【DX事例10選】デジタルトランスフォーメーションを推進するメリットを紹介

 
最終更新日:2024.3.6
実際のDXはどのようなものでしょうか?そして、ビジネスのあり方をどのように変化させているのでしょう?マーケティング、営業、サービスにおいてDXを成功させ、顧客との関係強化と従業員の能力向上を実現した、さまざまな業界の事例をご紹介します。

マーケティングにおけるDX事例

マーケティングにおけるDXの目的とは、大まかに言えばコストを削減しつつ、より多くの顧客を獲得することです。具体的には、優れたデジタルマーケティングで質の高いリードを獲得し、新規顧客か長年のロイヤリストかに関わらず、すべての顧客との関係性を強化することです。

これらの目的を目指すににあたって、マーケティング素材をアナログからデジタルへ移行することで2つのメリットを得られます。第1に、デジタル素材は、アナログ素材に比べて全般的に製造や流通のコストを抑えられます。たとえば、Eメールキャンペーンは、紙媒体のダイレクトメールキャンペーンよりもはるかに低コストです。第2に、デジタルマーケティングを導入することでマーケティングオートメーション、分析によるトラッキングなど、アナログでは不可能な顧客とのやり取りなどが可能になります。

画一的なファネル設計の代わりにOne to Oneのジャーニーを構築し、顧客行動の分析に基づいて各顧客に最適な体験をアレンジすることができます。また、感覚や直感だけに頼るのでなく、データから得られたインサイトを活用してカスタマージャーニーを構築することができます。

 
 

デジタルトランスフォーメーション(DX)のはじめかた

 
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DXによりマーケティング担当者と個々の顧客とのつながりを強化

 
従来のマーケティングチャネル デジタルマーケティングチャネル DXにより得られるメリット
印刷宣材 デジタル宣材 印刷と配布コストの削減、デジタルインタラクションにもとづく見込み客の採点/格付け
郵送のダイレクトメールキャンペーン Eメールキャンペーン 印刷と郵送コストの削減、送付範囲の拡大と柔軟なパーソナライズ
チラシや広告板 ソーシャルメディア広告 ターゲットのパーソナライズ、類似ターゲットの絞り込み
実店舗 Webサイト/Eコマースサイト 賃貸料/光熱費が不要、アクセス性と拡張性の強化、見込み客の大規模な育成が可能
ポイントカード モバイルアプリ 登録手続きの簡素化、カード発行コストの削減、プロモーションのパーソナライズとリアルタイムのセール、セールやメッセージのプッシュ通知が可能

営業におけるDX事例

デジタル時代において、マーケティングと営業の従来の役割が見直されていますが、それには十分な理由があります。その理由とは、「データ」です。

消費者行動についての大量で正確なデータを得られるようになったことで、マーケティングチームと営業チームは、これまでにないやり方で業務を進めることが可能になりました。個々の消費者を観察し、その行動を最初のタッチポイントから購買ジャーニーに至るまで分析することで、マーケティングと営業の間に元々存在していたつながりが表面化しました。このつながりを強化し、これまで別々に活動していた両チームが連携することで化学反応が起こります。

データがあらゆる営業担当者の生産性を向上

質の高い大量のデータを得られることで、営業担当者は特に恩恵を得られます。マーケティングチームと営業チームがCRMで情報を共有し、個々の営業担当者が営業活動を開始した後に常にパイプラインの情報をアップデートすることで、組織全体にスムーズに情報が行き渡ります。

そうすることで2つの大きなメリットが生じます。まず、同じ情報を複数人で確認することにより、ビジネス全体でさまざまな知見を共有するチャンスを得られます。たとえば、マーケティング担当者が、ある見込み客に関する営業担当者のメモをCRMで目にし、関連性の高いマーケティングキャンペーンの情報を共有すれば、商談を進めることにつながります。

次に、社内における情報の流通と蓄積が進むと、たとえば、AIのような最新のデジタルイノベーションの導入が容易になります。

DXが生み出すAI主導の営業テクニック

AIは、膨大なデータを吟味し、そこから有益なパターンなどのインサイトを引き出す際に大きな威力を発揮します。AIサービスが進化すれば、営業データやマーケティングデータをエンドユーザーの立場から評価できるだけでなく、営業テクニックや営業戦略そのものの有効性を評価できるようになります。たとえば、どの顧客層が1年のどの時期に購買意欲が高まるかといったインサイトだけでなく、どの営業戦略が長期的に効果的か、どのプロモーションやどのバンドル販売が長期的なトレンドに逆行して売上を阻害しているのかといったことも明らかにできます。 

外部ソースからさまざまなデータセットが入手できるようになれば、営業チームの活動履歴だけでなく、市場データもAIで分析できるようになります。そこから相関関係やパターン、さらに偏りなども検知することで、取引先との営業交渉における競争優位性を得られます。AIの導き出したインサイトを営業チームの知見と組み合わせること。これが、営業のDXにおける理想の状態でしょう。

ソーシャルセリング戦略がDXの鍵

今やソーシャルメディアはいたるところに存在し、人と人とをつなぐとともに、ニュース、娯楽、ブランドとのやりとりと組み合わさっています。PricewaterhouseCoopers社の最近の調査により、78%の消費者が購買プロセスにおいて何らかの形でソーシャルメディアの影響を受けていることが明らかになりました。さらに、消費者の半数近くは、購買行動にソーシャルメディアのレビューやコメントから直接影響を受けたと回答しています。

消費者のソーシャルメディア利用が普及したことで、購買プロセスは変化しました。DXで成果を収めるには、ソーシャルセリング戦略を取り入れる必要があります。優れた営業担当者にとって、ソーシャルメディアは見込み客や長期顧客との関係を構築するチャンスにあふれています。

 
 

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サービスにおけるDX事例

デジタル時代においては、ビジネスの他のあらゆる部門と同じく、カスタマーサービスの役割についての既成概念も崩れました。変化はどの部門よりも激しいと言えます。

「オンデマンドエコノミー」のきっかけは、一握りの新興企業がいそがしい都会生活者のために代行業やハイヤーを提供するアプリを開発したことでしたが、その後急成長を遂げ、今や世界的な流れになっています。Forbes社が言うように「経済全体がウーバー化された」のです。スマートフォンの普及、電子決済システム、需要(消費者)と供給(ギグワーカー)をリアルタイムでマッチングするアプリ。この3つが組み合わさったことで、ほとんどすべての需要をいつでもスマートフォンひとつで満たすことのできる世界が出現しました。

これこそがDXです。ピザの宅配もベビーシッターもスマートフォンで注文できる今、ますます多くの企業や業界が、取引の主要な手段としてデジタルチャネルの導入を求められています。これは、サービス部門にとっては、顧客の望むチャネルで24時間365日の対応を求められるということを意味します。しかし一方で、多くのビジネスチャンスにつながり、売上を伸ばせるということも意味します。

ソーシャルメディアはカスタマーサービスの新たな拠点

あらゆるソーシャルメディアチャネルで顧客の声に耳を傾けて対応するという作業を、一つひとつスマートフォンでTwitterやLinkedInアプリを開いて行うと考えると、大変な作業に思われます。しかし、ソーシャルサービス向けに設計されたさまざまなツールを使えばそれほど難しくはありません。顧客ニーズの割り出し、自社のサービスワークフローへのソーシャルチャネルの連携、さまざまなソーシャルメディアでのブランドセンチメントや活動の測定も簡単です。

デジタル化された世界でビジネスを成功へ導くには、顧客がすでに存在している場所で顧客と出会うということが重要です。顧客ニーズ対応に苦しむか、それともサービス通話を売上拡大のチャンスに変えるのか。この差は、DXのマインドセットでソーシャルサービスに対応できるかどうかにかかっています。 

そのためには、社内のさまざまな部署の連携が鍵となります。その点は、Salesforceの『コネクテッドカスタマーの最新事情』レポートで明らかです。高いパフォーマンスを発揮しているマーケティングリーダーの84%が「ソーシャルでの問い合わせや問題解決に対し、サービス部門とマーケティング部門が連携して対応している」と回答しているのに対し、同様の回答をしたパフォーマンスの低いマーケティングリーダーは37%にとどまりました。情報のサイロ化を脱却すれば、チーム間のコラボレーションが促進されてビジネスにその成果が反映されます。 

セルフサービスはサービス担当者の心強い味方

かつては缶詰からキッチン用品まで、電話で通販をしていた時代がありました。商品についての問い合わせから保証のクレームまでのすべてを0120のフリーダイヤルでこなしていました。コールセンターは決して過去のものではありませんが、デジタル時代に入って選択肢は増え、適切な媒体を使ってさまざまな顧客対応を行えるようになりました。

セルフサービスポータルが良い例です。このユーザー対応ツールを使えば、パスワードのリセット、インシデントの自動記録、サービスリクエスト、ナレッジベースの検索などを行えます。また、コラボレーションスペース、チャットサービス、サービスケースに関連した埋め込みソーシャルメディアフィードなどのインタラクティブなサービスを追加することもできます。

レコメンデーションが表示される検索フィールドや、顧客の購入・サービス履歴に基づいたユーザープロファイルなどのユーザーフレンドリーなデザインを導入すれば、細かくパーソナライズされたセルフサービスを提供することも可能です。優れたセルフサービスポータルは、サービス担当者の負担を軽減します。加えて、顧客はセルフサービスを好みます。Salesforceの調査によると、59%の個人消費者と71%の法人購入者が、セルフサービス機能が備わっているかどうかでブランドへのロイヤルティが変わると答えています。

サービスのDXではAIが重要な役割を担う

サービス部門へのAI導入は、DXの効果を示すわかりやすい事例です。AI駆動のチャットボットが顧客からの簡単な質問に対応することで、サービス担当者につながるまでの待ち時間を削減できます。

初歩的な問い合わせに対応できるチャットボットを導入することで、サービス担当者の負担が軽減され、より高度なケースに集中できるようになります。AI駆動のチャットボットは、インテリジェントなケースの振り分けシステムの入り口としても機能します。チャットボットで対応できない複雑な問い合わせに対しては、自然言語処理機能が最適な専門家を選択し、問い合わせを転送することで解決に導くことができます。

 
 

デジタルトランスフォーメーション(DX)のはじめかた

 
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業界別のDX事例3選

この章では、マーケティング、営業、サービスにおけるDXの具体例を見てきました。あらゆるDXの出発点は、アナログからデジタルへの移行、つまり紙の書類から取り出したデータをデジタルシステムに入力することです。次の段階で、すべてのビジネスや業界に当てはまる基本的なアイデアは以下の通りです。

  • 顧客がすでによく利用しているデジタルチャネルでリーチする
  • データに基づいて顧客と市場全体をよく理解する
  • ビジネス全体でデータを一元化し、知見を共有する
  • マーケティング、営業、サービスなどの部署間のコラボレーションを促進する

DXは多くの業界で有効です。上記のアイデアを特定の業界に応用した具体例をいくつかご紹介します。

銀行業におけるDX事例

銀行業はデジタルテクノロジーによって大きな変化を遂げ、消費者の利便性が向上した業界です。銀行取引の大半が窓口係を通して行われていたのは、それほど昔のことではありません。現金自動預け払い機(ATM)が登場したことで、基本的な取引が合理化され、営業時間が延長し、待ち時間も減りました。従業員は、現金の引き出しやその他の頻繁に行われる取引から解放されました。やがて、ATMは預金にも対応。取引の安全性も向上し、クレジットカードや住宅ローンなどさまざまな顧客に対応できるようになりました。

最近では、PCやモバイルデバイスの普及で、オンラインバンキングやモバイルバンキング、キャッシュレス決済システムなども登場しています。現在では、請求書の支払い、友人や家族への仕送りなど、ますます多くの取引をWebで行えるようになっています。モバイルバンキングアプリを使用すると、紙の小切手の画像を撮影するだけで預金が可能です。また、PayPalやApple Payなど、スマートフォンと銀行口座を連携することで、現金やクレジットカードなしで日々の買い物を行える新しいタイプの支払いシステムも登場しました。

小売業におけるDX事例

デジタル時代の到来で、小売業も大きく様変わりしました。DXは、実店舗における小売体験を改善するとともに、Eコマースの時代を開きました。

ポイントカードやEクーポン、そして自動在庫システムや小売分析システムなどが導入されたことで、消費者と店舗双方の小売体験が改善しています。かつて買い物客は、新聞や雑誌から切り抜いた割引券を使っていましたが、今ではレジでスマートフォンを見せるだけで割引やセールを利用できます。この購入データはデジタルシステムに記録されます。そこから消費者行動の傾向が割り出され、在庫システムや購入システムに連携されて、メールやSMSメッセージなどで個別のカスタマージャーニーイベントが起動します。さらに、モバイルアプリからデジタル信号を発信し個々の顧客の来店を告げることで、実店舗体験のパーソナライズを進めることもできます。そこから、パーソナルコンシェルジュのスマートフォンにアラートを送るなどして、小売体験を充実させることも可能です。

さらに、モノのインターネット(IoT)テクノロジーを使ったサブスクリプション型の販売手法を試みている小売業者もいます。たとえば、Amazonではダッシュボタンを提供しています。ダッシュボタンとはIoTデバイスのボタンのことで、これを押すと自動的に商品を再注文することができます。家庭用品など、定期的に補充が必要な商品のブランド別のダッシュボタンが次々に登場しています。ストックが減った時点でボタンを押せば補充品がただちに配送され、料金はAmazonプライムアカウントに請求されます。

保険業界におけるDX事例

DXが保険業界に与えた影響は、消費者の期待値が変化を促進しているという意味において、他の業界と似ています。Webベースとアプリベースのセルフサービスポータルが出現したことで、消費者は簡単にさまざまな保険を比較し、加入手続きができるようになりました。また、火災保険、自動車保険、生命保険など保険のタイプに応じて異なる代理店や保険会社を使い分け、支払請求をすることも簡単になりました。事実、こうした手続きの多くは、現在、担当者と直接やり取りすることなく行えます。これは消費者の時間の節約や保険会社のコスト削減につながります。

保険業界のDXで特筆すべきなのは、業界の刷新にIoTが大きな役割を果たしている点です。保険業者は、安価なIoTセンサーを使って予測やクレームの審査に役立つ豊富なデータを得られるようになりました。たとえば、自動車保険を例にとりましょう。車内センサーでドライバーの運転習慣を監視することで、速度制限を守り、規則正しく安全運転を行っているドライバーや走行距離の比較的短いドライバーへの優遇措置を行います。センサーをスマートフォンと接続することで、走行中のドライバーのメッセージアプリを無効にし、運転中のスマートフォン操作を防止することもできます。血中アルコール濃度を測定できるウェアラブルデバイスと車両を接続すれば、エンジンを一時的に作動不能にすることで飲酒運転を防ぐことができます。さらに、保険会社のリスクを減らせるとともに、交通安全にも貢献できます。

 
 

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