DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?定義や導入のメリット・デメリットを解説

 
最終更新日:2024.3.6

DXの定義

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタルテクノロジーを用いて、ビジネスの変化と市場の要求を満たす新しいビジネスプロセスや文化や顧客体験を生み出したり、既存のものを修正したりするプロセスです。DXは、デジタル時代におけるビジネスの見直しと言えます。

DXは、営業、マーケティング、カスタマーサービスなどの既存の枠組みを超えるものです。DXでは、顧客について考え、顧客とのエンゲージメントに集中します。ビジネス管理の手法も紙ベースから表計算ソフトへ、さらにスマートアプリケーションへと移行しましたが、ビジネスモデル、例えば顧客との関わり方も同様に、デジタルテクノロジーの力を得て大きく変貌を遂げようとしています。

起業したばかりの中堅・中小企業は、最初に設定したビジネスプロセスを後になって大きく変える必要はありません。初めから未来対応型の組織作りを実行できます。付箋や手書きの帳簿で21世紀型のビジネスを構築しても、持続可能性は実現できません。デジタルで考え、計画し、構築することで、俊敏さと柔軟性と拡張性の高さを得られます。

多くの企業はDXを進めていく過程で自社の方向性が正しいのかどうかを大局的な視点から検討しています。果たして方向性が正しいのか、そのヒントを本稿でご確認ください。

DXは顧客に始まり顧客に終わる

ビジネスを変革するための方法や内容について触れる前に、まずは土台となる問いについて考えてみましょう。人間は、紙と鉛筆によるデータ保管から、デジタルテクノロジーを駆使したビジネスによる世界変革に至るまで、どのような歩みをたどってきたのでしょうか?

DXとIT化の違いとは?

DXとIT化の違いは、主に目的と変化の性質にあります。IT化は情報技術を活用して業務効率化や生産性向上を目指す「戦術」であり、具体的な業務プロセスの改善に焦点を当てているのです。これは主に量的変化をもたらし、既存のプロセスをデジタル化することで作業時間の短縮やプロセスの自動化が容易になりました。DXは質的変化をもたらし、顧客との関係やビジネスプロセスそのものを変革することで、企業全体の成長を目指します。したがって、DXとIT化は目的が異なり、企業にとっての役割や影響も大きく異なるのです。
 
 

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DX導入の3つメリット

DX導入により、企業は業務の効率化と生産性の向上を実現します。また新しいビジネスモデルの構築、競争力の強化、グローバル市場での拡大が可能になります。DXは、企業の持続可能な成長と革新を促進する重要な手段であり、変化する市場環境に迅速に対応する力を企業にもたらしました。

社会課題へのスピーディーな対応

DX導入は企業のデジタル技術を活用して社会課題に迅速に対応する能力を強化します。市場の変化や消費者の多様なニーズに柔軟かつ効率的に適応でき、競争力を高めることが可能です。また、データ駆動型のアプローチにより、より精度の高い戦略立案と実行が実現し、持続可能なビジネス成長へとつながります。

業務効率化と生産性の向上

DXを通じて、企業は業務プロセスを最適化し、自動化を実現可能です。これにより、時間のかかる手作業を削減し、従業員がより価値の高い業務に集中できるようになります。結果として、業務効率が大幅に向上し、全体の生産性が高まりました。特に、データ処理やドキュメント管理などの日常的な業務の自動化は、作業時間の短縮とエラーの減少に大きく貢献し、企業の競争力を強化する要因です。

グローバル市場での展開強化

DX導入により、企業はグローバル市場での展開と競争力を強化します。デジタル技術を駆使して市場分析、顧客理解を深めることで、国際的なニーズに迅速かつ効果的に対応できるでしょう。オンラインプラットフォームやデジタルマーケティングの活用は、地理的な制約を超えたサービス提供と顧客基盤の拡大を可能にし、新たなビジネス機会を生み出しました。異文化間のコミュニケーションと協力を促進することで、国際的な協働とイノベーションの促進にも寄与します。これらの取り組みは、企業がグローバル市場での持続的な成長と影響力を築く基盤となります。

DX導入の3つデメリットと対応策

DX導入は多大な初期投資、既存システムへの適応問題、専門人材の不足などのデメリットを含みます。これらに対処するためには、長期的なビジョンの共有や人材育成が必要です。

初期費用と長期投資のコスト問題

DX導入には、新しいテクノロジーやシステムの導入に伴う高額な初期費用が必要です。これは特に予算が限られる中小企業にとって大きな負担となりえます。長期的な投資としてのDXは、短期間での明確なROI(投資収益率)を期待することが難しく、持続可能な資金計画が必要です。このコスト問題に対応するためには、戦略的な予算配分、効果的な資源管理、国や地域の補助金や助成金制度の活用が鍵となります。また、段階的な導入やクラウドベースのソリューションを利用することで、初期投資を抑えることも可能です。

既存システムの変更と新システムへの適応

DXの過程では、既存のシステムをアップデートするか新しいシステムに移行する必要があります。この変更は、業務プロセスの大幅な再構築を必要とし、従業員の適応とトレーニングに時間とリソースを要するでしょう。また、データの移行やシステム間の互換性確保も大きな課題です。これらに対応するためには、十分な計画立案、段階的な実施、適切なサポートと研修が重要です。新システムへのスムーズな移行を促進するためには、従業員の参加とフィードバックの促進、適応期間の設定、そして柔軟な対応策の検討が必要となります。

適切なDX人材の確保と育成の課題

DXを成功させるには、適切なスキルと知識を持つ人材の確保が不可欠になります。しかし、デジタル変革をリードできる専門家やテクノロジーに精通した人材の不足は大きな課題です。企業は、内部の従業員をDXに適したスキルで育成するか、外部から適切な人材を確保する必要があります。DX人材の育成には、教育プログラムの実施、学習機会の提供、キャリアパスの明確化が重要です。また、外部人材の確保には、魅力的な募集条件やキャリア展望を提示し、優秀な人材を惹きつける戦略が求められます。DX推進には、企業文化の変革と従業員のデジタルリテラシーの向上が必要不可欠です。
 
 

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デジタイゼーション、デジタライゼーション、DX(デジタルトランスフォーメーション)の違い

デジタイゼーションとは、アナログからデジタルへの移行

企業が紙の帳簿を使っていたのは、それほど昔のことではありません。手書きの帳簿にしろ、タイプライターで打った文書にしろ、ビジネスデータはアナログでした。情報の収集や共有は、紙、バインダー、コピー、Faxなどの物理的なドキュメントを使って行われていました。

その後、コンピューターが主流になり、大半の企業が手書きのデータからコンピューターのデジタルファイルへの変換を開始しました。これがデジタイゼーションと呼ばれる、アナログからデジタルへの情報変換のプロセスです。

デジタル化のおかげで、情報の発見と共有はずっと容易になりました。しかし、新たなデジタルデータの利用方法は、既存のアナログデータとほぼ同じでした。パソコンのOS上でも、フォルダーのアイコンにはファイルフォルダーの絵が使われています。これはデジタルデータに対するユーザーの抵抗感を軽減してなじみやすくするためです。アナログ時代にくらべ、デジタルデータはビジネスの効率を飛躍的に向上させました。しかし、ビジネスのシステムとプロセスの大部分は、アナログ時代のデータ検索、共有、活用の方法論に沿って設計されていました。

デジタライゼーションでは、デジタルデータを活用して業務を効率化

デジタル化された情報を使って既存の業務プロセスを簡素化、効率化するのが、デジタライゼーションとよばれるプロセスです。この定義においては、「既存の」というワードがポイントです。デジタライゼーションでは、ビジネス手法の変革や新たなビジネスの創出は行われません。ビジネス手法を変えることなく、迅速化と効率化を図るのがデジタライゼーションです。記録保管所のファイルキャビネットを探しまわることなく、データを即座に取得できます。

小売、現場サービス、コールセンターにおけるカスタマーサービスを考えてみましょう。コンピューターを使って顧客レコードをすばやく簡単に取得できるようになったため、サービスが大きく変わりました。カスタマーサービスの基本的な手法は変わりませんが、問い合わせの処理プロセスや、関連データの検索、解決方法の提案が、大幅に効率アップしました。紙の帳簿を探し回らなくても、必要なデータをキーボード操作だけでコンピューターの画面やモバイルデバイスに表示できます。

そしてデジタルテクノロジーが進化するにともない、ビジネステクノロジーを古い業務手法の単なるスピードアップのためだけでなく、まったく新しいやり方で活用するための、さまざまなアイデアが生まれるようになりました。これがDXという概念が具現化され始めた際の状況です。新たなテクノロジーの出現で、新たな物事とそれを行う新しい方法が突如として可能になったのです。  

 
 

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DXは顧客とのあらゆるやり取りに価値を付加

DXはビジネスの手法に変革をもたらしています。そして、まったく新しいビジネス分野を生み出している事例もあります。DXを通じて、社内システムから顧客対応まで、オンラインとオフラインを含めた従来のビジネスの進め方が大局的な視点から再検討されています。企業は「自社のビジネスプロセスを変革することで、より適切な意思決定や、業務効率の革新的な向上、よりパーソナライズされた顧客体験による満足度の向上などを実現するにはどうすればいいか」という大きな問題に取り組んでいます。

現在、私たちはデジタル時代にどっぷりと浸かっています。さまざまなビジネスが、常識を打ち破る、賢くて効果的な方法でテクノロジーを活用する手法を生み出しています。Netflixはその典型です。郵便によるレンタルビデオサービスとしてスタートしたNetflixは、実店舗によるレンタルビデオ事業を破壊しました。その後、デジタルイノベーションが起こり、動画の大規模なストリーミングが可能になりました。現在、Netflixは豊富なコンテンツを圧倒的な低価格でオンデマンド配信することで、既存の放送局や、ケーブルテレビネットワークや制作スタジオなどすべてと競合しています。

デジタル化によって、Netflixはビデオコンテンツを顧客に直接ストリーミング配信できるようになっただけでなく、顧客の視聴習慣や好みについての詳細なデータを得られるようになりました。現在は、そのデータをユーザーエクスペリエンス(UX)の設計から、自社スタジオでのオリジナル番組や映画の製作にまで活用しています。これが、最新テクノロジーの利点を生かして、ビジネスのやり方を変えていったDXの実例です。

真のDXとは何か?その可能性を理解する

DXにおいて重要な点は、自社テクノロジーの潜在的な可能性を理解することにあります。繰り返しになりますが、これは「既存のビジネスプロセスを同じ方法でいかにスピードアップするのか」を解明することではありません。潜在的可能性を理解するとは、「自社のテクノロジーを使って何ができるのか。テクノロジーの威力を最大限に発揮するためには、自社のビジネスやプロセスをどのように適応させていけばいいか」を考えることです。

Netflixが登場する前、消費者は実店舗で借りたいビデオを選んでいました。陳列棚のテープやディスクをあれこれと見て回り、興味をひかれるものを探していたのです。現在では、豊富なデジタルコンテンツが個人のデバイスに表示され、そこにはユーザーの好みに応じたおすすめやレビューが掲載されています。

サブスクリプションベースで、視聴者のテレビやコンピューター、モバイルデバイスにコンテンツを直接ストリーミングするというビジネスモデルは、従来のレンタルビデオビジネスに大きな衝撃を与えました。ストリーミングサービスを開始したNetflixは、このテクノロジーを生かして別のサービスも提供できないかと考えました。それが、AI(人工知能)によるコンテンツ推奨システムのようなイノベーションに結実したのです。自社のIT部門の能力を最大限まで活用することを検討しましょう!

DXを活用できるようビジネスを適応

DXによって、カスタマーサービスの手法も大きく変化しています。従来のビジネスモデルは、実店舗への来訪やフリーダイヤルへの問い合わせなど、顧客からのアクションを待つというものでした。しかし、ソーシャルメディアの出現により、広告やマーケティング、営業、カスタマーサービスが変わったのと同じく、サービスの提供も大きく変化しました。先進的な企業は、ソーシャルメディアを、顧客が選んだプラットフォームで直接顧客に接触しながらサービスの提供を拡大していくチャンスと捉えています。 
デジタルテクノロジーを使ってコールセンターや実店舗のサービスデスク業務の効率改善を図ることは、もちろん好ましいことです。しかし、真の変革は、顧客により優れた体験を提供するために自社ビジネスを利用可能なすべてのテクノロジーに適応させる方法について考えるところから始まります。ソーシャルメディアはコールセンターに代わるものではありませんが、より優れたカスタマーサービスを提供するための補助的なチャネル(およびビジネスチャンス)となっています。ソーシャルメディアに合わせてサービスを提供することも、DXの有効な事例です。
しかしそれでおしまいではありません。すでに触れたように、DXはあらゆる角度からビジネスを再検討することを促進するものです。これにはチームや部門の従来のあり方も含まれます。これは必ずしも、サービス担当者にマーケティングキャンペーンを進めさせるという意味ではありませんが、部門間の壁を取り壊すということにはつながります。ソーシャルメディアに進出することで、デジタルプラットフォーム上でサービス部門とマーケティング部門を連携し、顧客情報の収集、パーソナライズされたジャーニーの提供、顧客からの問い合わせのサービス担当者へのルーティングなどを行うことができます。
 
 

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