応ができます」と話してくれました。

 
 
 
 

3. Sales EnablementのROIは極めて高い

ヤフーでは、Sales Enablement(旧:myTrailhead)の活用も進んでいますが、最初の活用ケースはショッピング部門における中途/新卒入社の新人研修です。初期導入をした2019年当時は大量の紙をまとめた研修資料を各地域にいる社員に配布しており、準備工数は社員が入ってくるたびに都度2週間を要しておりました。また内容に変更があってもタイムリーに変更することも難しく、ビジネス状況は変化しているのに研修内容は対応しきれていなかった状況です。

そんな状況を打開するために研修のデジタル化を検討しましたが、e-learningを受講してテストをさせてという従来型の研修だけでは配属後の営業部門が求める初期研修のレベルを満たすことにつながるのか?という疑問もあり、比較・検討の結果、Sales Enablementの採用を決めました。

コマースカンパニー ショッピング統括本部 セールスストラテジー本部 営業推進部 エデュケーション リーダー 中田 勝也氏は、「営業部門では顧客・商談管理にSalesforceを日々活用しておりユーザーが慣れ親しんでいたため、学習と業務の垣根を減らすという観点においてもほかの候補よりアドバンテージがありました。そこに加えて、Salesforceと一体となった学習環境だからこそリマインドや再学習を促すフォロー業務も自動化することができ、育成チームの業務効率を改善することにも繋がりました。数十人が同時に初期研修を受講するだけでなく、研修後にも振り返りのために使ってもらうことになりますからいかに学習者にとって学びやすい環境を整えるかは重要な点です。解らないことや最新の営業成功事例を聞いたり調べることが配属先によっては困難で、一人でも学習・成長できる機会を提供したかった」と話します。

コスト面では、コンテンツ更新や整備にかかる人的負担を少なく見積もっても半期で約290万円と試算。またコスト削減だけでなく、期待効果として売上増加も見込んでおりSales Enablementのライセンス費用と導入による価値はこの金額を下回ったため、経営層の理解を得やすかったといいます。なお、現在は通期で約230人を採用しており、Sales EnablementのROIは極めて高いものになっています。「その後のコロナ禍でリモート研修になりました。あのタイミングでSales Enablementを採用していたことで、問題なくリモート対応に移行できましたし、全国に点在している営業メンバーに対してもスキルアップ機会を提供できる体制を作れて本当によかったです」(中田氏)。

一定の成果が出たため現場からは既存社員フォローのニーズも出てきています。今後はハイパフォーマーやローパフォーマーの傾向分析を通じて成果が出る営業の型を明らかにし、新人に限らず既存社員含め売上upにつながるリスキリングの取り組みを強化したい。現場に根ざしたリアルなものにするためにもコンテンツの作成基準を公開し、現場でもコンテンツを作成・修正できるように体制を強化したい考えです。

中田氏は、「受講完了するともらえるバッジは受講生にとっても、自分自身の積み上げた実績を可視化できモチベーションupにも好評ですし、入社後にSales Enablementで研修内容を振り返ってくれる社員も多いです。組織に根付いてきたので、より日々の成果に繋がる教育プラットフォームへと育てていきたいと考えています」と話してくれました。

 
 
 
 
※ 本事例は2022年11月時点の情報です
 

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