目次
「Connections」とは
「Connections」は、米セールスフォースが主催する最大級のBtoC企業向けイベント。今年は6月11-12日に米シカゴのコンベンションセンター「McCormick Place(マコーミックプレイス)」で開催し、270以上のセッションを用意し、約1万3000人が来場しました。

米セールスフォースが主催する最大イベント「Dreamforce」は、業界を問わず全プロダクトが対象であるのに対して、「Connections」はBtoC業界に特化しその関連プロダクトに焦点を絞っています。
今年の特徴は、会場の至る所で「Become an Agentic Marketer」というメッセージを打ち出していたように、マーケティングにおけるAIエージェントの活用がメインテーマでした。
AIエージェントとは何か。仕組み、事例など徹底解説

Main Keynoteでみた最新のAI機能
Main Keynoteでは「Agentic Marketing」というテーマをもとに数々の新テクノロジーやソリューションを紹介していましたが、その中で筆者が注目したのは、新たに発表された「Marketing Cloud Next」の中の「Agentforce Web Curation」というAIエージェントと連動したWebサイト上での動的キュレーション機能です。
近年、生成AIの浸透で消費者はGoogleなどで検索する代わりに、「ChatGPT」や「Gemini」などの生成AIで商品を検索・比較することが増えています。さらに、米国では生成AIとの「会話」から直接商品を購入できる機能も実装され始めています。
小売業やD2Cメーカーにとっては「見込み顧客の情報が得られない」「生成AIが競合の商品まで紹介してしまい、最悪の場合他社製品を購入してしまう」というデメリットが発生します。
そのようなデメリットを防ぐための機能が「Agentforce Web Curation」です。WebサイトにAIエージェントを埋め込み、さらにその会話内容に応じて、Webサイトを動的に変化させることが可能なソリューションです。
.png?w=620)
講演では、米自動車メーカーのフォード・モーター・カンパニーの事例を紹介。Webサイトを訪れたユーザーと、Webサイトに組み込まれたセールスフォースのAIエージェント「Agentforce(エージェントフォース)」との会話を披露しました。
「冬のシカゴの道路に耐えうる車は?」「ガソリン車との違いは?」という質問に対し、「Agentforce」は商品情報や在庫情報などを「Data Cloud」に格納されている多様なデータを参照し、適切に回答しています。
回答内容に合わせて、CMSやマーケティングのクリエイティブなどのデータを用いて動的にWebサイトも自動作成。消費者が生成AIを使って商品を調べる時代に、自社Webサイトでの訪問機会の誘発や商品の訴求力強化には最適な機能だと感じ、印象に残りました。
生成AIでマーケティングの何が変わる?
生成AIがマーケティングにもたらすメリット、セキュリティ懸念やスキル不足の理由、効果的な生成AI活用方法について、世界各国1,000人のマーケターを対象にした調査結果をもとに解説します。

【最新事例 Part1】ブラジル小売大手、Casa Bahiaのパーソナルマーケティング
イベントでは、複数の事例セッションも実施していましたが、筆者が注目したのは、ブラジルの大手小売業、Casa Bahia。
Casa Bahiaは、ブラジル全土に約1000店を構え従業員は5万人ほど、年間売上は約298億レアル(約600億円)の大手小売業です。本セッションでは、Casa Bahiaが手がけているパーソナルマーティングとして、広告配信手法を紹介していました。
Casa Bahiaの登壇者は「Personalization is no longer a trend — it’s a necessity.(パーソナライゼーションはもはやトレンドではなく必須)」と述べ、リテールメディアでも1人ひとりに合わせた広告配信を目指していました。
具体的には「Data Cloud」と「Marketing Cloud」を用いてセグメンテーションし、「Whatsapp」経由での広告配信を実施。その結果、従来と比較して70倍のROIを実現し、セグメーション作業は4時間から10分に激減したといいます。
「リテールメディア」の成功法則
昨今、小売業の新たな収益源として、注目度が急速に高まっているリテールメディア。
そのメリットと国内外の取り組みと市場動向、参入評価ポイント、想定課題、実現に向けたシステムイメージをわかりやすくご紹介します。

【最新事例 Part2】米Funkoが構築した強固で柔軟なECサイト
Funkoはアメリカに本社を置くポップカルチャー系グッズメーカーで、映画・アニメ・ゲームなどのキャラクターをデフォルメした「POP!」フィギュアを展開しています。公式ライセンス商品を多数展開し、収集アイテムとしても人気。北米を中心に欧州・アジアにも市場を広げ、2023年の売上は約10億ドルに達しています。
セッションでは、Funkoが実施しているECサイトとカスタマーサポート部門でのSalesforce活用法を紹介していました。
ECサイトでは、「Commerce Cloud」の強みである可用性を生かして、映画のプレミア上映、アニメイベントなど、システムに多大な処理能力が一時的に必要になるハイトランザクションにも耐えうるEC基盤を解説しました。
また、顧客が安心して買い物ができるように、強化した在庫管理機能も紹介。多数のオーダーが予想される限定版フィギュアを発売した際、「Salesforce Order Management」と基幹システムが連動して、購入者がカートに入れた商品の在庫を一定時間確保。規定時間を過ぎた場合は、自動的に確保した在庫をリリースするといったことを可能にしました。
一方、カスタマーサポート部門では「Service Cloud」と「Agentforce」を用いて、AIが365日24時間体制で顧客からの問い合わせに対応しています。
たとえば、返品に関する問い合わせが来た際は、返品・交換の規定を参照しながら、AIエージェントが自動対応。有人対応が必要な際にも、多角的な顧客情報を参照しながら対応することで、顧客に寄り添った対応を実現しています。
その結果、Funkoでは1分間で4000件を超えるEC注文に対応し、処理時間も50%以上改善しました。カスタマーセンターでは7日24時間での顧客対応を実現し、オペレータの生産性は40%も向上しました。
.png?w=868)
第3版:Eコマース最新事情
AI、生産性、新たな優先事項とソリューション。全世界2,700名のEコマースリーダー、15億人以上の一般消費者や企業の購買データの分析から導かれたトレンドが明らかに。

イベント全体で体感した小売業への示唆
2024年の「Connections」を振り返ると、実は「Agentforce」という単語は一度も登場していません。そう考えると、この1年でいかにAIエージェントが急速に浸透したかが分かります。
冒頭に述べた「Become an Agentic Marketer」というメッセージに象徴されるように、AIエージェントを活用することは現実となっています。人手不足や生産性向上が叫ばれる小売業において、マーケティングでもAIエージェントで効率化することが必要不可欠となるーー。そう肌で感じる内容でした。

今回の「Connections」の内容ほか、日本の小売業のビジネスヒントを交えて紹介する国内最大級の小売業向けイベント「Agentforce Innovation Day Marketing & Commerce」を開催、オンライン配信もしますので、今回の内容に興味を持っていただいた方は、ぜひこちらのイベントにご参加いただければ幸いです。
Agentforce Innovation Day Marketing & Commerce
マーケティング担当者/EC担当者とAIエージェントがつながり、AIエージェントを活用した、まったく新しい顧客体験とマーケティングの未来を再定義するイベントです。



生成AIで実現する小売業の未来
生成AI活用の最新動向と実践に向けたシナリオとは
