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第4次産業革命のチャンスをつかむ 2020年へ、いま必要な経営のアクションとは? Vol.2

第4次産業革命のチャンスをつかむ 2020年へ、いま必要な経営のアクションとは? Vol.2

世界経済フォーラム(World Economic Forum)発行の2016年のレポート「The Future of Jobs(仕事の未来)」の中から、私たちのビジネス環境にどのようなチャンスがあり、どのように経営のアクションを起こすべきかを、ご紹介したいと思います。

世界経済フォーラムがまとめた「The Future of Jobs(仕事の未来)」。Vol.1では第4次産業革命におけるビジネス環境の大変革、特に仕事の未来、人材と雇用についての変化と、それに備えることでの大きなビジネスチャンスが生まれることをご紹介しました。今回は、その変化に対応しチャンスをつかむために、企業経営における具体的なアクションについてご紹介します。

短期的な4つのアクションと長期的な3つのアクション

雇用シーンの変化についての議論は、将来の職業に無限の可能性を見出し、生産性向上と労働者のルーティーンワークからの解放を予測する人々と、大量の仕事が代替され、雇用機会が奪われると予測する人々に二分されます。その両方に可能性があり、未来は私たちの行動にかかっています。

第4次産業革命の加速に対応し、失業者や格差社会の拡大、消費者ベースの縮小といった問題に歯止めをかけるには、短期的な移行とともに将来必要なスキルを身に着けた人材育成のためのアクションが必要になります。ここでは4つの短期的アクションと3つの長期的アクションを提案します。

求められる人材の変化に対応する短期的なアクション

短期的なアクションとしては、第一に人材機能の再構築が求められています。人材の動向を先読みして行動するには、必要なスキルの変化に迅速に対応しなければなりません。分析ツールを利用して人材の動向やスキルギャップを検知し、ビジネスやイノベーション・人材マネジメント戦略を統合して、利益を生み出す機会を最大化する人材機能の仕組みが必要です。

第二のアクションは、データ分析の活用です。企業や政府は、人材戦略や人材マネジメントのために予測データと計画指標を中心とする新しいアプローチを作る必要があります。

そして第三には、人材の多様性を活かすアクションが求められます。ビジネスにおける多様性の利点が研究で立証され、重要な専門職ポストの採用が2020年までにより難しくなると予測されている中、多様性の問題の対処にも変革が必要です。客観的な評価を実施しバイアスのかかった採用広告・採用フローを特定するなど、テクノロジーとデータ分析は労働力の平等性を推進するのに使えるでしょう。

さらに第四には、フレックス制度とオンライン人材プラットフォームの活用です。物理的・組織的な垣根はあいまいになり、企業は労働者の仕事や管理体制に対してもっと臨機応変にならねばなりません。デジタル人材プラットフォームを通して、企業はフリーランサーや個人事業主と遠隔で仕事をすることが増えるでしょう。デジタルフリーランス組合や労働法制の改正も必要です。

教育やコラボレーションを促進する長期的なアクション

長期的なアクションとしては、第一に教育システムの見直しが欠かせません。現行の教育システムのほとんどが20世紀の慣習を引き継いだサイロ化されたトレーニングで、人材と労働市場問題の解決を阻んでいます。企業は政府や教育機関と密に協力して21世紀の真のカリキュラムがどうあるべきかを模索しなければなりません。

第二には、生涯教育の奨励も求められます。若者の人口割合が減少していく中、競争で生き残るには教育制度を見直し将来必要なスキルを子供たちに身に着けさせるだけでなく、生涯教育と人材の生涯にわたるスキルアップが不可欠です。政府と企業は協働し個々人がスキルアップ講習を受ける時間やモチベーション、そして手段を開発する必要があるでしょう。

さらに第三には、産業や官民の垣根を超えたコラボレーションも重要です。それぞれの専門領域を補い合う複数セクターでのパートナーシップやコラボレーションは仕事やスキルの課題を効率的に解決するうえで不可欠となるでしょう。企業・産業内外の大胆なリーダーシップと戦略的なアクションが必要となります。

チャンスをつかむアクションと、経営戦略とのギャップ

求められる短期的、長期的なアクションについて理解は深まったとしても、何を優先すべきかに迷いはあるはずです。「The Future of Jobs(仕事の未来)」の調査によると、人材戦略として最も支持率が高かったのは人材のスキルアップへの投資でした。女性やマイノリティーの採用、モビリティやジョブローテーションの支援も上位にあがりました。これらの戦略に加え、短期契約労働者・本社からの派遣人材の採用に対する姿勢には、人材戦略や変化のマネジメントの重要さをトップが認識し、戦略に自信のある企業とそうでない企業との間に大きな差がみられました。

一方、ベテラン社員が蓄積した経験の活用や年齢にとらわれない雇用など、有効なアプローチの多くが現在は活用されていません。産業内外でのコラボレーションに対する消極的な姿勢・公共機関や教育機関とのパートナーシップにも向上の余地がありそうです。

「The Future of Jobs(仕事の未来)」は、次のようにレポートの最後を結んでいます。

「企業経営は教育・スキル・雇用・コラボレーションへのアプローチを変える必要があり、企業は出来合いの人材を消費するのではなく、人材開発や将来の人材戦略を成長の中心に据えるべきである」。そして「政府も、教育モデルを根本的に見直し、労働法制とカリキュラムの変化を達成させなければならない。」と。 第4次産業革命のチャンスをつかむため、我が国においても政府主導によるさまざまな取り組みがすでに進められています。企業と政府の両者が互いに支えあうことが大切であり、そうすることで来るべき大きな変化に対応し、これからのグローバル社会を生き抜く力となります。 日本全体が世界の国々に負けない、その大きなチャンスの波に乗り遅れないように、いまこそ私たち日本の企業は短期的、長期的に、人材戦略に対する必要なアクションを起こす時なのではないでしょうか。

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