優れた戦略も、それを実行する組織に熱量がなければ画餅に帰す——。 2026年1月、Salesforce Tower Tokyoにて、株式会社日立製作所(以下、日立)と株式会社セールスフォース・ジャパン(以下、Salesforce)による共同イベント「ERG Connect: Salesforce × HITACHI 〜広がる、進化する! カルチャーを動かす力〜」が開催されました。
創業115年目を迎え、新卒入社が9割以上を占める日立。そして、創業27年目、中途入社が多く「Equality(平等)」を創業当初からのコアバリューとするSalesforce。業種も歴史も規模も異なる両社ですが、共通して重視している経営テーマがあります。それが、従業員主導のコミュニティ活動(ERG:Employee Resource Group)を通じた「組織カルチャーの変革」です。
ERGとは、企業や組織において、同じ価値観や特質・個性を持つ従業員たちが集まり、「すべての従業員が自分らしく安心して働ける環境づくり」を主体的に進めていく取り組み。本イベントでは、両社のERGリーダーたちが一堂に会し、なぜ今、企業にERGが必要なのか、それがビジネスや人材育成にいかなるインパクトをもたらすのかについて、熱い議論が交わされました。
戦略を実行するのは、いつだって「人」である
「Culture Eats Strategy(企業文化は戦略に勝る)」

オープニングセッションの冒頭、日立グループ デジタルシステム&サービス、コネクティブインダストリーズ CDEIO(Chief Diversity, Equity & Inclusion Officer)の中田 やよい(Joy)は、経営学者ピーター・ドラッカーの格言を引用しました。 「どれほど優れた戦略も、現場に浸透しなければ機能しません。その成否を分けるのが、カルチャーの有無だと思います。そして、そんな優れた戦略を活かせる土壌(カルチャー)を育むのがERGです」 現在日立では約10のERGが存在しており、グループ内ではさらに詳細なテーマに沿った分科会が立ち上がり、活発に活動しています。
一方、Salesforceは、すべての人のために平等な職場と世界を創る「Equality for All(すべての人に平等を)」を目指し、「イクオリティグループ」というERGの取り組みを進めてきました。 日本・韓国・台湾地域のSalesforce イクオリティとエンゲージメントをリードする蓮見 勇太も中田の意見に同意しつつ、興味深いデータを示しました。Salesforceの調査によると、「自分らしく働けている」と実感しているチームほど、AIの業務活用に対して36%も積極的であるという驚きの相関関係があるそうです。 「戦略は時代の変化とともに更新されるものですが、オープンで多様性を活かすカルチャーは、このAI時代においても、決して価値の減じない『無形資産』となるはずです」と蓮見は語りました。
日立×Salesforceが語るERGの現在地
続いて行われたパネルディスカッションでは、日立でDE&Iを担当する上田 麻美をモデレーターに、両社のERGリーダー、アライ(支援者)、そして彼らを支える上司という多様な立場の6名が登壇しました。

「個」の変革が、組織を強くする —— キャリア、人間関係、そして人生へのインパクト
議論の口火を切ったのは、「個人の変化」についてのエピソードです。
若手社員としてERGに参加している日立の中野 まおは、他部署との交流が苦手だった自身の変化を語りました。「運営側として関わることで、苦手だったネットワーキングを克服できました。普段接点のない事業部の方と繋がり、視野が広がった経験は、間違いなく今後の本業にも活きると感じています」
育児や介護など家族をテーマにするSalesforce Parents & Familiesでリーダーを務める林 剛正は、5人の子供を持つ親としての実感を込めて語りました。「以前は『誰かがやるだろう』と消極的でしたが、活動を通じて『小さな力でも、自分が動かなければ何も変わらない』と意識が一変しました。妻からも『別人になった』と言われるほど、ERGは私の人生を豊かにしてくれています」
女性活躍を支援するSalesforce Women’s Networkにアライとして参画している大竹 史雄は、活動を通じて意識が大きく変わったといいます。「最初は前任者の引継ぎで参加しましたが、活動を通じて、自分の属性の中では触れる機会がなかった課題を知ることが増え、そこでの経験から、妻や女性社員に具体的にメッセージを届けられるようになりました。自分に直接関係がないコミュニティにこそ参加したほうが良いのではないかと考えが変わりました」
上司の立場からも、部下の成長や組織への効果について意見が交わされました。
日立で障害をテーマとするERGの聴覚障がいの分科会に参加している早川 幸子は、聴覚障がいのある部下との関わりについて振り返りました。「ERGの場で生き生きとする部下を見て、私は障がいについて『わかった気』になっていただけだと痛感しました。知ったかぶりをせず、真に対話する姿勢を学んだことは、今のマネジメントの基礎になっています」
上司の立場で部下のERG活動を見守る日立の清水 俊克は「会社の中に、業務とは異なる『サードプレイス(居場所)』があることは、社員の心理的安全性に直結します。安心して活動できる場があるからこそ、本業にも活きるリーダーシップが育つのです」と指摘しました。
自身の部門でERGを推進するリーダーを務めるSalesforceの森 直之も「普段一緒に仕事をしないメンバー同士が繋がれるのは素晴らしいこと。社員自らが『Best Place to Work(働きがいのある会社)』を作ろうと動いてくれていることに感謝しています」と述べました。

ERG活動の「持続可能性(サステナビリティ)」 —— 業務との両立と評価のあり方
一方で、業務時間とのバランスや周囲の理解といった課題についても本音で語られました。
日立の中野は、「活動には上司の許可が必要ですが、会社へのビジネスインパクトをどう説明するかには常にプレッシャーを感じています。『本業にどう活かすか』という視点での還元を模索し続けています」と率直な悩みを吐露しました。
これに対しSalesforceの制度と文化が紹介されました。 Salesforceの大竹は、「当社では『何を達成したか(What)』だけでなく、コアバリューを体現して『どう達成したか(How)』も評価されます。そのため、ERG活動は価値観の実践としてポジティブに捉えられます」と説明。さらに、「家族の病気で悩むメンバーに、ERGを通じて経験者のメンターを紹介し、業務に復帰できた事例もあります。ERGは生産性の土台となるセーフティネットでもあります」と語りました。
Salesforceの林はタイムマネジメントについて、「業務優先のためミーティングに出られないこともありますが、100%を目指さず、使える時間の範囲でベストを尽くすようにしています」と持続可能な工夫を語りました。
Salesforceの森は、「Salesforce独自の『V2MOM』という目標管理で、ERGなどの活動目標も上司と握るため、堂々と活動できる文化があります」と、制度面での裏付けを説明しました。
また、会場から「大規模イベント後の燃え尽き(バーンアウト)をどう防ぐか」という質問があがると、Salesforceの蓮見が「『ルースレス・プライオリタイゼーション (Ruthless Prioritization)(単に「優先順位を決める」だけでなく「最も重要なもの以外はやらないと決める」)が必要。活動を絞り込み、集中することがサステナビリティの鍵です」とアドバイスし、日立の中田も「どうしてもエネルギーが高い人に負担がかかる。リーダーやメンバーに負担が行き過ぎないように細く長く続けられるペース配分が重要」と述べました。
クロージングには、障害のある社員とアライのコミュニティ「Abilityforce」とアジア太平洋諸島の出身者やその文化にルーツを持つ社員のためのコミュニティ「Asiapacforce」でExecutive Advisorを務めるSalesforce 取締役副社長の伊藤 孝が登壇しました。 伊藤は、自身の管掌する日本・韓国・台湾(JPKT)組織において、「Asiapacforce」というERGが文化理解の架け橋になっているとし、「私自身、Abilityforceの活動に参加することで、障がいのある方への配慮など多くの『腹落ち』がありました。課題はありますが、チームビルディングのような『Fun(楽しさ)』を取り入れながら、今後もネットワークを広げていきましょう」と呼びかけました。
文化を動かし、社会を変えるエンジンに。両社が誓う変革への「第一歩」
セッション終了後、東京の夜景を一望できるOhana Floorで行われたネットワーキングパーティでは、セッションの熱気そのままに、両社の社員が活発に交流しました。 「うちの部署でも似たような課題がある」「今度、合同で勉強会をやりませんか?」——。グラスを片手に、組織の壁を超えた新しいプロジェクトの種があちこちで生まれていました。
乾杯の挨拶に立った日立の執行役常務 CLO 松村 祐土は、近年の「エシックス(倫理)が不明確な社会」に対する危機感を述べ、「この状態を解決するには、戦略だけでなく文化を構築することが必要で、そのためには、実際の行動を通じて文化を体現していくしかありません」と強調しました。続けて「今後もこうした取り組みを展開して、ERGの理解促進と体験機会を共同で創出したいと考えています」と話し、これからの展望を示しました。
ジェンダー平等の推進に取り組む日立の理事 環境・サステナビリティ本部長 津田 恵 は最後に 「多くの日本人がリスクを恐れ、変化を避ける傾向にある中で、多様性の価値を訴える活動はそれ自体がとても困難です。でも、日本の成長のためには多様性の受容が不可欠ですし、それは世界的な潮流でもあります。ここで集う仲間とともに小さな声をあげ続ければ、いつか必ず社会に届き、変化が起こるはず。今回のイベントは、その変化への第一歩となるでしょう」とエールを送りました。
戦略を模倣することは簡単ですが、組織に根付いたカルチャーを模倣することはできません。そして、そのカルチャーを作るのは、経営者だけでなく、現場の社員一人ひとりの「想い」と「行動」です。
今後もSalesforceと日立は、ともにERG活動に取り組みつつ、その知見を共有し、誰もが公正に自分らしく生きていく社会づくりに貢献してまいります。
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