つながる調達 DXハンドブック
SRMの活用で現場のスプレッドシート管理から脱却、戦略部門へと進化
ソーシング業務が直面する課題を深く掘り下げ、あらためてSRMの重要性をご説明。
目次
ある大手メーカーのサプライチェーン変革を解説した前編はこちらからお読みください。
【序章】データは見えた。けれど、手足が動かない。
前編では、Salesforce SRMによってサプライヤーとつながり、情報を可視化する重要性をお伝えしました。しかし、現場の皆さんはこう思っているかもしれません。「データが見えるようになったのはいい。でも、そのデータに基づいてアクションを起こすのは、結局『人間』の仕事じゃないか?」と。
新規サプライヤーのオンボーディングのための書類回収、請求書と発注額の数円のズレの確認、仕様変更の承認リレー……。調達の現場は、ERP(基幹システム)には収まりきらない「例外処理」や「調整業務」で溢れています。
これらは結局、メールや電話、Excelといった古い手段で、人間が汗をかいて処理しているのが現実。 この「ERPと現場の間の、埋まらない溝(ラストワンマイル)」を埋めるのが、SalesforceのAIエージェント「Agentforce Supply Chain(旧 Regrello)」です。
【課題】なぜ、調達のワークフローは自動化できないのか
これまでのRPAやワークフローツールは、複数のシステムにまたがった社内の定型業務を処理するのには有効でした。しかし、調達業務は常に「社外(サプライヤー)」が関わります。
相手によって提出フォーマットが違ったり、メールの文面から意図を読み取る必要があったり、完全に定型化するのが難しい。従来のシステム構築の方法で自動化するには費用対効果の面から断念せざるをえなく、アナログな業務がそのまま放置されてしまいます。
その結果、バイヤーは「高度な戦略家」であるべきはずが、実態は「メールの転送係」や「督促の代行屋」になってしまっています。この状況を打破するのは、魔法のような未来のAIではなく、特定のプロセスに特化して鍛え上げられた「実務的なAIエージェント」です。
【実践1】サプライヤー・オンボーディングの自動操縦
例えば、新規サプライヤーとの取引開始プロセス(オンボーディング)を考えてみましょう。
秘密保持契約に銀行口座情報、コンプライアンスチェック、サステナビリティ認証の提出……。これら複数の書類を、法務・経理・品質保証部とリレーしながら、不備があればサプライヤーに差し戻す。この一連の作業だけで数週間かかることも珍しくありません。
Agentforce Supply Chainを活用すれば、このプロセスは劇的に変わります。 30種類以上リストから適切なテンプレートを選び、すぐに実装が可能。実装されたAIエージェントは、必要なドキュメントのリストアップからサプライヤーへの依頼メール送信、提出されたファイルの一次チェックまでを代行します。
「有効期限が切れています」「署名が抜けています」といった基本的な不備の指摘は、人間が確認する前にエージェントがサプライヤーと直接やり取りして完結させます。 担当者は、エージェントが「準備完了」と判断して整理してくれた最終セットを確認し、承認ボタンを押すだけ。人間は「審査」に集中し、「回収」の手間から解放されます。
【実践2】請求書照合(Reconciliation)の「例外」を潰す
もう1つの典型的な例が、請求書と発注データの突合(Reconciliation)です。
「数量は合っているが、単価が微妙に違う」「運賃が含まれていない」「着荷してない部材まで請求されている」。こういった「例外」が発生すると、ERPの自動処理はストップします。その後は、担当者がサプライヤーに電話し、社内の経理に頭を下げて修正伝票を切るという泥臭い調整が待っています。
ここにAgentforceを組み込むと、どうなるか。AIエージェントは、不一致(例外)を検知すると、過去の取引履歴や契約条件を参照し、「今回は運賃が別途計上されているため妥当」といった判断のサポートを行います。
あるいは、サプライヤーに対して「発注書番号〇〇との差異について確認してください」という問い合わせを自動生成し、回答が得られたら修正案を人間に提示します。 「解決のための調整」をAIが主導し、人間は「GO」を出すだけ。月末の残業の元凶となっていた業務が、驚くほどスムーズに流れるようになります。
【技術】「チャット」ではなく「ワークフロー」を回すAI
ここで重要なのは、Agentforce Supply Chainが「チャットボット」ではない点です。 従来のチャットボットは「聞かれたことに答える」のが仕事でした。対してAgentforce Supply Chainは、「プロセス(ワークフロー)を前に進める」ことを目的に設計されています。
Salesforceのプラットフォーム上で、ERPのデータと、サプライヤーとの非構造化データ(メールやチャット)をシームレスにつなぎ、「誰に承認をもらうべきか」「次に何をすべきか」という手順を理解したAIエージェントが、まるで優秀なプロジェクトマネージャーのように、社内外のステークホルダーの間に入ってボールを回し続けます。 これこそが、完全な自動化の半歩手前にある、「人とAIの協働による、超効率的な実務」の姿です。
【まとめ】「メールの管理人」を卒業しよう
今回紹介した内容は、決して遠い未来の話ではありません。今、目の前にある「面倒な調整業務」を解決するための現実解です。
事例を1つ挙げるとすれば、ダイムラートラック(北米)では通常30日程度かかっていたトラックの例外的な仕様変更に伴う組織横断的な調整・確認と業務処理時間を7日に短縮しました。
サプライチェーンの強靭化(レジリエンス)とは、壮大な戦略だけでなく、日々のこうした細かな業務プロセスの「目詰まり」をなくすことから始まります。 Agentforce Supply Chainをチームに迎え入れ、人間が「メールの管理人」から卒業できた時、調達部門は真の意味で、企業の利益と競争力を生み出す「プロフェッショナル集団」へと進化できるのです。
まずは、あなたのデスクで山積みになっているその「調整業務」、AIエージェントに任せてみませんか?
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ソーシング業務が直面する課題を深く掘り下げ、あらためてSRMの重要性をご説明。













