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【パートナーインタビュー】アクセンチュア 谷山敬人。世界最大級のパートナーは「Agentforce」をどう使うか、どう生かすか

アクセンチュアでSalesforceのビジネスをリードする谷山敬人マネジング・ディレクターにインタビュー。アクセンチュアのAI戦略やSalesforceへの評価、「Agentforce(エージェントフォース)」活用術などを語っていただきました。

世界最大級のコンサルティング会社で、グローバルでSalesforceの最大級のパートナーでもあるアクセンチュア。自社でも5万5000人がSalesforceを利用する同社は、AIエージェント「Agentforce(エージェントフォース)」をどのように評価し、活用しているのでしょうか。Salesforceとの協業をリードする谷山敬人・テクノロジー コンサルティング本部マネジング・ディレクターに話を聞きました。

【5分で解説】Salesforceの自律型AIエージェント “Agentforce”とは?

本デモ動画では、AIエージェントによる顧客対応の様子をはじめ、Agentofrceがどのように業務を変革するのかを、5分間の動画でご紹介します。

AIのインパクトは桁が違う。徹底活用し顧客に還元する

 ──谷山さんは複数の肩書きをお持ちです。まず、統括している領域を教えてください。

谷山:大きく3つの組織をリードしています。1つ目は、Salesforceなどさまざまなクラウドソリューションをお客様に提案・導入する組織。2つ目は、お客様の要望や課題に合わせて多様なテクノロジーやソリューションを組み合わせて変革を支援する「トランスフォーメーション・コンサルティング」を担う組織。

そして3つ目が、アクセンチュア社内のテクノロジーコンサルティング部隊を束ねたバーチャル組織です。

数年前までのコンサルティングファームは主に、お客様から寄せられた課題に応じて最適な提案と実装力が求められていましが、今はそれだけでは不十分です。

お客様の経営や事業状況を的確に捉え、お客様が気づいていない潜在的な経営・事業課題を見つけ出し、その解決に向けた仮説を立て、具体的な方法を提供することが重要です。

そのためには、さまざまなテクノロジーを熟知していなければならず、多種多様な人材との連携が必須になります。なので、これだけ肩書きが長くなってしまうんです(苦笑)。

 ──多様なテクノロジーを熟知する谷山さんから見ても、AIには大きなインパクトを感じていると思います。アクセンチュアは、AIでどのようにビジネスを進化させようとしているのか、アクセンチュアのAI戦略を教えてください。

これまでも、モバイルやクラウドなどテクノロジー業界を動かす大きな波はありましたが、生成AIは桁違いです。全ての業界、業種、業務が大きな影響を受けるため、企業経営者にとっては全社に関わる重要な経営アジェンダと言えるでしょう。

また、AIの中でも、AIエージェントはこれまでのテクノロジーと異なり自律的に行動するので、人の代わりに業務遂行しますし、人とエージェントが連携して業務が進められるようになります。そうすると全社員の仕事のありようが変わり、すなわち企業としての人材戦略にも関わってくる。経営に与えるインパクトがこれまで以上に大きいんです。

私たちがご相談にのったりご提案したりする相手は、これまで以上にCEOを中心として企業トップの場合が多くなってきています。部門を超えて全社的な意思決定ができるのはトップだけだからです。

アクセンチュアは、従来から「業務変革」「テクノロジー変革」「人材変革」を提供できるのが強みです。新たなテクノロジーを早期に取り入れ、お客様に提供してきた歴史があります。

AIもこれまで同様に、徹底的にその中身を調査・理解し、アクセンチュア自身が活用してベストプラクティスを見つけ出す。そして、お客様の経営・事業に適した形でそのノウハウを提供する。AIだから何か新しいことをやるわけではありません。

ただ、これまでのテクノロジーとは比較にならないほど進化のスピードが速いのと、他のコンサルファームとの競争も熾烈。ビジネスチャンスと当然捉えていますが、一方で、危機意識も持って挑んでいます。

 ──世界最大級のコンサルファームでも、「やらなければ取り残される」という危機意識があるのですね。

生成AIの影響は、物理的なモノを扱わない企業のほうが受けやすいです。例えば、銀行、証券、保険といった金融系、コミュニケーション系など情報産業などは、インパクトを受けやすい業種と言われています。アクセンチュア自身はまさに情報産業ですので、私たちが最も破壊され得る産業の1つと言えます。

ですから、AIを徹底的に活用して効率を上げられることは上げて、代わりに人にしかできない付加価値を創出する必要がある。社内で本気で取り組んできたAI活用の経験は、お客様へ提案の説得力にもなります。痛みも難しさも反発も経験したうえでの提案だからこそ、お客様も耳を傾けてくれると思います。

AI時代に重視されるコンサルタントの不変な力

 ──コンサルタントの力を左右する要素は変化していくのでしょうか。

AIを使いこなすには、適切な問いを立てる必要があります。昔からコンサルタントは、ソリューションよりも課題設定能力が大事だと言われてきました。この本質はAI時代でも変わりません。なので、AI時代だからコンサルタントに求められるスキルが変わるのではなく、根源的な能力がより重要になるということだと感じています。

加えて、ソフトスキル。つまり、対人コミュニケーション能力が重視されるでしょう。コンサルタントは、お客さまとの対話を通じて納得してもらい動いてもらわなければなりません。そのために熱意を持って話せるか、人として信頼してもらえるかどうかが必要不可欠。この能力は、コロナ禍で失われたことを実感していて、トレーニング等で強化しています。

ただ、これまでの対人コミュニケーション能力も、10年後15年後には別の形になっているかもしれませんね。AI同士が協調して仕事を進めてくれるようになった時代における「AIネイティブ世代」からしたら、「対人コミュニケーション? 人と話すのは効率悪いのでは?」となっているかもしれませんからね(笑)。とは言っても、今の段階でいえば、コンサルタントにとって、とても重要な能力と思います。

Salesforceの独自性はユーザーを熱狂させる力

 ──谷山さんは複数のクラウドソリューションを見定めている立場ですが、Salesforceをどのように評価していますか。

顧客接点や営業支援の領域では、誰もが認める世界ナンバーワンソリューション。どの調査機関もリーダーに位置づけていますし、それだけの実績とお客様からの高い評価があります。

油性ペンのことを「マジック」と製品名で呼ぶように、「CRM=Salesforce」が多くビジネスパーソンの脳内に潜在しているでしょう。

その実績とブランドに加えて、私が実際に一緒に仕事するようになって感じたのは、カルチャーですね。言い換えれば、良い意味で熱狂がある。SalesforceのユーザーはSalesforceを本当に好きですよね。お客様と話していてもそう感じますし、「Dreamforce」などのSalesforceが開催するイベントに行くとより実感します。これほどユーザーを熱狂させるソリューション、テックカンパニーはないでしょう。

社員のみなさんも、Salesforceに愛着を持っていることがわかる。Salesforceはクラウドカンパニーでありながら、思想を共有するコミュニティプラットフォームとも感じます。

 ──ありがとうございます。手前味噌ながら、確かにそれは感じます。別の観点に立って、アクセンチュアが企業にSalesforceを提案するメリットは何でしょうか。

アクセンチュアは、特定のソリューションに肩入れはしません。なので、Salesforceもあくまで適正に評価して、お客さまのステージや目的を考えて「今はSalesforceを入れるべきではありません」と正直に伝えることも当然あります。

その前提で、先ほど申し上げたように、デファクトスタンダードであることは自明なので、Salesforceがほとんどのご提案のケースで結果的に当てはまります。CRM、SFAを中心としたSalesforceの領域で、どのテクノロジー、どのツールを選ぼうか迷ったり、時間をかけて調査したりすることが他の領域よりも少ないので、本業に集中しやすいのはメリットです。

また、統合ソリューションであることも魅力です。豊富な製品ラインアップを持ち、お客様の経営を「点(特定領域)」ではなく、「線」を超えて「面」(全方位)で支えられる。

逆に、点で使っても成果は出にくいし投資対効果は低いので、面での変革へと導くことがパートナーの腕の見せ所ですし、アクセンチュアの強みが生きる部分です。

「すでにそこにある」。それはAgentforceの価値

 ──Salesforceは今、AIエージェントで覇権を握ろうと力を入れていますが、SalesforceのAIエージェント「Agentforce」をどのように評価していますか。

正直に言って、現時点で評価は難しいです。それはAIの技術進化のスピードが早くて、今日最も優れていても明日にはそうではあるとは限らないからです。そんな状況下の今、性能を評価することに意味があるとは思いません。

むしろ重要なのは、人がそれについていけるか、自社の業務に容易に組み込めるかです。その観点で、AgentforceはすでにSalesforceの各種ソリューションに組み込まれていますから、すでに使っているお客様にとっては「そこにある」存在。それ自体が価値だと思います。

日本のアクセンチュアでSalesforceを提供するチームは、「とにかく実物のAgentforceを触ってみよう」ということで、セールスフォース・ジャパンに協力いただいてアクセンチュア向けの特別トレーニングセッションを8回ほど実施。延べ数百人が受講しました。これは、メンバーの“手触り感”を上げる意味で非常に良かったと感じています。

能書きを言う前に使う。先進テクノロジーを取り込む上でこの一歩は非常に大きいです。その意味でSalesforceはすでに使っているソリューションに組み込まれていますから、CRM領域で優位だと思います。

日常業務の即戦力となるAgentforceの始め方と3つのユースケース

Agentforceが日常業務の即戦力に。Salesforce上で使える3つの生成AIユースケースを解説。初心者でも分かる「始め方」ガイドです。

米国はすでにAgentforce活用し生産性向上

 ──米国のアクセンチュアでは、すでにAgentforceを活用し成果を上げているとお聞きしています。

アクセンチュアはグローバルで、SFAツールとして5万5000人がSalesforceを使っています。Agentforceは欧米から先行して展開し、日本ではこれから展開予定となっています。
 
まず成果が期待できるのは、単純作業の効率化です。類似案件の情報収集など、今まで人のコミュニケーションに頼っていた部分が圧倒的に短縮されます。これは間接業務の削減という意味で、間違いなく効果があります。
 
米国オフィスでの営業領域でのユースケースを紹介します。常時数万件以上の商談が進行する中、限られたリソースで取引の成功率を最大化することを目的に、営業改革プロジェクトを推進してきました。
 
内部環境としては、提案準備や情報収集、取引内容のチェックに多大な工数を要することから、コストが案件に正比例して増大します。
 
市場の変化が激しく要求が高度化するお客様に対して、効率的にデータやコンテンツ、ナレッジを最大活用する必要がありました。
 
 ──具体的に、どのような手を使ったのでしょうか。
 
 「業務とテクノロジーの統合」と「セールスオペレーション全体の見直し」、「生成AIによる予測的かつ実践的洞察の活用」という3つが戦略の柱でした。
 
この戦略の実行には、AIエージェントの力が欠かせません。グローバルで統一された「Sales Cloud」上の営業管理システムにおいて、見込み顧客の絞り込みプロセスがAgentforceを適用し標準化されました。その結果、成功率が向上し、担当者の業務負荷は低減しました。
 
さまざまな効果が出ていますが、Agentforceのコラボレーションによって取引を同時並行で進める体制を構築した結果、生産性が大幅に向上し、引き続きさらなる生産性向上を図っています。
 
先ほど申し上げたように、まずは自社で活用し理解を深める。そしてそのナレッジとノウハウをお客様に還元し、早期に成果を出すように導く。そのために、日本でもAgentforceの活用を本格化させていき、AIエージェントの提案・実装力をもっともっと強くしていきます。

ハイブリッドな職場環境の管理、最適化、拡張を実現

Agentforceを活用することで、AIエージェントが人間の生産性をどのように向上させているかを管理、追跡、そして最適化できます。


 

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