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モダンエンタープライズインテグレーションにおいて、イノベーションを測定かつ強化する 4 つの要素

イノベーションに多大な時間と資金を投資しているにもかかわらず、目に見える価値創造につながらず、時間と資金の両方を浪費している企業は多数存在しています。浪費として終わってしまう理由は、企業のリスク回避、連携不足、資金不足、市場投入の遅れ、発想の鈍化など、色々と考えられます。

まずは、現状を把握することからはじめましょう。 

  • 事実 その 1:イノベーションは企業にとって不可欠です。年間収益の 10% 以上がイノベーションに費やされ、業界によってはさらに高い割合を占めています。マッキンゼーの調査では、世界全体の研究開発にかかる費用は 2019 年に 2 兆ドルを突破しました (世界 GDP の約 2%)。 
  • 事実 その 2:企業がデジタルとオムニチャネルを取り入れた顧客体験を推進し、新しいテクノロジーで業務効率を向上させ、「どこからでも働ける」環境が整うにつれて、イノベーションへの支出は増加しています。BCG による分析によると、イノベーションは企業の優先事項のトップ 3 に入っており、2021 年には前年と比較して 10% も上昇しています。 
  • 事実 その 3:イノベーションのほとんどは失敗に終わり、ROI はゼロに等しいというのが現状です。また、イノベーションのパフォーマンスに世界の経営幹部の 94% が不満を持っていることが調査により明らかにされました。 

イノベーションに多大な時間と資金を投資しているにもかかわらず、目に見える価値創造につながらず、時間と資金の両方を浪費している企業は多数存在しています。浪費として終わってしまう理由は、企業のリスク回避、連携不足、資金不足、市場投入の遅れ、発想の鈍化など、色々と考えられます。 

データ、アプリケーション、システム、ビジネスプロセス、インフラストラクチャなどに不自由なくアクセスできなければ、イノベーションも失敗に終わってしまうことでしょう。これは、最も一般的で必然的なイノベーション失敗の原因です。デジタルイノベーションがビジネスの最重要項目となっている現在、これは IT 部門だけの問題ではなく、事業部門も含めた問題でもあります。

しかし、希望はあります。これらのアクセスへの障壁は、『モダンエンタープライズインテグレーション』によって解消できます。本シリーズの最初の記事 (ビジネスリーダーがインテグレーションに注目すべき理由) では、この解消策を①ビジネスにフォーカスしたインテグレーション戦略、②運用モデル、③API とインテグレーションのライフサイクルテクノロジー基盤、と明確にしました。

図 1:モダンインテグレーションを構成する 3 つの主な要素

本記事では、イノベーションにつながるさまざまな要素を整理し、モダンエンタープライズインテグレーションがより大きな影響を与えるための方法と領域を明らかにします。

イノベーションの 4 つの要素

イノベーションの影響力を測定するためには、イノベーション投資収益率 (Return on Innovation Investment:ROII または ROI2) を測定することが論理的なアプローチです。あらゆる ROI や派生指標と同様に、ROI2 はイノベーションに企業が費やした累積コストに基づき (使い切り)、どれだけの価値を獲得できたかを明らかにします。ただ、ROI2 の指標ではその数値は確認できるものの、そこに至るまでの過程がわかりません。 

図 2:ROI2 は、イノベーションを達成するまでの過程を理解してこそ有用

デュポン分析を使って自己資本利益率 (Return On Equity:ROE) の要因を分析するのと同様に、企業は ROI2 の要因を分析することが可能です。ROI2 分析のための 4 つの要素を以下に説明します。

要素 その 1:たくさんのアイデアを出す

イノベーションは「アイデア」から始まります。集まるアイデアが多ければ多いほど、(ビジネスに) 効果的なアイデアを得られる可能性が高まります。アイデアを出すときに、組織は次のような 2 つの課題に直面します。 

  • 時間 :(一般的に) 企業は、十分な時間をイノベーション開発に費やせません。例えば、MuleSoft の 2022年 接続性ベンチマークレポートによると、IT にかける時間のおよそ 70% は、イノベーションではなく「ルーティン業務」に費やされています。 
  • アクセスの課題:アイデアを実現するために必要なデータやシステムに、シームレスにアクセスできないため、多くのアイデアは生まれる前に潰れてしまいます。

モダンエンタープライズインテグレーションでは、開発者の生産性を高めることにより時間の課題を解決できます。統合プラットフォームにより、ソフトウェア開発ライフサイクル (Software Development LifeCycle:SDLC) を合理化し、再利用可能な IT 資産 (API やコネクター、コードフラグメントなど) を用意することで、開発者はスピーディにデータ統合が実装でき、イノベーションにより多くの時間を費やすことができるようになります。 

さらに、データとシステムを安全な方法で公開する API の一元化マーケットプレイスを構築することで、開発者はイノベーションに必要な資産にアクセスすることが可能になります。

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業界リーダーであり続ける理由とは?

要素 その 2:(成功のために) 効果的なアイデア

アイデアがあればいいというわけではありません。価値を生み出すアイデアが必要なのです。一般的に成功するアイデアとは純利益に貢献するものです。つまり、収益の減少ではなく、増加につながるアイデアなのです。成功するために企業は、以下の 2 つの課題に直面します。 

  • TTM の長期化:アイデアを市場投入するまでに手間と時間がかかってしまいます。
  • 高コスト:大規模に運用するためのコストが上昇してしまいます。

API 主導のアプローチにより、長期の TTM の課題を克服するフライホイール効果 (小さな成功を時間経過とともに積み重ねることで、ビジネスを継続的に成長させる効果) を生み出します。このアプローチでは、開発者が作成した資産をマーケットプレイスに保存できるだけでなく、別のイノベーションプロジェクトにその資産を利用することもで可能です。つまり、開発者は既存の資産を再利用できるため、次のイノベーションをよりスピーディに市場投入することが可能になるのです (MuleSoft CEO の ウォール・ストリート・ジャーナルへの投稿 を参照)。

高コストに関する課題は、コーディングの再利用と将来を見据えたアーキテクチャの構築により、運用のオーバーヘッドと設備投資を抑えることで克服できます (詳細は後述の「要素 その 4」を参照)。

要素 その 3:収益を生み出すアイデアを捻出する

アイデアは、売上高の増加 (収益への影響)、コスト削減 (当期純利益への影響) またはその両方の組み合わせによって、組織に貢献しなければなりません。組織は価値創造を追求する際、以下の 2 つの大きな課題に直面します。

  • 価値創造までの時間:利益が十分に得られず、適切な期間内に ROI をプラスにすることができません。
  • 規模や範囲:アイデアを追求するためのコストやリスクを負担できるほど利益が大きくならない。もしくは、そのアイデアを追求する価値があるかどうかを十分に把握することができない。さらに、利益を得られる対象領域が小さすぎるため、社内 (他の部署) や社外 (新しい市場、地域、チャネル) に広く展開できない可能性があります。

API 主導の接続性により、組織は (ポイント・ツー・ポイントのコーディングではなく) コンポーザブルなパーツを使ってイノベーションを実行でき、アイデアを素早く市場に投入、強化、調整することが可能になります。

API 主導の接続性アプローチにより、組織をコンポーザブルなビルディングブロックに分解することで、イノベーションの連鎖を止めることなく、新しい価値を生み出す流れをシームレスに拡大・拡張することができます。そうすることで、直接的な収益化 (API を製品として販売) または間接的な収益化 (さまざまなシステムとプロセスを API でつないで顧客体験を改善) のいずれかにつながり、規模や領域の課題を解決できるようになります。 

要素 その 4:拡張性のあるコストフットプリントを維持するアイデアを出す 

企業にとって、設備投資や運用投資はできるだけ抑えることが得策でしょう。イノベーションを拡大しようとするとき、組織が直面する 2 つの重要な課題があります。以下に紹介します。

  • 人件費 :ポイント・ツー・ポイント接続でつながれているアーキテクチャによるデジタルイノベーションでは、維持、強化、拡張にかなり多くのオーバーヘッドを必要とします。
  • ハードウェア、ソフトウェアおよびインフラストラクチャのコスト:規模や範囲が大きくなると、ハードウェアのコスト は非常に高額になる可能性があります。

モダンエンタープライズインテグレーションにより、開発者とイノベーターは統一プラットフォームと再利用を促進する API ファーストの思想を取り入れることで、アイデアを市場に投入するまでの時間と費用を削減できます。さらにイノベーション実現後、その維持や強化に費やす時間やコストも削減することが可能です。

ハードウェアのコストは、クラウド、オンプレミス、ハイブリッド環境において、企業が垂直方向 (需要に対応するための容量拡大)と水平方向 (ビジネス機能、市場、チャネル、地域など) への拡張を可能にする、将来を見据えたアーキテクチャによって削減できます。

上記に紹介した 4 つの要素を、下図に示したアイデアピラミッドにまとめることができます。ROI2 が最大となるのは、ピラミッドの最上部です。

図 3:アイデアピラミッド – 上部になるほど ROI2 も高くなる –

4 つの要素を理解する

さらに詳しく分析するには、「企業がイノベーションからどれくらいの価値を生み出せるか?」「対応すべき課題はどこにあるのか?」「モダンエンタープライズインテグレーションがどこで役立つのか?」を理解するための具体的な指標を検討する必要があります。具体的に ROI2 の方程式は、次の 3 つのパラメーターで構成されています。

パラメーター 1:イノベーションの重要度 

このパラメーターは、成功したアイデアすべてにおけるイノベーションの経済的な貢献度を測定するもので、成功したアイデアすべての平均値を算出します。

図 4:イノベーションの重要度

パラメーター 2:イノベーションの成功確率 

このパラメーターは、市場に投入したアイデアの成功確率を計算するものです。

図 5:イノベーションの成功確率

パラメーター 3:イノベーションの効率性 

このパラメーターは、長期的な視点に立ち、アイデアのコスト効率性を測定するものです。

図 6:投資効率

上記の 3 つのパラメーターを掛け合わせることで、イノベーション投資の効果 (ROI2) と、リターン獲得に至るまでの行程の両方を得ることができます。

図 7:イノベーションの重要度 ✕ イノベーションの成功率 ✕ 投資効率 = ROI2

モダンエンタープライズインテグレーションが影響力のあるイノベーションをもたらす

多くの場合、データやシステムへのアクセスがイノベーションを成功させる重要な課題となります。モダンエンタープライズインテグレーションは、このようなアクセス障壁を打破するのに役立ちます。前の記事で示したように、事業部門とIT部門が一体となってエンタープライズインテグレーション戦略を立案・実行しなければ、イノベーションを具体化するステージにおいて多大なリスクを負うことになるでしょう。 

これら 4 つの要素に基づいて、イノベーションの効果を測定してください。4 つの要素を確認することで、「企業がうまく機能している領域」「課題を抱えている領域」「モダンエンタープライズインテグレーションを役立てる方法と領域」を特定できます。IT 部門または事業部門のどちらか一方ではなく、両方が 4 つの要素の確認をすべきでしょう。

MuleSoft の Mobilize アドバイザリーチームは、コンサルティングを通して組織と連携してクライアントのビジネスにフォーカスしたインテグレーション戦略を確立します。ご興味がありましたら、こちらからお問い合わせください。

このブログ連載の次の記事では、モダンインテグレーションが企業のビジネスの将来性と拡張性に与える影響について詳しく説明する予定です。

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