コールセンターのBCP対策とは?ポイントや策定4STEPを解説

 
最終更新日:2024.2.6
台風や地震など、大規模災害の発生時にコールセンター業務を続けるには、平時からの準備が必要です。こうした、予期せぬ事態が発生した際にも、業務を継続させるために必要なのが「BCP」です。
ここでは、コールセンター業務におけるBCPのポイントについて解説します。

緊急時の備え、BCPとは?簡単に解説

BCPとは「Business Continuity Plan」の頭文字を取った略称で、日本語では「事業継続計画」と呼ばれます。これは、何らかの非常事態が発生した場合に、できるだけ事業を中断せず、仮に中断しなくてはならなくなったとしても、その影響をできるだけ小さくし、早期に復旧を図るための計画を指します。

BCPが必要な災害には各種ある

元々、自然災害が多い日本では、非常時の備えとしてBCPを策定しておく企業もありましたが、2011年の東日本大震災によって製造業のサプライチェーン(製品が消費者に届くまでの製造や流通の流れ)が断たれたことなどから、多くの企業が策定に動くようになったといわれます。
BCPが必要なケースには各種あります。その一例を挙げてみましょう。

<BCPが必要な非常事態の例>

  • 自然災害(地震、台風、豪雨、津波、大規模火災など)
  • 人災(大規模な情報の消失・漏洩、サイバー攻撃、業務に支障をきたす労働争議など)
  • 感染症のパンデミック

最後の「感染症のパンデミック」は、2020年に世界的に蔓延した新型コロナウイルス感染症によって、多くの企業が対応を迫られました。これらいずれの場合にも、BCPは必要になります。

コールセンターにBCPが必要な理由

大規模かつ広範囲にわたって災害被害が起こった場合でも、コールセンターを閉鎖するという選択は、企業としては困難です。これは、業種によるところもありますが、自社サービスを利用している顧客企業にとって、コールセンターは命綱。そのため、非常時には通常時以上に、その重要性が増すこともあります。
ですから、「どのような状況になったら、どのような体制で対応するか」を平時から十分に検討しておき、準備しておくことが業務継続の重要なカギとなります。

コールセンターのBCP策定とは?5つのポイントを紹介

コールセンターのBCPを策定する際に重要となるポイントは以下のとおりです。

<コールセンターのBCP策定に必要なポイント>

  • 業務拠点を分散させる
  • 情報共有のしくみを用意しておく
  • セキュリティには万全を期する
  • 有事の際の運用ルールを定めておく

いずれも重要なものではありますが、企業によって「できる」「できない」が出てくるかもしれません。

しかし、BCPで重要なのは、安全確実な業務の継続、それによって顧客の利益を守ることです。その点に留意しながら、BCPを策定していきましょう。

どの業務を継続させるかを事前に決めておく

大規模な事故や災害が起きた場合に、継続すべき業務と中断する業務を事前に区分しておきます。
また、継続すべき業務と継続しない業務の線引きと、それぞれの扱いについては、明確にルール化しておくことも大切です。非常事態の際には、コールセンターも平常時とは異なる対応をとらなくてはなりません。ですが、非常時のルールが明文化されていれば、「これはどうすればいい?」と現場が戸惑うことなく、落ち着いて対応ができます。こうした明確な区分とルール設定が、非常時に役立つのです。

業務拠点を分散させる

大規模な自然災害が発生すると、被災地一帯が大打撃を受け、電力をはじめとするライフラインの断絶や通勤困難を引き起こします。東日本大震災のときにも、東日本の拠点は大きな損害を被りましたが、西日本の拠点には被害がなく、無傷で済んだという例がありました。
このように、ある程度離れた場所に業務拠点を分散させるのは、BCPの手法としては有効です。特定地域の拠点が大きな被害を受け、業務の続行が不可能になったとしても、ほかの拠点が無事であれば、業務を引き継ぐことができるからです。
こうした対応を可能とするには、拠点の数をある程度増やし、遠距離に配置することが望まれます。

情報共有のしくみを用意しておく

業務拠点を分散させた場合、必要なのは情報共有のしくみです。非常時には、正確な情報がとても重要ですから、これを即時共有できるしくみを用意しておかなければなりません。
そうした意味では、社内サーバーですべての情報を収めるオンプレミス型よりも、クラウド型のほうが信頼性は高いといえます。
オンプレミス型では、サーバーそのものの転倒破損や電源喪失といった事態も想定されます。しかし、強固に守られたデータセンターのクラウドサーバーは、そう簡単に使用不能に陥ることはありません。非常時の情報共有には、まさに最適な存在といえます。
 
 

デジタルトランスフォーメーション(DX)のはじめかた

 

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セキュリティには万全を期する

コールセンターは、大切な顧客のデータを数多く扱う部門です。たとえ非常時といえども、セキュリティについては通常時同様、万全の体制を確保しなくてはなりません。
非常時対応として拠点の分散を図るのであれば、各拠点のセキュリティ環境の整備には、十分な配慮が必要です。また、BCP発動後の対応についても、顧客情報をどのように扱うのか明文化されたルールを用意しておくべきでしょう。
大規模な自然災害や深刻な人災の際には、平時のような注意や配慮が欠けてしまいがちです。しかし、顧客情報は、どんなときでも最優先で守るべきもの。その姿勢が揺るがないよう、体制を整えておくことが重要といえます。

有事の際の運用ルールを定めておく

先程少しふれましたが、BCPの発動中にどのような対応をとるか、運用のルールを平時とは別に策定しておきましょう。明文化されたルールがあれば、非常時にも慌てることなく、落ち着いた対応ができます。
また、このルールには、復旧に関する基準も含めておくようにします。一時的に業務を制限した状態から、何を基準としてどのように復旧を図るか。そのための手順はどうするか。もしも再び、状況が悪化した場合にはどう対応するか。非常時対応への移行だけでなく、平時への復旧のプロセスを規定しておくのも、BCPでは大切です。

コールセンターのBCP対策の例

コールセンターのBCP対策の例は、以下のとおりです。
 
対策の具体例 詳細
ノンボイス化
メールやチャットなどを導入して、電話回線がつながらない時にも対応できるようにする
セルフサービス化
自動音声システムやAIチャットを導入して、無人で運用できるようにする
在宅化 オペレーターが自宅で顧客対応できるようにする
自社のコールセンターの状況にあわせて、どのような対策を取るか決めることが大切です。

コールセンターのBCPを策定する4STEP

コールセンターのBCPを策定する際に以下の4STEPを踏むと、効果的に策定できます。

<コールセンターのBCPを策定する4つのSTEP>

  • STEP1.優先順位を定める
  • STEP2.運用体制を定める
  • STEP3.勤務環境を整備する
  • STEP4.システムを導入する

以下よりそれぞれの項目について解説するので、これからBCPを策定する方は参考にしてみてください。

STEP1.優先順位を定める

まずコールセンターにおいて災害被害が発生したときに、何をするべきかの優先順位を定めます。顧客のニーズが高い業務に対して、優先的に対応することが大切です。

STEP2.運用体制を定める

緊急事態において、どのように対応するか運用体制・ルールを決めます。従業員の安否確認のフローや、指揮系統などに関する運用体制を決めましょう。また感染症対策や、コールセンターの設備に関するルールを策定する必要があります。

STEP3.勤務環境を整備する

勤務環境を整備することによって、リスクに対して適切に対応できます。

  • 自然災害(局地的なリスク対策)の場合:複数拠点化
  • 感染症(全国的なリスク対策)の場合:在宅化

複数拠点化する場合は拠点の設置場所や、運用設計などを決める必要があります。

在宅勤務の場合はオンラインツールを活用したり、運動やストレッチに関するルールを導入したりして、環境整備を行いましょう。

STEP4.システムを導入する

緊急事態にコールセンターを適切に運営できるように、自社に合ったシステムの導入を検討しましょう。

たとえば、自動応答システムを導入することによって、オペレーターが電話に対応できない場合でも、問い合わせに対応できます。

クラウド型のコールセンターシステムであれば、在宅勤務でも運営可能です。

 
 

第5回 カスタマーサービス最新事情

 

本資料では、カスタマーサービスが成果を上げる共有点や、最新情報について解説しています。

  • よりデジタル化が進むカスタマーサービスの環境に適応するために、組織はどのような取り組みを続けているか
  • 不透明な経済状況が人材、業務プロセス、システムへの投資計画にどのような影響を与えているか
  • カスタマーサービス戦略全体におけるフィールドサービスの進化した役割について
  • 厳しい労働市場における、人材管理・育成に関するアプローチとは

コールセンターにおけるBCPの効果を最大限に高めるためには?

実際にBCPを策定する際には、その効果を最大限に高めるため、先に挙げたポイントのほかにも、行っておきたい点がいくつかあります。

<コールセンターにおけるBCPの効果を最大限に高める方法>

  • 在宅業務を積極導入する
  • スタッフへのケアも大切
  • 状況に応じた対応を策定しておく

これらの点にも配慮しておけば、BCPの実効性をより高め、確実な業務継続が望めるでしょう。

在宅業務を積極導入する

都市部では、鉄道会社の相互乗り入れが発達しているため、長大な沿線のどこか1か所でトラブルが起こると、全線が不通あるいは遅延してしまうケースがしばしばあります。豪雨、豪雪のときには、さらにその可能性は増します。また、新型コロナウイルス感染症拡大による外出自粛のように、交通機関は動いているけれども出勤できないという場合もあるでしょう。
こうした事態に備えるには、個々のオペレーターの在宅勤務の可能性を探っておくことが大切です。ある程度のコストはかかるものの、コールセンター業務の一部を在宅に移行することは、不可能なことではありません。

スタッフへのケアも大切

大規模災害は、多くの人々に心理的なダメージを与えます。コールセンターのスタッフも例外ではありません。中には、本人あるいは家族や近しい人たちが被害者となっている可能性もあります。
こうした場合、企業はスタッフに対するメンタルのケアを第一に行いましょう。ショックを受けているスタッフに対しては休養を与えたり、相談窓口を設けたりして、無理をさせない工夫が必要です。
もうひとつは、仕事ができないことによる収入減への配慮です。企業によって対応できる範囲は異なりますが、どのような対応が可能かを明確にし、ひとりひとりのスタッフに伝えておくことが重要になります。先行きの不透明感は、人の不安を増幅させます。スタッフが少しでも安心できるよう、対応してください。

状況に応じた対応を策定しておく

一口に非常事態といっても、その内容によって、置かれる状況には違いがあります。
「電気・ガス・水道といったライフラインが保たれているか」「交通機関や道路状況はどうか」「外出あるいは人の移動そのものが難しい状況なのかどうか」など、想像できるあらゆる事態に対して、業務継続のための対応策を策定しておくこと。それは、BCPの本質でもあるのです。

コールセンターのBCPを策定し、平時から非常時に備えておこう

日本は、自然災害が多い国です。さらに、コロナ禍のように、想定外のアクシデントが広範囲に起こる可能性は、今後も否定できません。

非常事態が起きても、可能な限り業務を止めずスムーズに復旧させるため、BCPを策定して、備えを万全にしておきましょう。

 
 

第5回 カスタマーサービス最新事情

 

本資料では、カスタマーサービスが成果を上げる共有点や、最新情報について解説しています。

  • よりデジタル化が進むカスタマーサービスの環境に適応するために、組織はどのような取り組みを続けているか
  • 不透明な経済状況が人材、業務プロセス、システムへの投資計画にどのような影響を与えているか
  • カスタマーサービス戦略全体におけるフィールドサービスの進化した役割について
  • 厳しい労働市場における、人材管理・育成に関するアプローチとは
 

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