顧客ロイヤリティを高める、今必要なカスタマーリテンション戦略とは?

インターネット、モバイルデバイスの普及により、企業は顧客に対して様々なアプローチをすることが可能になりました。 誰もがすぐに情報を得ることができる時代になったことで、企業へのサービスの質に対する顧客の期待値も上がってきています。その結果、どんなに優れた商品 を提供してもサービスが期待を下回れば、顧客ロイヤリティを失ってしまうでしょう。

企業にとって既存顧客が離れてしまうことは大きな損失につながります。新規顧客の獲得には、既存顧客を維持するより、はるかに大きなコストがかかる からです。「企業の売上の65%は既存顧客がもたらし、1人の新規顧客を獲得するコストは、1人の既存顧客をつなぎとめるコストの5倍かかる」(ガート ナー)という計算もあります。

では、何が顧客ロイヤリティを失う原因になっているのでしょうか? ソーシャル・モバイル時代に有効なカスタマーリテンション(顧客維持)とは何でしょうか。

今、何が顧客ロイヤリティを失う原因になっているのか?

顧客が企業と接点を持つチャネルは、少し前までは、電話によるお問い合わせ、Webサイトのお問い合わせフォーム、eメールが主流でした。しかし FacebookやTwitterなどソーシャルメディアが普及し、顧客はあらゆるチャネルで企業と接点を持つことができるようになっています。
「商品をすぐに届けてほしい」、「返品したいのですぐに対応してほしい」、「問い合わせたがすぐに返事がこない」など、顧客が要求するスピードも高まって います。こうした顧客の要求に迅速に対応できなければ、顧客満足を得ることができず、顧客ロイヤリティを失う原因になるのです。

さらにサービスの品質が悪いとすぐにインターネット上で伝わり、顧客に不信感や混乱を与えかねません。ネガティブな評価は企業にとってマイナス評価となり、ブランド価値を損なうだけでなく、顧客ロイヤリティを失う原因にもなります。

受けたサービスが期待値と合わない場合、人はそれが良くても悪くても、誰かに話したくなるものです。サービスに不満を持った顧客は9~10人に話 し、13%の人は20人以上に話してしまうといわれています。一方で、不満が解決された顧客は5~6人に話し、56%~70%は再びその企業から商品を購 入したり、サービスを受けたりするリピーターとなるそうです。

また、Echo Researchが実施した調査において、55%の人が、「商取引または購入をしたいと思っていたにもかかわらず、カスタマーサービス対応が悪くて取りやめた経験がある」という回答をしています(図参照)。

それでは、既存顧客をつなぎとめてロイヤルカスタマーにするために、どのようなカスタマーリテンション施策を行えばよいのでしょうか? 3つの観点から考えてみましょう。

顧客をつなぎとめるために企業ができる3つのカスタマーリテンション施策

1.顧客の声に耳を傾けて双方向でつながるソーシャルメディア対応

ソーシャルメディアを活用しようと思うあまり、FacebookやTwitterで一方的に情報を配信してはいないでしょうか? 顧客の投稿に対して適切な対応を行っているでしょうか?

ソーシャルメディアは、情報をダイレクトに伝える訴求力の高いツールですが、顧客がどんな情報を求めているのか、商品やサービスに対してどのように 感じているのかを知ることができるツールでもあります。顧客の声に耳を傾けてコミュニケーションを取り、リアルタイムに対応することによって、良好な関係 を築き維持することができます。

無印良品ブランドを提供する株式会社良品計画では、
オフィシャルの問い合わせ窓口などでは聞けない率直な意見を聞ける気軽さがあることをソーシャルメディアの大きな価値ととらえています。また、お客様の声を社内にフィードバックすることで社員のモチベーションアップにつながる効果もあるとのこと。
ただ闇雲に新商品やニュースなどのお知らせを配信しているだけは、顧客は離れてしまいます。一方的な情報配信ではなく、ソーシャルメディアを顧客とのコミュニケーションの場ととらえ、双方向のコミュニケーションを取っています。

2. パーソナライズされたOne to One施策でおもてなし

一人ひとりの好みやニーズに合わせて、よりパーソナライズされたOne to One施策に取り組むことで、満足度の高い「おもてなし」を実現し、ロイヤリティを高めている企業もあります。

世界規模でホテル・チェーンを展開するザ・リッツ・カールトンは、ホスピタリティの高い接客で有名なホテルです。接客から知り得たお客様の情報を漏 らさずメモし、従業員が情報を共有するよう徹底されています。そして、そのお客様が再度宿泊される際は、愛読新聞、好きな食事メニューやお酒の銘柄、枕の 素材や固さの好みなどの情報をもとに、万全の準備をして迎えるそうです。

また、全国でリゾート開発・ホテル等の運営を行っている株式会社星野リゾートでは、リピートしている顧客のデータを詳細に分析しています。その結 果、リピーター顧客から「部屋のCDを増やして欲しい」といった要望があれば個々に検討しているそうです。「それによって『年に2~3回は国内旅行をす る』なかの、星野リゾート内のシェアを高めてくれるのであれば、それこそが安定集客を可能にする仕組みとなる」と、星野佳路社長はインタビューの中で述べ ています。

一方、神奈川県秦野市の「元湯陣屋」は、囲碁や将棋の対局でもよく知られる老舗温泉旅館です。同館では、Salesforceを活用して、お客様情 報を一元化し、それをスタッフが共有することにより、顧客の満足度を高めています。「リピーターの方がいつどんなときにご利用いただいたか検索しやすく、 前回の内容を把握した上でお迎えすることができます」(同館女将の宮﨑知子さん)。また、予約しているお客様の個々の情報がすぐに出てくるので、好きな食 べ物、苦手なものがすぐにわかり、お客様一人一人に細かいサービスができるようになったそうです。

陣屋

陣屋:予約状況のリアルタイムな把握と、
ソーシャルメディアの活用できめ細かな社内連携および
お客様へのサービスが可能に

One to One施策に取り組む企業に、株式会社バーニーズ ジャパンがあります。同社はセレクトショップ「バーニーズ ニューヨーク」の衣料品やグッズを、1990年の新宿店オープン以来、日本で展開しています。

バーニーズ ジャパンでは、一人の担当者が抱えるお客様の数は50人から100人にも及ぶそうです。そのなかでもロイヤルカスタマーと呼ばれるよう なお客様については、クローゼットに何をお持ちなのか、また、週末や休日はアウトドアで過ごすのか、あるいはインドア派なのかなど、ライフスタイルについ ても心得ているといいます。来店時の会話から得た情報なども記録にとどめ、担当者が交代する場合も引き継いで、信頼関係を築き上げているのです。その結 果、お客様の好きなファッションスタイル、色、素材に基づいて、シーズン別にお薦めコーディネートなどを提案しています。

ExactTarget Marketing Cloudが可能にするバーニーズ ジャパンのOne to Oneマーケティング(動画)

ExactTarget Marketing Cloudが可能にする
バーニーズ ジャパンのOne to Oneマーケティング(動画)

3.ロイヤリティプログラムで「特別な体験」を

ロイヤリティプログラムとは、一定期間忠実に愛用してくれた顧客に対し、特別なサービスを行うプログラムのことを指します。事前に詳細な顧客データ が把握・管理できていれば、例えば入学式や卒業式などのイベント時にアプローチしたり、好きなアーティストの情報をリアルタイムに発信したりと、顧客に とってベストなタイミングでロイヤリティプログラムを実施することができます。
会員限定の特別クーポンやサービス券が定期的に送られてくるだけでは、あまり興味を引きませんが、愛用しているブランドから自分の誕生日にクーポン付のバースデーメールが送られてきたらどうでしょうか? そのブランドに対するロイヤリティが高まるのではないでしょうか。

限定された顧客に「特別な体験」をプレゼントするという方法もあります。家具やインテリア雑貨を販売するイケア・ジャパン 株式会社(IKEA)では、実店舗にIKEA FAMILYメンバーを招いた「お泊まり会」を開催しています。2013年10月の場合は、船橋店、港北店、新三郷店、神戸店、鶴浜店、福岡新宮店の6店 舗で開催されました。閉店後の店舗に泊まれるというだけでも非日常的体験ですが、夜のストアツアーに加え、商品の中から好きな寝具が選べるなど盛りだくさ んのイベントであり、回を重ねるごとに人気が加熱しています。

こうした「特別な体験」は顧客の心に感動を与えます。よりよいサービスを受けた時や「特別な体験をした」と感じた時の感動が、ロイヤリティを高めるのです。

顧客の声に耳を傾けることがカスタマーリテンションの第一歩

これまで見てきたように、ソーシャルメディアを有効活用し、パーソナライズを意識したOne to Oneマーケティングを実行してロイヤリティプログラムを魅力的なものにすることが、カスタマーリテンション戦略です。

ポイントは顧客の声に耳を傾けること。それが一回のお客様を一生のお客様としていくための秘訣といえます。

参考:

  • Cost of customer acquisition vs customer retention
  • 高級百貨店ノードストロームのサービスはなぜ伝説になったのか
  • Echo Research: 2012 Global Customer Service Barometer(Findings in the United States)
  • 5 Customer Retention Strategies to Increase Loyalty
  • 星野リゾート社長・星野佳路氏―リゾート業の構造転換に対応せよ(SILC 2006 autumn)
  • リッツ・カールトン東京─驚きと感動のサービスが生まれる裏側
  • ソーシャルメディアは儲かるのか?無印良品が進めた現実的な取り組みと考え方 良品計画
  • お泊まり会@IKEA 2013 参加者募集!