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SalesforceのAI 研究は、CRM、社会、そして未来をどのように形作るのか

  • 現在進行形で展開する AI 革命により、2023年は多くの人々にとってテクノロジーが話題の中心となった年でした。 Salesforce は 10 年近くにわたり、AI 研究の最前線に立ち、生産性向上の新時代を切り開いてきました。

※本記事は、米国で公開された How Salesforce’s AI Research Is Shaping CRM, Society, and the Future の抄訳です。本資料の正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語が優先されます。


業界やパラダイムを大きく変えるイノベーション級に、物事を大きく考えるには、知性、時間、計画、忍耐、投資といった多くのリソースが必要です。しかし、最も重要な要素は何でしょうか。それは、カルチャー、そして左脳的思考と右脳的思考をバランスよく組み合わせたイノベーションのマインドセットです。

また、物事を大きく考えるには将来を見通す能力も必要です。 

SalesforceでAI リサーチ・マネージャーを務めるシェルビー・ハイネッケ(Shelby Heinecke)は「一歩先をリードするためには、常に先を見通す必要があります」と述べています。彼女のチームでは、学術的な研究から社会に変革をもたらすテクノロジーの応用まで、さまざまな画期的なプロジェクトを通じて AI イノベーションを推進することに重点を置いています。

私たちは皆、根っからの科学者ですが、頭の片隅では常に、AI がどのように顧客をさらなる成功へ後押しできるのか、このアイデアを当社の製品にどのように組み込めばよいのか、と考えています。

Salesforce AI リサーチ マネージャーシェルビー・ハイネッケ(SHELBY HEINECKE )

彼女のチームはまた、イノベーションのマインドセットを生かして、AI を CRM に応用する新しい方法を探しています。

「私たちは皆、根っからの科学者ですが、頭の片隅では常に、AI がどのように顧客をさらなる成功へ後押しできるのか、このアイデアを当社の製品にどのように組み込めばよいのか、 基礎研究の枠組みに含められるような利用方法はあるだろうか、といったことを考えています」

#1 AI CRMへの道のり

Salesforce は 2014 年から AI への投資を行い、イノベーションを実現しています。2016年には、Salesforce初のAI 製品であるEinstein発表し、2018 年にはLLM(大規模言語モデル) への取り組みを開始しました。

2023年、Salesforceは顧客が新しい生成 AIテクノロジーを最大限に活用できるよう、複数の新しい Einstein 製品をリリースしました。これらの製品が特に効果的なのは、Salesforceの基盤であるCRM、データ、信頼性があるからです。

CRMの本質は、大量のデータを整理し、企業がよりパーソナライズされた方法で顧客とつながれるよう支援することです。Salesforce は、約 25 年にわたってこの市場のパイオニアとして、信頼を軸に、他社にはない独自の接続されたデータを活用した製品の革新と構築を行ってきました。 

Salesforce Data Cloud は、顧客データを連携して調整することで、リアルタイム性の高いインサイトを提供し、完全で信頼性の高いデータ基盤としてより正確な AI のメリットを実現します。また、Data Cloud はメタデータ主導の Salesforce プラットフォームの中核に深く統合されており、顧客はセールス、サービス、マーケティング、コマースアプリケーション全体で AI、自動化、分析を使用して、あらゆるソースからのすべてのデータを迅速に処理できるようになります。

Salesforce の AI リサーチ 兼 応用 AI 担当VPである カイミン・ション(Caiming Xiong)は次のように説明しています。「Salesforceに蓄積されている大規模な顧客、ユースケース、データにより、SalesforceはエンタープライズAIの実証基盤となっています。何千もの企業が Salesforce 上でビジネスを運営し、大量のデータを生成し、保存しています。人間とは異なり、AIは膨大なデータの分析に優れています」

Salesforceに蓄積されている大規模な顧客、ユースケース、データにより、SalesforceはエンタープライズAIの実証基盤となっています

Salesforce AI リサーチ 兼 応用 AI 担当副社長カイミン・ション(Caiming Xiong)

研究で得た専門知識を CRM、そして社会に還元する

Salesforce の AI ロードマップにおいて、現在シルビオ・サバレーゼ(Silvio Savarese)が率いる AI 研究グループが重要な役割を果たしています。 2021 年に Salesforce に入社するまでの 10 年間、学術界で過ごしたサバレーゼは、人間であれ、機械であれ、学習について熟知しています。

私がSalesforceに入社して、AI研究の組織を率いることを決めたのは、Salesforceがイノベーションのための素晴らしいプラットフォームを提供しているからです

Salesforce チーフサイエンティストシルビオ・サバレーゼ(Silvio Savarese)

「私がSalesforceに入社して、AI研究の組織を率いることを決めたのは、Salesforceがイノベーションのための素晴らしいプラットフォームを提供しているからです。一流の研究者、エンジニア、科学者と協力し、会社や社会全体にインパクトを与えることができるのです」

これまでにSalesforce の研究チームは、数百件にのぼる AI 研究論文と AI 関連の特許を発表してきました。この取り組みは、Salesforce の中核をなすAI 製品に反映されています。このほか、Salesforce の AI はSalesforce の従業員や顧客の生産性向上を目的としたプロジェクトを支援したり、乳がん治療タンパク質の開発といった、興味深く画期的なユースケースに応用されています。 

研究チームの価値が非常に高いのは、彼らが顧客中心のアプローチを採用しているためです。チームが開発するツールや製品は恣意的なものではなく、顧客の特定のニーズや問題を解決または改善するために構築されています。

コードを記述したり、最適化するために生成 AI を応用する、CodeGenや Apex Guruなどのアプリケーション開発を例にとってみましょう。複数のSalesforce の顧客が「Apex や関連言語で多くのコードを書いている」という知見をもとに、サバレーゼと彼のチームは、そのプロセスをより高速かつ簡単に構築することに着手しました。 

同じロジックでありながら、異なる「言語」を使用することで、開発者はコマンドとテキストプロンプトを使用するだけで、高品質なサンプルで学習された大量のコードを作成することができ、ゼロからコードを書くよりも大幅に時間を節約できるようになりました。英語で数回指示を促すだけで、これまで数時間かかっていた作業が数分に短縮されました。

これらの新しい AI ツールは、高品質なコードを短時間で作成するのに役立ち、コストと時間の節約につながります

Salesforce 主任研究員二キール・ネイク(Nikhil Naik)

研究チームが開発を主導した別のツール(顧客と共同で作成されたもの)は、生成 AI を使用してチャットボットに製品と在庫に関する知識を与え、コンテキストを提供することで、より複雑なサービスの問い合わせを処理し、さらにはアップセルの機会を創出しています。

ハイネッケと彼女のチームは、チャットボットによる自動応答によってその会社のブランドボイス(各ブランド特有のコミュニケーション・スタイル)が失われていると耳にしたため、AI テクノロジーを使って、顧客のスタイルとブランドボイスに基づいて応答を生成し、彼らの製品に関する詳細や豊富な情報を盛り込むことに着手しました。

ブランドにとっては、たとえ自動化されていても、プロセス全体でそのブランドの信頼性とブランドボイスが維持されることで、顧客により良い体験と、彼らが求めているものに合致したレコメンデーションを提供することができます。さらなるデータ、インタラクション、エクスペリエンスによってモデルが訓練されればされるほど、AI の能力と信頼性は向上し、顧客とのやりとりが洗練され、成功するようになります。

SalesforceのAIは何に役立つ?

この研究は Salesforce 製品を変革し、Salesforce の顧客に利益をもたらしていますが、研究チームは常により広い視野で考えることも忘れません。ビジネスこそが社会を変えるための最良のプラットフォームであると信じている企業として、Salesforce はEinstein を進化させるための基礎 AI 研究を、より大きな社会的利益のために、エンタープライズ ソフトウェア以外の領域にも応用しています。 

たとえば、サバレーゼと彼のチームは、Salesforce の AIに関する専門知識を次のようなプロジェクトに応用しています。

  • SharkEyeを通じて、ビーチをより安全に保ちながら、戻ってくるサメの個体数を保護することを目的として、ホオジロザメを追跡します。
  • AI Economistを通じて、複雑な経済シナリオの解決策を見つけることを目的とした金融モデルを研究しています。 
  • ReceptorNetを通じて、乳がん患者の治療費用の削減と治療結果を向上させながら、乳がん治療の意思決定を改善することに貢献しています。 
  • ProGenを通じて、新しいたんぱく質を構成し、新しい医薬品、ワクチン、病気の治療法の発見に役立てます。

テクノロジーを利用して社会的利益を生み出すことは Salesforce の DNA に組み込まれており、ネイクによれば、それはチームが手を携え、一貫した動機で協力しているからこそ実現できていると言います。

「特定の研究技術に賭けたり、失敗する可能性が高いことに取り組むには、大きなリスクを負わなければなりません。それには革新性、勇気、そして常にテクノロジーを即興で改善していく能力が必要です。しかし最も重要なのは、チームワークとお互いへの信頼です」と彼は語ります。

次の AI 革命

サバレーゼは、AI の次の段階が AI エージェントの形で実現しつつあると信じています。

Dreamforce ’23 の基調講演では、CEO 兼 共同会長のマーク ベニオフが、AI エージェントを含むエンタープライズ AI の波について語りました。

AI エージェントを、AI の高度で、より有能で、プロアクティブなバージョンとして考えてみてください。サバレーゼは次のように述べます。 「AI エージェントはユーザーに代わってアクションを実行できます。デジタルパーソナルアシスタントとして、ユーザーの生産性を向上させ、私たちは最も重要で創造的な仕事に集中できるようになります」

これは、サバレーゼが当初ラージ アクション モデル(LAM) 、あるいは AI エージェントと 名付けたものによって起こります。

一般的に GPT として知られる、初期生成的な事前トレーニングを行ったトランスフォーマーでは、プロンプトに基づいてコード、テキスト、画像などを生成するために独立して動作する個別の LLM がありましたが、AI エージェントはその進化の次のステップであり、自律的にタスクを実行できます。 そして最終的には、AI エージェント同士がつながり連携することで、飛躍的に強力で効率的な AI ネットワークを構築することになるでしょう。

具体的にイメージする際に役立つハイネッケの実例があります。あなたがメキシコへの旅行を計画していて、チャットボットを使っているとします。 AI エージェントのようなものを使えば、チャットボットが何をすべきかの選択肢を提供するだけでなく、実際にWeb サイトにアクセスし、計画を立て、チケットを予約するなどのアクションをあなたに代わって実行してくれます。これは、あなたに代わってタスクを管理するために、相互コミュニケーションの方法を知っている特定のスキルを備えた AI エージェントのセットです。ハイネッケは、 「これがLLM を次のレベルに引き上げる方法であり、これが AI エージェントのすべてなのです」と述べています。

LLM が行動を起こせたらどうなるでしょうか。 Salesforce の主任研究者が、「大規模アクション モデル」の可能性について ここで説明しています。


これは単なる理論や仮説ではなく、Salesforce がEinstein 1 Copilotを使用して顧客向けに構築しているものです。 Dreamforce で発表された Einstein 1 Copilot は、あらゆる Salesforce アプリケーションのユーザーエクスペリエンスに直接統合された対話型 AI アシスタントです。 Einstein 1 Copilot は、営業担当者が電話した後に推奨されるアクションプランや、サービスに関する新しいナレッジ記事の作成など、ユーザーの問い合わせを超えた追加アクションの選択肢を積極的に提供します。

Salesforce における AI の未来

多くの企業が新しい AI ファーストの世界で追い上げるのに必死ななか、Salesforce は CRM、データ、AI と、それを支える研究とイノベーションの共生関係によって独自のポジションを確立しています。

ハイネッケは次のように語ります。「Salesforceにおいて、 AI の最前線で働けるのは素晴らしいことです。 私たちができることはいくらでもあります」

サバレーゼもこれに同意し、Salesforce の取り組みが業界全体にとっての AI の未来を形作ることに寄与すると認識しています。彼は次のように続けます。
「AI は生産性向上の新時代を切り開くものであり、Salesforceほどこのビジョンを追求するのに適した場所はありません」

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