※本記事は2025年4月10日に米国で公開されたThe Agentic Maturity Model: A 4-Step Roadmap for CIOs to Succeed in the Agentic Eraの抄訳です。本記事の正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語が優先されます。
CIOの84%は、AIがインターネットと同じくらいビジネスにとって重要になると考えています。そのため、戦略的に導入することが競争上の必要条件となっています。しかし、多くの組織はどこから始めればよいのか、AIエージェントをどのように拡張すればよいのか、成功をどのように測定すればよいのか、確信が持てずにいます。
CIOおよびITリーダーに体系的な道筋を示すため、Salesforceは4つの重要な段階とその段階を進むための実行可能なステップをまとめた「AIエージェント成熟度モデル」を開発しました。
SalesforceのエンタープライズIT戦略担当SVPのシバニ・アフジャ(Shibani Ahuja)は述べています。
「AIエージェントは迅速に導入できますが、ビジネス全体に効果的に拡大するには、よく検討された段階的なアプローチが必要です。AIエージェントの機能の発展を理解することは、長期的な成功に不可欠です。このフレームワークは、組織がAIの成熟度を高めるための明確なロードマップを提供します」
AIエージェントは迅速に導入できますが、ビジネス全体に効果的に拡大するには、よく検討された段階的なアプローチが必要です
Salesforce エンタープライズIT戦略担当SVP シバニ・アフジャ
この構造化されたアプローチにより、SalesforceはAIによる自動化へ投資している企業への支援を始めています。
- Wiley:「今日の複雑で急速に進化するAIの世界では、先見の明のあるリーダーシップが不可欠です」と、Wiley のプロセス改善担当ディレクターのKevin Quigley氏は述べています。「Wileyは、AIエージェントの増員などAI機能の開発を進める中、これらのソリューションの進化に関する戦略的フレームワークを構築することで、現在構築している基盤がAIエージェントの未来における成功につながると確信しています」
- Alpine Intel:「大量の保険金請求を扱う企業として、1分1秒の節約が重要です。Salesforceのフレームワークは、混沌とした状況に秩序をもたらし、AIエージェントの機能をいつ、どのように拡張すべきかを明確に示してくれます」と、保険ソリューションプロバイダーのAlpine Intelのアーキテクチャディレクターのケリー・ベントゥボ(Kelly Bentubo)氏は述べています。「これは、現在の状況を把握するだけでなく、時間節約のための要約の作成から、買収先企業全体におけるマルチ組織アプリケーションの探索まで、次なるステップのアイデアを刺激します。新興テクノロジーにおいてこのような明確さは稀有であり、ビジョンを価値に変えるためにまさに必要なものです」
AIエージェントの成熟度の4段階
チャットボットやco-pilotを導入した多くの組織も、自律型AIの導入の初期段階にあります。次のステップは、自律的に動作し、人間とコラボレーションできる真のAIエージェントへの移行です。その道のりをガイドするAIエージェントの成熟度の4つの段階をご紹介します。
レベル0:固定ルールと反復的なタスク(チャットボットとCo-pilot)
概要: 事前に定義されたルールに基づいて反復的なタスクを自動化するもので、推論や学習機能はありません。この段階では、チャットボットやco-pilotは主に情報の取得(FAQへの回答や基本的な問い合わせへの対応など)に重点を置いています。これらはタスクの自動化に役立ちますが、アクションをレコメンドしたり、さらに次のステップに進んだりすることはありません。自律型AIへの移行は、AIエージェントが単に情報を取得するだけでなく、推論を使用して自律的にアクションをレコメンドしたり実行したりするようになった時点で始まります。これはより成熟度の高いレベルで見られます。
例:パスワードのリセットやFAQへの回答など、基本的なサービスに関する問い合わせを新しい情報に適応することなく、単純な決定木に従って処理するチャットボット
レベル0からレベル1へ進む方法
- チャットボットやco-pilotが厳格なディシジョンツリーによって制限されるユースケースを特定し、推論機能が成果を向上できる機会を探ります。
- AIエージェントがタスクを自動化し、アクションをレコメンドすることで節約できる時間を定量的に調査します。
- 組織のリスク許容度に見合ったユースケースを選択し、リスク軽減戦略を確立します(規制業界における従業員向けAIエージェントと顧客向けAIエージェントの区別など)。
- 調整して統合したデータソース(CRM組織など)から始めて、データの品質と可用性を確保し、成熟度が高まるにつれてより広範なデータ戦略を計画します。
- 時間の節約だけでなく、価値とパーソナライズされた顧客体験にも焦点を当てます。
- 時間の節約を定量化し、自動化による応答時間の短縮やコスト削減など、初期の効率指標を実証します。
レベル1:情報検索AIエージェント
概要:情報を取得し、アクションをレコメンドすることで人間を支援するAIエージェントです。
例:ナレッジベースからデータを取得し、顧客サポートチケットの次のステップ(関連するトラブルシューティング記事のレコメンドや問題のエスカレーションなど)を提案するAIエージェント
レベル1からレベル2へ進む方法
- レコメンドからアクションへ移行し、AIエージェントが自律的にタスクを実行できるようにすることで、手作業によるミスを減らし、完了までの時間を短縮します。
- 追加データを調整して、新しいソースが統合される際にデータが確実にクレンジング、変換、前処理されるようにします。
- テスト方法やパフォーマンス指標、継続的なモニタリングなど、より広範なガバナンスフレームワークを確立します。
- ユーザーのフィードバックの収集と反映の方法を検討します。
- 顧客向けAIエージェントについては、ブランドの一貫性が反映されていることを確認します。
- 時間の短縮、ケースの転送率、顧客満足度など効率性や有効性の指標に基づいてROI を測定します。
レベル2:シンプルなオーケストレーション、単一のドメイン
概要:サイロ化されたデータ環境で複雑度の低いタスクを自律的に調整するAIエージェントです。
例: 社内のカレンダーおよびEメールシステムからのデータを使用して、会議のスケジュール設定とフォローアップのメールの自動化を行うAIエージェント
レベル2からレベル3へ進む方法:
- 共通の目標を達成するために、1つの多機能AIエージェントを構築する、または複数のAIエージェントを連携させて構築するかを決定します。大規模なAIエージェントと特化型AIエージェントのどちらを選ぶか決定する際には、レイテンシーの影響を考慮します。
- AIエージェントには人間の従業員と同様のアクセス権を付与し、職務の分離と最小権限の原則を適用します。
- 将来の複雑化に対応できるアーキテクチャを設計し、絶えずアーキテクチャの再構築を行う必要がないよう、標準やプロトコルを組み込みます。
- すぐに使えるAPIコネクターを使用して、AIエージェントの機能を単一のドメインを超えて拡張します。
レベル3:複雑なオーケストレーション、複数のドメイン
概要:複数のドメインにまたがるデータを調整して、複数のワークフローを自律的に調整するAIエージェントです。
例:CRM、カスタマーサービスのチケット、財務報告書からデータを取得して、総合的な顧客ビューを作成するなど、部門間の複雑なワークフローを処理するAIエージェント。
レベル3からレベル4へ進む方法:
- リアルタイムのドメイン間でのAIエージェントのコラボレーションを必要とするユースケースに焦点を当て、動的なAIエージェントのチームにより複雑なワークフローを最適化します。
- シームレスなコラボレーションのために、汎用AIエージェントコミュニケーションレイヤー(API、「AIエージェントバス」)を開発します。
- 継続的なメンテナンスのために、動的なAIエージェントディスカバリ(登録、登録解除、重複排除)を実装します。
- あらゆるAIエージェント間のインタラクションをサポートするスケーラブルなアーキテクチャを設計します。
- 監査、エラー処理、透明性を網羅する、きめ細かなアクセス制御、セキュリティポリシー、堅牢なガバナンスフレームワークを確立します。
- リスクフレームワークに基づく階層化された人間/AI による監督体制を構築します。
- 持続可能なAIエージェントのライフサイクル管理手法を開発します。
- 効率性や有効性、エクスペリエンス、リスク軽減を評価してROIを測定します。
レベル4:マルチAIエージェントのオーケストレーション
概要:AIエージェントの監督のもと、異なるスタック間であらゆるAIエージェントとの相互運用性を実現します。
例:異なるシステムの複数のAIエージェントが連携して、注文処理、在庫管理、顧客からのフィードバックのさまざまな部門へのルーティングをリアルタイムで自律的に行います。
価値を最大化する方法:
- エコシステム全体のコラボレーションのためのセキュリティとガバナンスを進化させます。
- AIエージェントのコラボレーションによって可能となる新しいビジネスモデルを探求します。
- マルチAIエージェントシステムの価値を定量化する指標を開発します。
- AIエージェントのインタラクションを改善するためのフィードバックメカニズムを構築します。
- マルチAIエージェントのコラボレーションによるビジネス全体への影響(収益の増加、コストの削減、顧客維持率など)を追跡してROIを測定します。
テクノロジーを超えて:AIエージェント導入における重要な考慮事項
「組織はテクノロジーだけにとどまらず、より広範な組織への影響も考慮しなければなりません」とAhujaは述べています。「これには、データの準備、セキュリティ、および人間とAIエージェントの協調的なワークフォースの必要性などが含まれます」
AIエージェントには、技術的な実装だけでなく、戦略やデータ、セキュリティ、人材の準備という強固な基盤が必要です。組織は、AIの取り組みをビジネス目標に整合させ、高品質で統合されたデータソースを確保し、AIエージェントの自律性が高まるとともにガバナンスのフレームワークを確立し、人間とAIエージェントのシームレスなコラボレーションを促進するためにチームのスキルアップに投資する必要があります。これらの柱に取り組むことで、AIの導入が加速し、持続可能なAIの成熟度が向上します。
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