顧客満足度(CS)とは?上げる方法から調査方法、事例まで

顧客満足度(CS)とは
顧客満足度とは、「企業が提供する商品・サービスによって、顧客がどれほど満足感を覚えたか」を数値化した指標です。
顧客が商品・サービスからどんな効果を得て、何に満足を感じたのかは非常に曖昧なものです。顧客の主観に拠るところが多く、また顧客自身もなぜそう感じたかをはっきりと認識していないことがほとんどでしょう。
こうした定性的な情報を、客観的に分析可能な定量的数値に置き換えたのが、顧客満足度という指標です。
英語では「Customer Satisfaction」(カスタマー・サティスファクション)、略して「CS」と表現されます。
※CSと略される他の用語に、「カスタマーサクセス」、「カスタマーサービス」、「カスタマーサポート」があります。これらは顧客に対する施策や対応窓口を指し、それぞれ存在理由が「顧客の成功」、「顧客へのサービス」、「顧客のサポート」という違いがあります。

カスタマーサービス最新事情
8,050人のカスタマーサービス従事者を対象に調査を実施しました。
顧客満足度(CS)と顧客ロイヤリティ(NPS)の違い
顧客満足度 |
顧客ロイヤリティ |
|
目的 |
顧客満足の獲得 顧客の不満をなくす |
顧客の満足以上の感情を獲得 ファンを増やす |
評価対象 |
商品・サービス |
優れた顧客体験 |
目線 |
企業目線 |
顧客目線 |
取り組み |
担当部署が不満の改善に 取り組む |
全社でファンを増やすために 取り組む |
NPSは顧客に「この商品・サービスを友人や同僚に勧める可能性はどのくらいありますか?」という質問に0~10点で回答してもらい測定します。財務結果との連動性が高く、競合と比較しやすいという特徴があります。
NPSが高まり、ファンが増えるほど、リピート率や紹介数も向上します。インターネットの発達によって、既存顧客の口コミや紹介が大きな影響力を持つようになった昨今、NPSは業績に直結する指標として注目されています。
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顧客満足度が重要な理由
市場には多くの製品やサービスがあふれています。熾烈な競争の中で選ばれる存在になるには、購入前から購入後まで、顧客と一貫したエンゲージメント(つながり)を構築することが大切であり、顧客満足度が重要な理由でもあります。
インターネットの発達によって、気になる製品やサービスについて購入前に予め調べておくケースや、SNSの口コミで興味を持つケースが急増しています。つまり、営業が接点を持ったり、顧客が店頭に行ったりする前に、顧客に選ばれるための勝負は付いているのです。
これは、「購入前の時点から顧客満足度でふるいにかけられている」とも言えます。過剰に広告やメールを提供する企業よりも、適切なタイミングと方法で欲しい情報を提供してくれる企業のほうが、購入したくなりますよね。
また、顧客の6割以上が「購買の意思決定において、価格以上に顧客体験が重要であると考えている」という調査結果からも、企業全体が顧客との一貫したエンゲージメントを築くことの重要さが伺えます。
顧客満足度が上がると、顧客はロイヤルカスタマーとしてファン化し、企業に長期的な利益をもたらす存在になります。さらにロイヤルカスタマーから周囲への紹介が生まれると、企業は質の良い潜在顧客であるホットリードに獲得コストをかけずに出会えるようになるはずです。
顧客満足度を上げる方法
顧客満足度は以下の流れで把握し、改善します。
1)購入前の期待値の把握
購入前の顧客が何にどの程度期待しているかを把握していないと、いくら努力しても期待に応えることは出来ません。
期待の強さや内容はひとりひとり異なります。闇雲に調査を行うのではなく、顧客をセグメントし、どんなペルソナに対してどんな方法の調査を行うか、しっかり定めてから始めることで調査精度が増します。
期待値を把握する代表的な方法は以下の通りです。
- アンケート調査(対面インタビュー、電話、モニタリングなど)
- 統計データの活用
- 競合調査
統計データの活用には、世の中の統計データはもちろん、自社で蓄積してきたデータも含まれます。顧客期待値の調査は、定量的+定性的な情報と顧客満足度との相関性に仮説を立てた上で行うと、ボトルネックの可視化に繋がりやすくなるでしょう。
2)商品・サービスの評価を把握
次に、商品・サービスを購入した顧客の評価を収集します。
顧客満足度を測る指標
顧客満足度を測る主な指標には以下が挙げられます。
- 顧客満足度指数のスタンダード「CSI」(Customer Satisfaction Index)
- 日本独自のカスタマイズ版「JCSI」(Japanese Customer Satisfaction Index)
- 顧客ロイヤリティを測る「NPS」(Net Promoter Score)
- 顧客の目標達成率を測る「GCR」(Goal Completion Rate)
- 目的達成が容易だったかどうかを示す「CES」(Customer Effort Score)
- 一連のプロセスに満足できたかを示す「CSAT」(Customer Satisfaction Score)
例えば「JCSI」で計測する場合、【顧客満足度=顧客が感じた価値-事前期待価値】という計算式を用いて、心の動きをモデル化することが出来ます。
各指標の特性と、顧客満足度調査で把握したい内容を加味して、どの指標を用いるか検討しましょう。
顧客満足度の調査方法
顧客満足度の調査方法は、誰が調査するかによって2種類に分けられます。
- 自社リソースによる調査
- 外部の調査会社による調査
自社リソースによる調査は、自社の顧客を対象としている場合や、定期的・継続的に調査し変化を追跡したい場合に有効です。反面、調査目的が競合との比較やシェア拡大の場合には不向きと言えます。
自社リソースによる調査が苦手な項目は、外部の調査会社による調査が得意な分野でもあります。自社とは接点のない潜在顧客にアクセス出来ること活かし、市場での差別化に有益な情報などを得られるでしょう。
どちらも一長一短なので、調査で把握したい内容や調査の継続性、コストに合わせて選ぶことをお勧めします。
3)期待値と評価の差の解消
顧客満足度は、顧客が抱く「購入前の期待値と実際の評価の差」を解消することで、向上に繋がります。
ここで「顧客価値の段階」をご紹介します。
- 基本価値(顧客が不可欠と感じる)
- 期待価値(顧客が当然と感じる)
- 願望価値(顧客が期待以上と感じる)
- 予想外価値(顧客が感動と感じる)
顧客が感じる事前期待値を上げすぎた場合や、提供予定の価値とは異なる方向性の価値を求められていると、どんなに努力しても「期待外れ」になってしまいます。顧客の本音を引き出して対応したり、不可能なニーズに対する代替案を提示したりすると、「期待以上」に引き上げることができるでしょう。その先にある、良い意味で「期待を裏切る」真のサービス提供(=顧客の感動)は、ロイヤルカスタマーを生み出す一助になります。
顧客満足度の目標設定(KPI)を行うと、「顧客満足度が上がることで、何の数値が向上・改善したか」を可視化することが出来ます。顧客満足度調査を始める前にKPIを設定し、調査方法と内容を精査することが大切です。
顧客満足度の目標設定(KPI)
顧客満足度におけるKPIの例は以下の通りです。
- 顧客数
- リピート率(契約維持率)
- クレーム率
- 解約率・返品率
日頃から社内の様々な情報が数値で可視化されていると、ボトルネックを発見しやすくなり、KPIの設定や効果測定も行いやすくなります。
継続的に効果検証や施策の改善を行い、中長期的な成果を確認しましょう。
顧客満足度向上のための具体的な施策
1)カスタマーサクセスの導入
カスタマーサクセス(Customer Success)とは、顧客の成功を支援するための仕組みや部署のことを指します。
従来の「カスタマーサービス」「カスタマーサポート」と異なるのは、存在理由が顧客の成功であり、それが自社の成功に直結している点です。「売ってからが真の始まり」となった現代ならではと言えるでしょう。
例えば自社が販売している商品が、サブスクリプション型のITツールだとします。
顧客がツールを活用し、成功するための施策例には、ツール導入支援/セミナー開催/ユーザーサポート会の運営などが挙げられます。個々のユーザー状況に合わせた施策を提供することによって、顧客満足度の向上はもちろん、継続契約やアップセル・クロスセル、紹介に繋がります。
また顧客と直接コミュニケーションを取る部署だからこそ、ヒアリングも大切な業務のひとつです。各部署に顧客の生の声をフィードバックし、モチベーションの向上や業務改善に役立てることは、会社の文化を創り、企業全体の底上げとなるでしょう。
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2)CRMツールの導入
CRMとは「Customer Relationship Management」の略で、「顧客関係管理」を意味します。
主に契約後に使用されるツールで、以下を掛け合わせた情報管理が出来ます。
- オンラインの顧客情報(ツールの機能や、セミナーなどのサポートをどのくらい活用しているか)
- オフラインの顧客情報(顧客との関係性構築状況、ヒアリング内容、企業規模)
顧客との関係性を可視化するCRMは、「各顧客のツール活用を促進し成功に導くために、今何を提供すべきか」の判断に役立ちます。また、その判断に合わせた対応(メールでセミナー参加を促すなど)を自動的に行うことも可能なので、従業員は重要な業務に集中出来るようになります。
CRMによって顧客の現状や課題を理解・共有し、パーソナライズされたサービスを提供すると、顧客満足度は劇的に向上することでしょう。
また、CRMと併せて、契約前の顧客に対して使用するツールであるMA(マーケティングオートメーション)やSFA(営業支援)を使うと、更なる効果を発揮します。部署間の共有や施策がスムーズになり、顧客に対する姿勢に一貫性が生まれ、ロイヤルカスタマーへの育成に繋がります。
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Sales Cloudがカバーするプロセスは、商談化以降の営業フェーズであり、単体製品ではマーケティング領域まではカバーできません。
そこで組み合わせて運用したいのが、インサイドセールスやマーケティング活動の改善をサポートするMA(マーケティングオートメーション)ツールである、Account Engagement(旧Pardot)です。
このツールの導入により、有力な見込み顧客の特定やスムーズな販促活動などを可能にします。例えば、Webサイトからのお問い合わせや展示会で獲得した見込み顧客の興味度合いに応じた適切な対応を事前に作成したシナリオを通じて実施することで、一人ひとりの顧客に対してよりパーソナライズ化(個別化)されたマーケティング活動が可能です。Account Engagement(旧Pardot)で見込み顧客の発掘と育成を、Sales Cloudで顧客と商談情報の管理、活用を行い、これら構築した土台を活かすことでより多くの商談を生み出しましょう。
顧客満足度向上の成功事例
すべてのデータ統合で、お客様一人ひとりに寄り添える仕組みを

人の力に強みを持つJTBは、顧客が旅に出る理由や顧客自身の背景から、個々の顧客の姿を正しく認知し、適切なサービス提供に役立てようとしています。ですが、「旅行」という商品の特性上、一般的な分析手法をそのまま取り入れ、数値や属性で判断しても机上の空論になりかねません。
Salesforceの導入は、顧客に対しJTBの掲げる「ウルトラパーソナライズ」されたサービスの提供を実現しました。例えば旅行中には、顧客データから読み解いたニーズに合わせ、旅行エリア情報やイベントの情報をリアルタイムに提供しています。タビ前・タビ中・タビ後で一貫された「最適な体験の提案」は、顧客満足度を大きく向上させました。
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製品をつくる会社も好きになる。多彩なファンマーケティングの施策をCRMでつなぐ
ビール国内売上第6位のヤッホーブルーイングは、以前よりファンマーケティングを長期視点で行っていました。ロイヤリティの高い顧客基盤が築けていたものの、新入社員が「お付き合いの長いファンの方について知識が足りない」場合を危惧していました。
また、従来、顧客情報をユニット別・7つのツールで分散管理していたため、顧客行動を全体像で把握することも難しい状況にありました。
Salesforceの導入は、顧客情報の一元管理を実現しました。加えてQ&Aデータを整理したことで、電話問合せは約9倍の速度に。また、ご懐妊の顧客に対して産後の飲酒再開時期に併せたプレゼント提供を行うなど、パーソナライズされた顧客対応が可能になり、ますますファンマーケティングが加速しています。
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