新型コロナウイルスの影響を受け、従業員の働き方を見直したり、急遽「リモートワーク(在宅勤務)を導入したという企業や組織の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、2,800人の従業員と外部委託のエンジニアが12の国でサービスを提供している、Salesforceのカスタマーサポートがどのようにリモートワークへの移行を行ったのかをご紹介します。著者のJim Rothは、米国セールスフォース・ドットコムでカスタマーサポート部門を率いるExecutive Vice Presidentです。

 

Leading Through Change  - いま、私たちができること。- 

世界の博物館のなかでも私が特に大好きなのが、チャーチル博物館の内閣戦時執務室です。ここは、チャーチルと彼の部下が戦争の指揮を執り、地上の爆撃から身を守った地下複合施設です。危機のなかにあって、爆弾が施設まで貫通しないよう、エンジニアたちは天井を補強する必要がありました。ここは第二次世界大戦を代表する博物館であるだけでなく、任されたチームが事前準備なしに新たな環境へと進みながら成功を収めるにはどうすればいいか、というヒントも与えてくれます。

私はこのパンデミック(世界的大流行)のなかで、この内閣戦時執務室のことをよく考えます。この執務室で上層部は部下を守るためにどんな行動をし、部下はそれにどう応えたのか。今私たちが経験している外出制限は、地下施設に閉じこもって世界から隔絶されるのと似たようなものですが、見えないウイルスは空から落ちてくる爆弾とはまったく異なります。そしてもう1つ違うのは、チャーチルの部隊にはダイヤル式の電話や交換手、タイプライター、巨大な地図しかありませんでしたが、私たちは離ればなれになっていても、QuipやZoomなどのコラボレーションツール、そしてクラウドベースのアプリケーションや自動化などのテクノロジーを使って、つながりを保ち、業務を続けられるということです。

私はこれまで20年以上カスタマーサービスに携わってきましたが、数週間という期間でコールセンターの業務全体をリモートワークに移行するようなことが起きるとは想像もしませんでした。しかし、同じような状況が世界中で起こっています。

Salesforceのカスタマーサポートでは、2,800人の従業員と外部委託のエンジニアが12の国でサービスを提供しており、11の言語でお客様を支援しています。世界中で新型コロナウイルスの感染が拡大するまでは、リモートワークで働いているのはたったの216人でした。しかし今、世界は大きく変わりました。

 

大規模なカスタマーサービスチームのリモートワーク化

高い緊急性と目標達成に向けた強い意志、そしてお客様のお役に立ちたいという強い想いから、チーム一丸となって16日間で約2,800人のリモートワーク移行を進めました。

しかし、その中でいくつかの課題に直面しました。

16日間の準備期間中、コールセンターを支援するために2つのことを実施しました。

  1. 未解決のお問い合わせを減らす: リスクが高く先が見えない状況では、お客様の成功を支えるためにできるだけ多くの問い合わせを解決しておくことが何よりも重要です。時間帯によって変化する不安定なキャパシティ、オフィスの閉鎖の可能性や従業員の罹患など、さまざまなリスクを考慮に入れ、即座に時間外業務をスタートさせました。

  2. すぐに行動にうつす: 早めに行動を起こすことで、この大規模なリモートワーク実現にともなう複雑な事情を考慮しながら、段階的に移行することができました。

 

外部委託先のリモートワーク化には創意工夫が必要

Salesforceの従業員のリモートワーク 化は比較的スムーズに進みました。リモートワーク 用のシステムや、従業員の自宅のインターネット環境、VPNアクセスが元々整備されていたため、特に問題は出ませんでした。しかし、外部委託社員のリモートワーク化はそう簡単にはいかないのだとすぐに気づきました。外部委託社員にリモートワーク で働いてもらうという状況を今まで考えたことがなかったのです。外部委託社員の自宅には、リモートワーク に必要なデバイスやアクセス環境が整備されていなかったため、知恵を絞る必要がありました。デバイスについては、外部委託チームの80%が仕事用のデスクトップを配布されていました。新型コロナウイルスの影響でノートパソコンが不足していたため、外部委託社員にはデスクトップを家に持ち帰ってもらいました。

 

必要な情報に対するアクセス手段を提供

その他にも、アクセスに関する問題が持ち上がりました。それまで外部委託のエンジニアには仮想デスクトップ環境を用意していたため、当社のネットワークチームは、彼らの雇用主を通じてVPNアクセスを利用してもらう方法を推奨していました。さらに代替案として、SalesforceのVPNに直接接続できる、Salesforce環境用の設定が施されたノートパソコンを一部のエンジニアに提供するテストも実施しました。

リモートワークを実施する全員に対し、自宅のインターネット接続が高速で、パソコンに十分なメモリがあり、仕事に必要なヘッドセットを持っているとともに、ネットワークアクセスに問題がないことを確認する必要がありました。この段階で最も重要だったのが、それぞれの環境の遅延の問題に対処することでした。今後、数週間はこの状況が続くので遅延は大きな問題になります。

 

今後の計画について

今後積極的に取り組む予定なのが、人員に関する課題です。新型コロナウイルス感染症の影響がより多くのエンジニアやその家族にまで広がる可能性も想定しておく必要があります。また、現在の人員から10%、20%、40%、60%減少するシナリオも考えなければなりません。

有事に備えて以下の3つのプランを用意していますが、どのプランも使わずに済むことを祈るばかりです。

  1. キャパシティに関する事前通知 – 対応できる人員が減少していることを率直に伝え、緊急性の低いお問い合わせは控えていただくようお願いするメッセージをサポートポータルに掲載します。これは旅行代理店が大量の予約キャンセルや日程変更に見舞われたときに取っているのと同じ対応です。

  2. 他のチームからのメンバー補充 – 社内の他のエキスパート、特にプロダクトエンジニアリングチームとプロフェッショナルサービスチームから人員を支援してもらう計画を立てています。

  3. 業務時間の延長 – 業務時間の延長は常に頭のなかにありますが、状況によっては残業ができないメンバーもいます。しかし、未解決のケースを減らすためのオプションとして引き続き検討しています。

 

チームの絆と思いやりの気持ちを共有する

現在のように状況が常に変化し、先が見通せない状況においては、チームを思いやり、支える姿勢を見せることが何よりも大切です。Salesforceではこれを実現するために、3つの取り組みを行っています。具体的には、早い段階で頻繁にコミュニケーションを取ること、共感を示し変化を受け入れること、全員のスケジュールに柔軟性を持たせることです。

 

楽しむことは忘れずに

リモートワークのなかにも楽しいことはあります(もちろんストレスも)。つながりを保ち、小さな楽しみを見つけることが今ほど大切な時期はありません。たとえば私の場合は、友人であり、お客様でもあるGainsight社のNick Mehta氏とお互いのペットを紹介し合いました。

 
 
 

チームからのアドバイス

「猫が跳び乗れないくらい高い机を用意しましょう。デスクの上を整理しておくことも大切です。整理整頓された環境でこそ、物事に集中してすっきりした気持ちで仕事に向かえます。」 - Salesforce シニアサクセスエージェント、Luc Winkelmolen

「自宅での自由時間は絵の練習に使っています。友人や家族とも連絡を取り合っています。こんな状況でも私たちは絆で結ばれています。」 - Salesforce、シニアサクセスエンジニア、Tarjani Patel

「ベランダで禅の修行をするのはどうでしょう。私のリモートワーク環境は平凡なものですが、APAC(アジア太平洋地域)シフトで働くメリットの1つは、鳥のさえずりと雲ひとつない青空の下、緑に囲まれた禅用スペースで朝の時間を過ごせることです。」 - Salesforce、シグネチャーサクセステクニカルサポートマネージャー、Neha Porwal

 

皆さまの声をお聞かせください

今私たちが直面している状況からは学ぶべきことが多くあり、この先の未来のために私たちを強くしてくれると信じています。ぜひ皆さまのご意見をお聞かせください。

最後に、この世界的な危機にも当てはまるチャーチルの励ましの言葉、「大事であれ、些事であれ、決して、決して、決して、屈するな」をご紹介します。ストレスや未来への不安で押しつぶされそうになることもあるかもしれませんが、それに適応する方法も数多くあります。

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