変革のために何年も待つ必要はない。短期間で顧客体験を刷新したフォードの事例

フォードがどのように新しいテクノロジーや考え方を取り入れて、業界最高水準の顧客体験を提供しているのか。

読む時間の目安:5〜6分

近年、いくつかの伝統的な大手企業は何十年と行なってきたビジネスのやり方を変革して、急速に変化するお客様の期待に対応しなければなりませんでした。

自動車業界を象徴する企業であるフォードは、2022年の初期に自社が極めて重要な転換期を迎えていることに気がつきました。フォードはすでに遅れをとっていることを認識し、新しいテクノロジーと考え方を見事な方法で導入しました。ここでは、フォードが4ヶ月間で、お客様に最高水準の顧客体験を提供し、効率的な働き方を実現した取り組みの一部をご紹介します。

  • お客様の注文の追跡をリアルタイムにパーソナライズして通知することで、納車の電話問い合わせを650時間削減しました。
  • お客様宛てのメールやメッセージの承認者数を21名から2名に削減することで、顧客とのやり取りのコスト効率を大幅に改善しました。
  • 新しいクラウドプラットフォームを立ち上げて、フォードの全ての顧客データを一元管理できるようにしました。

上記のように、より良い顧客体験を提供することによって、業務効率やコストの大幅な改善にもつながります。

このように、お客様に提供する体験の改善は、効率や収益の向上という極めて有益な改善にもつながるのです。
ここではフォードのセールスフォースのカスタマー360を活用した取り組みをより詳しくご紹介します。 

 
 
 

1. 顧客データを共通の画面で共有することで、サイロ化したチーム間の分断を解消

2022年の初めに、フォードは自社組織を内燃機関事業、電気自動車事業、Ford Pro(政府・企業向け事業)の複数の事業に分割しました。しかし、重要だったのは、同時に社内の連携の改善に取り組んだことです。フォードでは各部門が長年に渡って個別に業務を行なっており、複数のバージョンの顧客データを持っていました。お客様と持続的かつ有意義な関係作りをするために必要な、顧客情報を集約した共通画面を持っていませんでした。

「社内には営業、サービス、コールセンター、カーファイナンスなどのチームが存在していましたが、どのシステムもデータを連携していませんでした。」と、政府・企業向けサービスを提供するFord ProのCEO、Ted Cannisは述べています。「信頼できる唯一の情報源が存在しなかったのです。」

フォードは、全ての顧客データをSalsforce Platformに集めるための基盤を4ヶ月で構築しました。フォードは、Sales CloudCustomer Data PlatformMuleSoftService CloudCRM Analyticsを活用して、データを活用して全てのチャネルで施策を展開でき、顧客に合ったエンゲージメントを実現できています。

 
 
 
 

2. 企業文化とテクノロジーを融合させる方法

フォードはこれまでのやり方に新しいテクノロジーを当てはめるだけでは成功しないと考えていました。テクノロジー、ITシステム、業務プロセスの枠を超えた議論を行い、全社の総力を結集した本当の意味での変革が必要だと考えていました。

構想策定から価値実現への取り組みを加速するために、同社はSalesforceのプロフェッショナルサービスと戦略的パートナーシップを締結し、140人以上の人材を投入しました。

フォードの統合マーケティングコミュニケーションマネージャーのEloise Lidellによると、最初のセッションでは、どのようにフォードに変革を起こすのか、その変革について従業員がどう感じるのか、幅広い協力や賛同が得られるのか、について注力しました。

「ただちに、システム開発に着手したのではなく、企業文化に影響を与える取り組みに時間を費やしました。この体験によって、これまでの常識にとらわれずに、新しいテクノロジー、アイデア、働き方を受け入れて、企業変革を進めていく準備が整ったのです。」とLidellは述べています。「なぜなら、多くの場合、テクノロジーそのものよりも、どのように改革を進め、どのように業務を行うのかの方が重要だからです。」

フォードは、自社の変革を加速させるために必要な技術的な専門知識を得るために、専任の専門技術者による支援が受けられるSignature Sucesss Planを選択しました。このプランでは、技術的な支援だけでなく、システムの継続的な監視を行ってシステムのパフォーマンスに影響が出るような課題のフォードへの報告も行なっています。このように変革による混乱を最小限に抑えることで、フォードは事業運営に注力できています。

 
 

3. 動的なダッシュボードを構築し、意思決定をリアルタイムで実行

フォードの変革は多様な観点で企業の効率化につながっています。ただし、この変革の鍵はリアルタイムに自社の効率性を測定できるようになったことです。

CRM Analyticsを活用することで、フォードの営業、サービス、マーケティング、ディーラーの各チームは、業務プロセスの中で有用な分析結果に基づいて行動できており、データ駆動型の意思決定が可能になっています。また、フォードはCRM Analyticsを活用して、顧客エンゲージメント、問い合わせ対応、キャンペーン管理・運用などの領域で、業務変革の価値を動的に測定できるダッシュボードを構築しています。

4ヶ月後には、メールのクリック率が48%も大幅に上昇して、キャンペーン管理にかかる時間を4日間短縮できています。

 
 
 
 

4. 外出先でも新たなビジネスチャンスを逃さない

自社のビジネスを見直すことで、ときには新たなビジネスチャンスを発見することもあります。フォードは、配管工、電気技師、ケータリング業者、造園業者など、屋外で業務を行なっており、どこからでもお客様に対応する必要がある小規模事業者を支援するデジタルツールが必要だと考えていました。

フォードは、Salesforce上に新しいフィールドサービス管理のソフトウェアであるVIIZRを立ち上げました。このソフトウェアは、フォードの顧客ではなない事業者も活用できるモバイルでの現場出向管理・作業支援ツールです。リアルタイムでの現場出向のスケジューリング、デジタルでの請求書の発行、現場技術者による作業調整などが行えるため、事業者の生産性や業務効率を大幅に改善しています、トラックなどの現場でも業務が行えるため、コストの節約に寄与しています。

「Ford Proにとって、極めて重要だったのはこういった分断したサービスをワンストップで提供できるようにすることでした。」とCannisは述べています。「すべてのユーザーを紙による作業から解放するツールが必要でした。」

 
 

5. 注文の状況を事前にお客様に通知

サプライチェーン危機の状況下で増え続けているお客様の問い合わせは「私の注文はどうなっているのか?」です。フォードがSalesforceで最初に行ったことの一つは、顧客が新車の納車状況を問い合わせる必要をなくしたことです。Marketing CloudSales Cloudを活用して予約から納車までのすべてのステップで車両の状況を追跡し、顧客にリアルタイムで情報提供できるようにしました。すべての更新情報にて、パーソナライズされたバナー、カスタマイズされた車両の画像、車体番号などが表示されます。

システム導入以前は、更新情報の受信方法はメールのみでしたが、Marketing Cloudを使うことで、SMSまたはメールのいずれかから受信方法を選択できるようになりました。
 
 
 

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  • 社内外のステークホールダーのコラボレーションを強化する。
 

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6. 自動車の通信機能を介してお客様に必要な情報のみを提供

先述の注文の更新情報の提供は、フォードが、お客様のニーズや関心を理解して、能動的にパーソナライズしたコミュニケーションが取れる企業へと変貌するための第一歩だといえます。例えば、自動車の走行データを元にして、「あと500マイルでオイル交換が必要です。」という通知がFordPassアプリに届くようなサービスも考えうります。

Marketing Cloud、Service Cloud、Sales Cloud、CRM Analytics、MuleSoftの活用によって、フォードは新車(中古車)の購入から、アクセサリの購入、オンボーディング、カーメンテナンスまでの顧客体験をつながりをもって一つのプラットフォームで提供できるようになっています。

 
 

“私たちの狙いは、お客様に一貫したサイクルでサービスを提供すれば付加価値を提供できるということです。これは、日々、お客様に価値をお届けし続けるという当社の約束であり、挑戦でもあります。フォードの119年間の歴史を刷新する取り組みです。”

Jim Farley(CEO)

 

その他のリソース

 
 

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