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【アーカイブ配信開始】博報堂・嶋浩一郎氏など登壇。「マーケ×AIエージェント」を考えた1day

先日開催されたマーケティング関連イベント「Agentforce Innovation Day for Marketing & Commerce」の注目セッションの一部を紹介します。

マーケティングの未来を考察するイベント「Agentforce Innovation Day for Marketing & Commerce」では、マーケティング分野のデジタル変革やAIエージェントがもたらす業務革新の最新事例などを紹介しました。本記事では、とくに注目度が高かった7つを紹介します。詳細はぜひアーカイブ映像をご覧ください。

Pick up session 1

【変わるワークスタイル】AIエージェントがマーケターの月曜日を変える

最初のピックアップセッションは、基調講演。セールスフォース・ジャパンの製品統括本部でDirector、Head of Marketing Cloudを務める島田崇史が、今年6月に米シカゴで開かれたマーケティングイベント「Connections」で発表された「エージェントマーケティング」がもたらす変革を語りました。

島田は冒頭、「iPhone」がユーザー数1億人に達するまで2年以上かかったのに対し、「ChatGPT」はわずか2か月で達成したことを例に挙げ、AIの急速な浸透を強調。そのうえで「エージェントマーケティングは、One to Oneマーケティングの常識を再定義するでしょう。エージェントマーケティングで、『体験』『コミュニケーション』『システム基盤』の3つが進化し、従業員向けと顧客向けそれぞれでAIエージェントが躍動します」と説明しました。

島田は、AIエージェントは「マーケターの月曜日を変える」と表現。「これは、AIエージェントが土日も働くようになり、月曜日に出社したマーケターがすぐに創造的な業務に集中できる世界を意味します」

一方で顧客体験の変化も言及。「顧客は、信頼できるAIエージェントを介して情報を得られるようになり、Webサイトを“歩き回る“必要がなくなるでしょう。AIエージェントと顧客との対話で生まれる『エージェント体験データ』が、新たな競争力の源泉となるはずです」

この基調講演では、Connectionsの発表を実際に聞いたユーザー企業にも登場いただきました。

LINEヤフーの小林菜採・コーポレートIT統括本部 ITプラットフォーム本部SFA/CRM部MarketingCloud利用推進プロジェクト担当は、「SalesforceのAIエージェント『Agentforce(エージェントフォースは、業務の効率化にとどまらず、人の意思決定や価値創造に直接貢献する存在になると感じました。そうなれば、マーケターには“問いの質”がより一層求められるようになるでしょう」と語りました。

また、HUMAN MADEの木原昌俊・経営企画部システムデザインは、「Agentforceによって作業に追われる状態から脱し、企画や需要予測に注力できるようになるのではないかと期待を抱いています」と述べました。

アーカイブ映像では、本セッションの全内容を視聴でき、紹介した内容以外にも大手自動車メーカーを例に、従業員体験と顧客体験の変化を示したデモンストレーションの内容もご覧いただけます。

【基調講演】
本気のAI改革の幕開け
ーデジタルの未来が、ここから動き出すー

Pick up session 2

【嶋浩一郎×パルコ草刈】「AI時代のブランド」を問う

2つ目のピックアップは、博報堂の嶋浩一郎・執行役員エグゼクティブクリエイティブ・ディレクター(博報堂ケトルファウンダー)と、パルコの草刈洋・宣伝部エキスパートによるAI実装が進む令和のマーケティングについての対談です。

クリエイティブにおけるAI活用をポジティブに捉えているという草刈氏は、2023年の渋谷パルコ50周年キャンペーンを振り返り「『伝統と革新』を広告テーマにし、そこで生成AIを活用したのですが、当時の技術ではパルコの広告にふさわしいクオリティを担保できるかがわからなかった」と当時の葛藤を明かしました。実際の制作では、約1000枚の画像を生成。選別する過程でAIの可能性と、人間の審美眼の大切さを実感したといいます。
 
続けて草刈氏はAIの目覚ましい進化についても話し「2023年は生成AIを使うこと自体が目的でしたが、2024年は当たり前にAIを使ってCMを作っています。この1年で急速な変化を実感しました」と語りました。

一方、嶋氏はコミュニケーションの変化について言及。「インターフェースが検索から会話へ変化し、AIと対話できるようになると、企業と生活者の距離感が変わってきます。『AIDMA』や『AISAS』といった既存のマーケティングの考え方がディスラプトされる可能性が高いでしょう」と、マーケティング手法のパラダイムシフトを指摘しました。
 
さらに嶋氏は、「全てのニュースを読んでいるAIエージェントより、『BRUTUS』の記事だけを全て読んでいるAIエージェントと話すほうが会話は絶対に楽しいはず」と、AIエージェントの個性がマーケティングに与える影響も語りました。

後半の話題は、「AI時代のブランドづくりはどうあるべきか」について。詳細は録画映像をぜひご覧になっていただきたいですが、パルコの草刈氏は過去手がけてきたクリエイティブを振り返りながら、AI時代でも不変的なクリエイティブ思想や嶋氏のカリフォルニアロールや焼肉を例に、クリエイターが重要視すべきことなどを語っています。

令和マーケティングのジレンマ

「宣伝は嫌われ者なのか」AIエージェント時代を生き残る、ブランド企業とは?

Pick up session 3

【Netflix】究極のパーソナライズを実現するレコメンド

3つ目は、Netflix Japanの竹田珠恵・Product Discovery and Promotionとディアワンダーの前刀禎明代表取締役CEO&CWOとの対談です。

竹田氏は、まず「Netflix」のレコメンデーションエンジンについて言及。「Netflixはユーザーをセグメンテーションしていません。国籍や地域、年齢、性別といったユーザー情報を一切取らず、個々の視聴履歴と行動データだけでレコメンドしています」と説明しました。

作品の見せ方についても高度な最適化が行われているといいます。たとえば「新幹線大爆破」では12種類のアートワークを作成し、視聴者の傾向に応じて最適なクリエイティブを表示。また、相撲を題材にしたドラマ「サンクチュアリ」のアートワークが、NHK中継と同じ画角のものが人気だったという分析も共有されました。

「ホラーを見ている人は、35歳以上の恋愛リアリティショーを見る確率が高い」という意外な発見も紹介。結果として、意図していない映画との出会いが起こっているようです。
 
対談のトピック「AI活用が当たり前の時代、マーケティング組織はどう進化するか」に移ると、竹田氏はNetflixがAIを積極的に取り込む組織文化であることを説明しました。

クリエイティブ部門でのAI活用は当初抵抗があったものの、徐々に変化。「AIを使ったクリエイティブの社内コンテストを実施し、実際に作らせてみることで『ここまでできるんだ、使わない手はない』と反省するデザイナーもいました」と語りました。
 
前刀氏は「AIは、PoCを3か月もかけて実施していら、試したこと自体が古くなってしまうので悠長にやっている場合ではありません。また、他社のユースケースを待っているようでは、AI導入が遅れてしまいます。Netflixではスピーディに試しているのですか」と質問。竹田氏は「すぐに取り組んでいます。不完全な状態でも進めることが大事」と語りました。

そのほか竹田氏は、マーケティングにおけるAI活用のポイントも持論を披露してくれました。アーカイブ映像でチェックしてみてください。

マーケティング組織が AIを実装し、進化する実践論

Pick up session 4

【Marketing Cloud Next】次世代マーケ基盤の全貌

4つ目は、基調講演を踏まえたBtoCマーケティングにフォーカスしたセッションで、島田が再度登壇し、次世代マーケティング基盤「Marketing Cloud Next」について、最新事例を交えて解説しました。

デモンストレーションでは、セールスフォース・ジャパンのソリューション統括本部Specialist & Architect本部でソリューションエンジニアの小林祐也が、架空のアウトドア小売企業を例に、BtoCマーケティングがどのように変わるのかを提示。AIエージェントが自然言語での問いかけに対し、即座に結果を分析して投資配分を最適化する様子を示しました。

セッションの後半は、ビッグローブの中川圭子・執行役員CMOを招き、島田との対談を実施。中川氏はConnectionsでの体験を振り返り、「これまでAIは人間を支援する位置づけで使われてきましたが、Connectionsで語られていたAIは自律して行動するものです。いかに優秀なAIエージェントを育成できるかが非常に重要になると感じました。」と話しました。

また、中川氏は通信業界におけるAIエージェントの役割について「コールセンターにおいて、コスト効率よく、お客さまとのコミュニケーションの質をどれだけ向上できるかがカギになります」と語りました。特に、光回線市場もモバイル市場と同様にチャーンしやすい市場になってきており、「会社に対する信頼をいかに獲得していくかが重要」と強調しました。

その業務、Agentic Marketingでここまで進化する

AI時代のマーケターが担う“創造と対話”の新しい仕事

Pick up session 5

【富士通】設定、配信だけのMAじゃない。Marketing Cloud Nextの最新事例 

5つ目は、Marketing Cloud Nextをいち早く採用した富士通の事例セッションです。

富士通の塩田好伸・クラウド&ビジネスアプリケーション事業本部Salesforce事業部シニアディレクターが登壇し、ユーザーの立場で得た知見を紹介しました。

富士通のSalesforce製品のサポートセンターは2025年1月にAgentforceを導入。Salesforceを利用するユーザーから寄せられる問い合わせの約15%をAgentforceが解決。そのほかを人が対応する体制を確立しています。
 
塩田氏は「富士通のサポートデスクは単なる問い合わせ対応にとどまらず、Salesforceをより効果的に使っていただくためのサポートをしたいと思っています。年3回のアップデートを、お客さま一人ひとりの環境に合わせて届けたいと考えました」と、Marketing Cloud Nextの導入に至った理由を説明しました。
 
続いて、「Agentforce for Marketing」がもたらす効果について、マーケティング部門向けのAIエージェント導入をサポートしているtoBeマーケティング小池智和代表取締役CEOが語りました。

そのうえで、富士通の福井麻里奈・クラウド&ビジネスアプリケーション事業本部Salesforce事業部マネージャーが、Marketing Cloud Nextの活用事例を詳しく説明。

「『Data Cloud』に周辺システムのデータを集約し、配信リストの作成を条件を選択するだけで完了できるようになりました。また、キャンペーンメールの作成時間が平均30分から約5分に短縮されました」と具体的な成果を紹介しました。

今後の展望について塩田氏は、「Service Agent×Marketing Agentの連携で、最終的には契約手続きのサポートまで実現したいと考えています」と、より高度な自動化への意欲を示しました。
 

Pick up session 6

【大塚倉庫】FAX&電話での受注処理から脱却した秘訣 

6つ目のテーマは、「BtoBコマースプラットフォーム」。まずはセールスフォース・ジャパンの製品統括本部コマースクラウド本部でアカウントエグゼクティブを務める筒井啓文が、BtoBの取引におけるEC化の課題を説明。

そのうえで、大塚倉庫の犬伏良介氏・テクノロジー本部シニアディレクターが、会社の存続をかけたDXの軌跡、進め方のポイントを紹介しました。

同社では「Digitize or Die」というメッセージを全社で共有し、デジタル化を推進しなければ10年先に会社が存続できないという危機感を持って改革に臨んだといいます。
 
デジタル化が遅れている医薬品業界の物流を担う同社において、受注業務で最大の課題となっていたのが、FAX受注および電話受注。年間150万件の約35%に相当する45万件を人の手で入力して処理していました。
 
そこで「Salesforce B2Bcommerce」を活用し、Web受注システムを構築。導入効果について犬伏氏は「目標の80%を超える90%、5600件のFAX受注をなくすことに成功しました」と説明。削減された業務の人員は、新規メーカーの受注業務にキャリアを転換し、新しい売上の獲得で活躍しています。
 
講演で犬伏氏は、「開発で大切にしたコンセプト」や「展開における3つの大作戦」といった具体的な秘訣も明かしています。

大塚倉庫の挑戦
B2B CommerceによるDXの実践

Pick up session 7

【ロクシタン】EC刷新でブランドを磨く

最後は、ロクシタンジャポンの吉田諭史・情報システム部ディレクターによる「Commerce Cloud」導入プロジェクトについての講演。

ロクシタンは仏プロバンス地域で作られた植物由来の化粧品をグローバルに展開するブランド。Eコマースプラットフォームは内製していましたが、オンラインビジネスの活況に処理が追いつかず、各国でCommerce Cloudへのリプレースを実施。日本では2020年4月にキックオフし、約1年をかけてリリースしました。
 
吉田氏は「想定よりも時間がかかりました。スピード以上に、より良いシステムにすることを重視したからです。良いシステムとは単にバグが少ないという意味ではなくて、ユーザーにとってフレンドリーなものという意味です。

デベロッパーからのフィードバックが私たちにとっては新鮮で、よいものができました。また、プラットフォームに柔軟性があるためリリース後も独自の機能をどんどん追加することができました」と話しました。

ベルにカスタムメッセージを入れて贈ったり、相手の本名や住所を知らないネット上のゲーム仲間にギフトを贈ったりといった、さまざまな新サービスの展開をCommerce Cloudで実現しました。
 
続いて登壇したのは、セールスフォース・ジャパンの製品統括本部コマースクラウド本部アカウントエグゼクティブの塩見このみは、。2025年からの10年は「エージェンティックコマース」の時代になる」としたうえで、Salesforceの強みを説明。今後のCommerce Cloudについて、エージェント型コマースをはじめ6つの柱に沿って投資を進める方針を示しました。
 
エージェント型コマースの例として、買い物客向けエージェントの実際のオペレーションを、セールスフォース・ジャパンソリューション統括本部Specialist & Architect本部Commerce Cloud 部プリンシパルスペシャリストSEの伊勢路真吾が説明。AIエージェントが顧客の要望を理解し、商品を比較して的確な提案を行う様子をデモンストレーションしました。詳細はアーカイブ映像でご覧いただけます。

ブランド体験を磨くEC刷新

ロクシタンに学ぶ変革のアプローチ

盛りだくさんの内容で、大盛況に終わった「Agentforce Innovation Day for Marketing & Commerce」。この記事でご紹介したセッションの中で一つでもご興味をもったものがありましたら、ぜひアーカイブ映像をみて詳細な内容に触れてみてください。みなさまのビジネスのヒントになれば幸いです。

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