エンゲージメントとは｜意味や種類、向上させる方法を解説

エンゲージメントは、企業の成長と成功に欠かせない要素です。顧客や従業員がどれだけ積極的に関わり、企業の活動に参加するかが競争力を左右します。しかし、エンゲージメントの向上には、適切なアプローチを見つけ出す工夫が必要です。

本記事では、エンゲージメントの基本的な概念や種類を解説するとともに、効果的に向上させるための方法を紹介します。顧客と従業員の関与を深め、企業の持続的な成長を実現しましょう。

エンゲージメントとは

エンゲージメントとは、「誓約」や「約束」を意味する英単語であり、深いつながりや関係性をあらわす言葉です。ビジネスにおいては、企業と従業員の関係性、または企業と顧客の関係性を指します。

たとえば、従業員におけるエンゲージメントは、従業員が企業に対して愛着をもち、積極的に貢献しようとする意欲のことです。一方で顧客とのエンゲージメントは、企業と顧客の結びつきの強さをあらわし、売上や利益の増加に直結します。

また、人事におけるエンゲージメントは、従業員の企業への愛社精神やコミットメントです。エンゲージメントを高めることにより従業員と企業の絆が強化され、企業価値の向上が期待できるでしょう。

エンゲージメントの種類

基本的に、エンゲージメントには2つの種類があります。

それぞれ詳しく解説します。

従業員エンゲージメント

従業員エンゲージメントとは、企業と従業員の間に築かれる信頼関係です。従業員エンゲージメントは高まるほど企業経営によい影響をもたらすため、現在では多くの企業が積極的に従業員エンゲージメントの向上に取り組んでいます。

従業員エンゲージメントは、仕事に対する意欲を示す「ワークエンゲージメント」や、行動の推進力となる「モチベーション」とは異なり、より包括的な概念です。企業と従業員の持続的な成長を支える基盤ともいえるでしょう。

従業員エンゲージメントについては以下の記事で詳しく解説しているので、こちらもあわせてチェックしておきましょう。

従業員エンゲージメントとは？ビジネス上の意味や測定方法、高める方法を解説

従業員満足度との違い

従業員満足度とは、職場環境や待遇に対して従業員がどれだけ満足しているかを示す指標です。企業の業績と直接的にリンクしているわけではなく、満足度が高いからといって必ずしも企業の実績が向上するとは限りません。

従業員満足度は、従業員エンゲージメントの要件である働きやすさに寄与しており、向上させることで不満足な状況からの脱却につながります。従業員満足度の向上は、従業員エンゲージメント向上の前提条件といえるでしょう。

顧客エンゲージメント

一方、顧客エンゲージメントとは、企業と顧客との親密度や関係の深さを示す言葉です。顧客が企業に対して好意的な印象をもち続けることで、製品の購入やサービスの利用といった購買行動が促進されます。

顧客エンゲージメントの向上は売上に直結するだけでなく、顧客からの改善要望や貴重な意見を得られる点も特徴です。顧客エンゲージメントが高まると価格競争に巻き込まれにくくなるほか、収益の安定化や新規顧客の確保などプラスの効果も期待できます。

顧客エンゲージメントについては以下の記事で解説しているので、ぜひこちらも確認してみてください。

顧客エンゲージメントとは？向上させるポイントや成功事例を解説

エンゲージメントが重要な理由

企業にとってエンゲージメントが重要になる主な理由は、以下の2点です。

• 人材を確保するため
• 企業価値を向上させるため

ひとつずつ解説します。

人材を確保するため

エンゲージメントは、人材確保において極めて重要な要素です。少子高齢化により労働力不足が深刻化するなか、企業は人材の確保が大きな課題となっています。とくに近年では転職が一般化し、優秀な人材ほど待遇のよい企業に移ってしまう傾向です。

人材流出を防ぎ、労働力を確保するためには、単なる報酬や待遇に依存したつながりではなく、企業への愛社精神を育てる取り組みが欠かせません。これにより、離職率の低下や優秀な人材の定着が実現し、持続的な成長を支える基盤が築けるでしょう。

企業価値を向上させるため

企業価値の向上にも、エンゲージメントが重要な役割を果たします。

顧客エンゲージメントは購買行動を促進し、直接的な利益増加につながる要素です。一方で従業員エンゲージメントは企業への貢献意欲を高め、生産性の向上を通じて間接的に利益を後押しします。

企業価値を最大化するためには、顧客エンゲージメントと従業員エンゲージメントの両方をバランスよく向上させることが欠かせません。この両輪がかみ合うことで、顧客や従業員に選ばれ続ける企業へと成長できるでしょう。

エンゲージメントを向上させるメリット

エンゲージメントを向上させることで得られる主なメリットは、以下の5つです。

• 離職率が低下する
• 人材不足の解消につながる
• 企業の生産性が向上する
• リピート率が高まる
• SNSでプロモーション効果が得られる

メリットを把握し、自社にどのような影響をもたらすかをイメージしていきましょう。

離職率が低下する

エンゲージメントを向上させることで企業と従業員の間に信頼関係が生まれ、離職率の低下が期待できます。愛着をもって働ける企業であれば「この企業で長く働きたい」と考える従業員が増え、結果として豊富な経験やノウハウの蓄積にもつながるでしょう。

さらに、離職率の低下により、採用や研修にかかるコストを削減できる点もメリットです。熟練者の定着を促進することで、優秀な人材の確保や早期退職の防止といった効果も得られるでしょう。

人材不足の解消につながる

従業員エンゲージメントの向上は、人材不足の解消にも寄与します。エンゲージメントが高い従業員は自身の職場を知人に勧める傾向があり、社員紹介による「リファラル採用」が期待できます。これにより、コストを抑えつつ効果的に人材の確保が可能です。

また、従業員エンゲージメントが高いと学生や求職者からも魅力的な職場として認識されるため、新卒採用においても有利に働きます。これらの要素が組み合わさることで、長期的な人材不足の解消に役立つでしょう。

企業の生産性が向上する

従業員エンゲージメントが向上すると、企業の生産性も大きく改善します。従業員が企業に対して高いモチベーションをもち続けることで、長期的に高品質な製品やサービスの提供が可能です。

この結果、顧客エンゲージメントが強化され、最終的には継続的な利益増加と企業の競争力向上が期待できます。

リピート率が高まる

顧客エンゲージメントが向上すると顧客の企業に対する信頼感が強まり、製品やサービスのリピート率が高まります。継続的に製品やサービスを購入してもらうことで、顧客獲得コストを削減できるでしょう。

さらに、エンゲージメントの高い顧客は競合他社に流れるリスクが低く、ロイヤルティの強化にもつながります。長期的な顧客価値を最大化するための重要な戦略となるでしょう。

リピート率を上げるための施策については以下の記事で解説しているので、こちらもあわせて確認してみてください。

リピート率とは？計算方法やリピーター率との違い、上げるための施策を解説

SNSでプロモーション効果が得られる

SNSを使ったプロモーションによって、有用なデータの取得やエンゲージメントの追求が可能です。とくに、顧客エンゲージメントはSNSマーケティングにおいて重要な要素であり、企業と顧客の共感やつながりがビジネスに大きな影響を与えます。

さらに、エンゲージメント率やエンゲージメント数を高めることで、新規顧客の獲得にも貢献するでしょう。ユーザーの反応が可視化されることで、エンゲージメント向上につながる施策が明確になり、改善策を見つけやすくなります。

従業員エンゲージメントを高める方法

従業員エンゲージメントを高める主な方法は、以下の3つです。

• アンケートやヒアリングで現状を把握する
• 企業理念やビジョンを発信する
• 働きやすい職場環境を整える

ひとつずつ解説します。

アンケートやヒアリングで現状を把握する

現状を把握するためには、アンケートやヒアリングの実施が効果的です。従業員が仕事にやりがいを感じているか、仕事をするうえで何を重視しているのかなどを調査し、意識やニーズを把握しましょう。

従業員が現時点で仕事に対してどのような意識をもち、企業にどのような印象を抱いているのかを理解することは重要です。全体的なバランスを重視しつつ、個々の従業員が働きやすい環境づくりに努めることが、エンゲージメント向上の一歩となります。

企業理念やビジョンを発信する

従業員エンゲージメントで重要なのが、企業理念への共感です。企業の方向性や目指しているものに対し、従業員から共感を得ることで企業への愛着が深まります。

そのためには、企業理念の積極的な発信と周知が不可欠です。きちんと従業員に企業理念を発信していき、浸透させましょう。

働きやすい職場環境を整える

従業員エンゲージメントの向上には、働きやすい職場環境を整えることも大切です。具体的には、以下の取り組みが重要となります。

• ワークライフバランスの実現
• 評価制度の見直し
• 社内コミュニケーションの活発化
• 教育や研修の実施

すべての従業員が健全に働けているかを確認し、適材適所での配置を心がけましょう。個々の能力が最大限に発揮されることで、仕事へのやりがいや誇りを感じ、エンゲージメントの向上につながります。

ワークライフバランスの定義については以下の記事で解説しているので、こちらもチェックしてみてください。

ワークライフバランスとは？定義や実現に向けた5つの取り組みを解説

顧客エンゲージメントを高める方法

一方で、顧客エンゲージメントを高めるための主な方法は、以下の3つです。

• 顧客データを集める
• カスタマージャーニーマップを作成する
• アフターフォローをおこなう

ひとつずつ詳しくみていきましょう。

顧客データを集める

顧客エンゲージメントの向上には、まず顧客のデータを集めることが重要です。近年、顧客のニーズや購買行動のプロセスは複雑化しており、直感や経験だけでは目的通りの効果を得ることが難しくなっています。

顧客の状況や心理を正確に理解するには、客観的なデータが必要です。お客様アンケートや販売データなどを数値化し、分析することで顧客目線の情報を得られます。

また、実際に顧客を観察したり、インタビューしたりして、数字だけでは捉えきれない情報も拾い上げましょう。

カスタマージャーニーマップを作成する

獲得した顧客データをもとにカスタマージャーニーマップを作成し、最適な施策を立案していきます。カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品を認知してから購買にいたるまでのプロセスを図式化したものです。

各プロセスごとの顧客心理や行動を分析することで、問題点や課題を洗い出し、解決策を考案できます。顧客エンゲージメントのゴールを事前に設定しておくことで、最終的に提供したい顧客体験が明確になり、改善すべきポイントを把握できるでしょう。

カスタマージャーニーについては以下の記事で解説しているので、こちらもあわせて確認してみてください。

【活用事例あり】カスタマージャーニーとは？考え方や作り方を解説

アフターフォローをおこなう

顧客エンゲージメントは商品やサービスを購入してもらったら終わりではなく、アフターフォローも重要です。保証サービスやカスタマーサポートを整備することで、顧客との間に信頼関係が構築されます。

また、購入後のサポートを通じて企業への信頼を深めることで、結果的に顧客ロイヤルティの向上にもつながります。適切なアフターフォローは、顧客からのポジティブなレビューや紹介を促進し、企業やブランドの認知度向上にも大きく貢献するでしょう。

エンゲージメントの向上にはAIの活用も効果的

エンゲージメントを向上させるためには、AIの活用が非常に効果的です。とくに従業員エンゲージメントにおいては、AIを活用することで人材育成の最適化や社内Q&Aの自動化が実現し、業務負担の軽減や生産性の向上に大きく貢献します。

Salesforceの「Marketing Cloud Engagement」は、AI対応のエンゲージメント支援ツールです。膨大な顧客データをAIが整理・分析し、従来のマーケティング手法をよりスマートかつ効果的に進化させます。

このツールは、顧客データをもとにパーソナライズされたメールやコンテンツの自動生成が可能です。ほかにも、顧客の購入確率や解約リスクを予測したり、離脱防止のための適切なアプローチの提案したりと、顧客エンゲージメントの強化に役立つでしょう。

以下の記事では、SalesforceのAI「Einstein」について詳しく紹介しています。エンゲージメントにAIを活用したいとお考えの方は、ぜひこちらもチェックしてみてください。

【Salesforce Einstein】Salesforceが開発するAI、Einstein（アインシュタイン）ってなん持だ？

エンゲージメントを高めて企業の競争力を強化しよう

エンゲージメントを高めることは、企業の競争力を強化するうえで欠かせない要素です。従業員や顧客のエンゲージメントが高い企業は、モチベーションや満足度が向上し、生産性やサービス品質が飛躍的に向上します。

具体的には、従業員の意欲を引き出す職場環境の整備や、顧客との信頼関係を深めるコミュニケーション戦略が重要です。エンゲージメントを強化する取り組みを通じて、組織全体の成長と持続的な競争力を実現しましょう。

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