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Agentforceによる50万件の顧客対応から得た教訓 – AIが共感と効率を両立する新時代へ

Agentforce Customer Support Lessons Learned.

※本記事は2025年4月22日に米国で公開されたLessons from 500,000 Agentforce Customer Conversations – How AI Drives Empathy and Efficiencyの抄訳です。本記事の正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語が優先されます。


2024年10月、Salesforceはヘルプサイトにデジタル労働力のプラットフォームであるAgentforceを導入し、顧客に対して24時間365日対応のAIサポートを提供し始めました。 

これは大胆な取り組みであり、当社にとっても世界最大規模の自律型AI導入のひとつでした。導入から6か月後、AIエージェントはすでに50万件を超える顧客との会話を処理し、 help.salesforce.comのAgentforceを通じて寄せられる顧客からの質問の84%以上を、効率性と共感性のバランスを保ちながら解決しています。これにより、サポートチームはより手厚い顧客対応に注力し、同時に自身の専門スキルの向上に取り組む時間を確保できるようになりました。

Salesforceのデジタルカスタマーサクセス担当SVP、バーナード・スロウィ(Bernard Slowey)はこの大きな変革の先頭に立ち、AIエージェントがいかに顧客サービスを再定義しているか、そしてなぜデジタル労働力の未来がカスタマーサクセスのための人間とAIの協働にあるのかについて語りました。

Q. Agentforceによる最初の50万件の会話で最も驚いたことは何ですか?

最大の驚きは、顧客による採用の速さでした。2024年10月11日にサービスを開始してから、サイト上でのやり取りのボリュームは驚異的で、わずか数か月で50万件の会話というマイルストーンに到達しました。

また、Salesforceアプリ上でさまざまなタスクに対応できるAIエージェントを構築・カスタマイズできるローコードツール(英語)のAgent Builderを通じて、プロンプト設計やエンジニアリングについても重要な知見が得られました。現在、Agentforceには「回答ではSalesforceの利益を重視するように」「任意のトピックへのコメントは避けるように」「あたかも社内担当者であるかのようにサポートを提供するように」といった指示を与えています。

Q. SalesforceのヘルプサイトにおけるAgentforceの急速な普及を後押ししている要因は何ですか?

使いやすさはもちろんのこと、もうひとつの大きな要因は「安心感」です。顧客は、人間のサポートエンジニアには聞きづらいような質問でも、Agentforceにはためらわずに質問しています。おそらく、恥ずかしさや評価への不安がないからでしょう。 

自律型AIエージェントとのやり取りには、これまでとは異なる心理的なダイナミクスがあります。多くの人にとって、それは圧迫感が少ない体験なのです。だからこそ、Agentforceは顧客が必要な情報を見つけるうえで非常に有効なのです

Salesforceのデジタルカスタマーサクセス担当SVP、バーナード・スロウィ(Bernard Slowey)

自律型AIエージェントとのやり取りには、これまでとは異なる心理的なダイナミクスがあります。多くの人にとって、それは圧迫感が少ない体験なのです。だからこそ、Agentforceは顧客が必要な情報を見つけるうえで非常に有効なのです。

Q. Agentforceが得意とする領域と、人が介入すべき領域はどこですか?

AI(英語)と人間の担当者は、連携することで最も効果を発揮します。Salesforceでは、顧客がAgentforceから人間のエージェントへ切り替える際にネックとなる点を特定するために、会話の分析を継続的に行っています。こうしたやり取りを分析し、「人間であればどう対応したか」「なぜ人間による対応が必要になったのか」といった点を評価することで、Agentforceの改善領域を特定し、スキルセットの洗練につなげています。両者はまさに一体となって機能しているのです。

最終的に、人間のサポート担当者やエンジニアは、複雑で繊細な顧客ニーズへの対応やナレッジギャップの特定において不可欠な存在です。一方で、Agentforceには24時間対応という大きな強みがあります。私たちは「カスタマーサクセス」を第2のコアバリューに掲げており、顧客が迅速に人間のサポートエンジニアとつながる必要がある場合には、それをスムーズに実現できる体制を整えています。

全体として、Agentforceの会話のうち人間のサポートエンジニアに引き継がれるのはわずか4%です。これは、AIエージェントがほとんどの顧客ニーズに対応できていることを示す非常にポジティブな指標です。また、この4%という数値を下げようとは考えていません。この割合には意図があります。私たちは常に、AIと人間のサポートの最適なバランスを見極めるために微調整を行っています。

Q. Agentforceにどのようにガードレール(運用ルール)を設定しましたか?うまくいった点、そうでなかった点は?

Agentforceの立ち上げは、新入社員のトレーニングに似たアプローチで行われました。つまり、コンテンツを提供し、コーチングを行うというものです。SalesforceはハイパースケールデータエンジンのData Cloud One(英語)を活用しました。これは、Data Cloudを活用したマルチオーガナイゼーション(複数組織)での開発を大幅に強化する機能です。ヘルプポータルから約74万件のコンテンツを取り込み、Agentforceに強固なナレッジベースを与え、開発者向け情報などを随時追加しています。良質なデータこそが成功の最大の鍵であり、Data Cloudは多様な情報源からのデータ統合を可能にし、私たちが構想したパーソナライズされたエンゲージメントやエージェント型体験の実現に不可欠な存在です。 

また、Agentforceがどう回答し、指示を出すかを決めるうえで、AI用のガードレールも極めて重要でした。「Salesforceにとって最善の利益になるように行動する」といったフレーズでAgentforceをコーチングすることで、非常に良好な結果が得られました。一方、契約更新に関する問い合わせなどは人間の担当者が対応すべきと判断し、Agentforceにはそのような内容が来た場合、担当者へ誘導するよう指示しています。

Q. Agentforceの取り組みの中で、特に印象に残っている出来事はありますか?

あるサポートエンジニアが共有してくれたやり取りに、非常に印象的なものがありました。ある顧客がメールリレーに関して非常に複雑な質問を持ち、解決のためにサポートケースを起票しました。しかし返答を待っている間に、Salesforceのヘルプサイト上でAgentforceを見つけ、試しに使ってみることにしたのです。

顧客は、ただ単にメールリレーについての簡単な答えを求めていたわけではありませんでした。本質的に理解しようとしており、フォローアップの質問を繰り返しながら、構成要素のすべてを把握しようとしました。Agentforceとの間で何度もやり取りを重ねる中で、彼はその体験と回答の細かさに非常に感銘を受けました。そして、その会話の全文をサポートエンジニアに転送し、「この内容で解決したので、ケースはクローズして大丈夫です」と伝えてきたのです。

これは、私たちが取り組んでいることが確かなものであるという、大きな裏付けとなりました。

詳細情報:

  • Salesforce社内でのAgentforce活用事例は、こちら
  • デジタル労働力が企業の未来をどう変革するかについては、こちら
  • AIエージェントの詳細は、こちら
  • Agentforceが描くAIエージェントの未来については、こちら(英語)。