株式会社JTB

顧客情報と観光コンテンツ。
すべてのデータ統合で、お客様一人ひとりに寄り添える仕組みを

Salesforce Customer 360のビジョンをビジネスに取り込み、リアルでもデジタルでも、顧客と適切かつ連続性のあるコミュニケーションを実現

株式会社JTB(以下、JTB)は、ジャパン・ツーリスト・ビューローとして1912 年に創業。海外から来日する要人に、日本を案内することが主な業務でした。来ていただいたお客様に、国内の旅行を手配しています。それが旅行販売業者としての今の姿につながっていくのが歴史は脈々と受け継がれ、いまでも地域と共同で着地=観光振興の整備を推進しています。

その仕組みをデジタルで支えているのが、Salesforceだ。顧客1 人ひとりに対して、これまでのコミュニケーションで培ってきた関係性をより心地良いものへと発展させるべく、JTBの社員が対応しています。そして、デジタルを使ったコミュニケーションでも、関係性を深めていきます。Salesforce Customer 360のビジョンをビジネスに取り込み、JTBのビジネスは新たな領域へと踏み込もうとしています。さらに、そうして培ったノウハウを、共に観光による地域振興をめざす組織や団体へ提供する試みもスタートさせました。

1. 紙文化からの脱却。顧客の特徴を”コンテクスト”から捉えるシステムへ

JTBがSalesforceに取り組んだのは、いわゆる「デジタル化の遅れ」という課題を抱えていたためでした。日本の観光業界には紙文化が長く残っており、いまでも宿へ着けば紙のファイルをめくりながら予約情報を探すフロントスタッフの姿を至るところで見かけます。そのため、B2Bビジネスにおけるパートナーに、一気に変革を迫ることは難しいでしょう。
 しかし、お客様サイドはどうでしょうか。法人顧客である企業はデジタルを使っています。実際にサービスを利用してくれる企業内個人の大半は、スマートフォンを日常的に使用しています。それなら、社内に集まってくる情報はすべてデジタル管理し、紙プロセスの二度手間、三度手間をなくすことができそうです。
 そうしてJTBは、本来の強みである人と人とのコミュニケーションにデジタルの力を融合し、顧客の期待を超える価値を提供するという変革ビジョンを策定。まずは2013 年に、法人事業から本格的なデジタル化をスタートさせることにしました。
 これは、旅行事業としても先進的な取り組みでした。現場では、数多くの紙の資料を運用していました。営業拠点ごとに運用方法の違いもありました。それらをすべて、Salesforce上で吸収し、業務プロセスの統一を図りながら効率的に管理できるようにします。目標をシンプルに紙の廃止に置いてパイロットプロジェクトを実施したところ、年間に従業員50 人分の効果があると試算。初めてのSalesforceプロジェクトにゴーサインが出ました。

 

 このプロジェクトは、要件定義からおよそ1 年でシステム稼働に漕ぎ着け、その後わずか1か月半で全国100 拠点へと展開。情報をデジタルで管理できるようになったことで、業務品質が向上。すべてをWebで完結できるようになったことで顧客の利便性も高まり、セルフサービス化により情報収集スピードも向上しました。
 カスタマイズ商品である法人向けツアーでは、すべての要件を統一することはできません。その際にはHerokuを使って専用Webページを整備するなど、柔軟性にも富んだシステムが完成しました。
 このシステムをベースに、JTBはSalesforce利用を拡大。Sales Cloudによる営業情報の集約や、Marketing Cloud Account Engagement (旧 Pardot)を使った情報発信など、顧客とのすべてのコミュニケーション内容をSalesforceに蓄え、それを生かして顧客サービスを強化する仕組みへと発展させました。
 常務執行役員 ツーリズム事業本部 副本部長 檜垣 克己氏は、「Chatterで社内のコミュニケーションが活性化したことも成果のひとつです」と話します。「ある支店の悩みに対して、別の支店からアドバイスを提供したり、成功事例を共有したり、担当者が直面するお客様の課題に対して、本部を介さずとも全社で即応できる態勢を整えることができました」。
 たとえば、修学旅行は巨大市場です。毎年のように入札が行われ、ライバルも多いのです。同じ条件でより良い提案をするために、これまでは担当者の力量や支店のノウハウが問われてきました。しかし、いまでは全国で知が共有されています。顧客から好評だった提案内容は瞬時に共有され、支店ごとに異なるクライアントのニーズを加味して味付けし、活用することができるのです。「デジタル化と言えば、定量情報のデータ化に目が行きがちです。しかし、数値化できない定性情報を含めて、デジタル上でやり取りできることに大きな価値を感じています」(檜垣氏)

 

 B2CビジネスにおいてJTBの扱う商材は、旅行です。法人が顧客の場合、出張や研修旅行など、ほとんどの場合、明確な目的を持って顧客は旅行商品を購入してくれるが、B2Cビジネスでそうはいきません。「なぜ山に登るのか」、「そこに山があるからだ」という噛み合わない会話に何となく納得できてしまうように、人が旅に出る理由は極めて情緒的なのです。
 そのため、旅行業界において、顧客データは合理的な消費者を想定する他業界とは違った扱い方を求められます。さらに、データは購入時点で確定するわけではなく、購入以降のプロセスにも気を配らなければなりません。購入は予約を意味し、その後にキャンセルされる可能性もあります。出発前に予定を少し変更するケースもあります。そのため、旅行が終了した時点で、すべてのデータが確定することになります。そして旅行前から、交通機関や旅館、アクティビティなど、顧客が接するさまざまな関係先とデータを共有しておく必要があるため、セキュリティにも気を配る必要があります。
 これらの課題は優れたデジタル基盤の運用によって担保できますが、データの中身にも大きな違いがあります。購入頻度は日用品より長く、保険や自動車より短いのです。そして、そのために離脱をつかみにくいのです。年に何度も旅行に行く顧客が、すべての機会にJTBを利用してくれているとは限りません。そのため、「四半期に1 度利用してくれるお客様」は、確かに優良顧客ではあるのですが、「旅行機会の3 分の1でJTBを利用してくれているにすぎず、もっとアプローチしてウォレットシェアを高めたいターゲット」かもしれません。
 このため、多くの業界で使われているRFM分析をそのまま適用することは難しいのです。セグメントの切り方も、年齢や性別、居住地、購入金額などの単純属性で判断すると、ターゲットを間違えてしまう可能性が高いのです。旅行は情緒的なものであり、旅に出ようという思いは人それぞれです。そして、顧客がその土地を初めて訪問するのか、それともかつて住んでいたなつかしい土地を訪れたのか、予約情報だけで判断することもできません。

 
 
 
 
 JTBでは、顧客のコンテクストを追うことで、顧客の特徴をとらえようとしています。旅に出る理由や、旅行商品を購買に至った意思、顧客自身の背景など、質的な特徴から顧客の姿を正しく認知しようとしています。その際に重視するのは、「データがなぜ生み出されたのか」について考え抜くこと。現実世界で顧客が行動した結果がデータになります。その行動した理由こそ、顧客理解を最も助けてくれるものだからなのです。
 単にリフレッシュしたい、という思いと、その土地を旅行先に選んだ、という事実は直結しません。かといって、どこでも良かったわけでもありません。テレビ番組の企画のように、サイコロを振って行き先を決める人も居るかもしれませんが、それでもサイコロの目に割り当てる旅行先を選定してはいるということなのです。
 そうした顧客の心の奥底をデジタルでつかむ取り組みは、まだ道半ばです。ただ、手をこまねいているわけではありません。JTBは旅行商品のWeb販売においてSalesforceを活用。Marketing Cloudを使って顧客に対して働きかけ、顧客のインサイトやコンテクストをつかむ努力を続けています。ベースとなる顧客情報は蓄積されており、今後何らかの成果が生まれるかもしれません。
 ツーリズム事業本部 地域ソリューション事業部 企画・開発推進チーム 開発推進担当マネジャー(地域DX推進担当) 上西 竹史氏は、「これまでのコミュニケーションでつかんでいるお客様の好みをインサイトの領域まで拡大し、お客様一人ひとりが得られる実感価値を最大化することを目指していきたいです」と話しています。
 
 

2. 観光地が自ら運用するクラウド「地域共創基盤™」で一人ひとりに最適な旅を

 JTBは、訪日した外国人に、国内の観光名所を紹介することを目的に設立された経緯があります。そのため、創業当初から地域の観光振興に協力し続けてきました。JTBにとって、地域の発展をサポートすることは、自社のビジネス拡大につながり、同時に顧客満足度も向上させることができる三方良しの取り組みなのです。そして、JTBは地域を観光で発展させる根幹になるのは、相互理解だと考えています。
 上西氏は、「来ていただいたお客様一人ひとりを深く知ることはもちろん、地域の側から俯瞰的に見て、だれが来てくれて、どう感じて、どう行動したかをつかむことも大切になります」と話します。  地方公共団体の観光課やDMO(「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりの舵取り役を担う法人:Destination Management Organization)は、予算と人員が限られる中で、さまざまな施策を実行しています。ただ、JTBが実現し、より発展させようとしている「顧客一人ひとりに対しておもてなしできる仕組み」よりむしろ、広告に力を注ぐ傾向にあるのです。
 広告は、知名度を上げ、旅への期待を高めるために有効な手段になります。反面、一方通行のコミュニケーションになり、受け手となる顧客を知ることにはつながりにくいのです。そこでJTBは、これまでSalesforceを土台に作り上げてきたシステムとノウハウをパッケージングして地域に提供するビジネスをスタートさせました。2018 年10 月に提供を開始した「エリアアナライザー」がその第1 弾になります。

 エリアアナライザーは、地方公共団体の観光課やDMOが利用するクラウドシステムです。旅行者の情報を把握することで、彼らのニーズに最適な提案を可能にし、優れた体験をしてもらうことを支援しています。地域のあらゆる観光データを一元管理することができ、さまざまな視点から顧客の体験情報と組み合わせて分析できる機能も備えています。

 

 コロナウイルスの蔓延により、観光地でも入場管理の仕組みに注目が集まっていますが、エリアアナライザーはそれにあらかじめ対応していました。オンラインで申し込みがあれば、クーポンを発行し、顧客の入場時にQRコードを読み取ることで本人確認が行われるのです。
 この仕組みには、Salesforceのテクノロジーが随所に生かされています。申し込み受付はHerokuで構築するポータル画面を利用。そこに顧客が情報を入力すると、Marketing CloudからQRコード付きのクーポンを自動発行。同時にService Cloudに顧客情報が登録され、クーポン実行時に該当顧客との照合が行われます。このように、エリアアナライザーは、JTBが運用しているSalesforceのノウハウも含めたトータルなソリューションとして利用することができるのです。
 ただし、エリアアナライザーはJTBの業務として実行する仕組みのため、業務期間終了後に顧客情報は蓄積しません。クーポン利用を感謝するメールを送ることなどは可能だが、地域ごとのプラットフォームとして環境整備するものではないため、何度も訪問してくれる顧客と地域との永続的な関係づくりは難しいのです。つまり、顧客一人ひとりに対しておもてなしできる仕組みではあるものの、ピンポイントの施策を実行する性質のもの、という課題があったのです。

 

 この問題をクリアするためには、地方公共団体の観光課やDMOがシステムの運用主体にならなければなりません。そこでJTBが用意したパッケージが、「地域共創基盤™」です。地域共創基盤もSalesforceのテクノロジーを利用して開発したクラウドアプリケーションではありますが、こちらは地方公共団体の観光課やDMOがそれぞれに環境を構築し、運用することになります。
 地域共創基盤では、エリアアナライザーに含まれるすべての機能を使用することができる上に、オリジナルな機能を追加することも自由に行えます。顧客情報は顧客の同意を得るプロセスを経れば、いつまでも保有し続けることができ、顧客と永続的にコミュニケーションをとり続けられるのです。
その過程で顧客の変化を知り、顧客をより深く理解することで、顧客一人ひとりに対して、彼らがいま最も求めていると推察される体験やコンテンツを提案することができます。
 そのために、地域共創基盤は顧客のジャーニーを起点に、事業者のジャーニーが寄り添えるような設計になっています。いわゆるタビ前、タビ中、タビ後において、顧客の感情に寄り添い、その思いを把握し、最適な体験を提案。タビ後には再訪を促すさまざまなアクションを取ることができるのです。情報が蓄積されればされるほど、膨大なデータを多角的に分析できるようになります。それは、地域として用意しておいた方が良いサービスや設備を検討する際に、より精度の高い意思決定を行うことにもつながるのです。

 
 
 
 

3. 変化する顧客に寄り添い続けるデータドリブンな観光マーケティング

 2020 年8 月26 日、JTBとセールスフォース・ドットコムは地域経済のデジタルトランスフォーメーション(DX)を共同で推進する包括的な提携を行うと発表しました。両社は、デジタルを活用した地域経済の活性化を協力して推進し、オンラインとオフラインを融合した地域創生を目指しています。
 スローガンは、「地域から世界へ」。Salesforceを活用し、観光ビジネスを中心に、各サービス分野と連携した地域でのデジタルビジネスの創造を支援します。それにより、持続可能な地域社会の発展につなげ、広く世界の顧客とつながりたいという思いを込めました。
 この提携で両社は、デジタル人材の育成にも力を注ぎます。将来の観光産業の活性化にはデジタル人材が必要であり、地域と都市部との間で拡大するデジタル格差を解消するという意義もあります。その基軸になるのがエリアアナライザーであり、地域共創基盤なのです。優れたデジタル人材が育てば、地域共創基盤をすべて主体的に運用し、その機能を余すところなく活用できるのです。
 人材育成には時間がかかるものだが、JTBはセールスフォース・ドットコムの公式コンサルティングパートナー契約を締結したことで、そのギャップを埋めています。当面は、システム面、人材面などに不安を抱える地方公共団体の観光課やDMOには、JTBとセールスフォース・ドットコムがコンサルティングとシステムの両面からサポートを提供する形態が中心になりそうです。地方公共団体の観光課やDMOにとっては、地域共創基盤を使いながら、人材も育てられる態勢を整えられることがメリットになります。

 

 観光業界は、顧客一人ひとりに寄り添うことを大切にしてきました。旅行会社は顧客のニーズを理解してプランを提案します。旅館やホテルでは、なじみの顧客にオリジナルのサービスを提供するところも少なくありません。いわゆるホスピタリティ産業の先頭に立って、観光業界は育ってきました。
 確かに、個々のサービスは優れています。しかし、組織全体として見るとどうでしょうか。旅行会社の担当者が変わっても、同様の提案をしてくれるのでしょうか。宿の主人や女将が代替わりしてもいままでと同様の居心地を提供してくれるのでしょうか。JTBの取り組みは、これらの顧客が抱える不安を払拭しようとするものです。顧客一人ひとりに、組織として向き合う。顧客が法人であれ、個人であれ、もしくは法人内個人であれ、顧客を正しく理解し、その最新のニーズを捕捉し、常に最適な提案と体験を届けるのです。
 地域共創基盤の世界になると、その単位が1 社ではなくなります。地域全体として、1 人の顧客をおもてなしすることになるのです。檜垣氏は、「不特定多数のお客様ではなく、顔の見えるお客様に来ていただけるようになる、という変化が生まれるかもしれませんね」と話します。少しでも早いタイミングから顧客を知り、そのニーズをとらえています。そして最適な体験を提案して旅を楽しんでもらい、旅行後にも余韻にひたってもらうのです。

 

 もう1つ、檜垣氏が指摘したことがあります。「いまの観光施策は、地域の観光事業者を平等に取り扱うことがほとんどです。何かにフィーチャーすると、次は別のコンテンツ、といったローテーションがルーティンで回るような印象です。今後、プロモーションを含めて、観光施策の優先順位はお客様から見てより納得感の高いものになるでしょう」。
 なぜなら、観光施策の意思決定にデータを使えるようになるためです。エリアアナライザーは個人情報を蓄積できないが、地域の観光スポットの動態把握とアンケートなどでわかる訪問者の気持ちを組み合わせた分析も可能です。地域共創基盤になれば、観光情報に多彩な顧客情報を加えて、多角的に、かつリアルタイムに分析することができます。観光地が備えるコンテンツの、ニーズに対する不足と過剰が明確になるのです。そして、体験提案は個別具体的なものになり、それが故にいまはマイナーなスポットにも光が当たるかもしれません。
 目指すのは、観光地が地域全体として元気になることです。そして、だからこそ、人気の集中の把握とコントロールを行い、そこからのマイナーなスポットの個別提案などきめ細やかなレコメンドが必要です。コロナ渦で会社に行かなくても働ける職種が多いことに気づいた企業も多いでしょう。観光地を訪れながら、そこで仕事をする人も少なからず居ます。これは、コロナが終息しても変わらない流れになるでしょう。そうした新しいニーズも取り込みながら、観光というビジネスは持続的な発展を求められることになるのです。たとえば、そのために必要なコンテンツやサービスも、データが明らかにしてくれるはずです。

 

 重要なのは、顧客に寄り添う仕組みは常にアップデートしていかなければならない、ということです。顧客の嗜好は変わり、提供すべきコンテンツも変わります。JTBが社内で運用しているシステムも、永遠に完成することはなく、地域共創基盤はあくまでも「基盤」なのです。それらをうまく運用し、データを蓄積し、更新し続けることで、いつまでも顧客に寄り添うことが可能になるのです。
 檜垣氏は、「データドリブンなマーケティングは、商品や体験の開発と改善にも有効です。私たちが社内で使いこなしてお客様により良い体験を提供することはもちろん、そのノウハウを広く地域へと提供し、全国の観光地と歩調を合わせて成長できるよう努力していきます。観光地が活性化すれば、JTBのビジネスも成長できますから」と話してくれました。

 

その他のリソース

 

顧客事例

全日空お客様事例

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