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【成功事例で解説】デジタルトランスフォーメーションで農業の課題を解決する方法

【成功事例で解説】デジタルトランスフォーメーションで農業の課題を解決する方法

農業の深刻な問題として、人手不足や高齢化などが挙げられます。問題を解決するために現在、農業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進んでいます。この記事では、農業とDXの概要や必要性を事例とともにご紹介します。

日本の農業は、労働力不足や高齢化など、さまざまな課題を抱えています。農業の衰退に歯止めをかけるために農林水産省が本格的に取り組んでいるのが、農業における「デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)」です。

この記事では、農業分野におけるDXの概要や必要性を、事例とともに解説します。

農業でのデジタルトランスフォーメーション(DX)とは

DXによりこれまでアナログで管理していた業務がデジタルに置き換えられると、さまざまな課題を解決することができます。農業の分野では、紙ベースで管理していた作物の出荷情報のデータ化、AIやロボットを活用した農作業の自動化などが挙げられます。

このようにDXと組み合わされた農業は「スマート農業」と呼ばれることもあります。

農業でのデジタルトランスフォーメーション(DX)の目的

農林水産省が掲げる農業でのDXの目的は、「新たな価値を創造し、提供できる農業」を目指すことです。

日本の農業では、労働力不足や高齢化が深刻化しています。一方で消費者の食に対するニーズはますます多様化し、今後農業が発展するためには、生産者が消費者ニーズに的確に応えつつ、経営を最適化することが大切です。

DXの推進は、そうした課題やニーズを解決し、生産者と消費者のそれぞれにメリットをもたらすと期待されています。

農業でのデジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性

では具体的にどのような理由で、農業におけるDXが必要とされているのかを見ていきましょう。

農業就職人口の減少

前述のとおり、農業における労働力不足は深刻です。農林水産省が実施した「新規就農者調査」によれば、2018年の新規就農者数は55,810人。2007年のデータと比較すると、約24%減少しています。今後高齢の農業従事者がリタイアすることを想定すると、人手不足は農業の未来を脅かす状況だといえます。

就農人口が減った際、まず求められるのは作業の効率化です。効率化に大きく貢献するものとして、DXの推進に期待が集まっています。

効率的な生産方法の確立

農業は肉体労働でもあるため、どうしても「辛い」「疲れる」というイメージが先行します。テクノロジーの普及で世の中の多くのものが自動化されつつありますが、農業はいまだに多くの作業で人の労働力に頼らざるを得ないのが現状です。

そうした現場の負担軽減のためにも、DXによる新しい生産方法の確立が求められます。

農業でのデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた取り組み

農業でのDXを推進するにあたり、現在以下のような環境整備がおこなわれています。

スマート農業に向けた現場の実装

農業にデジタル技術を導入するには、現場を整備する必要があります。例えば、データ管理のデバイス導入や、AI・ロボットによる作業の自動化のスペース確保などです。

最新技術をすでに取り入れ、作業の効率化や付加価値の提供を目指す生産者も増えていますが、環境整備の意識が浸透していないのが現状です。農林水産省は、DX推進の各技術を2025年までに実証・市販化するとし、認知の拡大に努めています。

農業変革のため行政を効率化

農業改革を進めるには、行政が主導して変わる必要があります。なぜなら、日本の農業は行政ありきで発展してきたからです。農業の現場と行政をつなぐプラットフォームを構築し、現場での要望に行政が迅速に政策面で対応をするなど、いち早く変革に取り組むことが求められています。

データ連携・データ流通促進

これまでの農業では、紙ベースでの情報管理が主流でした。アナログな手法の場合、生産者は事業継続におけるさまざまな手続きに大切な時間を取られ、各種機関も管理業務は煩雑です。

そこで、さまざまな情報をデータ化し、生産者や行政、流通業者などで円滑に共有できるシステムが構築できれば、データの連携・流通促進が図られ、農業の効率化につながっていきます。

農業でのデジタルトランスフォーメーション(DX)事例

農業におけるDXはすでにいくつかの成功事例があり、これからDXを進めたい農家や行政から注目を集めています。ここでは、代表例を3つ紹介します。

食べチョク|株式会社ビビッドガーデン

株式会社ビビッドガーデンは、生産者が消費者に直接生産物を販売できるプラットフォーム「食ベチョク」を提供しています。登録した生産者は自ら価格設定をし、消費者に直接生産物を発送。卸や小売店を介さないため、規模が小さい生産者でも利益が得られます。また消費者も、生産者や作物との距離が近くなり、身近に感じることができます。デジタル技術を活用し、生産者と消費者の両方がメリットを得られる事例です。

eMAFF

農林水産省は、オンラインでの共通申請サービス「eMAFF」の設計・開発に力を入れています。農業においては、法令に基づく申請や補助金・交付金の申請など、複雑な手続きが多数存在しました。そこで、各種申請を一括でおこなえるシステムを構築。一度情報を入力するだけで各種申請が済むため、生産者は事務作業にかかる時間を削減し、生産に注力できます。

eMAFFは2020年4月から範囲を限定した運用が始まりました。2022年までには、農林水産省が所管するすべての法令に基づく手続きおよび補助金・交付金の申請手続きを100%オンライン化することを目指しています。

デジタル地図

農林水産省は、農地情報を一元管理する「デジタル地図」の実現も目指しています。これまで、農地の所在地や面積などは生産者が紙ベースで提出し、それを各機関が情報処理していました。デジタル地図では農地情報をすべてオンラインで提出することで、各機関が共有できるシステムを構築中です。生産者の申請作業を簡略化でき、農地情報を活用した衛星からの情報取得や統計作成などにも役立ちます。

なお、デジタル地図の運営開始は2022年から運用される予定です。

農業でのデジタルトランスフォーメーション(DX)の展望

農林水産省は2025年までに「農業の担い手のほぼすべてが、データを活用した農業を実践すること」を目指しています。つまり、これから数年にわたり、農業の現場には急激な変革がもたらされそうです。

農業のDXが実現すれば、労働力不足や高齢化などの問題も解決できる可能性が高まります。また、DXで付加価値のある生産物が提供できれば、消費者にとっても大きなメリットです。

食は私たちの毎日に欠かせないもの。その食を支える農業の仕事がなければ、私たちは生活していくことができません。農業のDXは、私たちの将来にもつながる、非常に壮大な取り組みなのです。

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