目次
広島SXフォーラムとは
セールスフォース・ジャパンでは、地域の企業や行政、金融機関など多様なステークホルダーとともに、地域の未来について考えるイベント「SXフォーラム」を全国で開催しています。
SX(Sustainability Transormation)フォーラムとは、人口減少や人材不足などの課題に対し、地域貢献と事業成長のヒントを共有する場。今回はその広島版で、テーマは「地域貢献と事業成長の両立:デジタルで拓く、広島の持続可能な未来〜」でした。会場となったヒルトン広島には、行政、金融機関、製造業、地域企業のリーダー 130人が集まりました。
当日のプログラムは、以下の4部構成です。
基調講演・パネルディスカッション
広島県下の課題とDXによる打開策
特別講演
なぜ地方は選ばれないのか?― 女性・若者・DXで再設計する地域の競争力
事例講演
広島銀行の業務におけるデジタルの取り組み
事例講演
広島発・170年企業の進化
― 広川グループがSlackで挑むDX変革の実践

基調講演・パネルディスカッションで語られた「広島の現実」
基調講演には、広島県DX審議官の石井昌博氏、北川鉄工所の松葉範仁氏、ひろぎんITソリューションズの柳田剛氏、株式会社Surpassの石原亮子氏が登壇しました。
石井氏は、広島県の一般行政部門職員数がこの20年あまりで約3割減少する一方、行政需要は高度化・複雑化している現状を説明。その解決策の一つとして、県庁内に設置した「広島AIラボ」や、県と市町が共同でデジタル人材を採用・育成する「DXShip(デジシップ)ひろしま」の取り組みを紹介しました。
行政の取り組みに続いて行ったパネルディスカッションでは、企業の現場で起きている変化や課題へと議論が移りました。
その中で、北川鉄工所の松葉氏は「トップが覚悟を持ち、現場と同じ目線で変革を推進することが重要」と語ります。同社ではSlack、Salesforce、MotionBoardを連携させ、現場で生まれる情報をリアルタイムに共有・可視化する仕組みづくりを進めています。
DXの目的はシステム導入そのものではなく、「市場や顧客とのつながりを強化し、価値創造に時間を使える組織をつくること」だと語りました。
また、ひろぎんITソリューションズの柳田氏はDXを支援する立場から「なぜDXが必要なのかを現場が腹落ちして理解することが成功の条件」と強調しました。
システム導入そのものではなく、人と組織文化の変革こそがDX成功のカギであることが改めて示されました。

なぜ地方は若者や女性に選ばれないのか。 DXで強化する地域競争力
続く特別講演には、元内閣総理大臣補佐官(賃金・雇用担当)の矢田稚子氏が登壇しました。
矢田氏は、広島県が若年層の転出超過率で全国ワースト水準にある現状を示しながら、その背景にある構造的な課題を解説しました。
- 根強いアンコンシャスバイアス 「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」という性別役割分担意識の古い価値観が地域や職場に強く残っている
- 希望する仕事や能力を発揮できる場の不足 若い女性が東京圏などへ転出する理由の上位には、「希望する仕事が見つからない」「自分の能力が発揮できそうにない」といった就業環境への不満が挙げられている
- キャリア形成の障壁 広島県は女性の管理職比率が低い水準(47都道府県中38位)にとどまっており、女性の昇進機会への不平等な実態が若者の流出を招いている
- 男女間の賃金格差 男女の賃金格差が大きい地域ほど、待遇の良い都市部へと若い女性が流出している
これらの課題によって若い女性の流出が進むことで、地域に未婚男性の比率が高まり、少子化に歯止めがかからず負の連鎖(地域経済の持続性低下)に陥っている可能性があると警告しています。
講演で繰り返し語られたのは、「女性活躍は社会課題ではなく経済政策である」という視点。全国には、追加で労働供給を望む女性が約310万人存在するとされており、女性が能力を発揮できる環境づくりは、人手不足解消だけでなく地域経済成長の重要なカギと語りました。
講演では、Salesforceスキルの習得を通じて地方女性のキャリア形成を支援する「TECH WOMAN®」の取り組みも紹介されました。
広島県三原市で同プログラムに参加した卒業生も登壇し、自らの経験を共有。卒業生たちのリアルな体験談からは、デジタルスキルが新たなキャリアの選択肢を生み出していることが伝わってきました

地域経済への貢献と事業成長を、デジタルで両立する
あなたの会社の成長が、地域の未来をつくる。「地方創生2.0」から読み解く、地域中堅企業のための地域と事業の課題解決ガイド
広島銀行が進める「顧客接点変革」とは
事例講演では、ひろぎんホールディングスの以南雄佑氏が登壇しました。
同社では、顧客データを統合するCDPの活用、Tableauによるデータ可視化、Salesforceを活用したNext Best Actionの実現を推進しています。
以南氏は、「アプリ利用者数が店舗来店客数の2.5倍に達している」と紹介し、顧客接点のデジタルシフトが急速に進んでいる現状を説明。そのうえでで、デジタル化の目的は効率化ではなく、顧客との関係性をより深めることにあると強調しました。
データとAIを活用しながらも、地域金融機関として培ってきた信頼をいかに次世代へ引き継ぐか。広島銀行の取り組みは、地域に根付いた伝統企業のデジタル活用と顧客との信頼関係を両立するヒントを示していました。

「管理から対話へ」170年企業が実践したDX変革
最後のセッションは、広川グループによるDX変革事例です。創業170年を迎える広川株式会社の廣川正和氏は、冒頭でこう語りました。
「私たちは一度、完全に失敗しました」
Salesforceを導入した当初、同社ではシステムを管理のためのツールとして運用していました。しかし現場との距離が広がり、活用スコアは30点まで低下したといいます。
そこから同社が掲げたのが、「管理から対話へ」という考え方でした。
Slackをコミュニケーションの中心に据え、社長自ら現場の投稿にリアクションを送り続けることで、称賛と対話の文化を醸成。結果として活用スコアは90点へ向上し、商談件数も大きく増加しました。
「DXはツール導入ではなく、組織文化の変革である」という廣川氏の言葉に、会場では深くうなずき、熱心にメモを取る参加者の姿が何度も見られました。170年企業のリアルな苦悩と挑戦の物語は、この日一番の共感を生んでいました。

【広川グループ】
Slack Sales Elevateを活用して導入以前に比べて商談件数が2.5倍に
「商談管理の入力が簡単になり、その内容がみんなに通知される。同じ目的に向かって進んでいる一体感が醸成され、商談の入力率がさらに増える好循環になりました」
人口減少時代の成長戦略としてのDX
フォーラムを通じて、どの登壇者も「人材不足」を前提に、どのようにテクノロジーと向き合うかに焦点を当てていました。
人を増やすのではなく、一人ひとりがより高い価値を生み出せる仕組みをどうつくるのか。行政、金融機関、事業会社、それぞれ立場は異なっても、DXを通じて目指している方向は共通していました。広島で交わされた議論は、同様の課題を抱える全国の地域や企業にとっても、多くのヒントを与えるものとなりました。
今後もセールスフォース・ジャパンは、地域の皆さまとともに持続可能な成長のあり方を考えるSXフォーラムを各地で開催予定です。次回は三重県四日市市で開催いたします。










