営業効率を最大化する「The Model」(ザ・モデル)の概念と実践

投稿日:2020.1.14
近年、マーケティングや営業の分野で「The Model(ザ・モデル)」という概念が注目されています。これは、集客から商談・クローズ、カスタマーサクセスに至るまでの各段階で情報を可視化・数値化し、部門を越えた連携を軸に売上の増大を図っていく考え方です。
ここでは、The Modelの概念と運用の仕方について解説します。

The Model(ザ・モデル)とは?

The Modelとは、営業プロセスモデルのひとつです。セールスフォース・ドットコムで活用されてきたもので、昨今ではSaaS、サブスクリプションモデルの台頭に伴い一般的にも知られるようになりました。
SFAやCRM、MAなどを中心とした数々のビジネスツールを提供するセールスフォース・ドットコムは、1999年の設立以来、常に成長を続けています。それを支える大きな要素のひとつが、このThe Modelです。セールスフォース・ドットコムでは、The Modelを「お客様の成功と共に、売上を拡大する仕組み」と位置づけ、マーケティングから商談、成約後のカスタマーサクセスまで、各部門間が連携して、一貫した顧客対応をとる体制が整えられています。

カスタマーサクセスを追求するThe Model

The Modelのおもな特徴は次のとおりです。

<The Modelの特徴>

  • 営業プロセスを切り分け、各段階での情報を数値化・可視化する
  • 各段階を担当する部門間が連携することで、顧客満足の向上を図る

営業業務における数値のうち、案件数や単価、受注数、受注率などは、売上とともにどの企業でもしっかり管理されていることでしょう。しかし、案件数をコントロールするには、その前段階、つまり見込み客の数や、そこからの案件化率を明確にする必要があります。そのためには、自社サイトを訪れた人やイベントに来場した人をどれほど「見込み客化」できたかについても、追わなければなりません。
つまり、各段階での数値を明確にし、それぞれを向上させることができれば、最終的な売上も増やすことができるはずです。

また、The Modelでは、マーケティングやセールスと同じく、カスタマーサクセスも重要なプロセスととらえています。
売上の増大という視点に立てば、LTV(顧客生涯価値)の最大化はとても大きなテーマです。そのためには、顧客に自社および自社製品のファンになってもらうことが第一です。ですから、コストパフォーマンスの高い優れた製品はもちろん、顧客のニーズをとらえたきめ細かなサービスが欠かせません。カスタマーサクセスを追求することで顧客の離脱を防ぎ、クロスセルやアップセルのチャンスを増やすのです。
特に、サブスクリプション型のサービスを提供するSaaS企業では、いかに顧客満足を高めるかが売上という数値に直結します。The Modelは、そうした企業に特に役立つ考え方だといえるでしょう。

The Modelの売れるしくみとは?

The Modelの具体的なしくみと、その運用方法についてご説明します。これは、あくまでも標準的なものですから、自社の組織構成や人的リソースにフィットするように調整してください。

営業プロセスは4つの段階に切り分けられる

The Modelでは、営業プロセスを「マーケティング」「インサイドセールス」「外勤営業」「定着化支援」の4つの段階に区分します。そして、それぞれの段階の中で、「母数」「成功率」「ゴール」を数値化します。
ここでポイントとなるのは、あるプロセスのゴールが次のプロセスの母数になるということです。ですから、各部門が十分な母数を確保するためには、すべての部門で確実にゴールをクリアし、次の段階にパスしていくことが必要です。

 

<マーケティング:潜在顧客の獲得>
母数:来訪者数
成功率:獲得率
ゴール:見込客数

案件の最初の入り口であるマーケティングでは、自社窓口への来訪者数と連絡先などの情報を獲得できた見込み客数、そしてその獲得率を数値化します。
ウェブサイトへの訪問人数、セミナー等のイベントへの参加など、マーケティング手法はさまざまですから、部門としてはそれぞれを個別に管理する必要があるでしょう。

 

<インサイドセールス:見込客の育成/案件発掘>
母数:見込客数
成功率:案件化率
ゴール:案件数

インサイドセールスでは、マーケティングで獲得した見込み客数が母数であり、電話営業によって外勤営業にパスできた案件数がゴール、これら2つの数値の割合が案件化率になります。

 

<外勤営業:商談管理/受注>
母数:案件数
成功率:受注率
ゴール:受注数

営業部門が扱う中心的な数値である、案件数・受注率・受注数を、外勤営業のプロセスでは見ていきます。受注率、受注数を上げていくことが、外勤営業にとって重要な課題となります。

 

<カスタマーサクセス:活用支援/契約継続>
母数:受注数
成功率:契約更新率
ゴール:継続契約数

成約後の顧客がどれほど離脱せずに定着しているかをカスタマーサクセスでは追っていきます。適切な問い合わせ対応や別の商材提案を行うことで、継続的な契約や新しい製品の追加受注を狙います。

ここで、インサイドセールスについて少し補足しておきましょう。
マーケティングで得られた見込み客が、自社製品にどれほどの興味を持っているか。そこには、当然ながら温度差があります。時間と手間をかけて外勤営業が訪問するなら、より興味の高い層、つまりホットリードを対象にしたほうが、効率はいいはずです。また、たとえ「今すぐは必要ない」という相手であっても、ベネフィットを理解してもらえれば、「それなら前向きに検討したい」と考えるかもしれませんし、3か月後、6か月後には状況が変わるかもしれません。

インサイドセールスは客先に出向くことなく、見込み客に対しておもに電話でアプローチし、商談化できるレベルに育成する役割を担います。そして、十分に「育った」見込み客を外勤営業にパスすることで、受注率ひいては売上の向上に貢献するのです。
従来は、顧客育成や案件発掘の役割まで外勤営業が兼ねている企業が多くありました。ですが、次に紹介する「数値の可視化」を行う上では、この役割はプロセスとして分けて考えたほうが効率化できます。そうすることで、売上増大のためにどの数値を上げるべきか、そのためにどんな施策が有効なのか、より見えやすくなるからです。

労働人口が減少し、生産性向上が必要な日本にとって、インサイドセールスは非常に有効な手法の1つであり、インサイドセールスを設置する企業が急増しています。

【関連コンテンツ】

数値を可視化してKPIを明確に設定

営業プロセスを4つに切り分けたら、各段階で現時点での数値を洗い出し、可視化します。
これは、最終的な売上を作るために、どの段階でどれほどの成果を上げればいいかを明確にする、いわば「売上の因数分解」です。各段階の数値が明らかになれば、それぞれの部門で売上向上のカギとなる要素がはっきりしますし、それをKPIに設定すれば「自分たちが追うべき数値」が明らかになり、対策も可能になります。結果として、より効率良く売上の増大に結びつけることができるのです。

そのために重要な事は、決して不正確な数字を共有しない事です。
各部門の数字が明確に可視化されるとなると、誰もが「部門の数字を多少良く見せたい!」と考えがちです。しかし、不正確な数字を共有してしまうと、とたんに実際の課題が見えなくなってしまいます。見当外れの施策に大切な労力を割くことになりかねません。
たとえば、インサイドセールスがゴールの数字を大きくするため、十分に育成できていない確度の低いリードまでカウントし、外勤営業にパスしていたらどうでしょうか。案件数は増えるものの、確度が低いため受注率が落ち、外勤営業の行動も非効率的になってしまいます。受注率向上のために、メンバーのスキルアップを図っても、思うような効果は得られないかもしれません。
数字はできるだけ正確に、安易に不正確な数字を共有しないこと。そのためには、どうなれば「見込み客」になり、どの状態を「案件」と呼ぶのか定義づけ、各部門で合意することが重要です。本質的で有効な施策を全部門が共有し、全社を上げて対策に集中する事が顧客の成功、売上の拡大に直結します。

The Modelで何がわかり、何が変わるのか

The Modelを導入し運用すると、売上増大へ向かう過程でさまざまなメリットが生まれます。ここでは、The Modelのおもなメリットを、いくつかご紹介します。

営業プロセスの中の弱点が見える

各プロセスにおける具体的な数値は、業界や扱う製品、価格帯などによって変化します。しかし、すべての数値を明確にすることで、どこに問題があるのか、探り出すことはできます。
どのプロセスの数字が目標に達していないのかがひと目でわかるため、効果的な改善策を練ることができるというわけです。

分業化すれば、専門性を高められる

The Modelで区切った4つのプロセスはいずれも専門性が高く、それぞれを兼務するのは効率的とはいえません。たとえば、インサイドセールスと外勤営業では、同じ営業でも実作業がまったく異なりますし、必要なスキルにも違いがあります。ですから理想をいえば、分業化して専門性をさらに高めたほうがいいでしょう。
ただし、組織構造や人的リソースの問題もあります。形だけ整えるのではなく、自社にフィットした体制を構築するのがベストです。

【関連コンテンツ】

情報を共有して他部門との連携が強まる

マーケティング部門と営業部門は、得てして仲違いしやすいようです。マーケティングは「せっかく集めたリードなんだから、しっかりクローズしてほしい」と考えますし、営業は「もっと確度の高いリードを送ってほしい」と思います。これは、それぞれの組織が追っている数字のあいだが遠いことが原因であることが多くあります。
売上や受注数を追う営業は、見込み客数よりも案件数を求めます。見込み客数を追うマーケティングは、潜在顧客数は気にしますが、案件数までは見きれません。
しかしそのあいだに、インサイドセールスのプロセスを挟み、母数と成功率、ゴールの数値を可視化してみるとどうでしょうか。最終的な売上のために何件の案件数が必要なのか、外勤営業とすり合わせることができますし、見込み客数を増やすためにどうするか、マーケティングと相談することもできます。
つまり、数値を共有する他部門との連携を高めることができ、部門間の衝突を緩和することもできるのです。

リサイクル可能な失注案件も見えてくる

マーケティングを入り口として流入してきたリードは、各段階で数を減らしながら成約し、カスタマーサクセスへと移行していきます。商談に至らなかった案件や失注した案件は、かなりの数に上るはずです。これら、営業プロセスからこぼれ落ちた案件は「長期フォロー顧客」としておき、タイミング良くインサイドセールスがアプローチすることで、再び新規案件にリサイクルすることが可能です。
再アプローチのための情報があれば、この「顧客のリサイクル」は実現できます。たとえば、特定の製品に関心を示していたなら、「その新バージョンの発売に合わせてアプローチをかける」という具合です。
名刺1枚、電話番号1つであっても、その情報を獲得するためにはコストがかけられています。マーケティングで得られた情報は無駄にせず、利益を最大化するルートを用意しておきましょう。

【関連コンテンツ】

The Modelを運用するには?

The Modelを導入し、効果的に運用するには、先述したとおり「正確な数値を共有する」ということが第一です。最後に、その上で押さえておくべきいくつかのポイントについて紹介しておきましょう。

各部門の責任範囲を数値で設定する

The Modelでは、あるプロセスのゴールの数値が次の段階の母数となります。ですから、各プロセスを担当する部門は、自分たちが設定した数値を確実にクリアすることが求められます。これは、その部門の責任範囲を数値で設定するということでもあります。
当然ながら、ゴール数値の設定を緩くしてしまうとモチベーションが高まりませんし、売上増大という目標も遠のいてしまいます。「がんばればクリアできるかも」程度の難度にし、その結果に責任を持つことです。
各部門の目的はゴールの数値を大きくすることですから、そのための成功率の向上は常に意識しておき、前段階の担当者とともに母数の拡大についての検討も必要となります。

どの数値をKPIに設定するか?

The Modelを運用する際、各段階のKPIとして、ゴールの数値を使うか、あるいは成功率を重視するかなど、迷ってしまうでしょう。これは、企業によって千差万別ですから、まずは現状把握から始めることです。
このときに重要なのが、営業プロセス全体をThe Modelにあてはめ、各プロセスの数値を視覚化することです。
どんな企業でも、最終的な売上となる営業目標は必ず設定しているはずです。その入り口である集客数も数値目標を設定していることでしょう。しかし、そのあいだはどうでしょうか?企業や個人から顧客情報を獲得し、育成して商談化し、商談を進めてクローズに至る、この段階ごとの数値を管理できているでしょうか?そこがわからないままでは、集客から成約までの間がブラックボックス化し、どこにボトルネックがあるのか見えてきません。これでは改善しようがなく、目標未達になると、「来月はもっとがんばらねば!」という話で終わってしまいます。
反対に、プロセス全体の数値が見えると、どの段階で顧客数の低減が起こっているかがわかります。それを改善するためにどんな施策を打てばいいかわかりますし、売上により強いインパクトを与えるにはどこに手を入れればいいかも見えてきます。また、それぞれのプロセスで、何が起こっているのかが見えるようになり、その全体の流れを俯瞰した上で、自分たちが何をすべきなのかが明らかになります。
数値の改善のために何らかの施策を打つにしても、その精度や有効性を確実に上げていくことができるのです。

数値とともにルールも明確にしておく

The Modelの運用にあたっては、数値だけでなくルールも明確に設定しておくことが大切です。「どんな場合に、どんな対応をするのか」をあらかじめ決めておき、遵守するのです。
たとえば、インサイドセールスが担当するリードを、どのタイミングで外勤営業にパスするか。ここは正確なスコアリングを行い、外勤営業へ渡す基準をしっかり決めておくことが必要です。長期フォロー顧客への対応にしても、再アプローチのタイミングやその方法を間違えてしまうと、せっかくの商談化のチャンスを逃すことにもなりかねません。
どのような状況に対してどう対処するか。そうしたしくみをルール化することで、さまざまな部分で無駄を排除し、営業活動の効率化や、利益の最大化を進めることができます。そして、必要に応じて修正・調整していけば、自社に合った効率的な営業スタイルが出来上がっていくでしょう。

SFAやMA、CRMを有効活用する

The Modelを効果的に運用するには、SFAやMA、CRMといったデジタルツールの活用がとても有効です。メンバー間でリアルタイムのデータ共有ができ、さまざまな切り口で抽出・分析ができますし、各部門で設定したKPIをダッシュボードにまとめておけば、どこで何が起こっているか、ひと目でわかります。
さらに、条件に応じて通知する機能があれば、フォロー漏れを減らせるので、自動化を促進することもできます。
決して必要不可欠というわけではありませんが、業務効率という点で、これらのツールは大きな役割を果たしてくれるでしょう。

【関連コンテンツ】

業務の効率化と顧客満足を実現するThe Model

「顧客の成功が自社の利益につながる」という発想は、健全なビジネスの基本といえるものです。そのためには、市場と顧客のニーズをくみ取り、即応できる体制が必要であり、それを実現するのが、各部門が連携して顧客に対応するしくみです。
The Modelは、営業業務全般の効率化を実現するだけでなく、マーケティングからカスタマーサクセスまで、すべての部門が連携することで顧客満足度を高め、LTVの増大を図ります。この概念としくみを自社の営業システムで活用し、顧客の成功とともに自社の売上拡大に結びつけてください。
 

監修:鈴木 淳一(すずき じゅんいち)

株式会社セールスフォース・ドットコム
インサイドセールス本部 コマーシャル事業部/スタートアップ戦略部 事業部長

広告系ベンチャー企業の営業マネージャーを経て、2010年インサイドセールスとして現職に入社。外勤営業を経てインサイドセールス部門(若手営業育成組織)にてマネジメントを行う。 2018年よりスタートアップ支援を行うスタートアップ戦略部の部門長も兼任。世界で最も革新的な企業の成長を支える為、「量と質を兼ね備えた営業」を育成すべく、日々ピープルマネジメントと組織化に取り組む。

 

関連記事・リソース

 

お役立ち記事

SFAツールで何ができるの?

営業を加速させる営業管理ツールの基礎知識

動画

2分でわかるデモ動画

AI搭載のSFAツールを使い、商談の成約数や売上を向上し、ビジネスを加速しましょう

 

関連製品

 

Essentials

中小企業向けCRM

スモールスタートで
実現するSFA・カスタマーサービス

Sales

営業支援

世界No.1のCRMで、
スマート、スピーディに営業

Pardot

B2Bマーケティング オートメーション

見込み客を素早く獲得
営業につなげる