最近クラウドという言葉を耳にすることが増えましたが、「クラウドってなに?」と感じている方も多いのではないでしょうか。
クラウドとは、インターネットを通じて提供されるサービスやリソースを、必要なときに必要な分だけ利用できる仕組みのことです。
これまで、企業は自社でサーバーを購入して維持管理を行うのが一般的でしたが、クラウドの登場により、インターネット上で必要なときに必要なリソースを柔軟に活用できるようになりました。
本記事では、クラウドの基本的な意味や導入のメリット、クラウドサービスを選ぶポイントなどを、IT初心者にもわかりやすく解説します。クラウドサービスを上手に活用したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
クラウドとは?

クラウドとは、簡単に言うと「インターネットを通じて提供されるサービスやリソースを、必要なときに必要な分だけ利用できる仕組み」です。
具体的には、以下のようなクラウド型サービスがあります。
サービス | サービスの概要 | 具体例 |
---|---|---|
クラウドストレージ | インターネット上でファイルを保存・共有できるサービス | ・iCloud ・Google Drive ・Dropbox ・OneDrive |
コミュニケーションツール | オンラインで会話やチーム作業を行うために使用できるサービス | ・Zoom ・Slack ・Microsoft Teams ・Chatwork |
音楽・ビデオストリーミング | インターネットを通じて音楽や動画を視聴できるサービス | ・Apple Music ・Spotify ・YouTube ・Netflix |
このようにクラウドはあらゆる場面で広く活用され、今では日常生活やビジネスにおいて欠かせない仕組みとなっています。
クラウドの種類

クラウドには、主に3つの種類があります。
- SaaS(サース)
- PaaS(パース)
- IaaS(イアース)
どのような目的で利用するかによって、適したクラウドサービスは異なります。それぞれの特徴を理解し、自分の目的に合ったサービスを選びましょう。
SaaS(サース)
SaaS(Software as a Service)は、インターネット経由でソフトウェアを提供するクラウドサービスです。
家に例えるなら、「完成した家に住むこと」に似ています。完成した家を購入して入居するだけで、特別な準備や管理は必要ありません。
つまりSaaSでは、ユーザーはインストールや更新をすることなく、購入後すぐにソフトウェアを利用できます。自由度が低く、使える機能は限られていますが、設定や管理が簡単で、手軽に利用できる点が特徴です。
代表的なサービスには、Google WorkspaceやMicrosoft 365、Salesforceがあり、主に業務の効率化やコミュニケーションをサポートするために使用されます。
以下の関連記事では、実際にSaaSを導入した企業の事例をいくつか紹介しています。SaaS導入のメリット・デメリットについて、事例を通して確認してみてください。
関連記事:SaaSとは?メリット・デメリットと代表例をわかりやすく解説
PaaS(パース)
PaaS(Platform as a Service)は、アプリケーション開発に必要なプラットフォームまでを提供するクラウドサービスです。
家に例えるなら、「家の骨組みまでを提供されて、内装やデザインを自分で決めること」に似ています。つまり、基本的な部分はすでに準備されていて、あとは自分の好みに合わせて自由にカスタマイズが可能です。
PaaSでは、提供されたプラットフォームやツールを使って、自分の思い通りに機能やデザインを開発できる一方で、設定や管理が多少必要です。
代表的なサービスには、Microsoft Azureが提供するApp Serviceなどがあり、開発者向けに柔軟な環境を提供しています。
以下の関連記事では、SaaS・PaaS・IaaSの違いをより詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:PaaSとは?IaaSやSaaSとの違い、クラウドサービスの選び方について紹介
IaaS(イアース)
IaaS(Infrastructure as a Service)は、仮想化されたインフラを提供するクラウドサービスです。
家に例えるなら、「土地だけを提供されて、一から自分で家を建てること」に似ています。好きな家を自分で建てられる点は魅力的ですが、設計や建設、管理をすべて自分で行わなければなりません。
つまり、IaaSは自由度が高く、企業が自社のニーズに合わせてシステムを完全にカスタマイズできる一方で、設定や管理の負担が非常に大きい点が特徴です。
代表的なサービスには、Amazon Web Services(AWS)が提供するAmazon EC2やGoogle Cloud Platform(GCP)が提供するCompute Engineなどがあり、企業は大規模なシステムを構築するために利用しています。
クラウドを導入する3つのメリット

ここでは、クラウド導入の主なメリットを3つ紹介します。
- コストを削減できる
- 管理の負担が軽減する
- どこからでもデータにアクセスできる
クラウドを導入するメリットを把握し、効率的かつ柔軟な業務運営を実現しましょう。
コストを削減できる
クラウドを導入する最大のメリットは、必要なリソースにだけコストをかけることで、支出を削減できることです。
インターネット経由でサービスを利用するため、企業は物理的なサーバーや高価な機器を購入する必要がありません。これにより、初期費用や運用コストを大幅に削減でき、支出を最小限に抑えることができます。
その結果、企業には財務的な余裕が生まれ、他の重要な業務にリソースを分配できるでしょう。
管理の負担が軽減する
クラウドを導入することで、企業はサーバーやシステム管理の負担を軽減できます。
その理由は、サーバーの管理やメンテナンスがクラウドサービスの提供者によって行われるからです。システムのアップデートやセキュリティ対策も自動で実施されます。
これにより、企業はIT管理にかかる時間と労力を削減でき、従業員は本来の業務に集中できるようになります。結果として、業務の効率化が進み、企業は生産性向上を実現できるでしょう。
以下の関連記事では、クラウドを導入して業務効率化を実現した企業の事例を紹介しています。クラウドの導入でどのような効果が得られるのかを、事例を通して確認してみてください。
関連記事:業務効率化とは?具体的なアイデアや便利なツール、成功事例を紹介
どこからでもデータにアクセスできる
クラウドを導入すれば、物理的なサーバーやパソコンに依存せず、場所を選ばずに業務を行うことができます。
これは、クラウド上にデータを保存することで、どこからでもデータにアクセスできるようになるからです。
たとえば、従業員はオフィスにいなくても、自宅や出張先から必要なファイルやアプリケーションにアクセスできます。このような柔軟性により、リモートワークやフレキシブルな働き方が可能となり、企業全体の生産性が向上するでしょう。
また、物理的なデバイスの故障や紛失によってデータが消える心配もないため、安心して業務を行うことができる点もメリットの一つです。
クラウドを導入する2つのデメリット

クラウド導入には多くのメリットがありますが、デメリットも存在します。ここでは、クラウドの主なデメリットを2つ紹介します。
- 自社業務に合わせたカスタマイズが難しい
- 情報漏洩のリスクがある
クラウドを導入する前に、これらのデメリットをしっかり理解しておきましょう。
自社業務に合わせたカスタマイズが難しい
クラウドサービスは、あらかじめ決められた機能を提供しているものが多いため、自社の業務に合わせたカスタマイズが難しいことがあります。
たとえば、特定の業務に特化した機能を組み込みたい場合、クラウドサービスでは対応できないことがあるかもしれません。
しかし最近では、柔軟にカスタマイズ可能なクラウドサービスが増え、自社のニーズに合わせてカスタマイズしたり、機能を追加したりできるサービスも増えています。
情報漏洩のリスクがある
クラウド上にデータを保存する場合、インターネットを経由するため、外部からの攻撃や不正アクセスにより情報が漏洩するリスクがあります。
もちろん、クラウドサービス提供者は強固なセキュリティ対策を施していますが、企業自体も安全なパスワード管理や機密情報の適切な扱いが必要です。
セキュリティ対策が不十分だとデータ漏洩のリスクが高まるため、クラウドを導入する際には十分な注意を払いましょう。
以下の関連記事では、個人情報漏洩の原因やリスク、具体的なセキュリティ対策について詳しく解説しています。セキュリティ対策を検討する際に、ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:個人情報が漏洩する原因とリスクは?具体的なセキュリティ対策を紹介
最適なクラウドサービスを選定する3つのポイント

クラウドサービスの利用は急速に拡大しており、総務省の調査によると、2023年時点で77.7%の企業がクラウドサービスを活用しています。
このような急速な普及に伴い、クラウドサービスを提供する企業も増加してきました。そのため、企業が自社に最適なサービスを選ぶことがますます重要になっています。
クラウドを導入する際は、次の3つのポイントを押さえて最適なクラウドサービスを選ぶことが重要です。
- パートナー企業として信頼できる
- 目的に合ったツールを提供している
- 導入後のサポート体制が充実している
上記3つのポイントを意識することで、クラウドサービスの安定した運用と効果の最大化が可能となります。
出典:「令和5年通信利用動向調査」(総務省)
パートナー企業として信頼できる
クラウドサービスを提供する企業は多くありますが、その中から信頼できる企業を選ぶことが大切です。
企業の規模や過去の実績、顧客からの評価を十分に調査し、信頼性が高く、長期的にパートナーシップを築ける企業を選びましょう。
特に、セキュリティ対策やコンプライアンス遵守の意識が高い企業は、データの安全性確保や法令遵守の実現が容易です。これにより、安定したサービス利用が可能となり、企業は自分たちの大切な情報を安心して預けられます。
目的に合ったツールを提供している
クラウドサービスの選定においては、提供されるツールが自社の目的にどれだけ合致しているかを確認することが大切です。
たとえば、営業活動の効率化を目指す場合には、CRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援システム)などのツールが効果的です。しかし、財務管理や人事管理に特化したERP(統合業務システム)やHRM(人事管理システム)などのツールは、営業活動の効率化には向いていません。
自社の業務に最適なツールを選ぶことで、クラウド導入後の効果がより一層高まり、業務の効率化や生産性向上を実現できるでしょう。
導入後のサポート体制が充実している
導入後のサポート体制が充実しているかどうかは、クラウドサービスを選ぶ際の重要な判断基準となります。
24時間対応のサポートチームやトラブルシューティングの迅速さ、質の高いサポートが提供されているかを確認しましょう。また、定期的なアップデートやシステム改善が行われているかも確認すべきポイントです。
サポート体制が充実しているクラウドサービスを選び、長期的に安定した運用を実現しましょう。
クラウドの活用事例

ここでは、以下のようなクラウドベースのツールを活用した企業の事例を3つ紹介します。
- 顧客管理システム(CRM)
- マーケティングオートメーション(MA)
- コミュニケーションツール
実際の企業事例を通して、どのように業務に活用されているのかを確認し、導入後のイメージを膨らませましょう。
顧客管理システム(CRM)

顧客管理システム(CRM)は、企業が顧客との関係を管理し、営業活動を最適化するために欠かせないツールです。
クラウドベースのCRMを導入することで、顧客情報や取引履歴、問い合わせ履歴を一元管理できます。これにより、営業チームやカスタマーサポートはリアルタイムで情報を共有でき、迅速かつ的確な顧客対応が可能となるでしょう。
パイオニア株式会社は、SalesforceのCRMを導入したことで、テレマティクス事業を中心に、「モノ×コト」の新しいビジネスモデルへのシフトを成功させています。
「Sales Cloud」や「Service Cloud」の導入で、部署間のシームレスな情報連携が可能となり、精度の高いターゲティングと予測を実現しました。特に、KGI/KPIの「バトンタッチ形式」での意識共有により、部署間の連携が強化され、1年で新規顧客受注台数が8倍以上に増加しました。
今後は、さらに「モノ×コト」の価値を進化させ、データに基づいたアプローチを強化し、企業の成長を支える基盤を構築していく予定です。
関連記事:CRMとは?機能やメリット、活用法をわかりやすく解説【事例あり】
マーケティングオートメーション(MA)

マーケティングオートメーション(MA)は、企業のマーケティング活動を自動化するためのツールです。
クラウドベースのMAツールを活用すると、広告やメール配信、Webサイトの分析などを統合的に管理でき、リソースを節約しつつ、ターゲットに合わせた効果的なキャンペーンを実施できます。
殖産ベスト株式会社は、SalesforceのMAツールを活用し、休眠顧客の掘り起こしに成功しています。
「Account Engagement」を活用したMAの導入により、顧客ごとの状態やニーズに合わせてパーソナライズされたコンテンツを配信できるようになりました。週に5パターンのメールマガジンを配信した結果、反響数は2.6倍に増加し、反響のあった顧客に対しては、より迅速かつ効果的なフォローが可能となり、成約率の向上にもつながりました。
今後は、データ分析を強化してマーケティング活動をさらに精緻化し、顧客との長期的な関係を構築するための新しいアプローチを模索しています。
関連記事:マーケティングオートメーション(MA)とは?機能・事例を紹介
コミュニケーションツール

コミュニケーションツールは、チーム間の情報共有をスムーズにし、業務の効率化を実現するための重要なツールです。
クラウドベースのツールを活用することで、部署や拠点を超えたリアルタイムの情報共有が可能となり、迅速な意思決定と企業全体の生産性向上が期待できます。
Mipox株式会社は、Salesforceの「Sales Cloud」や「Slack」を活用することで、社内コミュニケーションを大幅に改善し、情報共有の効率化を実現しました。さらに、社内コミュニケーションの活性化は社員同士の協力を促進し、モチベーション向上にも寄与しています。
今後は、2023年から稼働を開始した「B2B Commerce」や、進行中の「Manufacturing Cloud」の導入を進め、社外との連携強化を目指します。これにより、業務の効率化と企業の成長を支える基盤を構築していく予定です。
関連記事:社内コミュニケーションとは?重要性やアイデア、成功事例などを解説
クラウドとAIを組み合わせてビジネスの意思決定を支援

クラウドとAIを組み合わせることで、企業はより迅速で的確な意思決定を行うことができます。具体的には、クラウドに集められた膨大なデータをAIが分析し、顧客の行動や市場の動向を予測することが可能です。
これにより、企業は従来の経験則や直感に頼ることなく、データに基づいた確かな戦略を立てることができます。
たとえば、SalesforceのAI機能「Einstein」では、顧客データをもとに次の行動を予測し、最適なタイミングでのアプローチを支援します。これにより、企業はマーケティングや営業活動を最適化し、競争力を高めることができるのです。
クラウドとAIを組み合わせれば、効率的で効果的な意思決定が可能になり、ビジネスの成長を加速できるでしょう。
以下の関連記事では、AI導入による効果や企業の取り組みを解説しています。本記事と合わせて確認してみてください。
関連記事:
AI導入のメリット・デメリットは?日本の導入率や手順、事例も紹介
【Salesforce Einstein】Salesforceが開発するAI、Einstein(アインシュタイン)ってなんだ?
クラウドを導入してコスト削減と業務効率化を実現しよう

最適なクラウドサービスを活用することで、コスト削減や業務の効率化が進み、企業の生産性は大きく向上します。
さらに、クラウドとAIを組み合わせることで、データに基づいた迅速かつ的確な意思決定が可能となり、競争力を高めることもできます。
クラウドの導入を検討している企業は、自社のニーズに最適なサービスを選定し、さらなるビジネスの成長を実現しましょう。
IT最新事情 第3版
4,000名以上のITリーダーへの調査で得た、AI・自動化・セキュリティなど最新のトレンドをご覧ください。
