※本記事は2025年9月15日に米国で公開されたDeploying Agentforce in Slack: Salesforce’s Journey to Saving over 500K Employee Hours Annuallyの抄訳です。本記事の正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語が優先されます。
2025年2月、Salesforceが社内のSlackにAIエージェントを実装したとき、その効果は即座に目に見えるものではありませんでした。しかし、6か月間にわたる検証と改善を重ねた結果、今ではSalesforce社員の86%がSlack上でAgentforceを活用し、情報収集やアクション実行に役立てています。
Slackは単に、社員が一日を過ごす場ではありません。それは、社員同士の会話、意思決定、知識が集まる場です。Salesforceは、SlackにAIエージェントを導入することで、従業員が業務の流れの中でアクションを起こし、会話による豊富なコンテキストを活用できるようにします。これにより、AIエージェントはよりアクセスしやすく、より賢く、より正確で、よりインパクトの高いものになります。
Agentforce in Slackを活用することで、社員が自律型AIエージェントをメンションして質問したり、アクションを依頼できるようになりました。実装の初期段階では、部署ごとに利用率が大きく異なっていましたが、従業員が新しい機能を試し始めると、利用率は着実に増加しました。利用開始直後に得られたフィードバックは、従業員が本当に求めているものを明確化し、Salesforce社内において利用体験の改善に役立つインサイトになりました。
現在、Agentforceは年間50万時間に相当する業務効率化を全社的に実現しつつあります。
重要な理由:Agentforce in Slackにおける「カスタマーゼロ」として、自社内での活用を通じて、企業におけるAIエージェント導入のプロセスを検証しました。社内で新機能を展開することにより、ユーザーの行動、AIエージェントの設計、チェンジマネジメントに関する重要なインサイトを得ることができ、製品を改善するとともに、他の企業がAIエージェントを導入する際の指針となる、実証済みのプレイブック作成に役立ちました。
実践から得られた学び:Salesforceは、技術面での実装と同じようにチェンジマネジメントが重要であるという知見を得ました。主な学びは以下の通りです。
- まずはシンプルに導入し、その後拡張する:業務特化型のAIエージェントがユースケースとパフォーマンスを定義する鍵になります。最初に人事とIT領域で利用を開始したことで、チームはより専門的な分野に拡張する前に、ツールを学習・検証することができました。
- ユーザーフィードバックがロードマップを形作る:従業員は、AIエージェントができること/できないことを明確にし、必要に応じて人間にエスカレーションする簡単な方法を求めていました。その意見は、AIエージェントの設計と導入方法の参考となりました。
- AIエージェントの能力はデータソースの質に依存する:立ち上げ当初、AIエージェントは2,000本の記事をナレッジベースとしていましたが、インプットの量とアウトプットの質が同等とは言えませんでした。例えば、BaseCampエージェントに古いポリシーや冗長な記事が含まれていると、矛盾するガイダンスを提供してしまうリスクがありました。ナレッジベースを高品質で精査された600のリソースに絞り込むことで、正確性と信頼性が向上しました。
- 導入のペースにばらつきが生じることもある:すぐにAIエージェントの導入が進んだ部門もあれば、AIエージェントに慣れるまでに時間がかかる部門もありました。この学習曲線が、導入戦略の策定に貢献しました。最初のAIエージェントが、パスワードのリセットなど、誰もが直面するタスクで迅速な成果を上げたとき、導入は最も早く進みました。一度慣れてしまえば、チームごとのAIエージェント展開は容易に進みました。
Agentforce in Slackとは?: Agentforce は単一のボットではありません。Slack に組み込むことで、様々なチームの業務をより迅速かつスマートに遂行できるよう支援する、専門性の高い AI エージェントを構築するためのプラットフォームです。これらのAIエージェントはデジタルチームメイトとして何十万時間もの時間を節約し、従業員がより価値の高い有意義な仕事に集中できるようサポートします。Salesforceで利用されているAIエージェントの一部を紹介します。
- Sales Agentは、Slackを離れることなくパイプラインデータ、予測、取引のコンテキストを取得し、エグゼクティブ向けのブリーフ資料を作成したり、営業担当者に状況確認をしたり、ビジネス全体から競合情報を入手したりすることができます。年間203,000時間の削減が見込まれており、営業チームは顧客対応により多くの時間を割けるようになります。
- BaseCamp Agentは、24時間365日対応の職場コンシェルジュです。Salesforceの従業員3分の1以上に及ぶ約25,000人が、人事に関する質問から調達ワークフローまで、それぞれの役割や所属部門に合わせた用途で使用しています。
- Techforce Agentは、パスワードのリセット、デバイスのプロビジョニング、アクセス要求などのITタスクを自動化します。これまでに64,000件以上のリクエスト処理を通じて17,000時間を還元し、技術チームはより優先順位の高い業務に時間を充てています。
- Engineering Agentは、ドキュメント、電子メール、メッセージスレッドに埋もれている回答を引き出し、単にコンテンツを指し示すのではなく、ワークフローを通して従業員をガイドします。年間275,000時間の節約が見込まれており、これは130人のフルタイムエンジニアに相当します。
関係者の視点:
- 「カスタマーゼロとしての先行導入は、リアルタイムで学ぶことを意味します。Agentforce in Slackを社内展開したことで、AI導入の現実的なダイナミクスと、システムだけでなくチームのために機能するソリューションを構築することの価値が明らかになりました。その結果、数十万時間をよりインパクトのある仕事に振り分けることができました」 – Salesforce テクノロジー担当SVP、アンディ・ホワイト(Andy White)
- 「SlackのSales Agentは、私にとってゲームチェンジャーです。以前は、価格や競合情報、過去の顧客ミーティングに関する資料や回答を探し出すのに多くの時間を費やしていました。今はAIエージェントに質問するだけで、必要なものが即座に手に入ります。毎週何時間も節約でき、その分、販売や顧客との関係構築に集中できるようになりました」 – Salesforce アカウント・エグゼクティブ、タイラー・ウィルクス(Tyler Wilks)
- 「私たちにとって、コラボレーションは非常に重要であり、Slackは常にその中心にありました。reMarkableでは集中して作業する時間を大切にしており、完璧なワークフローを作成するAIエージェントの助けを借りて、Slackから直接ワークフローを作成できることは、とても価値があると感じています」 – reMarkable CTO、ニコ・コーミエ(Nico Cormier)氏
Agentforce in Slackを社内展開したことで、AI導入の現実的なダイナミクスと、システムだけでなくチームのために機能するソリューションを構築することの価値が明らかになりました
Salesforce テクノロジー担当SVP、アンディ・ホワイト(Andy White)
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