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世界最大級の小売向けイベント「NRF 2026」を現地取材。そこで得た最新のヒント

世界最大級の小売業界向けカンファレンス「NRF 2026」を現地取材。本記事では、筆者が印象的だった主要なセッションをピックアップして紹介します。AIエージェントの活用が実践フェーズに入った米国における各社の最新の取り組みを解説します。

NRFとは

「NRF 2026: Retail’s Big Show」は、NRF(National Retail Federation:全米小売業協会)が主催する世界最大級の小売業界向けイベントで、2026年1月11日から13日までニューヨークのジャヴィッツ・センターで開催されました(現地時間)。今年は世界中から4万人の来場者が集まり、1000社以上のブース展示、185以上のセッションが行われました。

NRF2026で語られた主要テーマ

今年のNRFでは「AI Stage」という特別セッション枠が設けられたように、昨年以上にAI関連のセッションが増加しました。実際に、現地では半数以上のセッションや7割以上のブースで「AI」というキーワードが使われていました。

また、昨年はAgentic AI(独自の目標を持ち、それに向かって能動的に行動する能力を持つAI)が出始めたばかりで、各社は何ができるのか不透明な状態でしたが、今年は実際に顧客体験や従業員体験の向上にどう活用するかの具体が提案され、「実践フェーズ」まで来ていることを印象付けていました。

【Keynote】コマースの崩壊:AIネイティブな消費者の台頭

複数の基調講演の中から特に印象に残ったのは、EC分野の第一人者であるJason Goldberg氏のセッションです。

「Commerce Disrupted: Rise of the AI Native Consumer(コマースの崩壊:AIネイティブな消費者の台頭)」と題して、AIの浸透で小売業のECがどう変わっていくかを独自の視点で解説しており、示唆に富む内容でした。

以前は、商品との「出会い」は店舗が中心でした。近年はTikTokなどに代表されるSNSが加わり、ここ1年でChatGPTやGeminiに代表される生成AIが商品との出会いのチャネルとして台頭しています。

直近3か月の短い間にも、さまざまな生成AIサービス上でEC購買に関するサービスがローンチされています。

講演では、ChatGPTはグローバル全体で9位の訪問者数を誇るECサイトに相当すると紹介。ChatGPT上で毎日実行される25億回のプロンプトのうち、買い物に関連するものは2.1%(5250万件)にも登り、無視できないボリュームとなっています。

今後、AIネイティブ時代の購買体験は、オフサイト(ChatGPT/Geminiなど)とオンサイト(小売各社の自社ECサイト)の双方でAIエージェントと会話しながら買い物を楽しむ未来になっていくと述べていました。

【欧米最新EC事例】
AI活用で収益最大化!ECサイトの勝ち筋 戦略会議

ニーズが多様化してくる中で、お客様の『当たり前』の体験は、近年ハードルが上がっています。USで行われたDreamforceでの事例をもとに、これからの未来に備えるECサイトはどうあるべきか?ヒントをお持ちいただけます。

【Pick up Session1 】WalmartのAI戦略

Walmart U.S.のCTOであるHari VasudevUlta Beauty氏が登壇し、同社のAI戦略について語りました。

WalmartのAIの取り組みは、「予測AI→生成AI→Agentic AI」と段階的に進化し、今後の本命はAgentic AIといいます。Agentic AIは顧客の意図を理解し、具体的なアクション(実行)に至る点がこれまでのAIと異なります。ここで強調されたのは、Agentic AIは単体で成立しにくく、スケールと統制の効く「プラットフォーム」が不可欠という点です。

Walmartは、強固なAI基盤の上に複数の「スーパーAIエージェント」が存在する世界を描いており、消費者だけでなく店舗スタッフやパートナー(マーケットプレイスの出品者や取引先)、IT部門などの多様な人が恩恵を受ける世界を目指しています。

その実現のためには、ユースケースごとの「点のAI」導入ではなく、共通のガードレールと拡張性を持つ土台の上で、用途別のAIエージェントを素早く増やし、連携させることがカギだと説明していました。

AIエージェントを大規模に構築、導入、管理

Agentforceは、人間、アプリケーション、AIエージェント、データを統合することであらゆるエクスペリエンスを向上させる企業向けの唯一のエージェント型AIソリューションです。

さらに、ECサイト上のAIエージェントにも言及。顧客の「意図」を汲み取ることがAIエージェントで可能になるといいました。

例えば「10代の娘の誕生日パーティーを開きたい」という意図に対して、プレゼントをリコメンドするだけでなく、ケーキや飾り付け、招待状に必要なもの一式をAIエージェントが提案することができます。

このように顧客の「意図」をAIが吸い上げるようになると、顧客への「提案力」が上がります。Walmartは、Agentic AI時代の顧客理解を「長期記憶」×「文脈」と捉えています。嗜好・購入履歴などの「長期記憶」に加え、「娘のパーティを計画中」「旅行を計画中」といった瞬間の文脈との掛け合わせでお客様に最適なバスケットを提案することが肝要といいました。

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コマースは、商品を買いに行く「場所」ではなく、インテリジェントな対話を通じて進む「体験」へと変わりつつあります。

【Pick up Session 2】Krogerの店舗スタッフ向けAIアシスタント

米国最大級のスーパーマーケットチェーンであるKrogerのセッションでは、現場の店舗スタッフの業務を劇的に変えるAIプラットフォーム「Sage」について、開発思想から技術的な裏側までを語りました。

Krogerの現場では、「クリック数が多すぎる」「システムが乱立している」「シフト通りに現場が動けない」といった課題がありました。そこでSageを導入。会話型でAIに指示や確認を行えるようにしました。


店舗スタッフは、スケジュールの確認や休暇申請、勤務可能日時の設定、給与明細の閲覧、福利厚生の規定の確認などを自然言語でAIに確認・登録できます。

これによって、メリットを得られるのは店舗スタッフだけではありません。店長はこれまでデータを確認するために事務所へ行き、1日前のデータであるレポートを閲覧していましたが、Sageの導入で売り場にいながら繁忙時のシフト、残業時間などをリアルタイムで確認し迅速な意思決定を行っています。

現在は12万5000人以上の店舗スタッフが利用し、100万回以上の会話が行われています。Sageの導入により、店舗スタッフは1日2〜10分、店長は15〜30分の時間が節約されたといいます。

店舗スタッフ生産性向上ソリューション

デジタルを活用した店舗スタッフの生産性向上ソリューションを動画でご紹介いたします。

展示ブースはAI一色。80%はAIに言及

展示ブースでは、例年同様にスタートアップから大手まで1000社以上が出展。会場を見て回り最も印象的だったのは、80%のブースがAIを訴求していたことです。その中で、Agentic AIは大手ソリューションを中心に、昨年以上にソリューションに組み込まれていました。

今後、小売業におけるAIの本命は、Agentic AIであることを印象付けました。

筆者から最後に

NRF2026では、約半数のセッションでAIに言及しており、AIが当たり前の世界であることをまざまざと感じる現地取材でした。

今後、AIはCommerce DisruptedやWalmartのセッションで言及されたような「顧客体験」の強化と、Krogerのセッションで言及されたような「従業員体験」の強化の両輪において浸透が進んでいくと考えます。

その際にカギとなるのはデータです。データなしにはAIは動きません。AIのユースケースを検討するとともに、必要なデータを収集・整理してAIに学習させることが不可欠です。

小売業においてAgentic AIを最大限活用していくためには、フロント側のユースケースとともに、バックエンドのデータ基盤の整備がはじめの一歩となるでしょう。

AIとデータで進化する顧客体験:先進企業のリテールDX戦略

先進企業がどのようにAI活用やユニファイドコマースに取り組んでいるのか、そしてその土台となる、ロイヤルティプログラムを活用した顧客データの収集、そして自律型AIエージェント活用事例も交えてご紹介いたします。

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