※本記事は2025年5月29日に米国で公開されたAgentic AI’s Impact on the Workforce – Salesforceを抄訳、編集しました。本記事の正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語が優先されます。
人事部門のリーダーは、複雑な問題を自律的に解決できるAIエージェントがより多くの定型業務を担うようになることを踏まえて、近い将来、従業員の約4分の1を再配置する計画を立てています。その結果、人事部門のリーダーは従業員1人当たりの生産性が30%向上すると見込んでいます。
この調査結果は、Salesforceが世界の人事担当役員200人を対象に実施した最新の調査によるものです。リーダーたちはまた、2027年までに組織内でのAIエージェント導入率が327%という驚異的な成長をみせ、現在のわずか15%から2年以内に64%にまで急増すると予測しています。
Salesforceのプレジデント兼最高人事責任者(CPO)であるナタリー・スカルディーノ(Nathalie Scardino)は、この変化を最大限に活用するには、組織は人材育成の在り方を見直す必要があると述べています。企業は、人間の従業員がタスクの実行からAIの管理へと業務を移行できるよう支援し、リーダーシップ、戦略的思考、そして人間とAIの協働といった重要なスキルを育成する必要があります。
デジタル労働力革命で成功を収めるには、すべての従業員が新たにヒューマンスキル、エージェントスキル、そしてビジネススキルを習得する必要があります
Salesforce プレジデント兼最高人事責任者(CPO) ナタリー・スカルディーノ(Nathalie Scardino)
スカルディーノはさらに、次のように述べています。「私たちは今、デジタル労働力の登場によって、かつてない速度で生産性、自律性、主体性が実現される、一生に一度の働き方の変革期にいます。すべての従業員がこのデジタル労働革命の中で活躍するために、新たなヒューマンスキル、エージェントスキル、ビジネススキルを学ぶことが求められています」
代替ではなく再配置
AI (英語) システムが人間の労働者よりも効率的であることが証明されることにより、主に定型的で予測可能なタスクに重点を置く役割は消滅する可能性があります。しかし、ほとんどの人事部門のリーダーは、AIエージェントを使って職務を削減するのではなく、戦略的に従業員を再配置する計画を立てています。
調査回答者の61%は、従業員の大半がAIの支援を受けながら現在の職務を継続すると予想していますが、約4分の1(23%)は、人間の才能をより有効に活用できる全く新しいポジションに異動すると見ています。彼らはこの考え方に投資をしており、5人中4人以上のCHRO(最高人事責任者、81%)が、従業員のスキルアップを既に実施(20%)しているか、計画中(61%)と回答しています。
このパラダイムシフトは、人事リーダーに重大な新たな責任をもたらします。人事リーダーは、ワークフローを再構築し、新しい研修プログラムを開発し、人間とAIが協働するための全く新しいフレームワークを確立する必要があります。
Agentforceは、Salesforceのデジタル労働力プラットフォームで、自律型AIエージェントを導入することで、組織がこの変革をスムーズに行えるよう支援します。Agentforceには、デジタル労働力の管理に役立つAIエージェントを作成およびカスタマイズするためのツールが含まれており、離職率、スキルインベントリ(スキルセットの管理)、過去の採用動向を分析して、組織が人材ニーズを予測するのに役立ちます。
その目的は、AIによる職務の変化に合わせて投資を行い、柔軟に配置できるアジャイルな人材基盤の構築を支援することです
Salesforceのワークフォース・イノベーション&トランスフォーメーション担当バイスプレジデント、ルース・ヒキン(Ruth Hickin)
Salesforce Data Cloudなどのツールを導入することで、人事チームは構造化データと非構造化データ(英語)、そしてメタデータを統合し、社内のパフォーマンス指標と外部の労働市場データを用いて、新たなスキルギャップを特定し、対応することができます。これにより、人材採用戦略やパーソナライズされたトレーニングパスを積極的に策定することが可能になります。
Salesforceのワークフォース・イノベーション&トランスフォーメーション担当バイスプレジデント、ルース・ヒキン(Ruth Hickin)は次のように述べています。「その目的は、AIによる職務の変化に合わせて投資を行い、柔軟に配置できるアジャイルな人材基盤の構築を支援することです」
またヒキンは、これらのシステムを管理し、意思決定における重要な人間的要素を維持するには、依然として人間の人事チームが必要であると強調しました。AIがどれほど進歩しても、「人間だけが提供できる、管理、牽制と均衡、そして文脈の理解は常に必要となるでしょう」と述べています。
ヒューマンスキルの再興
自律型AIエージェントの統合により、全く新しい職種が生まれています。人材派遣・採用業界向けクラウドコンピューティング(英語)企業のBullhorn(英語)でプレジデント兼COOを務めるマット・フィッシャー(Matt Fischer)氏は、企業が既にこれらのテクノロジーを中心にチームを再構築しつつある現状を目の当たりにしています。
フィッシャー氏は次のように述べています。「お客様は、既存の業務を単に置き換えるだけでなく、ワークフローとプロセスについて新たな視点で考える必要があります。AIワークフローデザイナーやプロセスアーキテクト、プロンプトエンジニア、そしてAgentforceのようなプラットフォームに特化したモデルアーキテクトといった専門家を起用することで、企業はAI導入から最大限の価値を活用できるようになります」
フィッシャー氏は、技術的な役割に加え、コンテンツの品質、データの正確性、キュレーションに関するサポート機能の重要性がますます高まっていると指摘しています。企業がAI導入を拡大するにつれ、これらのシステムが倫理的かつ公正であり、急速に変化する規制に準拠していることを保証するために、新たな専門家も登場しています。
実際、最高人事責任者(CHRO)の75%は、AIによって逆説的に人間特有の「ソフトスキル」の需要が高まると考えています。AIを活用した職場では、コラボレーション、適応力、そして人間関係構築能力がこれまで以上に重要になるでしょう。
AIの進化に伴い、最も需要が高まるスキルを予測するのは困難ですが、人間特有の能力が永続的に価値を持つということは間違いありません。
Salesforceのヒキンは次のように述べています。「AIは人間の仕事をさらに人間らしくするでしょう」
特に重要な点として、フィッシャー氏は、既存の仕事が変革することを指摘しています。労働者の役割は、直接的なタスクの遂行から、ルーティンワークを処理するAIエージェントの管理へと移行するでしょう。この根本的な変化は労働力に大きな影響を与え、従来の個人的な貢献者の役割よりも高いリーダーシップが求められるようになります。
フィッシャー氏は次のように述べています。「一般社員の役割は、AIエージェントの管理者になることです。優れた管理者とは、リーダーシップスキルを持ち、高い適応力と迅速な学習能力を備えている人です。能動的かつデータ志向で、AIエージェントの行動を観察し、人間として価値を付加できるタイミングを見極める必要があります」
こうした管理スキルは、通常、新入社員研修や一般社員研修では扱われません。フィッシャー氏は、人間とAIのハイブリッドな働き方のモデルに移行するためには、包括的なプログラムを開発する必要があると強調しています。
人材配置と採用において、この変化は特に顕著です。従来は人間中心だった無数の応募者の選考と候補者の発掘という業務は、音声スクリーナー、チャットボット、自動評価ツールといったAIエージェントによって効率的に処理できるようになりました。フィッシャー氏は、人間の採用担当者を補完するAIエージェントのインフラとして、Agentforceがこの分野で特に強力なツールになると考えています。
その結果、同じ量の業務を処理する採用担当者は減りますが、判断力や人間関係構築といった人間特有の能力を通じて、より大きなインパクトを与えることができます。
もう一つの重要な側面は、AIとデータ分析が、隠れた才能の発掘と新たなキャリアパスの創出にどのように役立つかという点です。人事部長の半数以上が、デジタル労働力は従業員のキャリア成長の可能性を高めると述べています。大規模言語モデル(LLM)(英語)は履歴書を分析し、キャリアアップにおけるパターンや相関関係を明らかにし、従業員がこれまで考えもしなかったような別のキャリアパスを発見する手助けをします。
この機能は、従来の職務タイトルに基づく採用パラダイムからスキルベースのアプローチへと移行するなか、リスキリングとキャリアモビリティの新たな可能性を切り開きます。この変化により、雇用主は一見無関係に見える職種間で転用可能なスキルを特定できるようになります。例えば、バリスタの細部へのこだわりや顧客サービスが、医療サポート職に最適な候補者となる可能性を見出します。
AI主導のスキルベースアプローチにより、お客様はより効果的に人材を再配置できます。
AI主導のスキルベースアプローチにより、お客様はより効果的に人材を再配置できるようになりました
Bullhornプレジデント兼COO、マット・フィッシャー氏(Matt Fischer)
フィッシャー氏は次のように述べています。「AI主導のスキルベースアプローチにより、お客様はより効果的に人材を再配置できるようになりました。効率化だけでなく、高品質のサービス提供にもつながり、お客様は差別化を図ることができるようになります」
デジタル労働経済
r.Potential(人間とデジタル労働力の最適化に特化したアデコグループとSalesforceの合弁会社)のCEO、グレッグ・シューメーカー(Greg Shewmaker)氏は、この変革はデジタル労働力への移行が進むにつれて、人間の労働経済を根本的に変えるものだと考えています。
AIエージェントが次の労働経済になると考えています
r.Potential CEO、グレッグ・シューメーカー氏(Greg Shewmaker)
シューメーカー氏は次のように述べています。「AIエージェントが次の労働経済になると考えています。今後最も価値が高まるスキルは、今日ソフトスキルと呼ばれていますが、まもなく必須スキルになるでしょう。地球上のすべてのリーダーは、計画がうまくいかなくなったときに適応し、前向きな姿勢を維持できる人材をより求めています」
あらゆる業界のエグゼクティブは、AIエージェントの重要性を認識していますが、明確な導入戦略を欠いている場合が少なくありません。このようなテクノロジーを導入する競合他社からの圧力、AIを活用したサービスを期待する顧客、そして自社の方向性を模索している社内からのプレッシャーが高まっています。この広範囲にわたる不確実性こそ、人間とデジタルが融合した労働力への移行を管理するために、フレームワークが極めて重要になっている理由です。
シューメーカー氏は次のように述べています。「ビジネスリーダーは、増大する不確実性と複雑性のなかで組織を導かなければならないというプレッシャーにさらされています。私たちは今、働き方の未来にとって極めて重要な局面を迎えており、それは人間とAIエージェントの協働のための確固たるフレームワークを用いて、AIの導入を積極的に進められるかどうかにかかっています」
今後の道筋
積極的に人材の再配置とスキルアップを計画する組織は、成功への道筋が最も明確になります。しかし、調査によると、企業の85%がまだAIエージェントを導入しておらず、従業員の73%がデジタル労働力が日々の仕事にどのような影響を与えるのか明確に理解していないことが示されています。
この認識のギャップは、テクノロジーの導入に伴う強力なコミュニケーションとチェンジマネジメント戦略の緊急性を浮き彫りにしています。
ヒキンは次のように述べています。「AIの導入には不安がつきものです。従業員には変化が起こることを透明性を持って伝えると同時に、その変化の過程をサポートする必要があります。従業員が業務内容を変えることや、ツールを自ら試すことに自律性と主体性を感じたときに、最良の変化が生まれるでしょう」
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