Key Takeaways
3分でわかるAgentforceとは
AIエージェントを作成し、展開するためのプラットフォーム「Agentforce」(エージェントフォース)について、5つのポイントで解説します。
目次

Question 1
新党「チームみらい」はなぜエンジニアリングチームを組成したのか
──ソフトウェアのエンジニアチームを組織している政党は、世界的に見ても非常に珍しいです。
安野:チームみらいは、「政治にテクノロジーを/日本に明るい未来を/変化に対応できる社会を」をビジョンに、「テクノロジーで政治をかえる。あなたと一緒に未来をつくる」というミッションのもと活動しています。
詳細はぜひマニフェストをご覧いただきたいのですが、その一環として、政治資金や国会審議の可視化や、政策の社会実装を爆速で遂行するために、テクノロジーの活用は欠かせないため常設のソフトウェアチームを組んだのです。
──台湾のオードリー・タンさんもテクノロジーに精通する稀有な政治家ですが、そのケースとは、異なるアプローチですね。
オードリーさんは、シビックテック(*)のNPOに近い集団と行政組織のハイブリッド形態で、政党は持っていませんが、シビックテックのコミュニティの中心人物でありつつ、政府で担当するデジタル発展部(*)のチームも稼働していました。コミュニティと役所を繋ぐブリッジは、世界的に見ても非常にユニークでしたよね。
一方、私たちは「チームみらい」が政治団体としてスタートして、前回の参院選で得票率2パーセントを超えたことで政党にバージョンアップしました。その政党が、私たちを応援してくれるコミュニティと紐づいていますので、「政党」+「コミュニティ」に、「ソフトウェアエンジニアチーム」が掛け合わされているモデルです。
*シビックテック:市民がテクノロジーを活用して社会課題の解決に取り組む活動。行政の透明性向上、市民参加の促進、公共サービスの改善などを目的とし、オープンデータの活用やアプリ開発などを通じて実現される。
*デジタル発展部:Ministry of Digital Affairs, 2022年の第2期蔡英文政権で発足した、①電気通信、②情報、③サイバーセキュリティ、④ネットワーク、⑤コミュニケーションの5大分野を統合し、国のデジタル発展政策の全体計画を担う機関。

参議院議員 チームみらい党首 AIエンジニア・起業家・SF作家
1990年、東京都生まれ。東京大学工学部システム創成学科卒。在学中、AI研究の第一人者、松尾豊氏の研究室に所属し、機械学習を学ぶ。ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)を経て、2016年にAIチャットボットの株式会社BEDORE(現PKSHA Communication)を創業。2018年にリーガルテックのMNTSQ株式会社を共同創業。2021年、『サーキット・スイッチャー』第9回ハヤカワSFコンテストで優秀賞を受賞し、作家デビュー。2024年、東京都知事選に立候補。AIを活用した双方向型のコミュニケーション(ブロードリスニング)でつくり上げたマニフェストが反響を呼び、安野貴博と「チーム安野」は第19回マニフェスト大賞グランプリを受賞。
──開発チームはどのように組織しているのですか。
コミュニティとチームメンバーの境界が薄いのが、私たちの特徴です。コアメンバーが10人弱、そのすぐ近くで手伝っている方々が30人程度、ソースコードに触ったりイベントに参加したことがあったりするような人たちが100〜200人程度です。
私は現在、コードを書くことはありませんが、システム構成や先進技術の活用方法の議論には加わっていて、例えば「AIあんの(*)」では、合成音声の活用やマニフェストスライド集から発言に合わせたスライドを自動表示するRAG(検索拡張生成)などを、私の意見をもとに導入しています。
*AIあんの:安野さんの政策を学習したアバターが国民からの質問に答えるAI
──どのようにして、それほど多くの方々が集まってくるのでしょうか。
選挙の期間に、興味を持っていただいたエンジニアの方々が、私たちが運営するSlackのチャンネルに参加してコメントいただくような浅い繋がりから始めて、そこから徐々に定例会議に参加いただいて発言をするメンバーも出てきて。
さらに「このイシューは私が担当する」というような形で、タスクが各自にアサインされていくような流れが多いです。他にもプロダクトを作って持ち込んでくださる方もいますね。
──そうした方々は、基本的にはボランティアベースですか。
選挙中はそうでしたが、今後は永田町ソフトウェアエンジニアチームとして、組織化を進めていく予定です。フルタイムのメンバーも採用していますが、パートタイムや完全にボランティアの方も引き続きいらっしゃいます。
オープンなコミュニティを作っていきたい思いがベースにありますが、ただオープンすぎても推進力が生まれないので、効果的な組織の運営方法を探っているところです。
──メンバーの人件費を賄ううえで、寄附の募集はどのように取り組んでいますか。
永田町ソフトウェアエンジニアチームの人件費は、政党交付金を活用しています。ただ、現状チームみらいは1議席で、政党交付金では足りない部分があるため、一部寄附金で賄っている形です。
日本の政治資金規正法では、個人が寄附できる金額には上限があります。政治団体の場合は150万円、国政政党の場合は2000万円です。そのため、小口での寄附を多く集める仕組みをStripeで整えていて、寄附がどれくらい集まっているかを可視化しています。

Question 2
テクノロジーを活用してどんな未来を作りたいのか
──そうしたチームを率いて、どのようなWebサービスを構築していくのでしょうか。
「国会を開いていく」プラットフォームです。ニュースで報道されるような大きな議案のほかに、「今、何の議案が話されているのか」「これからどの法案が通ろうとしているのか」。そうした情報が一元的に網羅されているメディアは日本にはほぼ存在していません。そうしたものを新たに作っていきます。
我々は1議席政党なので、私のチームで全議案について、どういう論点があるのか、賛成か反対か、吟味します。そこで考えた内容をテックプラットフォーム上に出すことで、国会とチームみらいの考えを見える化できます。
さらにもう1段階進むと、見える化された情報に対して、一般の方々からの「この議案にはこういう論点も実はある」という意見や、賛成・反対が付いてくると、それらを持ち込んだ状態で、私が国会の委員会で質問することができるようになります。
つまり、オープンなメディアとしての機能が、私の議員活動と統合され、デジタルプラットフォーム上で発したみなさんの論点が、国会の中で実際に議論される可能性を持つことになります。
メディアとしての価値に、国民からの意見集約という政治システムの価値が付加され、そこに多くの人が付いてくるようになると、「世論でこれだけついてきているのだから」と国民のみなさんの意見が後ろ盾になり、国会で積極的に振る舞っていけるようになります。
あらためて俯瞰してみると、政治の本質とは「情報の流れ方をどういう風に整流化していくか」だと。SNSなど国民の声と上手く繋いだ情報のエコシステムを作れば、「チームみらいに興味はないけれど、この議案については非常に詳しいし意見がある」というような人でも、開かれた形で国政に参加する新しいパスを作ることができます。
これまでの政党は、自分たちの党員や賛同者を囲い込んで意見集約していました。我々は、そこにテックプラットフォームを用いることで、政党1.0から2.0への新しい変化を生み出して、今までの政党とは違う形でスケールしていこうと考えています。
──プラットフォームはオープンソースで構築するとのことですが、その設計思想について教えてください。
オープンソースを採用するポイントは3つあります。
1つ目は、多くの人の目が入ることによって進化のスピードが早まるから。第2は透明性で、政治に関わるシステムの裏側がきちんと見えていることが重要だから。
第3に、オープンソースにすることで、他の政党や政治家や自治体の方々が、自分たちでフォークして(*)、その上に改造を施して自分たち流で使えるようになることです。政党中立的に多くの方々が使えるようにしたいからです。これはプロプライエタリ(独占的・非公開)だと難しいですね。
*フォーク:オープンソースプロジェクトにおいて、既存のソースコードをコピーして独立した開発を始めること。元のプロジェクトとは異なる方向性で開発を進める際に行われる。
──チームみらいがリソースを割いて投資したものを無償で提供することになりますね。
そうですね。世の中にはさまざまなステークホルダー制度設計がありますが、私たちが他と異なる点は「利益を得る必要がない」ことです。
「国会を見える化する」というサービスに参入するうえで、仮に株式会社として取り組むのは市場性の観点で難しい。ただ民主主義のためにはあったほうが良いという、極めて「デジタル公共財」的なニーズはあります。
私たちはそこに「政党としてファイナンスして、参入する」と考えています。具体的には、政党交付金に加えて、今後は党員制度も拡大していき、基礎的なリカレント収入を作って、その資金を投下していく予定です。
公共財だからといって、デジタル庁のような行政組織が作れるものでもないんです。行政組織では、そもそもオープンソースに相当なハードルがありますし、「国会を見える化する」という、いわば仕様を事前に策定できないハイリスクなシステム構築には手を出しづらいし、合意形成もしづらい。そうした領域に向けて機動的に動けることは、国政政党の強みと捉えていますね。

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Question 3
日本のテック企業はAIで勝てるのか
──アメリカと中国がAI覇権を争っている中、日本はどうすべきだとお考えですか。
将来に向けて、日本からAI分野で何らかビッグテックと呼ばれる存在が生まれるか否かという意味で、今は相当重要な分岐点にいると思います。AIの競争は始まったばかりなのでチャンスはまだ残っているとは思いますが、10年後にはこのウィンドウ(好機)は閉ざされているでしょう。
おそらく、今から勝負となるのが5年程度で、そこがちょうど私の議員の任期とぶち当たったので、個人的にはやりがいがあるなと感じています。
現時点の実力値を見ると、日本がいきなりフロンティアモデル(*)を作るのはすでに非現実的です。一番大きなモデルを持つプレーヤーたちと戦うことは、今の時点でやらないほうがいい。
*フロンティアモデル: AI分野における最先端の大規模言語モデル。現在の技術的限界に挑戦し、新たな能力や性能を実現するモデルを指す。開発には膨大な計算資源と資金が必要とされる。
──では、安野さんの考える日本の「勝ち筋」を教えてください。
中国は「2番手戦略」として、1番手のアメリカに対して上手い差別化ができています。具体的には、オープンウェイトモデル(*)を大量に出して、その周辺にエコシステムを形成し、特許を大量に取得する。
アメリカの大手は特許出願による技術漏えいを避けますが、中国は2番手なので特許はいくら出しても大丈夫です。そのため特許の数で見ると、中国が圧倒的に多く、国際標準の文脈では特許の数が多いほうが発言力は増します。中国はそうした戦い方を、巧みに進めています。
*オープンウェイトモデル: モデルの重み(パラメータ)が公開されているAIモデル。研究者や開発者が自由にダウンロードして利用、改良できるため、イノベーションの促進や技術の民主化に寄与する。
翻って日本は、3番手以降の戦略をきちんと行うべきです。AIエコシステムのどこか一部からでも良いので、ニッチトップを取りに行く。
具体的に私が1つまだかなり空いていると思うのは、「多くの企業がAIを使いこなす」という領域で、ここはまだ競争が始まったばかりです。
日本は労働人口がどんどん減っていく中で「自動化圧」が非常に高い社会になるので、企業としても他国より積極的に「自動化をしなければ」ということになりやすい。日本に数多くある実産業の優れた会社がAIを使いこなすためのソリューションは、まだビジネスチャンスが眠っていると思います。
AIや自動化へのニーズが強い部分から上手く入り込んで、そこから「上下」に展開していく。「上」は使いこなす人に対応する部分。「下」はAIのファウンデーションモデルやモデルサービングレイヤー(*)で、オープンウェイトモデルを適切にサービングする方法を整えていく。こうしたエコシステムづくりで攻めていくのが、日本の1つの勝ち筋ではないかと思います。
*モデルサービングレイヤー:学習済みのAIモデルを実際のアプリケーションで利用可能にするためのインフラストラクチャ層。モデルの配信、実行、スケーリング、監視などを担当する。

──国産LLMの開発についてはどう思いますか。
国産LLMは作ったほうが良いと思いますが、それはフロンティアモデルを目指すというよりは、中国の次くらいまでキャッチアップできるようにしておくべきですね。
なぜなら、LLMモデルに求められる性能は、すでに一部サチり(成熟し)始めているためです。ChatGPT(OpenAI) o3とGPT-5を比べた時に、一般の個人にとってはほぼ違いがない状態です。この「サチり始めたレベル」まで持って行った状態を、日本語のモデルで作ることは十分に実現可能ですし、それを日本が持つことの価値は大きいです。
具体的に進める方法としては、細かくお金を配るのではなく、国家プロジェクトとして取り組むのが1つのやり方です。一定規模の企業を決めるか、コンソーシアムを組んだ上で国が大きく51パーセント投資をする方法などで、国営企業として運営するようなことも有効です。
──今後も米中AI覇権競争はさらに加熱していきますが、その両国に較べて規模が小さい日本は、どのようなポジションを狙っていくのが有効でしょうか。
日本は、米国と中国の両方から、いいタレントを招致できるポジションにありますし、そうした方々が活動したいと思うだけの豊かな風土やカルチャーがあります。
そこから、アメリカと中国の優秀で日本を好むタレントたちが集まる。米中にとって日本が「AIテクノロジーのサードプレイス」となるような経済基盤の作り方があるかもしれないと最近考えていますね。

Question 4
国家としてAIにどう向き合うべきか
──国家としてのAI投資についてはいかがでしょうか。
今のフェーズでは、日本は国家資本主義的なアプローチをやった方が明らかにいいとは思います。現在は、例えば500億円程度の国家予算があっても、公正な企業間競争を重視するとして、細かく分けて配っていますよね。
それより500億円を1つの場所に投下したほうが、今のフェーズでは意味がある投資になります。正直に言って、数億円や10億円では世界で戦えるプロダクトは作れないので。
短期目線ではなく、長期で効く投資を積極的に行っていくことがAI投資においては大切です。同時にそこからの派生として、AIにより駆動される科学技術研究とロボティクスなど隣接領域にも投資を行っていくべきだと考えています。
──高度なAI人材育成も大きな課題となっています。
人材育成は大変重要ですが、そこは単純な育成だけではなく「海外のAIのトッププレイヤーをなるべく多く呼んできて、そこから学ぶ」ということが必要です。そうしたトップ層のネットワークに入ることは非常に有効で、中国が今2番手として急速にキャッチアップできている要因としても、アメリカのエコシステムのAI人材プールとつながりを持てていることが、実は非常に大きいんです。
最近聞いたジョークに、米中のAI競争が激しいけれど、実態をよく見ると「中国でAI開発している中国人と、アメリカでAIを開発している中国人が戦っている」というものがあります(笑)。
以前Metaに100億円くらいで引き抜かれた方も中国人だったと思いますし、世界のトップAI人材の中での中国人比率はかなり大きいです。しかし日本人プレイヤーはそのトップ層にはほとんどいない様子ですので、まずそこに入っていける人材を輩出していく必要がありますし、その人材プールのネットワークとうまく接続して逆に日本に来てもらうことも必要です。
その具体的な方法としては、政府の運営費交付金を増やすことによる大学と教育の改革が有効です。あとは、グローバルスタートアップキャンパス(*)構想をどう上手く推進するかも重要ですね。国策と国内AI産業が適切にアラインすることで、AI投資から大きなリターンを生み出すことが可能になるためです。
*グローバルスタートアップキャンパス:岸田政権時代に構想された、国際的なスタートアップ育成拠点。都内にサイエンスパークを建設し、海外の有力大学や研究機関を誘致する計画。
──永田町と、テクノロジーの高速な進化、このギャップをどう埋めていくお考えでしょうか。
永田町の合意形成スピードは一朝一夕には変わらない一方で、世論形成のスピードはどんどん早くなっています。
そのギャップを埋める私たちの戦略は、永田町の内部で起きていることを、国会と政治を見える化する形でオープンにしたうえで、そこに対し「意味のあるシグナル」を世論から拾い集めてくるというものです。その仕組みを持ったうえで、他の政党の方々とも全方位で連携していきます。

企画・取材・執筆:池上雄太
撮影:遥名碧
編集:木村剛士
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