営業戦略とは?戦略を立案する手順とフレームワークを事例を交えて解説
企業の経営者やマネージャーにとって営業戦略を決めることは重要です。しかし、戦略を決めても実際の現場では思うように実施できないことがあります。営業戦略を立案しても、営業担当者の理解がなければ製品やサービスの売上向上にはつながらないでしょう。
また、昨今の営業活動では生成AIの活用が進んでおり、営業競争が激しくなることが予想されます。生成AI活用 最新トレンド 〜営業編〜に詳しくまとめていますので、あわせてご覧ください。
この記事では、営業戦略を立案する手順やフレームワークが重要な理由、営業戦略を策定するうえでのポイントなどについて解説します。
最後まで読めば営業戦略を立案する手順がわかり、自社に最適な営業戦略を検討できます。
営業戦略とは営業目標の達成に向けた基礎計画のこと
営業戦略とは、利益の増大や事業拡大などの目標を達成するために必要なベースとなる計画のことです。
経営方針やブランディングとも密接に関わるものであり、営業担当者だけでなく、経営者や管理職にとっても重要なものとなっています。
営業戦略をしっかり立てることで目標に向けてスムーズに動けるようになるでしょう。効果的な戦略を立案するには実行可能度や過去の営業に関するデータを活用して、長期的・全体的に計画を熟考することが求められています。
営業戦略と営業戦術の違い
「営業戦略」と似た言葉で「営業戦術」があります。
営業戦術とは「営業戦略で立てた計画をどのように実施していくかを決めること」を指します。一方で、営業戦略は「営業目標を達成するためのベースとなる計画」のことです。
つまり、目標を達成するために立てた計画が「戦略」で、戦略を達成するための手段が「戦術」となります。戦略がないまま戦術を活用しても、思うように成果を達成するのは困難です。
適切適切な戦術を組むには、土台となる戦略が必要になります。
営業戦略を立てる5ステップの手順
営業戦略を立てる手順について解説します。営業戦略は最初に目標を設定し、行動に落とし込んでから検証と改善を重ねます。
- 目標を設定する
- ターゲットを絞る
- ペルソナを設定する
- カスタマージャーニーを策定する
- KPIを設定する
自社の営業戦略の立て方を見直したい方は、ぜひ確認してみてください。
1.目標を設定する
営業戦略は、まず中長期的な目標を、数値とともに設定しておくことが必要です。
目標が設定できたら、達成に向けて方向性を決めます。方向性を策定する際に、自社の状況を認識したうえで、どのように達成すればよいかを決めましょう。
客観的に目標の達成度を計測するために、KGI(重要目標達成指標)で定量的な目標を設定します。
2.ターゲットを絞る
目標を設定したら、市場調査を行い自社製品を必要とするターゲットに絞ります。
顧客にヒアリングをしたり、市場調査をしたりしてターゲットを明確化することが必要です。また、理想的な顧客と実際に購入する顧客は異なる可能性があるため、ギャップがないかも検討しましょう。
ターゲットを絞ることで自社製品のニーズのある客層に商品の魅力を伝えられるようになり、リピーター獲得にもつながります。
3.ペルソナを設定する
ターゲットの絞り込みが完了したら、ペルソナを設定します。
ペルソナ設定とはターゲットを具体的な顧客像に落とし込むことです。ブランドターゲットから代表的なひとりを抽出し、以下のように詳細に設定します。
- 架空の名前
- 性別
- 職業
- 年齢
- 居住地
- 年収
- 価値観
- 趣味
ペルソナを設定することで、ターゲットの視点で顧客を見ることが可能になります。
ただし、自社製品に都合のよい人物像を設定すると本当の消費者像が見えなくなってしまいます。あくまでも消費者視点で考えることが重要です。
4.カスタマージャーニーを策定する
具体的に顧客像を落とし込んだら、カスタマージャーニーを策定しましょう。
カスタマージャーニーとは、顧客が製品を知ってから購入し、購入後に利用するまでの行動や感情を分析することです。
一連の顧客のアクションを細分化し顧客への購買の動機づけ、手法を検討します。
例えば、顧客の行動を「購買前」「購買時」「購買後」のように時間軸で分け、行動や感情などを詳細に予測していきます。
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5.KPIを設定する
カスタマージャーニーを決めたら、施策の成果を常にモニタリングできるようKPIを設定します。
KPIとは「重要業績評価指標」を指し、営業活動が当初の計画どおりに進んでいるかどうかをチェックするための指標です。KPIを設定すると以下のように、期間と成果が明確な数値として表されます。
目標(KGI) |
今後◯年で売上◯◯億円 |
KPI |
|
KPIの数値が当初予定からずれていたら、軌道修正や改善をし続けます。
KPIを複数設定しておけば、全体の進捗状況を立体的にとらえることが可能です。短期間で結果の出るKPIを用いると、進捗状況の検証から対策・改善までがスピーディーにでき、計画と実際が大きくずれる前に修正を加えられます。
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営業戦略を立案する際の7つのポイント
営業戦略の目標をどこに置くかは、企業によって大きな違いがあります。戦略を立てる際には、自社のバリュープロポジション(自社だけが提供できる、顧客の本質的なニーズを満たす価値)を明確にすることが大切です。ここからは、営業戦略において大切な7つのポイントを紹介します。
- 市場調査を行い現状を分析する
- 課題を明確にする
- コアコンピタンスを把握する
- 営業戦略を実践できるようフレームワークを活用する
- 負担のかかる業務を洗い出す
- PDCAを高速で回せるようにする
- SFAを活用する
より高精度な営業戦略を立案して、売上を向上させたい方はぜひ参考にしてみてください。
1.市場調査を行い現状を分析する
対象とする市場の状況、ターゲット層の動きに加え、競合他社がどのような営業戦略で新規顧客や既存顧客を獲得しているのかを調査・分析しましょう。
同時に以下のように自社製品やサービスについて、現状の課題を数値化し可視化します。
- 価格
- シェア
- 売上金額
可視化によって自社が置かれた状況も明確になり、改善策や対策を講じることが可能となります。
2.課題を明確にする
分析結果から今後の課題を洗い出します。課題が明確になった段階で、実現のために何をすべきか、具体的な対策の立案へと進むことが重要です。
たとえば課題には以下のようなものがあります。
- オンラインストアでソフトのパッケージ版とダウンロード版を同時購入できない
- 事業成長のスピードにシステムが対応できない
- 顧客の全体像を把握できていない
こうした課題を明らかにすることでどのような戦略を策定すべきかが見えてきます。
3.コアコンピタンスを把握する
自社の強みを活かした営業戦略を立てられるよう、自社のコアコンピタンスが何かも知っておきましょう。コアコンピタンスとは、他社にまねのできないアドバンテージのことです。
コアコンピタンスを見極めるには以下の5つの視点が重要になります。
- 模倣可能性(他社による模倣の可能性が低い)
- 移動可能性(多方面の分野に応用ができる)
- 代替可能性(他社がまねできない技術)
- 希少性(希少価値がある)
- 耐久性(競争的に優位性がある)
コアコンピタンスを見極めるには、後述するSWOT分析が有効です。自社の強みが何かを知ってから、戦略を立案しましょう。
4.営業戦略を実践できるようフレームワークを活用する
営業戦略を成功させるにはフレームワークの活用が重要です。フレームワークを活用することで、営業担当者が戦略についての理解を深められ、スムーズに実践できる効果があるためです。
とくに部下に戦略について納得してもらい、行動してもらう際に活用できます。戦略を教えて結論を出す前に、部下に考えさせることで納得感を引き出せるでしょう。
フレームワークは考えを整理する際に活用できるので、戦略の立案に慣れていない人でも使いやすく、部下の思考力向上にも使えます。
5.負担のかかる業務を洗い出す
実現性のある営業戦略を展開するためには、負担のかかる業務を洗い出し効率化を図ることが重要です。
負担になっている業務を洗い出すには、それぞれの業務について1ヶ月の工数をリスト化します。洗い出した業務のうち、本来は営業担当者がやらなくてもいいものがあれば、対策を考えましょう。
たとえば、他者への移行が可能な業務については、マニュアルを作成・共有することで担当者以外でも作業ができるようになります。
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6.PDCAを高速で回せるようにする
リアルタイムで計測しているデータを基に、PDCAサイクルを高速で回すことで常に営業戦略の課題を可視化できます。課題解決に向けて行動することで、売上向上につなげられます。
また、全社共通のデータを使えば、週次・月次・四半期毎に各KPIの振り返りが可能になります。
部門内だけではなく関連部門と連携できるため、施策検討やアクションへの落とし込みをスピーディーに行えます。
7.SFAを活用する
SFAのデータを最大限に活用することで迅速な意思決定が可能となり、営業戦略をスムーズに立てられます。
SFAとは「Sales Force Automation」を略した言葉で、営業支援システムのことです。導入することで基幹戦略や個人目標の策定、報酬制度の検討がしやすくなり、効率化につなげられます。
SFAにはチーム全体の売上予測をリアルタイムで確認できる機能があります。売上予測を調整したり、管理するチーム全体の状況を確認したりできるため、最適な組織づくりができるでしょう。
外部データだけではなく、現場による営業やマーケティング活動データも検討事項として重要になります。リアルタイムのビジネスデータを活用することで、顧客のニーズに沿った客観的な経営判断ができるでしょう。
営業戦略に役立つ6つの分析方法
営業戦略を立てる際によく使われるフレームワークについて解説します。
- 3C分析
- ランチェスター戦略
- パレートの法則
- SWOT分析
- ファイブフォース分析
- PEST分析
営業戦略をスムーズに立案するためにも、以下を読んで活用してみましょう。
3C分析
3C分析は、3つの視点から行う分析方法で、成功するための事業計画を導き出すために用いられます。「顧客(Customer)」「競合相手(Competitor)」「自社(Company)」の3つについて、それぞれ分析します。
顧客の分析
顧客の分析では、主に以下の3つを分析します。
- 市場規模
- 市場の成長性
- 顧客ニーズの変化
マクロ、ミクロそれぞれの視点から、市場環境の状況を明らかにします。
競合相手の分析
競合相手の分析では、以下の観点から強みと弱みを分析します。
- 競合相手の事業規模
- 製品・サービス
- 獲得シェア
この分析では、「結果」と「要因」が分析の軸としてよく使われます。 たとえば、売上高やシェアは「結果」であり、それを実現した「要因」がどこにあるかを探るのです。他社の成功要因がわかれば、自社に取り入れたり、差別化を図ったりというアクションにもつなげられます。
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自社の分析
顧客と競合相手の分析結果を基に、自社がどのような施策を打てるのか、戦略を立てていきます。ここでは、後述するSWOT分析がよく用いられます。
ランチェスター戦略
ランチェスター戦略とは、弱者の視点と強者の視点、それぞれの角度から分析を行い、自社に合った戦略を組み立てる手法です。「弱者の戦略」とも呼ばれるように、中小・零細企業や個人事業主でも実践しやすく、自社の価値を高められます。
ある業界でシェア1位、つまりナンバーワン企業になろうとすると、資金力や開発力、人材など、豊かな経営資源が必要です。弱者である中小企業には、容易なことではありません。しかし、細かくカテゴライズされた「限られた市場」であれば、不可能ではありません。
高級食パン専門のベーカリーや、バリアフリー工事専門の工務店など、特定のニーズに特化した専門性をアピールし、ブランドと認知度を高める成功例がよく見られます。大手企業が資源の多さを活かしにくい、小さな市場でのトップを狙う戦略です。
パレートの法則
「80:20の法則」とも呼ばれる、パレートの法則を分析に活用して、選択と集中の判断材料に用いることが可能になります。
たとえば、パレートの法則によって以下のような事実を発見でき、分析することでどのような行動をすれば利益向上につながるかを把握できます。
事実 |
分析した結果 |
売上の8割が、全体の2割のリピーターによって得られている |
2割のリピーターがどんな特性を持った層かを分析するとマーケティング効率を高められる |
2割の営業成績のうちの8割が、2割の営業担当者によってもたらされている |
2割の営業担当者のノウハウを分析し、チーム全体に反映すれば、営業力の底上げを図れる |
なお、パレートの法則を使う際は、以下のポイントに注意しましょう。
- 分析したい対象に、この法則が成立しているかどうかを確認する
- なぜ成立しているのかを明確にする
この2点に留意すれば、さまざまな業務で効率化やパフォーマンスの向上を図れます。
SWOT分析
SWOT分析は、自社の強みと弱みを把握し、外部環境と照らし合わせて分析できるフレームワークです。
社内外に存在するプラスとマイナス、それぞれの要素を客観的に把握することで、どこに勝機があるのかを見つけるために使われます。
自社製品をSWOT分析にかける場合は、まず自社製品の「強み(Strength)」と「弱み(Weakness)」の要素を書き出します。これが、内部環境に存在するプラスとマイナスです。次に、外部環境のプラス要素として「機会(Opportunity)」を、マイナス要素として「脅威(Threat)」を書き出します。
これらの要素を4つに区分したマトリクスに書き込み、それぞれのマトリクスを掛け合わせて、戦略を立案していきます。
たとえば、「強み×脅威」なら「強みを活かして、脅威を避ける方法は何か?」「弱み×機会」なら「弱みによって失っている販売機会を逃がさない方法は?」と考えることが可能となります。
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ファイブフォース分析
ファイブフォースとは「5つの脅威」を意味します。自社や自社製品・サービスをとりまく5種類の外的脅威を洗い出し、それぞれに分析を加えて、自社の優位性がどこにあるかを探り出す手法です。
5つの脅威には、以下のようなものがあります。
- 業界内での競争
- 業界への新規参入者
- 代替品の存在
- 売り手(サプライヤー)の交渉力
- 買い手(顧客)の交渉力
自社の脅威を掘り下げていき、どうすれば収益を確保できるかを結論づけることで、具体的な戦略構築につなげられます。
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PEST分析
PEST分析とは以下4つの要素を分析する方法です。
- 政治(Political)
- 経済(Economic)
- 社会(Social)
- 技術(Technological)
PEST分析は最初に実施される分析であることが多く、外部環境の変化に敏感になり、未来のビジネス展望を予測できるメリットがあります。
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営業戦略のフレームワークを活用した4つの事例
営業戦略のフレームワークを活用してどのような分析ができるかを以下の4つの事例で紹介します。
- 星野リゾート(3C分析)
- Apple(SWOT分析)
- SaaS業界(PEST分析)
- ユニクロ(ファイブフォース分析)
それぞれどのように分析できるかを詳しくイメージできる内容になっていますので、ぜひ参考にしてみてください。
星野リゾート(3C分析)
要因 |
概要 |
顧客(Customer) |
|
競合相手(Competitor) |
|
自社(Company) |
|
Apple(SWOT分析)
プラス要因 |
マイナス要因 |
|
内部環境 |
【強み(Strength)】
|
【弱み(Weakness)】
|
外部環境 |
【機会(Opportunity)】
|
【脅威(Threat)】
|
SaaS業界(PEST分析)
要因 | 概要 |
Policy(政治) |
|
Economy(経済) |
|
Society(社会) |
|
Technology(技術) |
|
ユニクロ(ファイブフォース分析)
脅威 | 評価 | 概要 |
業界内での競争 (既存競合他社) |
高 |
|
業界への新規参入者 |
中 |
|
代替品の存在 |
中 |
|
売り手(サプライヤー)の交渉力 | 低 |
|
買い手(顧客)の交渉力 | 中~高 |
|
ファイブフォース分析によってユニクロは、2つの特徴があることがわかった。1つ目は、業界内での競争が激しく、競合との顧客獲得争いが激化していること。2つ目は、売り手の交渉力が低く、優位な立場で交渉が可能になっていることです。
今後、ユニクロが売上を増やすには、業界内での競争に巻き込まれないポジショニング戦略とよりコストパフォーマンス高めた生産に取り組み、買い手への交渉力を高めることが必要になります。
最適な営業戦略を立てるにはSFAの活用を
営業戦略を成功させるには、目標を設定し行動に落とし込んでから検証と改善を重ねなくてはなりません。
達成できる可能性の高い営業戦略の策定にはフレームワークの活用がおすすめです。フレームワークを活用するには自社の営業プロセスを可視化する必要があります。SFAを利用することで、営業プロセスの可視化が容易になり、迅速な意思決定が可能となります。
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