システム実装まで担う企画担当、広報記事まで書き上げるエンジニア……。
AIをパートナーに、従来は専門外とされていた領域にまで業務の幅を広げる人たちが増えています。2025年は「AIエージェント元年」とも呼ばれ、働き方そのものが大きく変わり始めました。本記事では、各分野で活躍するインフルエンサーたちへのインタビューを通じて、AIを活用して“職域の壁”を越えて活躍している事例を紹介しながら、AIエージェント時代に広がる新しい可能性を探っていきます。
目次
坂本良晶さんの挑戦:AIを力に、日本の教育を世界へ

●坂本良晶(@saruesteacher)
Canva Japan/Canva教育版統括マネージャー
京都府小学校教諭からCanva Japanへジョイン、Canva教育版を日本へ展開することが主な業務。『さる先生の「全部やろうはバカやろう」』『ChatGPTの教科書』などベストセラー著書多数。
現在の仕事内容とAIの活用シーンを教えてください。
基本的に1人で、日本の全自治体に対する営業・サポート・研修を担っています。「Canva」教育版の導入支援やセットアップサポート、さらにはアクティベーションのための研修実施まで手がけており、タスクがとんでもなく多い状態にあります。
ただ、AIの力を借りることで、メールの返信やデータ分析、研修内容の計画やスライド作成といった業務効率が飛躍的に向上しました。感覚的には生産性が数倍に上がり、その結果としてより大きなチャレンジに挑み続けられる良い循環に入ることができています。
AIの力を借りて今チャレンジしている領域は?
現在の職域:教育者→挑戦している領域:エディトリアルデザイナーと大規模な戦略プランナー
CanvaのAIスライドを初めて体験した時は、まさに未来を感じました。テキストで指示するだけで画像入りのスライドが生成され、さらにはカンペまで用意してくれる。革新的なアップデートにより、自分はより本質的で創造的な業務に集中できるようになりました。
さらに、これまでは専門性が求められるため各チームに任せていたセキュリティやリーガル対応も、AIの活用により圧倒的なスピードで処理可能に。社内のGPTとメールが連携できるようになったことで、生産性は1年前と比べて体感で10倍以上にも向上しました。
その結果、大規模自治体への導入交渉やアクティブ率を高める研修、戦略立案といった、より大きなインパクトを生み出す仕事にエネルギーを注げるようになっています。
これからチャレンジしたい領域は?
グローバル教育イノベーター
グローバル教育イノベーターとして、さらに手がける領域を拡大したいです。
現在、教育システムが十分に整っていない国も多く、インフラや行政の仕組み、言語の壁など、多様な課題が存在します。こうした課題の収集・整理・分析や解決に向けた戦略立案は、1人では到底不可能な領域です。しかし、AIがあれば、その壁を乗り越えられると信じています。
AIが子ども一人ひとりに伴走することで、従来は実現できなかった「個別最適化された学び」が可能になります。その活用事例を日本の教育現場から世界に発信し、未来の学びの形を世界に浸透させたい。そして、教育がまだ未整備な国々にもリーチし、世界の教育にインパクトを与える最高に価値ある仕事に挑戦したいと願っています。
AI活用による平等な学びの機会を子どもたちに広げていくことを目指しています。
堀元見さんの挑戦:AIで広がる、表現と創作の可能性

●堀元見(@kenhori2)
作家/YouTuber/Podcaster
理屈っぽいコンテンツを作り散らかすことで生計を立てている。約40万人の登録者数を誇るYouTubeチャンネル「ゆる言語学ラジオ」の出演やプロデュースも行う。著書に『読むだけでグングン頭が良くなる下ネタ大全』(新潮社)などがある。
現在の仕事内容とAIの活用シーンを教えてください。
AIを活用したイラスト生成で、自分のクリエイティブの幅がかなり広がったと思っています。僕は絵が描けないので、今までは絵が必要なときにかなり妥協してきました。「ちょっとしたイラストがほしいが、わざわざ発注するほど必要なワケでもないから諦めるか」と。しかし、AIのお陰で今までは諦めていた「ちょっとしたイラスト」が作れるようになったので、このインパクトは大きかったですね。
たとえば、「ゆるコンピュータ科学ラジオ」というYouTubeの番組をやっているのですが、そこで「テキストエディタの個性を説明する」というくだりがあり、その中で「emacsを擬人化するとこうで、vimを擬人化するとこう」という感じで擬人化イラストを見せました。これは視覚的にわかりやすく、収録も盛り上がりましたし、リスナーからの反応も上々でした。
AIの力を借りて今チャレンジしている領域は?
現在の職域:作家→挑戦している領域:イラスト・ビジュアル制作による表現拡張
前述のゆるコンピュータ科学ラジオの擬人化イラストについて、「こういう特徴の人にしてください」と僕が思いつく特徴を列挙しただけで、かなりいい感じのものが出てきてとても嬉しかったです。
今まで「絵が描けないから」と思って犠牲にしていたクリエイティブがあるんだな、と改めて実感するとともに、「これから自分のやれる創作の範囲が広がるんだな」とワクワクしました。
また、今まではクライアントに見せるときに「ビジュアルを見せたほうが話が早いが、ビジュアルを作るのがめんどくさいので言葉で説明する」ということをよくやっていたのですが、これもAIのお陰でだいぶ楽にビジュアルを見せられるようになり、無駄な説明の時間が減って快適になりました。「人生の余計な時間が削減できて最高~!」とテクノロジーに感謝しましたね。
これからチャレンジしたい領域は?
AIで“最強の秘書”をつくる
AIを「会社の事情を何でも知ってる最強の秘書」みたいにしたいなという気持ちがあります。
弊社は8割ぐらいのコミュニケーションがチャットツール「Discord」を通して行われており、そのログをすべて読み込めば「社内事情をほぼ全部把握している最強の秘書」みたいになると思っています。
ただ、プライバシーの問題などもあり、「全部を読み込ませることにはリスクもあるなあ」「誰かの給与の額について聞かれて答えちゃったら困るなぁ」などと思っていたらめんどくさくなってしまい、結局着手できていません。
ただ、これさえできれば今社内で起こっている非効率、たとえば「Discordにログが残っているが検索でうまく発見できない」「誰に聞けばいいのか分からなくて困る」などがすべて解消されるので、今後どんどんやっていきたい領域ではありますね。
もちさんの挑戦:AIを味方に、デザイナーがコードを書く時代へ

もち(@makiko_sakamoto)
UIデザイナー/CDO/起業家
株式会社xenodata lab.のCDOとしてプロダクトやマーケティングを含む全社のクリエイティブを統括。あわせて、自身の法人を設立し、オンラインデザインスクール「NOT DESIGN SCHOOL」を運営。経験者向けの実践的な学習プログラムを通じて次世代デザイナーを育成する。
現在の仕事内容とAIの活用シーンを教えてください。
私はオンラインのデザインスクールを運営しており、集客や教材制作、問い合わせ対応など本来は大人数で分担する業務を少人数でこなしています。
以前は不十分な点もありましたが、AIを駆使し、「Zapier」や「Make」でワークフローを構築することで作業時間を大幅に短縮できました。
たとえば、個別相談のZoom録画を自動で文字起こしし、要約をNotionに追加、さらにSlack通知まで自動化。従来20〜30分かかっていた作業時間がゼロになり、面談中は受講生との対話に集中できるようになりました。AIを活用することで、少人数でも効率的に運営する体制を整えています。
今チャレンジしている領域は?
普段の仕事:デザイン→ 挑戦している領域:プログラミング
個人開発に挑戦しています。もともとデザイナーなのでプログラミングは初心者ですが、記事や動画を参考にしながら「Claude Code」を動かせるようになりました。先日は「Figma」で作ったWebデザインを実装させてみたところ、2〜3回のやりとりだけでほぼ再現度100%のコードが返ってきて驚きました。
開発のモチベーションになったのがワークフロー構築です。思い通りに動いた瞬間は、工作が完成したみたいでめちゃくちゃ楽しいんです。iPhoneのショートカットとChatGPTをつないで、自分仕様の仕組みを組んでいくと次々にアイデアが浮かんできます。可能性は無限大だなってワクワクします。これからもっとサービスやAI同士が簡単に連携できるようになったら、遊び感覚で創造的なタスクもできる未来が来るんじゃないかなと思っています。
これからチャレンジしたい領域は?
優秀なエンジニアとイラストレーター
年内に簡単なアプリをリリースすることを目標にしています。そのサービスのキャラクターもChatGPTにお願いしたらすごく良いものが出てきたんです。まるで優秀なエンジニアやイラストレーターが横にいるみたいで、1人なのにチームで作っている感覚があります。それぞれのAIの得意分野を活かしつつ、自分のデザイン経験を掛け合わせてアプリを形にしていくことに夢中です。
ぺんぎん薬剤師さんの挑戦:AIで広がる“伝える力”

ぺんぎん薬剤師(@penguin_pharm)
薬剤師ライター
調剤薬局で薬剤師として勤務する傍ら、メディカルライターとしてブログ「薬剤師の脳みそ」やSNSなどの場で薬や業界の情報を発信中。新薬の情報や医療制度等を現場で働く薬剤師にわかりやすく伝えることを心がけている。
現在の仕事内容とAIの活用シーンを教えてください。
薬局の仕事と並行して、ライターとして記事を執筆していますが、以前は調査や資料作成等の記事を書く前の準備にかなりの時間が必要でした。
生成AIを活用するようになってからは、複雑な制度やデータを整理してもらい、自分は分析や活用に集中できるようになっています。その結果、執筆の効率が大幅に向上し、本業と両立しながら新しい仕事にも挑戦できるようになりました。これまで時間の制限で諦めていたことに挑戦できるようになったのが、一番大きな変化でした。
今チャレンジしている領域は?
現在の職域:薬剤師ライター→挑戦している領域:コンテンツプランニング
AIを使うことで、自分一人では思いつかない記事構成や視点を得られるようになりました。単純作業を任せられることで余裕が生まれるだけでなく、アイデアを引き出してくれたり、考えの弱点を指摘してくれたりすることで、自分の思考がより深く正確に磨かれていくことを実感しています。
孤独になりがちな執筆作業も、AIとの対話を重ねることで、頼れるライター仲間と一緒に進めているような心強さがあります。1人で抱えていた作業もAIのサポートで効率的に進められるようになり、「これからはもっと幅広い挑戦ができる」と胸が高鳴りました。
これからチャレンジしたい領域は?
デジタルコンテンツプランナー
AIを活用すれば、記事をスライドや音声、動画に展開し、これまで届かなかった層にも伝えられます。
薬剤師を対象として書いてきた医療や制度の記事も、より多くの人によりわかりやすい形で届けられるはずです。さらに薬剤師用アプリや服薬アプリの開発にも関心があります。AIに自分の構想を伝えると、それを形にする方法を提案してくれるので、薬剤師として働く現場で得た知識を新しいツールとして発信していきたいと考えています。AIを活用するようになったことで、自分が知らない世界に挑戦しようとする際の敷居が低くなり、これまで以上に自由に「伝える」「挑戦する」ことが可能になりました。
まとめ:AIエージェントが広げる“働き方とキャリアの自由”
AIを活用すれば、これまで時間や専門性の制約で諦めていた挑戦もぐっと取り組みやすくなります。インフルエンサーたちの実践例も、単なる効率化を超え、新しい発想や創造を後押しする力を示しています。
今後、AIエージェントの活用が広がれば、より高度で幅広い業務の協働も可能になります。実際、SalesforceのAIエージェント「Agentforce(エージェントフォース)」を活用し、成果につなげている事例も多数あります。(事例はこちら)
AIは、働き方を広げ、未来のキャリアを切り拓く心強いパートナーです。あなたも「Agentforce」と一緒に、新しい可能性を広げてみませんか。
「Agentforce(エージェントフォース)」とは? スペシャリストに聞く13の質問
Salesforceの各プロダクトやテクノロジーの特徴をセールスフォース・ジャパンのマーケターに基礎からわかりやすく説明。

















