
Dreamforce 2019は、2日目もたいへんな盛り上がりを見せ、大成功のうちに1日を終えました。今日のセッションには、メディア界の大御所、アリアナ・ハフィントン氏、NBAのスタープレーヤー、ステフィン・カリー選手と妻のアイーシャさんが登壇。今年で7回目となるカスタマーフォーラム、「True to the Core 」には、Salesforceのパーカー・ハリスとブレット・テイラーが参加しました。また、持続可能な開発目標(SDGs)の背後に12兆ドルものビジネスチャンスが潜んでいることが紹介されました。そして、牛肉が好きな人に向けて、Dreamforce 2019のフードメニューに牛肉料理がない理由が説明されました。(会場では、SDG目標12へのコミットメントを推進し、持続可能な消費に留意する目的から、牛肉を使わないメニューが100%堆肥化できる包装で提供されました。詳しくはこちら(英語))
2日目のプログラムでは、SDGsの達成に向けて個人や企業が果たす役割、そしてコマース、セールス、小売業などがデジタルトランスフォーメーションによってどのように変化するかということが中心的なテーマになりました。セッションのハイライトをいくつかご紹介します。
現在、AI(人工知能)そのものはもちろん、AIがデジタルトランスフォーメーションで果たす役割にも大きな期待が寄せられています。しかし、AIの導入方法には混乱が見られます。Einsteinの基調講演では、株式会社リバネスの取締役CIOである吉田丈治氏、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ社でセールスイネーブルメントツールとアナリティクスを担当するグローバルディレクターのJessica DeLeo氏、SalesforceのEinstein AIチームのメンバーが、AIを活用した顧客情報の一元管理の導入から、利用、確立にいたる方法を語りました。(詳しくはこちら(英語))
SalesforceでEinstein製品を担当するバイスプレジデントのマルコ・カサレイナは「出発点となるのは、みなさんのビジネスにとって意味のある質問です。」と述べました。「たとえば、成約の可能性がある商談はどれか、退学しそうな生徒は誰か、マーケティングメールが開封されるかどうかといった質問です。」Customer 360に組み込まれたAIを活用すれば、社員がこういった質問の答えを知り、もっと生産的に仕事を進められるようになります。
スタートアップ企業スライブ・グローバル(Thrive Global)の創設者兼CEOのアリアナ・ハフィントン氏とセールスフォース・ドットコムの会長兼共同CEOのマーク・ベニオフが行ったセッションでは、テクノロジーの話から離れ、ウェルネスについて対話が繰り広げられました。2016年の創設以来、スライブ・グローバルはストレスやバーンアウトの根絶をミッションとしています。ハフィントン氏はこれを「文明病」と呼び、ヘルスケアの問題や費用の90%が、ライフスタイル、行動、ストレスに関連していると説明しました。
「世界には、すぐには解決できない多くの問題があります。しかし、ストレスやバーンアウトは、なくすことができます。そのためには、燃え尽きるまで仕事をしなければ成功できない、という私たちの思い込みを変えるだけでよいのです。」とハフィントン氏は語りました。話題は、瞑想、呼吸法、スピリチュアリティに及びました。聴衆が静かに聞き入る中、マーク・ベニオフは自身の体験として、火曜日の基調講演の前に、前日に追悼式が執り行われたバーナード・タイソン氏への思いを消化するために、心を落ち着かせる時間が必要だったと語りました。このDreamforceをバーナード・タイソン氏に捧げます)。
SDGsを達成するには、現在、世界を覆っている信頼の危機を克服しなければなりません。南アフリカでニュースキャスターとして活躍するTumelo Mothotoane氏が司会を務めるパネルディスカッションでは、チェロ奏者のヨーヨー・マ氏、世界YMCA同盟総主事であるCarlos Madjri Sanvee氏、国連事務局の持続可能な開発目標を担当するグローバルアドボケートであるEddie Ndopu氏が、社会に信頼を取り戻し、より良い世界を作るために私たちに何ができるか、話し合いました。
現在、特に若者の間で、行政機関や政治に対する信頼が大きく失われています。「信頼があれば、世界はもっとシンプルになります。信頼を持って問題に取り組めば、その問題はもう解決しているといっていいでしょう。信頼がなければ、途方もない目標を達成することは難しくなります。心を開き、相手を受け入れることが重要なのです。」とNdopu氏は述べました。
社会として、ビジネスリーダーとして、そして人間として、私たちはまず価値観を掲げなければなりません。ヨーヨー・マ氏はマーク・ベニオフの新著『Trailblazer』から引用して、「価値観が価値を作ること」を参加者に思い出させてくれました。ヨーヨー・マ氏は言います。「価値観がなければ、見た目がきれいなだけで、中身が空っぽなものに振り回されてしまうでしょう。」
DreamforceにおけるSDGsへの取り組みについて、詳しくはこちらをご覧ください。(英語)
今日のTrailheadの基調講演は、講演というより旧友と再会するホームカミングパーティのようでした。ゴールデンフーディーを着た参加者が、遠くから手を振りあったり、ハグを交わして挨拶をしたりしています。Trailheadのマーケティングを担当するKris Landeは 、社員のスキルアップを図るツールとして、Trailheadの重要性を強調しました。Trailheadコンテンツ担当バイスプレジデントのChris Duarteは、Trailheadを最大限に活用するための新しい機能を紹介しました。
Trailhead Evangelism 及び Trailblazer Communityのバイスプレジデントを務めるLeah McGowen-Hareは、Trailblazerコミュニティが「互いを鼓舞し、応援する場所」になっていることを強調しました。ゴールデンフーディーを贈られたLauren Zolp氏、Trailblazerをもう一つの家族だと語るSalesforce管理者、Daniel Gorton氏が自身の体験を紹介しました。(Daniel Gorton氏のブログはこちら(英語))。また、社員、顧客、パートナーのスキルアップのためにmyTrailheadをパイロットで導入しているアクセンチュア社の事例が紹介されました。
ビジネスの本質は、世の中を良くすること。これが、今日のセッション「The $12 Trillion Opportunity Behind The SDGs(SDGsの背後には12兆ドルのビジネスチャンスがある) 」の中心テーマでした。脚本家兼映画監督にして、国連のSDGsのアドボケートであるリチャード・カーティス氏は「これまでは、企業の社会的責任ということが言われていましたが、これからは責任を果たす社会的な企業の時代です。」と述べました。
カーティス氏のほかに、国連事務次長でUN Womenの事務局長を務めるプムズィレ・ムランボ=ヌクカ氏、テレビドラマの監督、慈善家、Pour Le Femmesの共同オーナーとしても活躍する女優のロビン・ライト氏がパネリストとして登壇し、私たち一人ひとりが17の持続可能な開発目標の1つにでも取り組めば、世界に大きな影響を与えられるということを繰り返し訴えました。
紛争地域の女性に仕事を提供することを目的に、パジャマを製造する会社を3年前に設立したライト氏は、世界を変えるためにビジネスやテクノロジーをどのように活用しているかを語りました。「私たちのビジネスを広げるためには、Salesforceが必要です。ビジネスを広げることで、紛争地域の女性にもっと仕事を提供でき、さらにビジネスが大きくなるというように、すべては輪のようにつながっているのです。」とライトさんは述べました。最後に、和やかながらも真剣な雰囲気のなか、SDGsを達成するために私たちが取り組まなければならない2020年の課題を確認してパネルディスカッションは幕を閉じました。「世界を大きく変えるのは、ビジネスの力です。任期の短い政治家ではありません。」とカーティス氏は述べました。