ステークホルダーが多くB2Cビジネスに比べて大規模な取引が多いB2Bのカスタマーサービスは複雑で、細心の注意を払うとともに、特有のサポートニーズへの対応が求められます。
顧客数は少ないものの、1件あたりの取引規模が大きいため、その重要性は非常に高くなります。Salesforceの調査によると、88%の顧客が質の高いサービスを受けることで再購入する可能性が高まっており、常に適切なサービスを提供することの大切さがわかります。
「Agentforce(エージェントフォース)」のようなAIエージェントは、サービス担当者と連携して卓越したB2Bカスタマーサービスを提供します。
たとえば、Agentforceは、企業が設定したガードレール内で、複雑なB2Bのカスタマーサービス業務を効果的かつ自律的に処理できます。これにより、困難な問い合わせに対して、24時間体制で対応。担当者の燃え尽き症候群を軽減するのに役立ちます。
ここからは、AgentforceでB2Bカスタマーサービスをどのように変革できるのかを紹介します。
目次
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B2Bカスタマーサービスとは
B2Bカスタマーサービスとは、企業向けにビジネスを展開する企業からの問い合わせに対して、問題の解決や相談を受け付けるサービスです。その目標は、パーソナライズされたサポートと専門的なアドバイスによって強固で長期的な関係を構築し、顧客満足度を維持することです。これにより、顧客のロイヤリティが向上し、継続的な取引が行え、また顧客からの紹介による新規顧客の獲得にもつながります。
AIエージェントとは
AgentforceのようなAIエージェントは、人間の介入なしに顧客からの問い合わせを理解し、応答できるAIの一種です。
Agentforceは、タスク管理から定型的な質問への回答、複雑なB2Bカスタマーサービスの問題解決まで、幅広い業務を自律的に処理できます。事前に定義されたスクリプトに固執するチャットボットとは異なり、AIエージェントは自然言語処理(NLP)や機械学習、そして文脈理解を活用して、知的で会話的、かつパーソナライズされたインタラクションを実現します。
Agentforceは、「Atlas推論エンジン」と呼ばれる「脳」を持っています。これは、複雑な問い合わせを理解し、ナレッジ管理システムや「Data Cloud(データクラウド)」から適切で信頼できるデータを取得します。その後、設定されたガイドラインで、すべてが正確完璧に実行されるようにアクションプランを調整します。
また、マルチモーダルな理解能力を備えており、NLPとコンピュータビジョンを使用して、テキストや画像、音声など、さまざまな入力タイプを解釈し、応答できます。関連情報を抽出して、顧客に対してより正確で文脈に合った応答を提供できます。
さらに、Agentforceは自己学習を通じて継続的にパフォーマンスを向上させ、変化する顧客ニーズに対応できます。これは、複雑なB2Bカスタマーサービスにおいて不可欠です。顧客は、何度も同じことを繰り返す必要なく、正確かつ効率的なサポートを受けることができます。
AIエージェントが最適な理由
B2Bカスタマーサービスでは、複雑かつ技術的な質問への対応、長期にわたる販売サイクルのナビゲート、組織にいる複数関係者のニーズ対応が求められます。意思決定者が異なるタイムゾーンに分散していることも多く、タイムリーで一貫性のあるサポートを提供する必要があるので、さらに複雑さが増します。
Agentforceは、B2Bカスタマーサービスの複雑さと必要性に、効果的かつ効率的に対応できます。AIエージェントは、複雑な問い合わせに対応し、何千ものやり取りを24時間365日同時に処理できます。
これにより、顧客は営業時間外であっても、必要なときに信頼性の高いタイムリーな支援を受けることができます。顧客の好みや過去のインタラクションを分析することで、AIエージェントは高度にパーソナライズされたサポートを提供することも可能です。これは、企業が顧客一人ひとりのニーズを深く理解していることを示します。
カスタマーサービス部門のAIエージェント
導入検討ワークシート
カスタマーサービス部門やコンタクトセンターでAIエージェントの導入を検討するために、導入検討ワークシートを作成しました。ぜひダウンロードしてご活用ください。

AIエージェントのメリット
B2BカスタマーサービスにAgentforceを導入することで、導入企業とその顧客に多くのメリットがもたらします。以下はその例です。
コスト削減:顧客からの問い合わせや時間のかかるタスクを24時間体制で管理することで、コスト削減に貢献します。追加の人員を採用・トレーニングする必要がなくなり、人件費を削減できるようになります。
応答時間の改善:顧客からの問い合わせに即座に対応し、問題を迅速に解決します。応答時間の短縮は、顧客満足度(CSAT)を高めるだけでなく、ダウンタイムや業務の中断のリスクを最小限に抑えます。このような問題は顧客にとってコストがかかる可能性があり、不満を招き、最悪の場合は顧客離れにつながる可能性があります。
サービス担当者のサポート強化:複雑な問題や定型タスクをAgentforceが処理することで、サービス担当者はより戦略的な業務に集中できるようになります。これにより、生産性の向上、リソースのより効率的な活用、そして従業員エクスペリエンスの向上が実現します。
シームレスなオムニチャネル体験:SMSやWhatsApp、voice(英語)など、複数のカスタマーサービスチャネルで運用できるため、顧客がどこにいても対応できます。これにより、顧客がどのチャネルを選択しても、シームレスで統合されたカスタマーエクスペリエンスが保証されます。
プロアクティブなカスタマーサービス:顧客のアカウントを監視し、潜在的な問題を深刻化する前に発見します。
成長に対応できるスケーラブルなサポート:ビジネスの拡大に伴い、B2Bカスタマーサービスの需要も増加します。Agentforceは、残業や外部委託の必要なく、増加する顧客とのやり取りをオンデマンドで管理できます。
データに基づいたインサイト:すべての顧客とのタッチポイントからデータを収集し、分析します。これにより、顧客の行動や不満、好みに関する貴重なインサイトが得られます。こうしたインサイトは、製品やサービス、そして全体的なカスタマーサービスエクスペリエンスの向上に役立ちます。
多言語対応能力:多言語対応能力を備えたAIエージェントは、顧客が希望する言語で効果的にコミュニケーションを取り、言語の壁を打ち破り、アクセシビリティを向上させます。
AIエージェントのユースケース
Agentforceのいくつかのユースケースをご紹介します。
テクニカルサポート:B2Bの顧客は、複雑な質問や技術的な問題に関するサポートを必要とすることがあります。Agentforceの主な利点の1つは、複雑な問題を独立して処理できることです。Agentforceは、詳細で思慮深い回答を提供し、解決策に向けて顧客を段階的に案内し、未解決の問題をサービス担当者にエスカレーションできます。
予約スケジューリング:最適な時間枠の提案や再スケジュールの管理、そして顧客情報の収集を会話形式で行います。まるで、一流のコーディネーターが24時間年中無休で対応してくれるようなものです。これは、フィールドサービスなどの業界で、スケジューリングプロセスを効率化することで大きなメリットをもたらします。
注文および在庫管理:注文を追跡し、在庫状況に関するリアルタイムの最新情報を提供し、顧客の注文確定や変更を支援できます。これにより、購入プロセスが簡素化され、正確性が確保され、顧客が常に必要なものを入手できるようになります。
顧客オンボーディング:オンボーディングプロセスは、顧客がスムーズに製品やサービスを利用いただくために重要です。Agentforceは、段階的なオンボーディング手順の提供や、質問への回答、ナレッジベースの記事(英語)や無料のオンライン学習サービス「Trailhead」など推奨リソースを提供します。
ナレッジベースナビゲーション:多くのB2B企業は、セルフサービスサポートのために広範なナレッジベースを提供しています。Agentforceはインテリジェントな検索ツールとして機能し、顧客が複数のリソースを検索することなく、必要な情報を素早く見つけられるよう支援します。
Agentforceのユースケース
さまざまな業界の実践的なカスタムユースケースからインスピレーションを得て、業種や顧客のニーズに合わせてエージェントをカスタマイズしましょう。

AIエージェント導入の課題と解決策
AIエージェントのメリットを享受するためには、対処しなければならない課題も伴います。これらの課題と、成功するための準備を探ってみましょう。
既存システムとの統合:特に企業のインフラが旧式の場合、AIエージェントを既存のCRMや他のシステムと統合することは複雑になりがちです。シームレスな統合には、適切な計画とテストが不可欠です。
Agentforceと「Service Cloud(サービスクラウド)」は、Salesforce CRMプラットフォーム上にネイティブに構築されているため、Agentforeを活用したB2Bカスタマーサービスを迅速に開始できます。さらに、AgentforceはData Cloudと統合し、包括的で信頼性の高いデータにアクセスすることで、パーソナライズされたリアルタイムなインタラクションを実現します。
複雑な問い合わせへの対応:B2Bの問い合わせは複雑ですが、Salesforceは「Agent Builder(エージェントビルダー)」の「Prompt Builder(プロンプトビルダー)」(英語)を活用して、AIエージェントのセットアップと構成を簡素化します。これにより、既存のプロンプトやフロー、その他の機能をAgent Builder経由で使用できます。
Trailheadの「Agentforce を使用して AI エージェントを構築する」を活用すれば、今すぐAIエージェントを作成できます。「Slack」の「Serviceblazer Community」(英語)は、すでにAgentforceを使用している他のサービスプロフェッショナルからヒントを得るのに最適な場所ですので、ぜひ参加してください。
Agentforceを強化するプロンプトビルダー
生成AIの活用により、業務効率化を迅速に安全に実現しませんか? Agentforceのアクションをカスタマイズ、ナレッジ検索や要約など、多岐にわたるユースケースに対応可能です。




ステークホルダーの採用:顧客とサービス担当者の両方から賛同を得ることが重要です。特に多くのリスクが伴う重要かつ複雑な問題は、AIエージェントとのやり取りに抵抗を感じる顧客もいます。
AIへの信頼を築くには、その信頼性を実証するとともに、必要に応じてサービス担当者へのシームレスな引き継ぎを保証する必要があります。透明性を確保して、Agentforceがカスタマーサービスチームの一員になったことを顧客に伝えましょう。
生成AI(英語)を使用して、顧客とサービス担当者の両方が抱える懸念事項に対処するためのFAQを迅速に作成しましょう。そして、必ず人間のレビューを行い、正確性を確保しましょう。
初期導入コスト: AIエージェントはコスト削減をもたらしますが、技術やトレーニング、統合への初期投資は膨大になる可能性があります。これらのコストを、予想されるメリットと比較検討してください。Agentforceの顧客は、3年目までにサービスコストを25%以上削減すると予測されています。
AIエージェント活用のベストプラクティス5選
Agentforceの効果を最大限に引き出すために、成功するための5つのヒントをご紹介します。
1.明確な目標から始める:「複雑な問題を24時間年中無休で処理する」「CSATを向上させる」「時間のかかるタスクを自動化する」など、Agentforceを導入する具体的な目標を定義します。
2.AIエージェントとサービス担当者の連携を強化する:Agentforceは、サービス担当者と連携して機能する必要があります。重要な思考を必要とする優先度の高い問題は、AIエージェントとサービス担当者間でシームレスに移行できるワークフローを設計します。
3.業界特有のニーズに合わせてAgentforceをトレーニングする:B2Bカスタマーサービスでは、専門的な知識が必要なことがあります。業界やプロセス、一般的な顧客の問題に関連する専門用語についてAIエージェントをトレーニングし、正確で適切なサポートを提供できるようにします。
4.パフォーマンスを監視し最適化する: 応答時間や解決率、顧客フィードバックなどの顧客サービス指標を使用して、Agentforceのパフォーマンスを定期的に評価します。このデータを使用して、その機能を洗練し、有効性を向上させます。
5.データセキュリティとコンプライアンスを確保する: B2Bのやり取りには、機密情報が含まれることがよくあります。顧客データを保護するためのセキュリティ対策を実施し、「GDPR」や「HIPAA」などの法規制への準拠を徹底します。
AgentforceをB2Bカスタマーサービスチームに導入することで、顧客へのサポートの質とスピードを大幅に向上させることができます。AIエージェントは、複雑なやり取りを自律的に処理し、24時間体制でサポートを提供できるため、顧客関係が強化され、満足度が高まります。Agentforceへの投資は、現在のニーズを満たすだけでなく、将来の成長と成功に向けてビジネスを確立します。
人とAIエージェントが協力して負担の少ないサービスを実現
サービスの種類、チャネル、業界を問わず、最初のコンタクトから最終的な解決まで、あらゆる作業の負担を軽減します。



<注釈>
※本記事は米国で公開された “How to Crack Complex B2B Customer Service Cases with Agentforce” の抄訳版です。本ポストの正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語が優先されます。