自社の成功はクライアントの成功から!
カスタマーサクセスという発想
まずは、顧客の事業を成功へと導き、それによって自社も成功の“果実”を得る。その発想と手法について、考えてみましょう。

カスタマーサクセスとは?
自社の顧客が発展・拡大することに伴い、自社の利益も拡大していく。この発想自体は目新しいものではありません。クラウドサービスが一般化するにつれ、「顧客の利益」と「自社の利益」の関係がより直接的になり、カスタマーサクセスという考え方が生まれたのです。
顧客の成功が自社の成功という発想
過去のモデルでは、システムにしろアプリにしろ、ソフトウェアをパッケージとして作り上げ、それを販売するという形をとっていました。しかし、クラウドサービスは、こうした「売り切り型」ではなく、必要な数のIDを必要な期間だけ使ってもらい、その分の利用料を受け取るというスタイルです。
となると、ベンダーがより大きな利益を得るためには、「1人でも多くの顧客により長く使ってもらう」ことが必要になり、そのために顧客の業務改善までも視野に入れたカスタマーサクセスという概念が必要となります。 顧客の成功が自社の成功に直結する、まさにWin-Winの関係性が成立するのです。
カスタマーサポートとの違い
自社の顧客に対するサービスとしては、「カスタマーサポート」があります。カスタマーサポートとカスタマーサクセスは、何がどのように違うのかわからないという人もいるかもしれません。しかし、これらは明確に異なります。
カスタマーサポートは、顧客側の問題やトラブルを迅速に解決することが主眼となっています。あくまでも受動的なサポート役であって、その作業範囲も限定的・一時的なものです。 しかし、カスタマーサクセスは、より能動的に顧客に関わります。顧客の事業における成長を後押しし、その成功を促進するために力を傾けます。当然、中長期的な視点に立ち、場合によっては複数の部署と関わりながら、事業の成功へと導いていきます。 ともに顧客サービスの一部ではありながら、顧客への関わり方には、これほどの違いがあるのです。
カスタマーサクセスが注目される理由は?
カスタマーサクセスが注目を集める理由はいくつか挙げられますが、最も大きなものはクラウドサービスの台頭、そして営業スタイルの変化です。それぞれについて、詳しくご説明しましょう。
クラウドサービスの台頭
クラウドサービスの台頭は、「ビジネスモデルの変化」と言い換えることもできます。
充実した通信インフラが整備され、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末も普及したことで、インターネットを介してどこからでもアクセスできるソフトウェアサービス「SaaS」が生まれ、利用した期間に応じて料金を支払う「サブスクリプション型」のビジネスモデルが一般化してきました。システムにしろアプリにしろ、「パッケージを購入して使う」というスタイルから、「必要な期間だけ利用料を払って、手軽に使う」スタイルへ、ビジネスモデルが変化していったのです。
この変化によって、ユーザーは新しいサービスを安価に、低リスクで使ってみることができますし、ベンダーも、より多くのユーザーに自社製品にふれてもらうチャンスが得られます。半面、ベンダーとしてはきちんとした製品を作り、ユーザーに「これはいい、業務に役立つ」と感じてもらわなければ、すぐに利用されなくなり、解約リスクが高まります。
つまり、自社製品をより多くの人に長く使ってもらうことが、ベンダーの利益につながります。そこから、「ユーザーを成功に導くことで、自社も利益を得る」という、カスタマーサクセスの発想が重視されるようになったのです。
営業スタイルの変化
従来の営業スタイルでは、「成約」はひとつのゴールでした。しかし、サブスクリプション型のビジネスモデルでは、それはむしろスタートです。成約してくれた顧客を満足させ、トラブルがあれば乗り越えるためのサポートをし、アップデートを重ねてより洗練されたサービスへと育て上げ、継続利用を促す。こうした、不断の努力は欠かせません。
当然、営業スタイルも、より顧客に寄り添ったものになります。自社製品をどのように活用することで、業務課題を解決し、事業を拡大することができるのか。そうした、コンサルタント的な視点からの助言も必要になります。
このような営業スタイルの変化が、カスタマーサクセスという概念の重要性を高めることに大きく作用したと考えられます。
カスタマーサクセスで何が変わるのか
その一方で、カスタマーサクセスは、ベンダー側にもさまざまなメリットをもたらしてくれます。
解約率を低く抑えることができる
サブスクリプション型のビジネスモデルでは、自社製品を「いかに長く、多くの人に使ってもらえるか」という点が重要です。
試用程度に使ってすぐに解約されてしまっては、利益に結びつきません。しかし、顧客側の視点に立ち、顧客の事業の成功に役立てることができる製品をリリースすれば、顧客は喜んで自社製品を使い続けてくれます。結果、解約率を低く抑えることができ、自社の利益を上積みしていくことができるのです。
買い切り型の製品の場合、購入した後で顧客が「期待したほどではなかったな」と思っても、そのために返品・返金となるケースは極めてまれです。しかし、サブスクリプション型の場合は、顧客が製品なりサービスなりに満足できなければ解約され、他製品に乗り換えられてしまいます。
それだけにベンダーとしては気が抜けないところですが、顧客の利益に役立てることを第一としたサービスを提供できれば、それは「低い解約率」と「高い継続率」という、目に見える数値となって表れます。
クロスセルとアップセルにスムーズに導ける
メインとなるシステムの機能を補完するツールを用いる。あるいは、ツールそのものを多機能・高機能なものにアップグレードする。こうしたクロスセルとアップセルにスムーズに導くことができるのも、カスタマーサクセスにおけるベンダー側の利点です。
使い慣れたインターフェースと操作性はそのままに、今まで以上の機能がプラスされれば、顧客の利便性が高まり、ますます自社製品のファンになってもらえるという好循環になるのです。
LTVを高く保つことができる
営業の現場では、新規顧客を開拓して製品を販売するよりも、既存顧客への販売のほうが、遥かにハードルは低いものです。すでに自社製品を使っていて、満足のいく結果を得られているならなおさらです。
顧客の状況を見極め、適確な提案を行うことで、顧客の課題や問題を解決すると同時に、自社の収益をより高めることができます。それにより、LTVの最大化を図ることができるのです。
ニーズを分析し、プロダクトを進化させられる
カスタマーサクセスの発想は、顧客と自社に多くのメリットを与えてくれます。しかし、それを可能にするには、常に自社製品をブラッシュアップし、進化させていくことが欠かせません。
ことにIT分野では、まさに日進月歩で新たな技術が開発され、新たなサービスが提供されています。たとえ業界標準のプロダクトであっても、そのポジションに居続けるためには、刻々と変わる市場の状況や顧客のニーズをくみ取り、製品に反映させる努力が必要です。 その点、カスタマーサクセスは顧客を成功に導くためにコミュニケーションを多用しますから、顧客が何に困っているのか、どこをどうしたいのかということを拾いやすくなりますし、それをプロダクトに反映することで、より市場に受け入れられるものへと進化させることができます。この好循環が顧客の信頼を高め、収益の増大につながっていくのです。
カスタマーサクセスのプロセス
サクセスマップでゴールへの道筋をつける
まず、顧客の「サクセス」とは何か、つまりミッションのゴールを設定します。
「売上額○○億円」であったり「△△年までに業界トップシェア」であったりと、企業によってまちまちでしょう。こうした目標を設定した上で、それを達成するためにどのような戦略が必要か、そのためにはどんな施策を打てばいいか、進行状況を計測するためのKPIをどこに設定するか…という具合に細分化していきます。そのプロセスで、自社製品がどのように貢献できるかということは、当然ながら最重要項目となります。
これらを順序立てて記述していくと、目標に到達するためのサクセスマップ、つまりゴールへの道筋が出来上がります。あとはこのサクセスマップに沿って業務の改善や定着化を繰り返し、その効果を実感しながら目標に近づいていくわけです。
この段階で大きな力となるのが、CRMに代表される支援システムです。CRMは、顧客とのコミュニケーションの状況を詳細に把握することができるので、顧客が今サクセスマップのどこにいるのかを念頭に置きながら、次のステップに進むためのサポートとして役立ちます。

クライアントのパーソナルトレーナーとして動く
ですから、カスタマーサクセスを行う場合には、自社の売上を考えるより先に、まず「自分は顧客のパーソナルトレーナーなのだ」という意識を持つことです。顧客が課題や問題を解決し、成功するための手助けをする。それが、自分の役割だととらえることです。
もちろん、専門知識を備えた腕利きのコンサルタントを目指す必要はありません。むしろ、顧客と二人三脚で課題にぶつかり、ともに考え、ともに乗り越えるような、地道な活動をいとわない意識を持つことです。それによって、あなたと顧客とのあいだには、より強固な信頼関係が構築されていくはずです。
カスタマーサクセスにおける注意点
これは、カスタマーサクセスにおける注意点として、押さえておくべきポイントといえるでしょう。
その顧客はプロダクトにマッチしているか
こうした不幸な結末を避けるためには、「この顧客は自社製品とマッチしているか」ということを、常に気にしておくことです。この前提が崩れてしまうと、カスタマーサクセスは何の効果も生むことができなくなってしまいます。
要望に応えることが必ずしも正しくはない
機能の追加や拡張など、自社プロダクトの改良という面では、マジョリティの意見が反映されることが多いものです。しかし、限定的な機能や用途において、マイノリティの意見が重要なヒントになることもあるでしょう。それによって、競合製品にはない機能や付加価値を生むことができれば、アドバンテージにもなりえます。
ただし、少数意見に偏りすぎて、全体の利便性を損なうことになっては本末転倒です。そうした点には、常に注意深くあるべきでしょう。
ツールを活用し、自社にも顧客にもサクセスを
また、カスタマーサクセスの過程においては、顧客とのコミュニケーションの内容や進捗について、リアルタイムで管理していく必要があります。CRMをはじめとする各種支援ツールを活用して、より効率的な業務運営を心掛けてください。
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