Salesforce、Agentforce 360の可観測性を強化する「オブザーバビリティ」を提供開始　あらゆるチームの継続的なAIパフォーマンスのインサイトと最適化を支援

※本記事は2025年11月20日に米国で公開されたSalesforce Deepens Observability in Agentforce 360, Giving Every Team Continuous AI Performance Insight and Optimizationの抄訳です。本記事の正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語が優先されます。

AIエージェント開発のライフサイクルは、構築、テスト、導入の3つのフェーズから始まります。多くの組織が最初のAIエージェント作成という初期段階の課題を克服している一方で、企業の真の課題は導入直後に始まります。

AIエージェントが実際のトランザクション処理を開始すると、しばしばブラックボックス化してしまいます。チームは結果を確認できますが、AIエージェントが特定の動作をした理由や、どの推論経路をたどったのかといった重要な可視性は欠如しています。このインサイトがなければ、チューニングは遅延し、信頼は低下し、スケールしていくことは大きなリスクをはらむものとなってしまいます。

次の段階では、継続的な改善、パフォーマンスの最適化、およびAIエージェントの健全性に対する信頼性の高い監視が求められます。拡大するAIエージェントのネットワークにおいてエンタープライズレベルの運用の厳密性を実現するためには、組織はループを閉じるための堅牢なオブザーバビリティ（Observability、可観測性）ツールを必要とします。これらはテストツールと連携し、AIエージェントのライフサイクルが導入で終わるのではなく、継続的な監視と反復を通じて持続することを保証します。

Salesforceは本日、新たなAIエージェントオブザーバビリティのツールを発表いたしました。これにより、Agentforce 360 Platformの全てのAIエージェントに対し、より深い可視性、監視、最適化を実現することが可能となります。AIエージェントの動作に関する詳細なインサイトを提供することで、組織は安全にAIを拡張し、AIエージェントのパフォーマンスを継続的に向上させることができます。また、人間とインテリジェントなAIエージェント間の連携強化を促進することで、これらの可観測性ツールはAI導入の信頼性と確実性を保証し、あらゆる企業がエージェンティックエンタープライズへと進化する道のりを加速させます。

新しい必須要件：可観測性が不可欠である理由

AI導入が282％急増したことを受け、企業はAIエージェントの大規模な導入を急ピッチで進めています。その中で一つの真実として「百聞は一見に如かず」ということが明らかになりました。大規模な導入を成功させるためには、チームがAIエージェントのパフォーマンス、学習、改善指標を明確かつ継続的に把握できる視点が必要です。AIエージェントが実際の会話を処理し、収益や顧客体験に直接影響する意思決定を行う以上、このニーズは極めて重要です。AIエージェントの挙動に対する可視性は新たな必須要件となり、そして不確実性や推測を、AIの拡大に必要な信頼性、透明性、測定可能な価値へと変革していくのです。

「AI の導入が加速するにつれて、企業にとって最大の課題は、組織で初めてAIエージェントを構築することではなく、現実のビジネス上の意思決定を行うAIエージェント群をどのように最適に管理するかということに変わっていくでしょう。可視化できていないものを拡張することはできません。Agentforce は、この新しいAIエージェントの世界に必要なエンタープライズレベルの厳格な運用を実現します。IT リーダーへパフォーマンスの継続的な追跡、問題のデバッグ、AI 投資の ROI の実証を行うための重要なツールを提供し、すべてのインテリジェントなAIエージェントが、信頼性、安全性、そして完全な透明性を備えて確実に機能することを保証します」 Salesforce AI EVP兼GM アダム・エヴァンス（Adam Evans）

Agentforceの新機能

Agentforce内の新たな可観測性ツールは、分析、最適化、ヘルスモニタリングの3つの主要領域をカバーしています。

AIエージェント分析（Agent Analytics）：継続的な改善

AIエージェント分析（Agent Analytics）は、各AIエージェントのパフォーマンスを包括的に把握し、その成果を意味のあるデータ、トレンド、インサイトへと変換します。

AIエージェントのパフォーマンス追跡： 導入された全AIエージェントの使用量と効果測定指標を監視し、実際の顧客インタラクションにおけるAIエージェントのパフォーマンスを明確に把握できます。
KPIトレンド： KPIの推移を可視化し、パフォーマンスが向上している領域、低下している領域、注意が必要な領域を容易に把握できます。
実践的なインサイト： 効果的でないトピックやアクション、フローに対処し、AIエージェントのパフォーマンスを最適化するための対策を講じられるようにします。

AIエージェント最適化（Agent Optimization）：推論とトレーサビリティ

AIエージェント最適化（Agent Optimization）により、顧客はすべてのAIエージェントとのインタラクションを完全に可視化できます。パフォーマンスのギャップを明らかにし、セッションの流れを追跡し、AIエージェントがどのように意思決定を行うかを正確に把握することで、企業は問題を迅速に診断し、AIエージェントが特定の行動をとった理由を理解し、継続的に結果を修正・改善するための対策を講じることが可能となります。

あらゆるインタラクションを可視化： Agentforceの全インタラクションをエンドツーエンドで可視化し、複雑な推論プロセスを経た場合でも、AIエージェントが段階的にどのように対応したかを正確に把握できます。
セッションのクラスタリングと分析： 類似したリクエストをグループ化し、パターンや摩擦点、品質の傾向を明らかにすると同時に、意図、トピック、品質指標を用いてAIエージェントの対応を評価します。

AIエージェント設定の最適化： パフォーマンスに影響を与える設定上の課題を特定し、調整、再トレーニング、またはガードレールの導入が必要な箇所を正確に把握します。

AIエージェント・ヘルスモニタリング（Agent Health Monitoring）：稼働時間と信頼性

AIエージェント・ヘルスモニタリング（Agent Health Monitoring）は、導入されたAIエージェント群に対してニアリアルタイムの可視性と実用的な信頼性シグナルを提供することで、継続的な稼働時間、信頼性、応答性を確保します。このコンポーネントは運用上の厳密性にとって不可欠であり、ピーク負荷時においてもAIエージェントが信頼性高く一貫して動作することを保証します。

AIエージェントの状態の継続的な監視： 主要な健全性メトリクスをニアリアルタイムで追跡し、ダッシュボードデータが常に最新であることを保証するとともに、パフォーマンスや信頼性シグナルに影響を与える前に潜在的な問題を可視化します。
障害の積極的な解決：重大なエラーやレイテンシの急上昇、エスカレーションに関する高速アラートを受信し、チームが問題を迅速に検知、調査、解決してダウンタイムを最小限に抑えることを可能にします。

エンタープライズレベルの信頼性の維持：高可用性と運用上の堅牢性を備えたシステムを活用することで、AIエージェント群全体に対して継続的な監視を確実に実行できるようになります。

注目ポイント：統合された可視性とインテリジェントなガバナンス

企業は多数のAIエージェントを構築しており、顧客や従業員とのインタラクションからバックエンドシステムに至るまで、組織全体で相互運用できることが求められています。また、AIエージェントのパフォーマンスを可視化し、それらを管理する能力も必要です。これを実現するため、Agentforce 360の高度なオブザーバビリティは、以下の2つの基盤となる要素により構成されています。

セッション追跡データモデル（Session Tracing Data Model）：このデータモデルは、ユーザーの入力やAIエージェントの応答、推論ステップ、LLM呼び出し、ガードレールチェックを含む全てのインタラクションをログ記録し、Data 360に安全に保存します。この基盤により、統合された可視性とセッションレベルの細かなインサイトが提供され、AIエージェントが意図した通りに動作し適切に応答していることを確認できます。
MuleSoft Agent Fabric: この新機能により、構築する場所を問わず、あらゆるAIエージェントの登録や管理、統制、監視を一元的に実行できます。

これらの新たなAIエージェント監視ツールに加え、MuleSoftの堅牢なガバナンスとData 360へ統合されたコンテキスト（文脈）により、あらゆる企業がAgentforce 360 Platform内で全AIエージェントを完全にエンドツーエンドで制御することが実現できます。

パイロット導入企業の声

Salesforceは、1-800AccountantやEngine、Nexoなどのパイロット顧客と緊密に連携し、AIエージェント向けのオブザーバビリティソリューションにおいて本当に必要とされる要件を理解してきました。顧客が求めているのは、データへのより深いアクセス、あらゆるAIエージェントのガバナンス、そして継続的な改善プロセスです。これらの早期の成功事例は、顧客がエージェンティックエンタープライズへと変革していく上で不可欠となる信頼性と透明性を裏付けるものです。

「すべてのAIエージェントとのインタラクションを完全に可視化することで、AIが各リクエストを段階的にどのように処理しているかを正確に把握できます。このインサイトにより、タスクが正しく完了しているかどうかだけでなく、その過程でどのように判断が下されているのかを理解することが可能です。今後、AIエージェントがインバウンドのサービスリクエストの90％を自律的に処理する見込みがある中、この新たなオブザーバビリティツールにより、サポートの効率化、高品質の維持、そして確信を持って拡張することを実現し、お客様が常に迅速かつ正確なサービスを受けられることを保証いたします」
1-800Accountant 最高戦略責任者ライアン・ティープルズ（Ryan Teeples）氏

「Agentforceのオブザーバビリティにより、当社のAgentforceの導入と拡張の方法が変革されました。Engineは年間53万件を超えるお客様の問い合わせを処理しており、あらゆるインタラクションをニアリアルタイムで可視化できるため、AIエージェントのパフォーマンスや学習プロセス、意思決定の仕組みを正確に把握することが可能となっています。このレベルのインサイトは、お客様への正確性と品質を保証するだけでなく、チーム全体の信頼を構築します。これにより、常に人員を増やすことなく、自信を持ってAgentforceをカスタマーサービスや営業、社内業務へと拡大することが可能となりました。オブザーバビリティは、AIを単なるツールから信頼できる、継続的に進化するチームメイトへと変えることができる基盤です」
Engine カスタマーエクスペリエンス＆オペレーション担当VP デメトリ・サルヴァッジョ（Demetri Salvaggio）氏

「月間最大25,000件の問い合わせに対応するNexoの経験豊富なカスタマーケアチームは、Agentforceによって大きく強化されております。本プラットフォームにより、あらゆるインタラクションを完全に可視化でき、AIが人によるサービスを補完する仕組みが明らかになります。これにより、お客様が複雑な暗号資産に関するリクエストを円滑に進められるよう支援すると同時に、チームには顧客体験の水準を継続的に高めるためのインサイトを提供しています」
Nexo チームリード兼製品マネジメントニコラ・ネデフ（Nikolay Nedev）氏

「Agentforceのあらゆるインタラクションを観測することで、当社のAIが最も複雑なツールにおいても広告主をどのように導いているかを正確に把握できます。このインサイトにより、問題が解決されたかどうかだけでなく、その過程でどのように判断が下されたのかを理解することが可能となります。Agentforceの導入以来、サポートケースの46％を回避でき、チームはより価値の高い業務に集中できると同時に、中小規模の広告主には迅速かつ正確なガイダンスとよりスムーズなオンボーディング体験を提供できています。オブザーバビリティにより、これらのAIエージェントを自信を持って拡張し、パフォーマンスを継続的に監視し、そのインタラクションから学びながら改善を加えることが可能となります」
Reddit 営業戦略・オペレーション担当VP ジョン・トンプソン（John Thompson）氏

提供時期：

AIエージェント分析（Agent Analytics）、AIエージェント最適化（Agent Optimization）を含むAgentforce Studioにおける深いオブザーバビリティを可能とするツールは、日本市場で2025年11月21日に提供開始しており、現在利用可能です。
AIエージェント・ヘルスモニタリング（Agent Health Monitoring）は、2026年前半に提供開始予定です。