インサイドセールスとは?導入メリットと成功事例

 
2023.4.4
インサイドセールスとは、見込み顧客に対して電話やメールなどを利用し非対面で行う営業活動のことです。特徴やメリット、導入方法までわかりやすく解説します。フィールドセールスとの役割の違いや成功事例も合わせてご紹介します。

インサイドセールスとは

インサイドセールスとは、見込み客(リード)に対して非対面で行う営業活動のことです。「内勤営業」や「リモートセールス」とも呼ばれ、その営業手法には、電話やメール、SNS、Web会議システムなどが用いられます。

会社にいながら営業活動が行えるため、スピード感のあるアプローチや効率的な営業活動ができる点が強みです。

一方、従来型の営業手法である「外勤営業」は「フィールドセールス」とも呼ばれています。インサイドセールスとフィールドセールスは、それぞれ役割や得意とする分野が異なります。

商談の進捗や顧客との関係を考慮し、適切に組み合わせることで、営業活動の効率化やチャンス創出につなげられます。

インサイドセールスの特徴と役割

インサイドセールスの特徴は、リモートならではのスピード感や営業効率の高さです。素早く、効率的に多くの見込み顧客と接触して関係を構築できるため、商談化する前の営業活動に適しています。

一方で1対1の具体的な商談にはあまり向きません。そのため、見込み顧客が案件化した場合、その後の対応は営業(フィールドセールス)へ引き継ぎます。インサイドセールスが顧客のニーズをどこまで聞き出せていたかでその後のクロージングは大きく変わってきます。

上図のように、インサイドセールスを取り入れた営業フェーズは大きく3つに分けられます。マーケティング活動によって見込み顧客を獲得し、それをインサイドセールスが電話、メールなどでフォロー。案件化したところで、営業(フィールドセールス)が具体的な提案をして受注確度を高めます。

このように、営業範囲を分割することで各業務の進行がスムーズになり、1つの案件に費やす時間は増えます。その結果、案件単価や成約率の向上につながるのです。

 
 
 
 
 
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インサイドセールス
従来の営業スタイルが抱える
4つの思い込み
なぜ「インサイドセールス」が強い営業組織をつくるために有用なのか、「従来の営業スタイルが抱える4つの思い込み」から紐解きます。

インサイドセールスの種類

「THE MODEL」が提唱する分業型営業組織にはSDR とBDRという2つのセールスチームが存在します。ここでは各チームの特徴と違いを紹介します。

インサイドセールス担当者は、CRMシステムマーケティングオートメーション、ソーシャル分析ソフトウェア、ソーシャルセリングツールなどを利用して、適切な見込み客にすばやくコンタクトし、セールスサイクルを短縮し、顧客獲得単価を削減できます。

SDR(反響型)

SDRとは、「Sales Development Representative」を略したものであり、ブログやSNSといった自社コンテンツを活用するインバウンドマーケティングによって集めたリード/見込み顧客を案件化まで持っていき、フィールドセールスに引き継ぐセールスチームのことです。「反響型」とも呼ばれています。

インバウンドマーケティングによって集められた見込み顧客は、担当者自身がコンテンツを見て問い合わせや資料請求をしてきたことから、すでにある程度自社に興味を持っている状態と言えます。SDRでは、そういった方々の熱が冷めないうちにタイミングを図りつつ、適切なタイミングでコンタクトをとることが求められます。

SDRの対象となる企業は中堅・中小企業が中心のため、案件数は確保できますが、1件あたりの受注単価や継続率が懸念される要因となっています。

BDR(新規開拓型)

BDRとは、「Business Development Representative」を略したものであり、「新規開拓型」と言われるように、事業規模や相性を考慮し、セグメントに分けてアプローチをかけるセールスチームになります。

対象企業は大手企業が中心となることが殆どで、アプローチの仕方もSDRとは異なります。SDRではフィールドセールスに引き継ぐ際に特に決まりがないケースが多いです。しかし、BDRでは、対象企業に応じて、インサイドセールスとフィールドセールスの担当が決まっており、よりチームとして動くことになります。

SDRとBDR、どちらが優れているというわけではありません。アプローチする対象によって、上手くチームを使い分けることが重要です。

インサイドセールス導入のメリット

インサイドセールス導入のメリットは、おもに下記の3点があります。

  • 営業活動の効率化
  • 営業範囲の拡大
  • コストの削減

インサイドセールスの大きな特徴に、省コストでより多くのチャンスを創出できる点があります。SDRにおいては、問い合わせをもらったリードに対してシナリオに沿ったアクションを定めておくことで、定型的かつ効果的な営業ができます。

BDRにおいては、営業をかける対象を業種や企業規模などでフィルタリングしておけば、費用対効果を高められます。また、営業活動を標準化することで省コスト化が進めば、残ったリソースで営業範囲の拡大も可能です。

インサイドセールスの導入方法

ここからは、インサイドセールスの立ち上げ方や導入ステップについて、順を追って解説します。

1)営業プロセスを分業化し、担当範囲を明確化する

最初にやるべきことは、営業プロセスの分業化と、担当範囲の明確化です。

従来の営業スタイルでは、営業担当者がリードの発掘から成約までを担っているケースが多く、営業活動が属人的になりがちでした。しかし、インサイドセールスには「リードの育成」という明確な役割があり、同時に強みと弱みもはっきりしているため、フィールドセールスと担当を明確に分ける必要があります。

担当範囲があいまいだと、営業活動に過不足が発生しかねず、進捗の食い違いにも繋がります。最悪の場合、クレームに発展し得るため、担当範囲は明確にしておきましょう。

2)インサイドセールスの所属部門を決める

担当範囲が明確になったら、インサイドセールスを担当する所属部門を決定します。よくあるパターンとしては、マーケティング部門か営業部門、もしくは新規立ち上げのインサイドセールス専門部門の3つが考えられます。

マーケティング部門が担当すると、リード獲得から一貫した対応が可能で、リードの特徴を把握しやすくなります。一方で、新規リード獲得のために、リソースが削られる点に注意しましょう。

営業部門が担当すると、インサイドセールスとフィールドセールスを一貫して行え、リードとより深い関係を構築できます。顧客側からしても、担当者が一貫しているのは安心感に繋がります。

しかし、営業活動の属人性が高くなる可能性があるほか、担当1人あたりにかかる負担が大きいのがデメリットです。

独立部門として新規立ち上げする場合は、担当者や予算など多くのコストとリソースを求められますが、インサイドセールスによるリード育成に専念できるメリットもあります。

リード育成には、継続的なコンテンツ提供やフォローアップを必要とすることもあり、専念できる部門の創出はとても効果的です。初期投資はかかりますが、長い目で見れば結果的にプラスとなる可能性もあります。

3)人材の選定・確保

担当部門が決まったら、業務にあたる人材を選定して確保します。選定する人材像は、フィールドセールスやマーケティングに知見のある人です。

インサイドセールスは、マーケティングやフィールドセールスと連携しながら進めていくことになるので、それぞれの現場感が分かる人材がいると理想的です。とはいえ、既存のマーケティングや営業部門から選出すると、各部門の戦力が減るデメリットもあります。

部門新設とともに新規採用したり、業務の一部をアウトソーシングしたりする方法もあります。このやり方だと、既存リソースを割く必要はありませんが、最初からこれらの方法を採用すると、スタンダードを確立するときに会社の実情が反映されにくい恐れもあります。

そのため、核となるメンバーは社内から選定し、徐々に新規採用やアウトソーシングを利用していくのがおすすめです。

4)KPIの設定

人材の確保が完了したら、動き出すまえに、インサイドセールスを成功に導くためのKPI(各段階の目標)設定を行いましょう。

KPIとは、「Key Performance Indicator(重要業績評価指標)」の略で、事業の各プロセスが適切に達成されているかを測るための指標です。指標としてよく使われる項目には下記があります。

  • 商談化率・商談化数
  • 受注率・受注数
  • メール開封率
  • 架電数(電話をかけた回数)・通話時間

営業活動にインサイドセールスを取り入れた分業制においては、案件の受注数だけでなくプロセスにもKPIを設定することが大切です。

たとえば、新規の見込み客を月に200件創出し、そのうち30件を商談化、そこから3件を受注につなげることを目標に設定すれば、「案件を広げる力」と「案件を進める力」の可視化できます。また、各段階のKPIを明確化することで、社員のモチベーションアップにもつながります。

5)顧客情報の一元管理

インサイドセールス開始までの下準備が整ったら、最後に顧客情報を一元管理できる環境を整えましょう。顧客情報を一元化することで、リード獲得から育成、受注までのプロセスをまとめて管理できるほか、顧客情報のデータベース化も可能となります。

このとき、SFA(営業支援システム)・CRM(顧客関係管理)など、専用の顧客データ管理ツールを使うのがおすすめです。SFA・CRMツールは、使い方次第で会社の基幹システムとしても利用できます。会社全体の情報管理体制と合わせて検討しましょう。

 
 
 
 
5分で学ぶシリーズ
SFA・CRM編
顧客情報を会社の資産として一元管理し、部署の垣根を越えて連携することで、全社で同じ方向を見て、各顧客に合わせた最高の購買体験を提供することができます。

インサイドセールスの成功事例

ここで、実際にインサイドセールスを導入した成功事例をご紹介します。

インサイドセールス導入時に直面した「4つの壁」を乗り越えたSansan株式会社

 
会社名:Sansan株式会社

名刺管理サービスで知られるSansan株式会社では、2011年にインサイドセールスを導入するにあたって「KPIの壁」「データベースの壁」「環境の壁」「教育の壁」という4つの壁に直面しました。

インサイドセールスは、従来の営業手法が抱える課題をクリアできる手法として注目されていますが、実際のところは現場とのすり合わせが必要で、そのギャップに苦しむこともあります。Sansan株式会社は、これらの壁を次のように乗り越えていきました。

  • KPIの壁
    従来のKPIでは、部門ごとの評価はできても全体の評価が難しくなっていました。そこで、新たなKPIとして、自分たちが供給した案件の受注金額の合計値を「受注貢献額」として会社全体のKPIに設定しました。
  • データベースの壁
    壁を乗り越える前は、マーケティング部門・インサイドセールス部門・営業部門で異なるデータベースを持っていました。それを、メールアドレスリンクにより、各データベースを紐づけることでギャップを解消しました。
  • 環境の壁
    電話による営業には、受電対応に追われてしまうことと、電話と向き合い続けるストレスの問題がありました。まずは、自動音声を導入することで、受電対応の負荷を1/3程度に軽減しました。さらに、IP電話を導入して、パソコンやスマートフォンから架電できる環境を整え、場所の制限を排したことで、対応するスタッフのストレスも軽減されました。
  • 教育の壁
    これまでの営業活動は、マニュアルの作成やノウハウの共有が難しく、属人化しやすい状況にありました。しかし、インサイドセールスで必要になる情報を集めた社内向けマニュアルサイトを活用することで、この問題を解消。マネージャークラスのみに更新権限を付与することで、情報の正確性をも確保しました。

上記4つの壁は、どれも現場の実情を踏まえた案を用意することで解決へと至っています。インサイドセールスは導入して終わりではなく、そこから現場とどうすり合わせていくかが大切なのです。

ここで、Salesforceでインサイドセールス部門を統括している鈴木淳一が書いたブログ記事から、インサイドセールスのミッションや活用法、組織作りのためのポイントなどをご紹介します。

Salesforceにおいてインサイドセールスの重要なミッションとは、顧客にもっとも近くで寄り添い、ニーズや状況の変化を他部門へとフィードバックし、顧客満足度向上やカスタマーサクセスへとつなげていくことです。

このフィードバック精度を高めるために、Salesforceではツールによるデータの見える化に取り組んでいます。インサイドセールスによる顧客とのアポイント獲得から、フィールドセールスでの受注に至るまでのプロセスや進捗をリアルタイムで共有することで、各顧客へのアクション決定やボトルネックの解決をスムーズに行えるようになっています。

そして、インサイドセールス部門の成功には、適切な人材の確保と育成が欠かせません。上記の7ステップを踏まえて、相手の話に興味を持ち理解・共感する「傾聴力」や、その根幹となる「好奇心」、そして物事の本質を追い求める姿勢を持った人材を配置・育成することが大切です。

このように、インサイドセールスを成功に導くには、インサイドセールスで行う施策や事業だけを見るのではなく、組織全体を巻き込んだ連携体制や人材の育成などが必要になってきます。

そのため、インサイドセールスをスタートする際には、組織内でビジョンを共有し、根幹となるコンセプトを確立しておくとよいでしょう。

 

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