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【不動産DXカンファレンス】日鉄興和不動産×森トラスト×Salesforceが語る「オフィス賃貸DXとAIエージェント」

 「不動産DXカンファレンス2025」が開催され、Salesforceはこのカンファレンスに登壇。日鉄興和不動産株式会社と森トラスト株式会社をゲストに招き、オフィス賃貸DXの事例やAI活用について語りました。その内容と、AIエージェント「Agentforce(エージェントフォース)」の最新デモを紹介します。

Part 1  Panel Discussion

海外事例に見るオフィス賃貸DXの可能性

ゲストを招いたパネルディスカッションに先立ち、Salesforceのソリューション統括本部インダストリーアドバイザー本部でマネージャーを務める依田健が、海外の先進事例として大手デベロッパー企業におけるオフィス賃貸DXの取り組みを紹介しました。営業部門と管理部門を一体化したデータ活用による業務効率化の事例です。

この海外事例の主なポイントは下記です。

  • 新規リーシング営業から入居工事手配、賃料改定、ビルメンテナンスまで、あらゆる部門でSalesforceを活用し情報を一元管理。部門間のやり取りは基本的にSalesforce上とSlackで完結しており、従来比でコラボレーションのスピードが45%向上。同社の成長戦略「ソフトサービスによる新たな付加価値向上」を支える重要なプラットフォームとして活用中。
  • 生成AIの活用にも着手。例えば、各種システム間の情報自動連携や商談のスコアリング(成約確度評価)、テナント退去の兆候検知などを研究。

業務を一気通貫でデジタル管理することで大幅な生産性向上を実現し、加えてAIによるさらなる高度化にも挑戦しているこの事例は、日本の不動産業界にとってDX推進のヒントとなるでしょう。

国内の不動産業界でも、営業現場と管理部門のデータ連携はソフトサービスの価値向上には不可欠になるはずです

(株式会社セールスフォース・ジャパン 依田健)

不動産業界DXのリアルと課題

続いて行われたパネルディスカッションには、Salesforceやestieを活用してDXを推進する日鉄興和不動産と森トラストの担当者が登壇。組織横断のデータ活用やDX推進における課題、AI活用への期待など、リアルな声をお聞かせいただきました。

まず、日鉄興和不動産株式会社の都市事業本部リーシング推進部チーフマネージャーの谷川藍子氏が、自社で進めているDXの取り組みを紹介。

同社では法人営業部とリーシング部門の双方でSalesforceを共通顧客管理基盤として活用し、商談情報を一元管理しています。物件管理部門では、入居中テナントとの契約更改交渉履歴を蓄積し、他部門との情報共有に活用しています。まずは、各部門でSalesforceに商談を入力し、活用することを徹底し、今後さらに部門の壁を越えてデータ活用する仕組み作りを目指していきたいとのことです。

さらに、谷川氏の部署では営業が扱う顧客・商談データと社内の物件データベース(物件情報や空室情報)とのシームレスな連携にも取り組んでいます。

目指すべき姿を明確にしなければ現場のマインドチェンジを促すことはできません

(日鉄興和不動産株式会社 谷川 藍子氏)

その一環として商業用不動産データプラットフォーム「estie」とSalesforceを連携し、複数システムへの二重入力を廃止して、最新データを即座に共有できる環境を目指しています。

現状では「今のやり方でも大きな支障はない」という声も社内にあり、DX推進の必要性を理解してもらうまでに苦労もあったそうです。しかし、「効率化した時間で本来注力すべき顧客対応や戦略立案に時間を割けるようになる」(谷川氏)将来像を示し、社内の意識改革を進めたと語りました。また谷川氏は、生成AIのオフィス部門業務への応用を検証中であることも明かしました。

次に、森トラスト株式会社の社長室戦略本部 デジタルデザイン室で主事を務める岩本 友太氏が登場。岩本氏はKDDIやSalesforceでの勤務を経て現職に就いており、ベンダーとユーザー双方の立場を知る人物です。その経験から「ただシステムを導入するだけではDXは進まない。ユーザーに信頼されるCRMを作ることが重要だ」と指摘しました。

実際に森トラストでは、Salesforce導入後に物件情報のクレンジング(データ整備)や営業担当者のメモをAIが代理でCRMへ入力するなどCRMを信頼できる唯一情報源(SSoT)にするためのさまざまな施策に取り組んだといいます。岩本氏は「DXの本質は、現場の属人的な知見とデータを融合し、より質の高い意思決定を行えるようにすること」と強調しました。

続けて、両氏は生成AIへの期待について語りました。岩本氏は、「Salesforceが提供する生成AIによるリードスコアリング機能(商談見込み度の自動評価)によって、よりホットなニーズに集中できる体制づくりを行えないかを期待している」と語り、AIエージェント「Agentforce」にも非常に強い関心があり、社内で活用できないかユースケースを検討していきたいと明かしました。

Agentforceには大きな期待を寄せています。これまでの課題解決の方法は、人間の労働力を起点としていましたが、その制約から解放されるからです

(森トラスト株式会社 岩本 友太氏)

続けて谷川氏からは、生成AIは検証中で発展途上であるとしながらも、「将来的にはオフィス賃料算出の分野で活用できることを期待している」とのコメントを寄せました。

パネルディスカッションを通じて、日本の不動産業界におけるDX推進の現状と課題の一端が浮き彫りになったと言えます。現場の業務効率化を進めるには部門を超えたデータ連携や社内文化の変革が重要であり、「People(人)とTechnology(技術)の両輪」が不可欠です。

また、登壇者の両氏とも生成AIをはじめとする新技術への期待を口にしており、AIを上手に取り入れて競争力強化につなげようという意欲が感じられました。

Part 2  Salesforce Session

AIエージェント「Agentforce」がもたらすインパクト

パネルディスカッションの後、Salesforceによる自律型AIエージェント「Agentforce」のデモンストレーションが行われました。最新の生成AIを活用し、オフィス賃貸営業の業務をどのように支援・自動化できるかを実例で紹介しました。

デモでは、営業担当者がAIエージェントに自然言語で指示を出すだけで、一連の業務が自動化される様子を披露しました。具体的な流れは、以下の通りです。

  • 商談情報の代理入力: テナント候補企業との商談に関するメールのやり取りをAgentforceに伝えるだけで、Salesforce上の商談レコード(SFA)に必要な情報が自動入力されました。これにより、担当者は煩雑な入力作業から解放され、より付加価値の高い顧客対応に集中できます。
  • Slackによるチーム共有提案: さらにAgentforceは、入力された商談情報を元にSalesforceと連携するSlack上のチームチャネルに活動履歴を投稿。メールや電話で逐一報告しなくても、チーム全員が最新の状況を把握でき、社内の情報共有がスムーズになります。
  • 参考になる過去提案資料の共有: SlackでAIエージェントに「過去に入居時期を早めてもらう提案をしたことはある?」と質問をすると、AIエージェントが過去の提案資料を探し、サンプルを複数提案してくれました。

このデモンストレーションから、日々の営業現場で発生するデータ収集・入力・共有といった業務がAIによって効率化できることが実感できます。参加者からは「これまでエクセルやメモで行っていた作業が一瞬で完了するのは驚き」「属人的になりがちなノウハウを組織全体で活用できる」といった声も聞かれ、Agentforceがもたらす業務変革の可能性に大きな関心が寄せられていました。

さらに、Salesforceはノーコード/ローコードでAI Agentを作成できる「Agent Builder」を用意しており、標準のAgentforceの動作や対話フローを各社の業務に合わせてカスタマイズすることも可能です。

専門的なプログラミングスキルがなくても、自社に最適化されたAgentforceを構築し常時稼働させられる柔軟性は、企業のDX推進において大きな強みでしょう。Agentforceのような自律型AIエージェントを活用すれば、「人とAIが協働する新しい働き方」が現実のものとなりつつあることをデモは示していました。

実際のデモンストレーション動画はこちらからご覧いただけます。

デモでわかる!不動産オフィス事業 x AI活用

AIエージェント「Agentforce」が、CRMやSlack、外部データと連携しながら、人と協働して業務をつなぐ様子を、実際の画面でご紹介します。

未来に向けてSalesforceができること

このセッションを通じて、不動産業界のDX最前線に立つ企業がどのようにデジタルとAIを活用しているか、その一端が垣間見えました。

日鉄興和不動産や森トラストの事例からは、現場の知見とテクノロジーを融合し、組織横断で情報を活用することがDX成功のカギであると改めて感じられました。

DX推進には最新ツールの導入だけでなく、従業員の意識改革やデータ環境の整備といった土台作りが不可欠です。そしてAgentforceのように、テクノロジーの進化は現場の働き方そのものを変えつつあります。人とAIが協調し合う形で業務を進化させることで、不動産業界における「競争力の強化」や「顧客体験の向上」が十分に実現可能だといえるでしょう。

Salesforceは、不動産業界のお客様のDXとAI活用を、「Trusted Advisor(信頼できるアドバイザー)」として支援し、ともに課題を解決していくことを目指しています。

最新テクノロジーの動向や具体的な活用事例に基づいた提案も可能ですので、自社の不動産ビジネスにDXやAIの力を取り入れて業務改革やSFA定着を図りたいとお考えの方は、ぜひお気軽にSalesforceにご相談ください。

私たちは業界知見と最先端ソリューションをもって不動産業界のDX実現を全力でサポートします。

【最新調査レポート】不動産管理の業務課題と不動産DXへの期待感


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